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若旦那

日本大学 工学研究科 機械工学専攻
M1   平山 靖記

 1.いざ!帝大へ!
 今日から2日間、「JSMEみちのく学生会・サマースクール in SENDAI」に参加することになった。何があるのかよく分からないが、本校の学生会担当の先生も勧めて下さるし、何といっても仙台まで愛車でドライブできるってのが楽しみでたまらない。この日のためにカーステレオも新調したし、ごっきげんなCDのサウンドと一緒に、まずは東北フリーウェイを北に向かって行くことにしよう。
 仙台部鉢のICを下りて、サトウムネユキを探しながら広瀬川を渡り、冬には恐そうなワインディンクロードを上ると、林立する古めかしくも厳かな東北大スカイズクレイパーズが迎えてくれた。「すづけ一!やつは帝大だよ帝大!」すっかり帝大パワーに骨抜きにされてしまった。

 2.帝大生現る!
 集合場所で迎えてくれたのは、やたらと鼻筋の通った(鼻の短い私はすぐに相手の鼻筋を見てしまう)背の高いヤツだった。『出たな帝大生!』前日に巻き舌の上手い友人2)から『帝大野郎になめられんなよ』とひやかされていた私は無意識のうちに身構えてしまった。帝大野郎は関西弁を喋った。腰は低い(足が短いわけではない)。前日の友人の言葉を思い出すも、偏差値に弱い私はすぐに友人の言葉など忘れてしまった。京都の若旦那みたいな好走が、どうやらこの方が幹事らしい。とにかく一言。「よろしくおねがいします。」

 3.若旦那御一行様・工場見学
 七夕飾りも重そうな仙台駅で他の参加者と合流した後、メインイベントである工場見学へ。見学先は、ネオ・石器時代と呼ばれる現代をカクで支える半導体製造業のトップメーカー:東北セミコンダクタ。滅多に見せていただけないという企業秘密をちょっとだけ拝見し、何となく満足。ダミー煙突3)や、雷の恐いトップ4)の語なども例えて、もっと満足。でも杜の都の地下鉄にはクーラーが無いっちゅうのにはまいった。

 4.若旦那の名は西川
 見学後に宿舎へと向い、参加者の自己紹介を兼ねての夕食となった。私も型通りの挨拶を終えて若旦那の番となった。西川と名乗った若旦那は、それまでの参加者がしてきたような型にハマった挨拶ではなく、自分の研究の話をよそに、自らの「みちのく独り旅」を語った。スピーチは10分近くにも及んだが、その話し方にはクセがなく、むしろ万人を魅了する、そう、セイレーンのような魔力さえ感じられた。おかげでそれまでこわばっていた参加者も一気になごみ、本当の意味での懇談会となった。そんな若旦那の魔力を私は羨ましく思った。その音、御幼少の政宗公は武神の像を見て曰れたそうだが、私もその言葉をお借りしたい。「我もかくの如くありたい。」

 5.若旦那・フケる
 夕食後ひと息入れてから、東北大の若き貴公子:渡辺先生のミッドナイトレクチャーとなった。ところが若旦那が来ない。目撃談によれば、風呂上がりにマッサージ椅子に横になったまま、オチてしまったらしい。先生の「ほっとけ」宣言により、ラフなスタイルでのミッドナイトレクチャーが開始された。
 但し時はミッドナイト。先生すみません。舟を漕いでたのは私です。

 6.解散
 翌日の朝食後、一応の解散となった。今回の研修会で一番勉強になったのは、若旦那の生き方である。2つ以上のことを同時にやれない私は、これまでとにかく勉強しかしてこなかった。でもそれは勿体ない。学生の私にしか、今の私にしかできないことは、勉強以外にもたくさんあるはずである。二兎を追えない私だが、これからは本職も大事にしながら、「余計なこと」にも首をつっこんでみようと思う。そんな発見をさせてくれた研修会に、そして若旦那に感謝します。

 7.告知
 以上のように研修会とは、日頃研究漬けになっている会員各位の息抜きの場です。きっと何かの発見があるはずです。研究室だけに閉じ込もらないで、是非、「外の世界」にも触れてみましょう。損はしませんよ。

 BANGAI.脚注
1)筆者同期:大垣晶資君。サッカー野郎で、先日試合中に左足首を骨折。ただ今松葉杖生活中。
2)筆者同期:小高純一君。日大M1同期生のスポークスマン的存在。本来は一緒に参加するはずだったが、研究の都合上やむを得ずキャンセル。
3)半導体工場の規模は空調用の煙突の数で分かるそうです。そこでダミーの煙突をつけるなどして、企業秘密の漏洩防止につとめているそうです。
4)トップの方々が、夕立になると萱の申で「桑原桑原」と唱えているのではなく、落雷による停電でクリーンルームの空調がダウンし、膨大な量の商品がオシャカになってしまうのがコワイんだそうです。


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