森山 和道

本記事は日本機械学会連載「AI/Robot/IoT で変わる製造現場」のジュニア版です。

相模屋食料は、群馬県前橋市にある豆腐メーカーです。豆腐の消費が減る中、「ザクとうふ」や「BEYOND TOFU」などユニークな商品を次々と生み出し、業界トップの売上446億円(2024年)を誇っています。

強みは、昔ながらの「手作業の技術」を守りながら、自動化を積極的に取り入れてきた点です。背景には「人の技を活かしながら、誰もが安心しておいしい豆腐を食べられるようにしたい」という考えがあります。

相模屋が自動化に取り組んだきっかけは、2005年に建設した第三工場でした。豆腐製造の現場は蒸気や水気が多く、ロボットが動作するには過酷な環境です。そのため、ロボットは困難と考えられていました。しかし同社はそれに挑戦。独自の「ホットパック製法」を生み出します。豆腐をパックに入れるのではなく、「パックを豆腐にかぶせる」という逆転の発想によって、できたての熱々の豆腐を冷やさずにパックする製法で、割れや欠けを減らしながら高速でパックできるようになったのです。従来の4〜5倍もの生産性を実現しました。

コンベア上を流れるできたての豆腐にパックをのせる「ホットパック製法」。従来比4-5倍の生産性を実現した

豆腐にパックを斜めがけしていく。この後、豆腐とパックを一緒にぐるっと回すことで、パックが押さえとなり、豆腐はスムーズに定位置に収まる

通常の豆腐作りでは豆腐を冷やしてからパック詰めします。熱いままだと人の手では扱えないからです。しかし相模屋は「熱いままのほうが美味しい」という発想から、ロボットに熱々の豆腐を扱わせる方法をあみだしました。

自動化の効果は生産性だけにとどまりませんでした。熱いうちに密封することで雑菌の繁殖を防ぎ、豆腐の賞味期限が5日から15日へと大幅に延びたのです。予想外の副産物でした。賞味期限が伸びると、これまで日配品だった豆腐を在庫として扱えるようになり、販売エリアも全国へと広がりました。つまり、製造から物流、販売まで、業界の常識そのものを変える結果となったのです。

現在、相模屋はさらなる効率化のために、包装や検品の一部にもロボットを導入していますが、「完全な省人化」は目指していません。豆腐作りには熟練の感覚や判断が欠かせない部分が多くあり、それこそが「手作業という宝」だからです。鳥越社長は「自動化は人の技を守るためのもの」と語っています。


今も多くの人手が必要とされている

豆腐業界では、かつて全国に5万軒以上あった豆腐店が、今では4000軒を切るまでに減っています。このまま減少が続けば、普通の豆腐さえ買えなくなる地域が出てくるかもしれません。

相模屋は、豆腐を安定的に供給するため、全国の豆腐メーカーをグループ化し、地域の「地豆腐」を守る取り組みも進めています。すでに12社を傘下に入れ、それぞれの特色を活かした再生を行っています。たとえば茨城県の三和豆水庵では、湯葉の製造工程を見直して売上が2倍に伸びました。

取り組みの根底にあるのは、「豆腐を未来につなげたい」という思いです。相模屋は自動化を単なる効率化の手段としてではなく、「人の手作業の価値を守るための技術」として使っています。IoTやロボットを導入しても、作業員を減らそうとは考えていません。むしろ、人の技術と機械の力を組み合わせて、おいしい豆腐をより多くの人に届けることを目指しています。

相模屋の挑戦は、伝統産業とテクノロジーの融合がもたらす新しい可能性を示しています。単純に「人を機械に置き換える」のではなく、「人の技を活かすために機械を使う」。その結果、豆腐という日本の伝統食品が、世界にも通用する「未来の食材」へと進化しているのです。


相模屋食料(株) 代表取締役社長 鳥越淳司氏

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