森山 和道

本記事は日本機械学会連載「AI/Robot/IoT で変わる製造現場」のジュニア版です。

製造業ではIoTやAIの活用が進み、製品の企画から設計、製造、使用、リサイクルに至るまでの「製品の一生」に大きく関わりはじめています。世界で製品を販売する大手メーカーにとってデジタル改革は競争力を守るために必須です。IHIの村上  弘記氏は「TECHNO-FRONTIER 2025」で、欧州を中心に進む産業データ連携の動きと、日本の課題について語りました。


RRIロボット革命・産業用IoTイニシアチブWG1(IoTによる製造改革WG) 共同主査 村上 弘記 氏〔(株)IHI〕

 

まず注目されるのが、ドイツの「インダストリー4.0(I4.0)」です。工場の自動化だけでなく、設計から廃棄まで全てをデジタルでつなぐ取り組みです。中心にある考え方が「データスペース」です。これはデータを一か所に集めるのではなく、各企業が自分のデータを持ち続けながら、必要な時に安全にやり取りする仕組みです。大事なポイントは「データは作った人のもの」という考え方です。


データスペースの概念

 

欧州では「GAIA-X」や「Catena-X」といった仕組みが業界を超えた共通のデータ基盤として動き始めており、日本企業も無視できません。

「Catena-X」は欧州の自動車業界が主導する大規模なデータ連携の仕組みです。中小企業も参加し、部品の流れやCO2排出量、バッテリーのリサイクル情報などを共有します。データは分散型で管理され、信頼性や履歴が保証されます。欧州では取引条件の一つになりつつあり、参加しない企業はサプライチェーンから外されるリスクがあります。日本でも2023年に「Ouranos Ecosystem」が立ち上がり、蓄電池の追跡システムが整備されつつあります。

特に注目されているのが製品の原材料や生産方法、エネルギー使用量、リサイクル可能性などを電子的に記録した「デジタルプロダクトパスポート(DPP)」です。原材料の出どころや製造時のCO2排出量、使用履歴などを残します。QRコードやICタグで誰でも情報にアクセスできる仕組みです。

DPPは環境対応だけでなく、投資や取引基準としても機能し、ビジネス上の共通言語になりつつあります。つまり、日本企業もこれに合わせなければ国際市場で不利になる可能性があるのです。

AIはデータで賢くなります。一つの企業だけでデータを集めるのは難しいので、業界全体でのデータ共有が必要です。欧州ではすでに業界ごとにデータを共有する取り組みが進んでおり、日本も同じ方向に進む必要があります。


RRIでの活動:アクショングループ 産業データ連携のユースケース検討および仮説検証

 

データ共有は未来の話ではありません。日本企業が対応を怠れば、国際競争から取り残される危険があります。村上氏は「気がついたらルールが変わっていて、日本だけ理解できていない」という事態を避けるべきだと警告しました。

各企業はまず自社のデータを整理し、外部とつなげられるように準備しなければなりません。そして業界や地域を超えて協力し、データ共有のユースケースを積み重ねることが重要です。

信頼やルール作りも並行して進めなければなりません。産業の未来は、孤立した最適化ではなく、連携による共創にあります。データをどう共有するかが、そのカギを握っているのです。


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