森山 和道


「ロボティクス・メカトロニクス 講演会 2025 in Yamagata(ROBOMECH2025)」

一般社団法人 日本機械学会ロボティクス・メカトロニクス部門が主催する「ロボティクス・メカトロニクス 講演会 2025 in Yamagata(ROBOMECH2025)」が、2025年6月4日(水)~6月7日(土)の日程で山形ビッグウイング(山形国際交流プラザ)で開催されました。テーマは「フロンティアを拓くロボティクス・メカトロニクス」です。1539件の発表、参加者数はおよそ2,300名でした。


新しい試みとして「高校生特別セッション」も開催

「ROBOMECH」では様々なロボティクス・メカトロニクスに関する研究が「ポスター発表」されます。ポスター発表とは、大きなサイズに印刷したポスターに研究の背景や目的、実際の研究詳細や鍵となる図表、結論などをまとめ、その横に研究者自身が立って来場者に口頭で説明を行う、研究発表の形式の一つです。

「ROBOMECH2025」では、新しい試みの一つとして、6月6日に「高校生特別セッション」が開催されました。高校生に最新のロボティクス・メカトロニクス技術とともに、学会の熱い雰囲気を知ってもらうことを目的としたものです。今回発表されたのは5件。「ロボティクス・メカトロニクス」に直接のつながりがない内容でも受け付けられ、他の発表と同じ会場で実施されました。高校生たちによる5件の発表を、簡単にレポートします。

 

「RoboCup@Home」に挑戦中の高校生チーム


「モバイルマニピュレーターにおける状況把握と自己回復システムによる自律的な汎用タスク実行」を発表する村本幸輝さん

まず、海城中学高等学校の村本幸輝さんたちの発表についてご紹介します。村本さんは海城中学高等学校 物理部 RoboCup@Homeチームに所属しています。「RoboCup@Home」とは、人の指示に従って何らかのタスクを自律的に行う、生活支援ロボットの競技です。

今回の発表も「RoboCup@Home」に参加している「PyLoT Robotics」チームの開発した移動ロボットを紹介したものです。なお「PyLoT Robotics」は、日本大会で優勝しています。


チーム「PyLoT Robotics」による「RoboCup@Home」出場ロボット

RGBカメラ、2Dと3DのLiDAR、そしてマニピュレーターを持つこのロボットの特徴は、物体認識や状況の把握のためにVLM(ビジュアル・ランゲージ・モデル)を活用している点です。VLMを使うことで、画像から目標の物体を抽出して、言語入力と照合してタスクを行えるようになります。

具体的には言語と画像のマルチモーダルモデルとして知られるOpenAIの「CLIP」を使っています。CLIPを使うことで多様な物体を検出することができます。このロボットでは特に「物体をピックアップする」といったタスクが失敗したときに、リカバリーのためにVLMを活用しています。たとえば「物体が倒れているかどうか」といったことを類似度で判定し、失敗かどうかを判断し、失敗していたら再トライするのです。対象の物体が視野にないときにはロボット自体が探索する機能も備えています。

開発メンバーはおおよそ3ー4人。VLM関連のシステムは主に村本さんが開発したもので、他の機能の開発は他のメンバーに任せているとのこと。大会に向けて継続的に改良を重ねているとのことでした。

「PyLoT Robotics」は、2025年7月にブラジルで開催される世界最大のロボット競技の世界大会「RoboCup」の@Homeリーグに出場するためのクラウドファンディングも実施中です。活動の様子もブログで紹介されています。

 

「球状歯車」を使った「キャンディディスペンサー」の構想


「球状歯車の社会実装に向けたインサイド・アウトサイド空間の設計の検討」を発表する佐藤楓さん

酒田南高等学校 グローバル専攻の佐藤楓さんは、「球状歯車の社会実装に向けたインサイド・アウトサイド空間の設計の検討」と題して発表しました。山形大学工学部 機械システム工学科 多田隈理一郎研究室が開発した「球状歯車」の用途として「キャンディディスペンサー」を想定し、そのための構造検討を行ったというものです。


球状歯車。二つの鞍状歯車との組み合わせで全方向に回転でき、ロボットの関節構造などをシンプルにできると考えられている。

「球状歯車」は球の表面に歯が刻まれた歯車です。一般的な歯車と異なり、360度、全方向に回転できます。この「球状歯車」の存在を知ったとき、佐藤さんはとても驚き、魅力的に感じたそうです。


