第2章 屋久島の自然

 屋久島の概況は、平凡社世界大百科事典によると、以下の通りである。
「鹿児島県南部,大隅諸島中の島。大隅半島の南端から南へ約60km,種子島の南西約20kmに位置し,面積503km2,周囲約105kmの五角形状の島である。熊毛郡に属し,北半の上屋久町と南半の屋久町に分かれる。人口約1万3430(1995)。古第三紀層とそれを貫く花コウ岩層からなる高峻な島で,最高所は九州一の標高をもつ宮之浦岳(1935m)。これを取り巻くようにして永田岳(1886m),黒味岳(1831m)などがあり,いわゆる八重岳を構成している。
 《日本書紀》に,616年(推古24)掖玖(やく)人が大和朝廷に入貢したとあるのが,屋久島が記録に登場する初めであり,以後遣唐使船や海上交通の要地として利用された。中世,島津氏の支配下に入り,一時は種子島氏に治められたが,1612年(慶長17)以降島津氏の直轄領となり,奉行が置かれた。島の90%が山林,そのうち80%が国有林である。農業は,ポンカン,タンカンなどのかんきつ類,エンドウなどの園芸作物,ガジュツ(ショウガ科。漢方で根茎を健胃剤とする)の栽培と加工などが行われる。漁業はトビウオやカツオを主とする。降水量が多いため水力発電に適するが,島外への送電はできない。
 島周辺の低地は,年平均気温20℃前後で温暖であり,サンゴ礁も見られ,ガジュマル,アコウ,クワズイモなどが育つ。また降水量も多く,平地で年間4000mm内外,山地では8000mmを超えるところもある。このため山岳地帯では高度による植物相の変化に特徴があり,標高700〜1000m以下はクス,カシなどの照葉樹林帯,1500mあたりまでは屋久杉帯,これを越えるとヤクザサ帯となる。屋久杉はとくに有名で,樹高20m,直径1〜2mに達するものが9割を超す。樹齢300年以下のものは屋久杉とはいわず,コスギと呼ばれる。屋久杉の巨木の中には,樹齢2800年の白谷大杉,根回りが32.5mのウィルソン杉,42mの大王杉,43mの縄文杉などがあり,木目が美しいので高級建築材ばかりでなく工芸品用材としての価値も高い。これらは宮之浦川支流の白谷川渓谷にある自然観察林や,東岸の安房(あんぼう)から16kmの屋久杉ランドなどで見ることができる。屋久杉原始林は特別天然記念物に指定されている。標高1600m付近の花之江河(はなのえごう)は高所湿原として貴重である。動物種も数が多く,ヤクシマザルやヤクシカなどの著名なもののほか,アカヒゲ,ツマベニチョウ,キリシマミドリシジミ,ツグミの1種のアカコッコ(天)などが生息する。1993年12月,屋久島は世界遺産に指定された。
 自然に恵まれた優れた観光地で,尾之間(おのあいだ)温泉,湯泊温泉などもある。鹿児島港から定期船で約4時間,ジェットフォイルで2時間半,鹿児島空港からの航空路(40分)もある。」


図1. 屋久島地図

屋久島は、急峻な山と豊富な水を背景に、必要電力量の約8割を水力発電によるクリーンエネルギーによって賄っている。この特性を生かして、全てのエネルギーを再生可能なクリーンエネルギーから生み出すという目標に向かい、新エネルギーの導入に取り組んでいる。
屋久島の道路は、周囲を一周する平坦路と島の中央に伸びる山岳路に別れている。周囲の道は全周100km程度であり、走行距離に制限があるが坂道走行は得意な電気自動車に適している。すべてを電気自動車に置き換えると排ガスを一切出さない究極のクリーンな環境を得ることができる。
なお、屋久島における環境に対する決意は、以下の屋久島憲章に示されている。
1.わたくしたちは、島づくりの指標として、いつでもどこでもおいしい水が飲め、人々が感動を得られるような、水環境の保全と創造につとめ、そのことによって屋久島の価値をといつづけます。
2.わたくしたちは、自然とのかかわりかたを身につけた子供たちが夢と希望を抱き、世界の子供たちにとって憧れであるような豊かな地域社会 をつくります。
3.わたくしたちは、歴史と伝統を大切にし、自然資源と環境の恵みを活かし、その価値を損なうことのない、永続できる島づくりを進めます。
4.わたくしたちは、自然と人間が共生する豊かで個性的な情報を提供し、全世界の人々と交流を深めます。

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