日本機械学会「機械遺産」 機械遺産 第83号

樫野埼灯台の光学系機械装置

 樫野埼灯台は、本州最南端の潮岬灯台の東方約10kmに位置する。本灯台は、1870(明治3)年に初点灯された回転式閃光灯台である。江戸末期から明治維新にかけ、国内に建設された最初の8基の洋式灯台のひとつである。スコットランド出身の「お雇い外国人」R. H. ブラントン(1841~1901)が、来日後建設を指導した国内26基の灯台のうち、石造では最初のものである。1933(昭和8)年に機械装置を更新した際に、現在の、燈台局工場製の国産水銀槽式回転機械装置に変更された。水銀槽式回転機械装置は、水銀槽の部分と駆動部分に分けられる。重い光源は水銀槽に浮かべられ、歯車による変速機構によって非常に小さな力で回転が可能となっている。回転の動力は、当初、錘の自然落下によっており、4日ごとに管理者(灯台守)が巻き上げていた。1961(昭和36)年から錘に代わって小型モーターが使用されている。本灯台の水銀槽部分は設置(更新)時のままで、最も長期間使用されているものである。駆動部分は、使用はされていないものの、同所に保存されている。
 樫野埼灯台は、明治後期以降、全国に普及していった水銀槽式回転機械装置の全体像を知ることができる現役の航路標識(灯台)である。

《写真提供:第五管区海上保安本部》

外観:公 開
内部:非公開

樫野埼灯台

利用料:
無料
住  所:
和歌山県東牟婁郡串本町樫野埼
問合せ先:
第五管区海上保安本部
TEL:078-391-0064

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