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 鉱山学部は工学部?

 秋田大学大学院
 機械工学専攻  細川 靖之

 他大学の友達と話をしていると鉱山学部ってどんなことをやってるのかとよく聞かれるので、その実態を私の研究室を例にして紹介しましょう。
 鉱山学部と言っても機械工学科は採鉱学科や鉱山地質学科とは違い内容は工学部とほとんどどころか全然変わりません。私のいるのは熱講座であり、山で穴掘りをしているわけではないのです。
 私たちの研究室は主に低温での伝熱問題についての研究を行っており、氷にはじまり雪、霜など冷たいものぱかりを素材にしています。
 ところで氷といえぱ融点はO℃です。しかし私たちの住んでいる日本列島は気候区分でいえば温帯に属し、さらに四季と言う季節もあります。秋田は冬は寒いのですが、夏になれば当然ながら最高気温が30℃を越える日もあります。と言うことは我が研究室では夏はほとんど実験はできないと言うことになります。けれども賢い人はいるもので、低温室というものを発明した人がいます。うちの研究室にも低温室はありますが、室温-5℃で外気温30℃では気温差35℃もあるので、こんなところを出たり入ったりしていては体がバ力になってしまいます。こんなわけで夏は実験をしません。ではいつになったら実験を始めるのかと言うと11月頃になります。
 実験が始まると私たちは冬季限定の季節労働者なので鬼のように働き(実験)ます。実験をすると言わず働くと表現したのは、我々は仕事人の集まりだからです。仕事人集団の我が研究室はプロフェッショナルな人々の集まりですから、仕事の種類、すなわち実験の種類によって、各々得意分野は分かれてきます。ノコギリで氷を切らせれば日本一の氷切り出し野郎にはじまり、夏のあいだ先生の御用達、かき氷を作らせれば日本一、かき氷小僧まで、たくさんのプロが集まってます。これらをまた狭い低温室内で作業しないと州ナないので困ったものです。さらにこの作業には、とても時間がかかり長い間低温室に閉じ込もっていないといけません。
 このように悪条件のもとに長い時間拘束されるあたり、坑道で作業する鉱山労働者に相通じるものがあるような気がします。と言うわけで我々はやはり鉱山学部なのでした。


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