【行事レポート】見学会「日立ビルシステム水戸事業所」~人とデジタルが共創するスマートマニュファクチャリング~

No.25-157 見学会「日立ビルシステム水戸事業所」~人とデジタルが共創するスマートマニュファクチャリング~

2025年11月14日に(株)日立ビルシステム 水戸事業所において,工場見学会が開催された。近年,欧州で提唱されているIndustry5.0をはじめとして,デジタル・AI・自動化技術を最大限に活用しつつ,人間の創造性やスキルを支援する「人中心」の製造現場が注目されている。本見学会では,多品種少量生産かつ大物製品である昇降機製造工場の見学を通じて,4M(huMan, Machine, Material, Method)データの利活用による人中心のスマート製造の実現に向けた生産革新について理解を深めることを目的として,2件の技術講演を併せて企画した。当日は10名(応募者:15名)の参加の下,活発な質疑がなされ,盛会となった。

講演1:「人とデジタルが共創するスマートマニュファクチャリング~日立ビルシステム水戸事業所の生産改革~」
((株)日立ビルシステム 生産改革部 主管技師 茂木俊行氏)

(株)日立ビルシステム水戸事業所における生産改革の取組とその実現に不可欠なデジタル技術についての講演が行われた。製造リードタイム50%短縮, 作業効率30%向上の目標に対する以下の実践事例が紹介された。

  1. メタバースを活用した製造ライン・工程設計を始めとするデジタルエンジニアリング技術による生産設計改革
  2. スマートデバイスやIoTを活用した生産実績のリアルタイム把握とそれに基づく現場作業指示を行う生産プロセス改革
  3. 3D設計モデル,受注BOM(部品表)データ,工程データを統合し作業者に適切な作業指示と,AIによる作業画像データのリアルタイム分析による作業エラー検知を行う製造作業ナビゲーションをはじめとする製造現場改革
  4. 自動搬送AMR活用による倉庫フリーロケーション化などの製造物流改革

昇降機は顧客仕様に応じた受注設計生産品であり,大量生産品とは異なる製造ライン構築やデータ活用の難しさがあるという特殊性が議論された。また,導入したシステムを現場で活用促進する取り組みとして,全員参加型の改革活動を進めた経験も共有された。これらの事例は,他業種におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)推進においても参考となる内容であった。

講演2:「人中心のスマートマニュファクチャリングに向けた研究開発」
((株)日立製作所産業オートメーション研究部 主任研究員 辻部晃久氏)

労働者不足による多様な人材の活用をはじめとして,近年の製造業が従来の効率性の向上に加えて取り組むべき新たな課題と,それらの課題に対して,今後のスマート製造の核となる,人中心の製造ラインの確立に向けた最新技術について講演が行われた。欧州委員会により提唱されたIndustry5.0や内閣府 戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)の中で検討されている”人協調ロボティクス”などの国際的な取組を概説した上で,人中心のスマート製造を実現するための以下の3つのステップが紹介された。

さらに,これらの技術を統合し,正確な工程負荷に基づく作業計画を立案するための不定形作業の作業時間推定や,作業効率向上のためのムダ作業抽出によって,持続的に成長する製造ライン”4M統合生産システム”の開発・適用状況について紹介され,参加者から高い関心を集めていた。

工場見学:昇降機製造ライン, エレベーター研究棟”G1 TOWER”

講演で取り上げられた技術が適用されている現場として,(株)日立ビルシステム水戸事業所の昇降機製造ライン(板金工程,制御盤組立工程など)の見学が行われた。加えて,2019年にギネス認定された世界最高速エレベータを含む昇降機で活用されている先進技術(制振技術,気圧制御技術など)や,それらの開発のために建造された日本一高い(報告時点)エレベーター研究棟”G1 TOWER” (地上高213.5m)を見学した。見学会の最後には,1960年代の霞が関ビルディング向け高速エレベーター開発に使用された旧研究棟(地上高90m)と新研究棟を一望できる撮影スポットにて記念撮影が行われた。参加者からは,「量産製品と異なる製造現場の条件や考え方に触れることで新たな気付きを得られた」といった意見が寄せられ,有意義な見学会となった。

最後に,本見学会の開催にご協力頂いた (株)日立ビルシステム水戸事業所の関係者,講演者,そしてご参加頂いた皆様に深く感謝申し上げる。

講演会の様子

見学の様子

智田 崇文((株)日立製作所)