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「駄文」

秋田工業高等専門学校
機械工学科 5年 佐藤 隆寛

 授業中、窓越しに外を見る。敷地内の木々はすでに衣替えをしていた。秋になったことが肌で感じ取れるようになると、普段何とも思わない物でも新鮮さを覚える。日差しや風、月の光等に季節の移り変わりを知る人も、少なくないだろう。この文章の依頼時にはまだ暖かったのに執筆の段階で寒く感じるのは気温のせいか、締め切り間際であるが故か。日本シリーズやレジの隣に並びだした中華万、自動販売機に増えたHOTの文字などは冬を思わせるかもしれないが常日頃からこのような事柄に注意を払っているわけではないし、もうすでに(現在10月後半)冬なのかもしれないが私の感覚では秋なのでそうゆうことで話を進める。
 高専生にとっては秋と言えばまず頭に浮かぶのは「アイデア対決ロボットコンテスト」、通称ロボコンの地区大会ではなかろうか。
 6月頃にその年のテーマが発表されてから参加者を募る。中間発表までに方針を決め、制作に取りかかる。テストランを行う。流れとしてはだいたいこのような形になる。アイデアを集めてまとめるのも一苦労だが、それを実行させる技術力の重みは経験しないとわからないことだと思う。なにより図面の重要性を再確認させられると同時に、今日の加工技術のレベル高さを実感できる実習のひとつである。
 高専部門は1988年から1990年まで、第1回大会から第3回大会まで夏の競技だった。秋の風物詩となったのは第4回大会からであり、この年から全国大会の会場が国技館になった。
 予選から本戦にいけるのは二校程度。二度参加することができたが、選手としての参加ではなかった分客観的に他校の機械の性能をみれていた気がする。
 元々好きで始めたことだったし、目標となる先輩がいたので、全ての面において成長の種となったと思う。ただ、自分たちの代で後輩を全国大会に連れていってやれなかったのが唯一の心残りである。
 手をとめて、もう一度辺りを見回した。寮内では、暖房が本格的に動き出していた。虫の音はもう聞こえてこない。書き始めてからもうすいぶん日が経っていた。もう冬と認知すべきなのだろうか。よけいに卒業までの時間が残り少なく感じられた。
 教室の後ろの黒板に進路の決まった仲間の名前がみえた。これから冬を迎えるというのに春がすぐそこまで迫ってきている気がした。


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