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私の研究紹介

東北学院大学大学院工学研究科
 機械工学専攻  中山 広樹

 「物質の三態」というのはご存じでしょう.そうです,固体・液体・気体のことです.ここではわかりやすいように「水」で考えてみましょう.温度を序々にに上げていくと,氷(固体)は水(液体)になり,水は水蒸気(気体)になります.では水蒸気の温度をもっと上げるとどうなりますか.やがて水の分子が水素と酸素の原刊こ分かれます(解離).そしてついには原子がイオンと電子に分かれて自由に運動するようになり(電離),もとの物質とまったく異なった性質を示します.この状態で,電子とイオンが十分含まれていて,その正負の電荷がバランスして存在し,巨視的には電荷の総和がゼロであるような粒子の集団をプラズマとよぴます.このことはプラズマが「第四の物質状態」ともよばれる由縁です.そのなかでも局所的に各粒子の温度がほぼ等しく,組成も電離平衡組成に近い状態のプラズマを「熱プラズマ」といい,すでに溶射・溶接・精錬など各方面に応用されています.
 私の研究室ではこのような熱プラズマ流の高機能化と応用面を広げるための基礎研究を行っています.高機能化には環境条件の変化に対応したプラズマが示す様相についての基礎資料が非常に重要ですし,さらにプラズマが示す情報を,よりよく正確に取り出すための研究も重要です.現在は減圧下の熱プラズマ噴流に一対の超伝導磁石を用いて強磁場をあたえるなど,外部環境条件を変化させた場合の熱プラズマ噴流の特性を明らかにしようとしています.
 研究ではプラズマからの情報を感知し,解析するために光ファイバを用いた光学計測装置,外部環境条件として最大約3テスラの磁場をあたえる超伝導磁石を用いた磁場発生装置などを使用しています.超伝導磁石はThermal Shockに弱く,また鯛を冷やすために極低温(4.2K)の液体ヘリウムを使うので扱いには十分注意が必要です.そのほかの特徴として,プラズマ発生時にも背圧を1Kpa以下に維持することができる真空チャンバがあり,背圧を変化させることができます.また多点同時計測が行えるように測定部に対し水平方向と垂直方向の2ヶ所に光学測定端子を設置できます.これらの装置を使ってプラズマからの光学的放射強度を測定し,その放射強度からプラズマ温度を算出してプラズマの様相を解析し検討します.測定した放射強度はそのまま計算には使えず光の波長に対して感度補正を行わなければなりません.
 現在までの成果としては,熱プラズマ噴流に作用する磁場が強くなるにつれて噴流中心の高温部分が伸びることが確認できました.これからの課題としては強磁場下でのプラズマ噴流の挙動を含め,よりさまざまな条件下での多くの実験データを得ることです.
 熱プラズマに限らずプラズマは多方面に応用されていますから,機械系のみなさんなら簡単な知識として知っていても損はないでしょう.少しでもプラズマに興味を持った方は,一般の書店で手にはいるような本もありますから読んでみたらいかがですか.


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