森山 和道

本記事は日本機械学会連載「AI/Robot/IoT で変わる製造現場」のジュニア版です。

2026年1月に東京ビッグサイトで開催された展示会「ファクトリーイノベーション Week」では、工場で人と一緒に働く「協働ロボット」をテーマにした講演が行われました。ロボット開発を進めるカワダロボティクスと、大手日用品メーカーの花王が、それぞれの取り組みを紹介しました。

カワダロボティクスの産業用人型ロボット

まずカワダロボティクスは、人と協力して働くヒューマノイドロボット「NEXTAGE(ネクステージ)」について説明しました。人型ロボットへの注目が高まっていますが、同社は25年以上前から人と一緒に働くロボットを開発してきました。

川田グループはもともと橋やビルを作る会社ですが、1980年代には小型ヘリコプターの開発も行っていました。この開発は途中で中止になりましたが、その中で得られた「軽く作る技術」「複雑な動きを制御する技術」「自動操縦の技術」などが、後のロボット開発に役立ったのです。

その後、東京大学と協力し、人型ロボット「H6」「H7」を開発しました。さらに国の大型研究プロジェクト「HRP」に参加し、「HRP-2」というロボットを作りました。このロボットは、倒れても自分で起き上がったり、人の声を聞いて物を取ったりできました。当時としては非常に先進的なロボットでした。

しかし、研究用ロボットだけではビジネスは難しかったため、工場で使えるロボットへ方向転換します。2009年、人と並んで作業できる双腕ロボット「NEXTAGE」を発表しました。小型家電の組み立てラインで人と同じくらいのスピードで安全に作業できるように設計されたロボットです。肩の構造を工夫し、人にぶつからないようにするなど、安全面も重視されました。

「NEXTAGE」はコンパクトで、カメラで周囲を認識できます。これまでに1,000台以上が導入され多くの企業で使われています。また、難病ALSの人が遠隔操作して接客する「分身ロボットカフェ」でも活用されています。

現在、カワダロボティクスは大学や研究機関とも協力し、AIや強化学習を使った新しいロボットの開発を進めています。

 

花王のスマートファクトリー化戦略

花王は「スマートファクトリー」という未来型工場の実現に取り組んでいます。花王は洗剤や化粧品、おむつなど、多くの商品を作っています。種類は国内だけでも6000種類もあり、それぞれ形や容器が違うため、自動化が難しい課題があります。

おむつ工場では少ない種類を大量生産するので自動化が進んでいます。1分間に1000個以上を作ることができ、作業する人も1〜2人ほどです。いっぽう化粧品は種類が多く、少量ずつ生産するため、人の作業に頼る部分が多く残っています。

花王は特に「ダイナミックセル」という新しい生産方式に力を入れています。1つのラインで複数の商品を同時に作る仕組みです。この方法で商品の切り替え時間を2時間から30分に短縮し、必要な作業人数も10人から3人まで減らせたそうです。

さらにAIで工場全体をつなぐ「フィジカルAI」の活用も進めています。ロボットや自動搬送ロボット(AMR)が工場内を自律的に動き、お互いに連携しながら作業します。将来的には、人が細かく指示しなくても、工場全体が自動で効率よく動く「完全自律ファクトリー」を目指しています。

ただし花王は、新しい技術を導入する際に「経済合理性」をとても重視しています。つまり「便利そうだから導入する」のではなく、本当にコスト削減や生産性向上につながるかを厳しく確認します。ロボットやAIは未来的な技術ですが、実際の工場では「役に立つこと」「利益につながること」が重要だという考え方です。

今回の講演では、ロボットやAIが単なる研究ではなく、実際の工場で働く人を支え、少子高齢化による人手不足を解決する現実的な技術として進化していることがよくわかりました。


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