森山 和道

本記事は日本機械学会連載「AI/Robot/IoT で変わる製造現場」のジュニア版です。

「ガンプラ」(「機動戦士ガンダム」のプラモデル)を作ったことはありますか? ガンプラは日本国内だけでなく世界中で大人気で、品薄状態です。

プラモデルの製造・販売を行うBANDAI SPIRITSは静岡市に新しい生産拠点「BANDAI HOBBY CENTER PLAMO DESIGN INDUSTRIAL INSTITUTE(BHCPDII)」を新設。ガンプラの生産体制を強化しました。ガンプラの成形から梱包、出荷までを一つの建物で完結できる「オールインワン工場」で、生産性をこれまでより約35%高める計画です。

さらに、工場には一般向けのミュージアムも併設。ガラス越しに工場の様子を見たり、プラモデルの企画・設計・金型づくり・成形・パッケージ制作などの過程を体験することができます。


ガラス越しだがミュージアム内から工場の様子を見ることもできる

 

なぜ今、ガンプラは世界で人気なの?

1980年頃にブームになった時のプラモデルと、今のガンプラは全くの別物です。最大の特徴は「スナップフィット」です。昔のプラモデルは接着剤が必要でしたが、今のガンプラはパーツ同士をはめ込むだけで組み立てられます。これは、ミクロン単位の精度で作られた金型(かながた)と、高度な樹脂成形の技術で実現されたものです。

さらに、バンダイ独自の「多色成形」技術により、塗装をしなくても、説明書どおりに組み立てるだけでカラフルな仕上がりになります。

「誰でも簡単にハイクオリティな模型が作れる」という体験が世界中で評価され、ガンプラ市場は拡大を続けています。2020年の時点では、年間の販売額の約半分が海外(アジアや欧米)になるほどで、累計出荷個数は2024年9月に8億個を突破しました。しかし、その人気ゆえに、多くの製品が入手困難な状態が続いているのが現状です。

 

生産能力35%アップ! 新工場のすごい技術

新工場「BHCPDII」は、この品薄状態を解消し、世界中のファンに製品を届けるために作られました。2026年に本格的に稼働したあとは、生産能力は2023年度と比べて約35%も向上する見込みです。

心臓部となる設備は「射出成形機」です。これは、米粒ほどの大きさのプラスチックの粒(ペレット)を220〜230度の熱でゲル状に溶かし、最大150トンもの圧力で金型に流し込む機械です。流し込まれた樹脂は、わずか10秒ほどで冷えて固まり、皆さんがよく知る「ランナー」(プラモ部品の枠)の形になります。

1枚のランナーを作るのにかかる時間は約20秒。この高速生産により、成形機1台あたり1日で4,000〜5,000枚ものランナーを生み出すことができます。


BANDAI SPIRITS 新工場「BHCPDII」

 

4色を1枚に! 魔法のような「イロプラ」技術

バンダイの技術の中でも特にすごいのが「多色成形機」です。通称「イロプラ」と呼ばれています。通常は、赤・青・黄・白といった色が違うパーツは、別々の金型と成形機で作る必要があります。しかし多色成形機は温度や圧力を緻密にコントロールすることで、1枚のランナーに最大4つの異なる色、あるいは異なる素材のパーツを一度に成形できるのです。

さらに「多重インサート成形」という技術を使えば、ランナーから切り離すだけで、すでに動く状態の関節パーツを作ることもできます。

これらの技術により、カラフルなプラモを少ないランナーで実現できました。使うランナーが減れば、パッケージ(箱)も小さくできます。生産時間やコストを削減できるだけでなく、トラックに積める量やお店に並べられる量が増えることにもつながり、多くのメリットを生んでいます。


バンダイ独自の設備「多色成形機」

 

成形から出荷まで自動化技術を活用した「オールインワン工場」に

新工場最大の特徴は、これまでは別の場所で行われていた工程も含めて、成形から梱包・出荷までのすべてを工場内で完結させた「オールインワン化」です。そのために11台の「AGV(無人搬送車)」や15台の「天井搬送台車」、そして「自動倉庫」などの自動化設備を導入しました。

成形機から出てきたランナーは自動でピックアップされ、コンテナに入れられます。そのまま人の手を介さず、天井を走る搬送台車に乗せられ、3階の包装・箱詰めエリアまで運ばれていきます。箱詰め作業などは人の手で行っていますが、原料や完成品は1〜3階を縦断して運用されすr自動倉庫で管理され、AGVが必要な場所へと運びます。金型の搬送にもAGVは使われます。


成形品を運ぶカラフルな天井搬送台車

金型や原材料など重量物の搬送はAGVを活用

 

「ものづくり」の面白さを体験できるミュージアム

新工場のテーマは「魅せる工場」です。その象徴が、併設されたミュージアムです。プラモが作られる工程を「見る・学ぶ」だけでなく、来館者がプラモデザイナーになった気分で「体験」できます。

特に面白いのが、ランナーの金型デザイン体験です。樹脂が金型全体にうまく流れるように設計しないと、パーツが完成しません。最終的にはパッケージのデザインまで体験でき、ものづくりの難しさと面白さを感じることができます。

静岡市は日本で最もプラモデル生産が盛んな地域で、バンダイも「地域とつながる工場にしたい」としています。新工場は、単にガンプラをたくさん作る場所というだけでなく、プラモデルの「ホビーのまち静岡」から、ものづくりの楽しさを世界に発信していく拠点となっています。体験を通じてプラモデルへの見方も変わるかもしれません。


金型デザイン体験は楽しい

プラモデザイナー体験ができるミュージアムも併設

入り口に設置されたガンダムのランナーモニュメント。1/1スケールに拡大されたもの

© 創通・サンライズ


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