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我が相棒

宮城工業高等専門学校
機械工学科5年   五十嵐 剛

 私は一台のパソコンを持っている。数年前はただのゲーム機であったが、1年ほど前からワープロやデータの編集などにも利用しようと思い、MS−DOSなるものを学び始めた。当時はMS−DOSと言えばCADによる製図で使用していた程度で何も分からない状態であった。Directoryという単語がなにを意味するのか分からず、拡張子というものが何のためにあるのかも理解していなかった。そんな人間が、「プロンプトが点滅したらコマンドラインから次のコマンドを入力してください。」と言われても出来るはずがなかった。私のパソコンは再びゲーム機へと逆戻りした。
 半年後、ハードディスクという便利なものを購入した。記憶容量が大きくアクセスも早いこの装置は、私にもう一度MS−DOSを使いこなそうと思わせるのに十分な魅力を持っていた。ハードディスク内の全データを消去する事2回、BASICしか使えなくなること1回、友人の助けにより様々な苦難を乗り越えてやっとハードディスクを利用できるようになった。
 そこで、私は調子に乗って、とあるワープロソフトを起動した。『メインメモリが足りません』、愚かな私はこの時になってメモリについて調べ始めた。どうやら登録されているドライバが多くてメインメモリにワープロを起動させるだけの空きがなかったらしい。(ドライバと言う単語もこの時知った。)
 ちょうど機会があったのでメモリを増設した。私は実を言うと使い方が分かっていなかった。EMSとXMSの区別が付かない私はまずメモリの基本的なことから勉強しなければならなかった。UMB、HMAなどに泣かされながらもこれらを駆逐し、これで文句はなかろうと再びワープロを起動した。ここまでは順調だった。しかし、いざ文章を漢字変換しようとすると、『辞書が見つかりません。』。どうやらインストール時にドライブの指定を間違ったらしい。再びインストールし直した私は愕然とした。『このフロッピーは破壊されています。』……。何とか修復し3度インストールをし直し、3度ワープロを起動した私の額に脂汗が伝った。『編集作業領域が確保できません。』……。 打ちのめされた私は操作ミスで貴重きファィルを5個ほど消去してしまった。未だにこの謎はとけていない。誰かが言う、「もうそんなワープロ使わなければいい。」。 そう、確かにその通りだ。だがしかし、それでは、私はそのワープロに、いや、パソコンに負けたことになる。それだけは避けたかった。私はまだ諦めるわけにはいかない。
 もはや当初の目的は失われており、徐々に深みにはまっていくのが自分でも分かる。これから先当分は、私はこの相棒と闘い続けるだろう。どちらかが力つきるまで………。


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