今後、実機への実装を目指すとのこと

そこで「球状歯車」の魅力を、多くの人、特に子供たちにも伝えたいと考えた佐藤さんは、用途として、同じく大好きだった「キャンディディスペンサー」への応用を考えました。キャンディディスペンサーとは、一定量ずつキャンディを取り出せる機械で、しばしば店頭に置かれています。提案された機構は、3つの筒からキャンディが球状歯車に入って、3つの出口からランダムに出てくるようにすることで、子供達に興味を持ってもらえるのではないかと考えたというものです。

コンパクトな機構で、細かいものを3次元的に振り分けることができる球状歯車の特性を生かしたアイデアです。まだ実機での実装はありません。あくまで構想段階です。今後、キャンディディスペンサーを作っている会社にコンタクトをとって、提案していきたいとのことでした。

 

コマ芯棒の充填率と先端形状と回転の関係


コマ芯棒

山形県立東桜学館高等学校の大井映さんらは「コマ芯棒の先端形状と回転時間の関係性について」というタイトルで発表しました。円錐型のコマ(ベイブレード)の芯棒の先端角度と、3Dプリンターで作るときにポリ乳酸樹脂(PLA)の充填率を変えて、芯棒の先端形状と回転時間との関係を調べたというものです。もともとは学校で勉強した「ジャイロ効果」について、より詳しく調べたいと考えて始めた研究の一部だそうです。

コマ芯棒の充填率と先端形状を変えて回転時間との関係を調べた

芯棒は充填率が高くなるほど重くなります。コマの回転安定性は重心位置と回転軸のズレによって変化します。重心が接地面に近いほどモーメントの働く位置が下にズレるので倒れにくくなります。実験では、充填率を0%、15%、60%と変え、さらに形状では円柱状、30度円錐、45度円錐と3種類を、それぞれ25個ずつ作り、それぞれの回転を、50cm四方の実験フィールドと、重りを落下させることでコマを回転させる発射器を使った専用実験器を使って検証しました。実験は、2回ずつ回転実験を行なって、50回のデータを取得し、回転時間や衝突回数の平均値を求めました。

コマ芯棒の先端形状の検討について発表する、山形県立東桜学館高等学校の大井映さん

実験の結果、充填率15%で30度円錐のものがもっとも回転時間が長いという結果でした。また、2回目の実験のほうが回転時間が長くなる傾向が見られました。芯棒の先端が丸く変形することで、より安定して回転するようになったためと考えられます。

今後は素材の影響を検証するためにPLA以外の素材も使って摩擦やバウンドなどの影響も調べていきたいとのことでした。

 

コンクリート粉末とホウ砂の固化のメカニズム


ホウ砂における粉末の固化の研究

宮城県仙台第三高等学校の佐藤和真さん、皆川椋哉さんは「ホウ砂における粉末の固化の研究」について発表しました。廃コンクリート粉末に、ホウ砂(四ホウ酸ナトリウム+水和物)と水を加えて200℃、30分加熱すると、質量比4:1:1をピークに再固化することが先行研究で知られていましたが、その原理を解明したいというものです。


再固化した廃コンクリート

研究グループではまず、コンクリートの主成分である二酸化ケイ素が固化に関与しているのではないかと考え、コンクリート粉末を二酸化ケイ素粉末(ケイ砂)に変えて予備実験を行ったところ、より少ない二酸化ケイ素で同程度に固化したことから、ホウ砂による固化には二酸化ケイ素が関与すると考えました。


左から廃コンクリート粉末、ケイ砂、備長炭、再固化した廃コンクリート

続いてホウ砂のOH基に着目し、固化は、二酸化ケイ素表面のシラノール基と、テトラヒドロキシドホウ酸イオンとの水素結合によるものではないかと仮説を立て、OH基を持つ炭(備長炭)と持たない炭(活性炭)にホウ砂の割合を12.5%ずつ変えて測定したところ、備長炭は固化しました。OH基の存在が必要だということはここから裏付けられました。いっぽう、OH基の影響度合いを調べるために酸性条件下での固化も調べました。廃コンクリート粉末の固化は弱まりましたが、ケイ砂酸性条件でも強い強度を保ち、こちらでの検証はうまくいきませんでした。


宮城県仙台第三高等学校 佐藤和真さん

これらから、ケイ砂、、テトラヒドロキシドホウ酸イオン、ナトリウムイオンの3要素が固化に関与していると考察。酸性条件下で廃コンクリート粉末の固化が弱まる原因は、廃コンクリートに含まれる炭酸カルシウムが塩酸と反応し固化に影響を与えている、つまりカルシウムイオンが結合を阻害したのではないかと仮説を立てました。そこでホウ酸や塩酸の有無などの条件を変えて実験を行い、その結果から塩酸と反応した炭酸カルシウムのカルシウムイオンが固化を阻害したことを確認しました。酸性条件下でも炭酸カルシウムが含まれないときには固化強度が減衰しないことから、固化の原因は水素結合ではないと結論づけました。


