森山 和道

<目次>
きつくて危険、長時間続く分別作業
高松機械工業 資源ごみAI自動選別機「AI・B-sort」
イーアイアイ「A.S. Robot」
ウエノテックス「URANOS」
業界全体のイメージ向上 シタラ興産の自動産廃分別ロボット
ロボットは労働環境を変える

きつくて危険、長時間続く分別作業

ロボットというと「ものづくり」に使われるイメージが強いと思います。けれどもロボットの役割は、それだけではありません。今回はリサイクルの話をしたいと思います。廃棄物処理です。みんなが気軽に捨てているペットボトルやジュース缶も回収され、分別され、必要に応じてリサイクルに回されています。

資源ゴミの分別作業には、今でも多くの人手が使われています。ベルトコンベアの上に流れてくる廃棄物の中から、種類ごとに分けたりする作業で、一定速度で流れるベルトコンベアの両脇に人がズラッと並んで、目で見て、自分の手で分けています。

このような人手を集めて行う作業に依存する産業のことは「労働集約型産業」と言います。いまロボットに対して新たな役割を期待されている分野が、まさにここです。人間の労働力に依存しているため、人手不足問題の影響を強く受けるからです。

また、きつくて危険、しかも長時間続く単純作業が少なくないことも、ロボット投入が期待されている理由の一つです。コンベアに巻き込まれることもありますし、ガラスは手を切ってしまう可能性もあります。

では、なぜこれまでに機械設備にとって代わられていないのかというと、これまでの技術では自動化が困難だったからです。

たとえば、ペットボトルとカンやビンを自動で分別する機械はあります。ですが、「色付きのビン」と「透明なビン」を分けることは難しかったのです(容器包装リサイクル法によって、ガラスびんの分別の基準は無色、茶色、その他と定められています)。「透明なビン」といっても、薄く色がついているものもありますし、グルッとラベルが巻かれている場合もあります。それらはどう見分ければいいでしょうか。このような分別は従来の認識技術では難しいものでした。

 

高松機械工業 資源ごみAI自動選別機「AI・B-sort」

画像処理技術の発展が、この壁を乗り越えつつあります。搬送系を得意とした工作機械メーカーの高松機械工業と、スキャナー技術を持つPFUが共同で開発したのは、資源ごみAI自動選別機「AI・B-sort」です。どちらも石川県の企業であるから、コラボとなったそうです。両社とも、これまでとはまったく異なる業態へのチャレンジです。

「AI・B-sort」は、ベルトコンベアの上を流れてくる空き瓶の色をカメラで選別します。PFUの光学技術・画像認識技術を応用した撮像ユニットと独自アルゴリズムで色別にビンを認識できるAI認識エンジン搭載ビジョンシステム「Raptor VISION BOTTLE」で認識を実行し、下流の直交3軸のロボットアーム二つで吸着ピックアップして分けます。最大、一分間に70本の速さで動けるとか。

選別率は99.6%。回収率は9割で、最短サイクルタイムは15秒。たまに失敗している理由は、上流で認識してビンがピッキングできるところまで流れてくる間に転がったりしてしまうことがあるためです。

「片持ち構造」となっていて、もともと処理場が使っているコンベアの上にかぶさるように設置できます。ビンの色ごとの処理数や処理率などをはっきりわかるかたちで数値化することも可能です。

すでに、青森県弘前市に本社を置く東北6県の資源ごみ処理を行っている青南商事の工場(所在地:青森市戸門)に導入され、ビン選別工程の自動化を実現しているとのことです。価格は「おおよそ10年くらいで元が取れるくらい」だそうです。


高松機械工業とPFUのブース

同社はこのロボットを「2024NEW環境展」に出展しました。他にもX線を使ってゴミに混ざったリチウムイオン電池を検出できる仕組みの開発なども進めています。こちらはリチウムイオン電池を検出したら、アラートを出し、どのゴミ袋に入っているのかをプロジェクションで示します。検知精度は2024年5月現在で、96.2%くらい。向きによっては難しいそうですが、もっと精度を向上させようとしているそうです。


