山田 ふしぎ


自然科学研究機構・核融合科学研究所の大型ヘリカル型超伝導プラズマ実験装置(LHD)  (©核融合科学研究所)

 

1950年代から研究が始まった核融合発電。開発は難しく、実現にはまだまだ時間がかかると思われた。
ところが最近、世界のベンチャー企業が核融合発電実現に向かって大躍進を始めた。
一体何があったのだろう??
自然科学研究機構・核融合科学研究所の高畑一也教授にお話を聞いてみた。


高畑一也教授(自然科学研究機構・核融合科学研究所 超伝導・低温工学ユニット)

 

核融合ってなに?

太陽が輝いているのは、内部で核融合が起こっているからだ。
核融合とは、2つの原子核が衝突して合体し、少し重い原子核ができる反応だ。この時、とても大きなエネルギー(光や熱)が発生する。
水素1gから石油8tぶんものエネルギーが発生するため、科学者たちはこれを発電に使おうと考えた。

.核融合発電の長所
火力発電のように、地球温暖化の大きな原因である二酸化炭素を発生しない。
原子力発電のように、生物に危険な廃棄物を出さない。
太陽光発電は夜や雨の日は使えないけれど、核融合発電はいつでも使える。 .

 

なぜ核融合発電は難しいの?

地上で効率よく核融合発電を起こすには、次の3つの条件が必要だ。
水素を1億℃以上に加熱して、プラズマ状態にする。
水素の密度を1cm3あたり100兆個以上にする。
プラズマを一定の場所に1秒以上閉じ込める。
これらを実現するのがとても難しいんだ。

.水素の原子核の周りには電子が回っている。
超高温にすると、原子核と電子が分かれて、別々に飛び回るようになる。
この状態をプラズマというよ。 .

 

プラズマを閉じ込める方法

1億℃以上のプラズマはどんな容器に閉じ込めれば良いのだろう?
1億℃に耐えられる金属はないし、プラズマは金属容器にぶつかると一瞬で温度が下がってしまうので、ぶつからないようにしなければならない。
そこで考案されたのが強力な磁場でプラズマを閉じ込める方法だ。
コイル(導線をらせん状に巻いたもの)に電流を流すと、コイルの周りに磁界が発生し、鉄粉が磁力線に沿って並ぶ様子を見たことがあるかな?

図1 鉄粉の模様から、磁力線がコイルの中を1周しているのがわかる。

コイルを図2のようなドーナツの形にすると、磁力線はコイルの中を一周する。
原子核と電子は磁力線に巻きついて動く性質があるから、コイルの中では1周して同じ所に戻ってくる。つまりプラズマをコイルの磁場によって閉じ込めることができるんだ。
1958年に宇尾光治博士(京都大学)は、らせん(ヘリカル)状のコイルでドーナツ型の磁場を作ってプラズマ閉じ込める装置を発明した。このように、らせん状のコイルを使うタイプをヘリカル型と呼ぶよ。
装置は大型化するほど性能が上がっていった。1998年には核融合科学研究所のヘリカル型超電導プラズマ実験装置(LHD)が完成し、1億2000万℃のプラズマの生成に成功した。
一方、複数の円形コイルを並べたトカマク型も登場。現在、世界各国が協力して直径30mもの巨大なトカマク型実験装置を建設中だ。

図2 磁場でプラズマを閉じ込める2つの方法

さて、磁場を作るためにコイルに電流を流すということは、電気を作るために電気を使うということだ。そこで、コイルには超伝導線(極低温で電気抵抗がゼロになる超伝導体で作った導線)を使用している。電気抵抗がゼロなので、コイル内では電力をほとんど消費せずに、強い磁場を発生することができるんだ。
しかし発電実現への道のりは遠い。「プラズマの閉じ込め」や「巨大装置の建設」が難しいため、ヘリカル型もトカマク型も開発がとどこおっている。巨大装置の建設には高度な技術が必要で、ばく大なお金がかかるんだ。
この壁を破ったのが日本の技術だ。

 

高温超伝導線コイルの登場

数年前に、日本の電線メーカーである(株)フジクラや古河電気工業(株)が、高温超伝導線の開発に成功した。
高温超伝導線をコイルに使えば、磁場が2倍になり、プラズマの密度が高くなるので、核融合装置を小型化することが可能だ。建設費も安くなる。
実は高温超伝導線の材料である高温超伝導体が発見されたのは1986年。
超伝導体より高い温度で電気抵抗がゼロになるので、超電導技術に広く応用できると期待し、フジクラや古河電工は、すぐに高温超伝導線材料の研究を開始した。
しかし高温超伝導体はもろいので、線に加工することが非常に難しかった。
30年以上もの年月が流れ、フジクラや古河電工は品質の良い高温超伝導線の量産開発に成功した。
現在、高温超伝導線を使って、イギリスやアメリカのベンチャー企業が核融合装置を建設中だ。そして日本では核融合科学研究所の研究を引き継いだ(株)ヘリカルフュージョンが、ヘリカル型の核融合装置の開発に奮闘している。
核融合発電を開発している企業のほとんどが、2039年末までの実現を目指しているよ。

 

進化する核融合発電

実は、核融合ではプラズマから人体に危険な中性子が発生する。中性子が核融合装置の壁にぶつかると、壁がもろくなるため、耐久性の高い壁の開発が必要だ。
そこで中性子を発生しない「水素とホウ素の核融合反応」を使った技術が登場した。
強力なコイルを使わないので、費用は安い。
アメリカのベンチャー企業と核融合科学研究所が共同研究で開発を進めているよ。
地球に優しい未来を築こうと、知恵を出し合いがんばっている。

.どんな方式の核融合発電が最初に実現するかわからないけれど、
核融合発電は安全でクリーンな技術であることが究極の目標なんだ .

核融合発電についての基礎知識を知りたい人は
「核融合発電 基本のキ」を読んでね!
https://monoist.itmedia.co.jp/mn/series/39863/
自然科学研究機構・核融合研究所ホームページ
https://www.nifs.ac.jp/