宮城県仙台第三高等学校 皆川椋哉さん

今回の研究では具体的な反応はわかりませんでしたが、二酸化ケイ素粉末や炭で固化すること、ナトリウムイオンが固化強度をあげること、固化がテトラヒドロキシドホウ酸イオンによる水素結合である可能性は低いとしています。今後は固化の原因をさらに調べることと、加熱がどのように反応に影響しているかを調べたいとのことでした。

 

古代米に隠れている生育のばらつき


宮城県多賀城高等学校 SS科学部の山崎誠歩さん(左)、増田晃子さん(右)

宮城県多賀城高等学校 SS科学部の山崎誠歩さん、増田晃子さんは、「古代米の生育の特徴」について発表しました。多賀城高等学校では多賀城市の特産品でもある「古代米」と「プチ古代米」を育てており、今年で4年目とのこと。育てるなかで現代米との違いや、同条件で育てているにも関わらず、生育のばらつきがあることに気がつき、平均積算温度と発芽率や成長パターンの違いを調べてみたというものです。

植物の生育のばらつきのなかには、いわゆる「品種」のもととなる可能性が隠れている可能性があります。それをより分けていくことは育種の基本です。3ヶ月以上かかる植物の日々の管理作業やその調査には継続的な努力が必要ですが、もともとコツコツと調べる作業が好きであるとのことでした。


今後も探究を続けたいとのこと

実験のなかでは、1/1000程度に十分に希釈しているにもかかわらず、追肥すると一部が枯れてしまうという問題があったそうです。具体的な管理法やタイミングをさらに突き詰めていきたいとのことでした。「どうしてこうなったのか」と考察することや、失敗から学んで改善を模索することはとても重要です。

 

学会発表で学べることは「思考のショートカット」の重要性と多様な相手への伝え方


香川大学創造工学部 教授 佐々木大輔氏(左)と意見交換中の山形大学工学部 機械システム工学科 教授 多田隈理一郎氏(右)

これまでも、高校生による発表はありましたが、「セッション」として実施されたのは今回が初めてです。今回の「高校生特別セッション」担当委員である山形大学工学部 機械システム工学科 教授の多田隈理一郎氏に改めて企画の趣旨や思いについて伺いました。

多田隈氏は「高校生が学会という場で、研究をまとめて発表し、研究者からフィードバックを得ることの意義」について、以下のように語りました。「学会発表することによって、自分だけでは気づけなかった視点を得ることができます。また発表内容をまとめることで、他者に理解してもらいやすい話し方・伝え方を身につけることができます。そういう考え方は早いほう、つまり高校のうちから知っておいたほうが良いと思います」。

多田隈氏は「研究発表は相手に『時間をプレゼント』しているのと同じ」と語りました。「自分が1年、2年とかけて行った研究を5分で理解してもらうことで、相手にその1年の時間をプレゼントするのです。そういう話し方が研究者にとっては、とても大事です。優秀な研究者は10年かけて研究したことを10分で伝えてくれます。短時間で知見を他者に分かりやすく伝えることで、聞き手にその分の時間をプレゼントし、思考のショートカットを可能にしているのです」。

そして「このような『思考のショートカット』を可能にする話し方は、研究者にとって非常に重要なスキルです。相手の反応や専門性を考慮しながら分かりやすく伝えるスキルです。高校生にもこのスキルを早めに身につけてほしいと思います」と続けました。

今回の発表者はテーマも内容もバラエティに富んでいます。山形で行われることから、まずは主に、東北地域の「スーパーサイエンスハイスクール(SSH)」指定校など、科学教育に力を入れている高校に声をかけたそうです。選定は、ロボット分野に限らず理数系全般。分野の多様性を重視し、ロボット以外の分野でも問題ないとしました。むしろ多様な分野の研究が集まることで、高校生は様々な模範例となる話し方を学ぶ機会を得られると考えたそうです。

また、発表を聞く研究者や大学の先生方が、高校生の発表に対して「思いやりのある話し方」でフィードバックを行うことで、高校生側は「このように話せば伝わる」という模範を学ぶことができ、研究発表の場(=学会)自体が、思考内容を相手に手短に伝えるための力を養い、「思考のショートカット」を可能にする話し方を学ぶメディアとなるとのことでした。

「成績が良いだけではなく、相手に不快感を与えたりマウントを取ったりしないで、相手が分かりやすい話し方を選びながら話せる人のほうが、大学に入ってからも成長できます。そういう感覚を早めに感じてもらいたいと思います」


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