森山 和道

「世界は誰かの仕事でできている」

ボストン・ダイナミクスという会社のロボットの動画を見たことはありますか。すごいです。まさに最先端のロボット技術です。こんなロボットが何十年か後には人の代わりに働けるようになるかもしれませんが、まずは現実的な話をします。


少し前の話ですが、「ジョージア」という缶コーヒーのテレビCMで「世界は誰かの仕事でできている」というキャッチコピーがありました。覚えているでしょうか?

そのとおりで、世の中のあらゆるものは誰かが作り、維持しています。当然、このコピー自体も作った人がいます。梅田悟司さんという方です。

意識しなければ気づかないことも多いのですが、本当にあらゆるものが誰かの仕事に支えられています。みんなが生産者で、消費者で、社会は回っています。

世界の先進国は大きな問題に直面しています。生まれる人が少なくなり、お年寄りが増える「少子高齢化」です。その何が問題なのでしょうか? 働ける人の数が減っていることです。

「世界は誰かの仕事でできている」のに、働く人が減っている。つまり、大げさにいうと、世界の一部が維持できなくなりつつあるのです。

日本は、特にこれが大きな問題になりつつあります。人手不足が進んでいるのです。

この問題、実はずっと前から分かっていました。人口構成の変化は、ほぼ確実な未来として予想できるからです。しかし多くの人たちは本当に人手が不足するまで対策に踏み切ることができませんでした。人はそういうものだということは覚えておいたほうが良いかもしれません。


生産年齢(15歳から64歳)人口が減少している(出典:総務省令和4年版情報通信白書

 

人手不足を補うためのロボット

さて、人手不足を補う方法の一つが機械化、自動化です。ここに今後のロボット技術が期待されています。

不足する人手は、仕事によって異なります。

ものづくりの現場では、何年も経験を積んで熟練した人でないとできない作業が今でも数多くあります。「その人がいないとできない」作業です。「その人でなければできない」仕事があると、全体の処理能力は、そこで決まってしまいます。

それをどうやって自動化するのか。

最近注目されているのは人工知能、AIとロボットを組み合わせる方法です。これまではベテランの職人でなければ受けることができなかった仕事も、徐々にロボットがこなせるようになりつつあります。

いっぽう、コンビニ弁当を作ったり、お惣菜を作ったりする現場では、とにかく大量の人手が必要です。

ネット通販で頼まれる品物を、倉庫で選んで箱に詰めて発送するといった作業にも、一部は機械ですが大量の人手が使われています。これもロボット化の対象です。

 

配膳ロボットを見たことない人はすぐにファミレスへ!

みなさんにも身近なところでは、家やビルで使われているロボット掃除機、あるいはファミレスや焼肉屋、回転寿司屋などで使われている配膳ロボットを見かけた方は多いでしょう。

この記事を読んでいて、まだ配膳ロボットを見たことがない人は、すぐに見に行くべきです。全国チェーンのファミレスでも使われています。ジュースを飲みながら、実際に使われている移動ロボットを見ることができます。ポテトを頼んだらロボットが持ってきてくれるかもしれません。

一言で「配膳ロボット」と言っても種類がありますし、使われ方もお店によって違います。注意深く見ると、動き方も違います。搭載されているセンサーやアルゴリズムが異なるからです。設計思想も運用方法も違います。それらはとても面白いものです。
そもそも、お店によって、料理をどうやって提供するかは違いますよね。細かいところですが、お店によって「おもてなし」の哲学の違いがあり、それをサポートする方法が違うのです。

かたちあるものを作る事業を製造業、かたちのないものを提供する事業をサービス業といいますが、サービス業で使われるロボットは、それぞれの会社に合った仕事ができなければ基本的に採用されません。

これまでサービス業では長らくロボットは使われてきませんでした。性能が十分ではなく、価格も高かったからです。ですが状況はだいぶ変わりつつあります。今後も大きく変わる可能性があります。どんな事業にどんなロボットがあると便利そうか考えてみてください。

配膳ロボットを入れると、従業員の方の歩数はおおよそ半減するようです。今後はロボットを使うことを前提としてお店が作られても不思議ではありません。


→ ロボット共生社会の基礎知識 第2回 人と接するためのロボット

 

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