
早稲田大学
創造理工学部 教授 中垣 隆雄
動力エネルギーシステム部門第104期の部門長を拝命いたしました早稲田大学の中垣隆雄と申します。期初にあたり、一言ご挨拶申し上げます。当部門は、機械工学において主要な機械・材料・流体・熱力学や計測制御などを柱とした縦串の部門に対して横断的な横串の役割があり、産・学のバランスにも優れた特長を持っております。1990年の部門創設と同じく、36年目の本年は午年で、奇しくも私も丙午の生まれで還暦を迎えます。午(馬)のように颯爽と時代のラフロードを駆け抜け、上記のような部門の特長を生かした活動を牽引して行きたいところですが、運営委員を始めとする部門の皆様のお力添えがあってこそ実現できるものと考えておりますので、何卒ご協力のほどお願い申し上げます。
新部門制の第1回目となる昨年度までの3か年では、S評価(最高)を獲得しました。第104期は26~28年度の新たな3か年のポリシーステートメントを策定する開始の期にあたり、部門タイプMLに属する当部門は、重点活動項目を4つ設定する必要があります。歴代部門長のポリシーを引継ぎ、部門間交流(MLに必須)、産業界への貢献、国際連携活動、人材育成を掲げて参ります。部門間交流では、動力・エネルギー技術シンポジウムおよび年次大会の先端フォーラムを中心に連携の場を拡げて行きます。また、当部門の収支に大きな影響をもたらす国際連携活動では、米国機械学会の離脱の影響を最小限に留め、新たな枠組み・パートナーシップを模索しています。2027年にはICONEES(International Conference on Nuclear Engineering and Energy Systems)が福岡で開催、ICOPEも2026年から偶数年開催として新たな歴史を刻み始めており、PATRAM、FDRと併せ4つの国際会議として安定的な運営が重要となります。
当部門には、電力を中心とするエネルギーシステムにかかる工学的な専門知が集結しており、社会における重要性は論を待ちません。エネルギー基本計画に謳われるS(安全性)を大前提とする3E(エネルギーの安定供給、経済効率性、環境への適合)の基本方針はいずれも重要で、3Eの高度なバランスが求められますが、その実践者として将に最前線に立っている部門です。日々の暮らし、移動・物流、経済・産業活動の社会基盤を支える黒子としての矜持を秘め、未来を拓くDX(デジタル・トランスフォーメーション)の推進力となるGX(グリーン・トランスフォーメーション)を共に実現していく仲間が集っています。特に、産業熱や輸送動力など需要の電力化と、データセンターの増加に伴う電力需要増を背景に、電力の安定供給は産業界への貢献としても重要になっています。しかしながら電力保安分野では、電力自由化に伴う経済効率性への圧力と労働力の長期減少傾向による慢性的な人手不足によって切実な課題を抱えております。製品評価技術基盤機構のスマート保安プロモーションや経済産業省の認定高度保安実施者制度など、DXを活用した自律的かつ高度な保安への様々な支援がありますが、このような動きに対し、新たな技術の発表やDX活用の横展開・ナレッジシェアリングの場を、様々な企画を通じて学会が提供できるように尽力して参ります。
2050年のカーボンニュートラル(CN)達成まで四半世紀を切りました。本稿執筆時点での環境省の速報では、2024年度の温室効果ガス排出・吸収量(CO2換算)がようやく10億トンを下回りましたが、CN達成は依然として茨の道であることに変わりありません。上述の通り、需要の電力化と電源の一次エネルギーの非化石化はCNへの両輪であり、可能な限りの原子力発電の再稼働・運転期間の延長と再生可能エネルギーの主力化が強く望まれます。その中で、調整力を担う火力発電にはCO2排出削減はもちろん、年間のkWhよりも大容量で確実なΔkWの貢献も求められ、それに伴って頻繁な起動停止や高いランプレートなど、収益性や設備維持の観点で事業環境は厳しさを増しており、当部門でも火力発電の価値の適性化を発信すべくP-SCD425分科会を立ち上げています。CNへのアフォーダブルなトランジションはこれらの総力戦であり、長丁場で世代間のバトンタッチが不可欠です。時間がかかり、慣性の大きな教育・人材育成は、当部門こそが挙げるべき重点活動項目の一つであると、ご同意いただけるものと信じております。