森山 和道

本記事は日本機械学会連載「AI/Robot/IoT で変わる製造現場」のジュニア版です。

小型家電を自動選別・リサイクル可能なかたちに分解する「CEDESTシステム」

小型家電を無人で分解・選別する「CEDESTシステム」は、使い終わったスマートフォンやデジタルカメラなどから金や銅、レアメタルといった貴重な資源を安全かつ効率的に回収することを目指した新しいリサイクル設備です。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託を受け、産業技術総合研究所(産総研)、佐藤鉄工、大栄環境などが共同で開発しました。既に2025年9月から、実際のリサイクル工場で連続運転の実証試験が始まっています。

小型家電を自動選別・リサイクル可能なかたちに分解する「CEDESTシステム」

 

日本では2013年に小型家電リサイクル法が施行され、都市に眠る金属資源、いわゆる「都市鉱山」を活用する取り組みが進められてきました。しかし現実には多くの課題があります。回収される製品はメーカーや機種が非常に多く、内部構造もバラバラです。そのため、分解や選別の多くを人手に頼っているのです。リサイクルコストの約半分が人件費です。

また、スマートフォンなどに使われているリチウムイオン電池は、衝撃を受けると発火や爆発の危険があります。実際にリサイクル工場で火災が起きることもあり、安全対策が大きな問題となっています。

そこでこのプロジェクトでは、リサイクルを「情報の問題」として捉え直しました。製品の種類や内部構造をデータとして把握し、その情報にもとづいて処理方法を自動で決める「情報駆動型」の無人システムをつくろうとしたのです。CEDESTシステムは、6つの装置が連携して動きます。


全体システムの構成

 

まず「製品ソーター」が画像センサーとAIを使って機種を識別します。次に、スマートフォンやタブレットは「電池解体システム」に送られ、X線で電池の位置を確認し、安全に切り分けます。液体窒素で冷やして電池を取り外すなど、発火を防ぐ工夫もされています。それ以外の機器は「CFS型筐体解体機」で破砕されますが、電池が燃えないように過度な破砕を防ぐ設計になっています。

その後、「モジュールソーター」が部品を画像認識で選別し、プリント基板などを取り出します。さらに「CFS型基板剥離機」で電子部品を基板からていねいに分離します。最後に「トランスフォーマブル選別システム」が磁力や比重の違いなどを利用して、金や銅を含む部品を高い精度で回収します。これらが一つのラインとしてつながり、無人で連続的に動くことが大きな特徴です。


製品ソーター(小型家電を識別して次工程へ送る)

判別された機器は自動でそれぞれのルートに流されていく

CFS型筐体解体機(内部でチェーンによって製品を破砕する)

破砕された製品破片

基板から剥がされた電子素子

 

現在はスマホやデジカメなど6種類が対象ですが、将来は白物家電なども含めた幅広い製品に対応することを目指しています。さらに、事前にデータがない未知の製品でも、AIが形や部品の特徴から構造を推定し、最適な分解方法を考える仕組みの開発も進められています。これが実現すれば、より多様な廃棄物を効率よく資源に変えられるようになります。

無人リサイクル工場が普及すれば、安全性が高まり、コストも下がり、メーカーもリサイクルしやすい製品を設計しやすくなります。都市に眠る資源を循環させる「本当の循環経済」に向けて、大きな一歩となる取り組みです。


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