X線を使ってゴミに混ざったリチウムイオン電池を検出できる仕組み

認識精度も上がってきてることから、「人が行っている作業にも、まだ自動化できる部分がある」と考えて、コラボとなったそうです。私はこのようなロボット技術の存在について、もっと知ってもらいたいと考えています。「ゴミ」は誰かが必ず処理しており、そのおかげで我々は暮らせているのです。

 

イーアイアイ「A.S. Robot」

イーアイアイは早稲大学大学院・小野田弘士教授らと共同開発中のAI自動選別ロボット「A.S. Robot(Autonomous Sorting Robot)」を出展していました。仕組みは基本的に同じです。コンベアの上流にカメラを設置して、その識別情報を元に、ロボットアームが動いて分別を行います。


イーアイアイ AI自動選別ロボット「A.S. Robot」

現在はビン、缶、ペットボトル、コンクリート、木くずの分別ができるとのこと。特徴はコンパクトでどの施設であっても入れやすいこと。

ウエノテックス「URANOS」

ウエノテックスは廃棄物自動選別ロボット「URANOS」を出展しました。手選別搬送ラインでの仕分け作業を自動化します。センサーはRGB、デプス(奥行き)、ハイパースペクトルなど廃棄物によって選定し、ロボットも用途(選別対象)に合わせて、パラレルリンク型の高速アーム(可搬重量最大500g)と、垂直多関節型のロボットアーム(可搬重量最大5kg)を使い分けることができます。


ウエノテックス「URANOS」

AIはグループ会社のRita Technologyが開発したものです。ハンドやパッドも独自開発とのことでした。

ユニークなところは、すでに使われているAI活用のロボットシステムだけでなく、人がゲーム感覚で「目」の役割をして遠隔操作するタイプ「リモートURANOS」も発売しているところです。人は快適な環境でタブレットを使って廃棄物を指定して、ピックアップさせることができます。


タブレットでロボットに遠隔指示を出す「リモートURANOS」

同社ではこのロボットシステムを使うことで、業界全体のイメージ向上も目指しているそうです。

 

業界全体のイメージ向上 シタラ興産の自動産廃分別ロボット

今回の「2024NEW環境展」には出展されていませんでしたが、「業界全体のイメージ向上」という話で私が強く印象に残っているのは、以前取材させてもらった、埼玉のシタラ興産の話です。同社はロボットのメーカーではなく、ユーザー側の企業ですが、フィンランドのAI搭載自動選別ロボット「ゼンロボティクスリサイクラー(ZRR)」を、国内でいち早く導入した会社です。

この会社は建設廃材を分別しています。建築物を解体したあとは、その場でもある程度分別するのですが、どうしても分別しきれない部分が混合廃棄物として残ります。それをコンベアを使って手作業で分別処理していたのですが、そこを自動化したのです。詳細は 「ビジネス+IT」という媒体の「シタラ興産は自動産廃分別ロボットで「灰色」から「白」を目指す」をご覧くだされば幸いです。2018年の記事ですので、少し古いですが、趣旨は古びていません。

その設楽社長が仰っていたのは、3K(きつい、汚い、危険)で、「グレー」のイメージがある産業廃棄物処理業のイメージを「ホワイト」に変えたい、という話でした。ドラマなどでも産廃処理場が出てくると、たいてい何かしらの事件が起きます。そういうイメージを「白」に変えたいとのことでした。

 

ロボットは労働環境を変える

ロボットは、そのための一つの手段なのです。イメージだけでありません。実際に環境を変えることができます。ロボットが動いている風景だけを見るとピンとこないと思いますが、実際にはこのような分別作業を、コンベアベルトの両脇に立った人が、ずっと人手で行っている現場がほとんどなのです。

他にもAIとロボットを組み合わせた分別ロボットはあります。分別以外のリサイクル作業でもロボットは用いられています。パナソニックは「エアコン室外機外装自動分解システム」を開発しています。型番を読み取って、ビス位置を認識して、ねじ回しを使って分解していきます。この解体ラインでは、他のロボットも活用して、労働の負担を減らしていました。

もっと、このようなロボットの存在を知ってもらうことが、まずは業界のイメージを変えるための第一歩だと思っています。皆さんは学校で環境問題について学ぶ機会も多いと思いますが、「こんなロボットもあるんだ」「こんなロボットの使い道もあるんだ」と知っていてください。


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