部門長挨拶

電気通信大学 情報理工学研究科
機械知能システム学専攻
教授 大川 富雄

このたび、氣駕尚志前部門長 の後任として、動力エネルギーシステム部門の第102期部門長を務めることになりました電気通信大学の大川と申します。力不足を感じつつではありますが、梅沢修一副部門長、歌野原陽一部門幹事を始め、運営委員会のメンバー及び部門登録者の皆様のご協力をいただきながら、円滑な運営を図っていく所存でおりますので、何卒宜しくお願い致します。

今年度は第102期ということですが、これは1987年創設の日本機械学会が法人化された1924年から数えて102期目にあたるということで、部門の設立はその前身となる動力委員会が動力エネルギーシステム部門となった1990年4月ですので、動エネ部門として今年度は35年目ということになります。この挨拶文を書くにあたって、これまでの部門長のものを参考にしようと思い、動エネ部門のホームページにアクセスしたところ、1990年3月発行の第0号から2024年1月発行の第75号までのニュースレターが奇麗に整理されており、歴代広報委員長のご努力に感服致しました。このうち、1990年11月発行の第1号では、初代部門長を務められた東北大学の戸田三朗先生が挨拶文を書かれており、その中で、動エネ部門が発足当初に掲げた目標を紹介されています。それは、(1)講演会等の活性化、(2)開かれた部門、特に産業界からの積極参加、(3)部会員へのサービスの三つで、この観点で現在の動エネ部門を見ると、(1)については動エネシンポ、年次大会のOS、ICONE、ICOPE、PATRAM、FDRを始めとする国内・国際会議の開催、(2)については各種委員会、分科会・研究会、セミナー&サロン等における産官学のメンバーの交流促進、(3)については見学会や講習会の積極的な開催など、十分に及第点以上の活動を行っていると言え、これまで動エネ部門を支えてきた方々のご尽力の賜物と思います。また、ニュースレターの第1号には、動エネ部門がカバーする技術分野についても言及があり、動力エネルギーシステム及び関連する基本技術、エネルギー環境工学、エネルギー変換・エネルギー輸送・エネルギー貯蔵技術などがあげられています。動エネ部門発足の後、東日本大震災とこれに引き続いて発生した福島第一原子力発電所での過酷事故、紛争に起因するエネルギーセキュリティの悪化など、エネルギー・環境問題の境界条件は大きく変化しましたが、動エネ部門が設立時にカバーすべきとした技術分野はますますその重みを増しています。このため、発足当初に掲げられた三つの目標を達成するための活動を継続することが、まず重要であり、しっかりと行っていきたいと思います。

一方、動エネ部門が現在直面している課題として、部門登録者数が減少傾向であること、部門登録者の年齢構成が上昇傾向であることがあげられようかと思います。エネルギー・環境問題は現在よりもむしろ将来において重要な問題であることを考えると、若手の技術者・研究者に当部門で活躍してもらう必要があり、このための方策について検討してみたいと考えております。次に、動エネ部門の大きな特徴の一つは、異分野及び産官学のメンバーが協同して仕事に取り組む下地があることです。このため、セクショナリズムに陥ることなく、この特徴を生かしたユニークな成果をあげられればとも思っております。また、最近思うこととして、産業界が求める人材を輩出することが大学に求められるミッションの一つとすると、大学が育てようとする人材像が産業界の必要とする人材とそれなりに一致していることが望ましいはずですが、両者に相当の乖離が生じているような印象を受けております。動エネ部門では、産業界の一線で活躍されている方々と意見交換できるチャンスも多くありますので、役得でこの辺りの疑問を解消できないかなどとも考えております。

 最後に、個人的な動エネ部門との関わりの話しで恐縮ですが、私は1996年に日本機械学会の通常総会講演会で圧縮空気エネルギー貯蔵システムに関する研究発表をしたところ、動エネ部門の優秀講演賞を頂くとともに、これがきっかけで1999年に電力中央研究所から大阪大学に移ることとなりました。このため、個人的な思いも深く、本部門の発展に微力ながら貢献したいと考えておりますので、引き続き、皆様のご協力及びご指導・ご鞭撻を賜りたく、宜しくお願い申し上げます。