第84期環境工学部門長

川本克也(独)国立環境研究所

環境工学部門2006年度の活動の抱負

 新たな年度における環境工学部門の部門長を務めます。廃棄物処理技術、資源化技術などを主な取り組み事項とする第2技術委員会所属です。どうぞ、よろしくお願い申し上げます。

 さて、活動の抱負を述べる前に、改めて環境工学部門の特徴と位置づけについて概観してみたいと思います。どの学問分野もその発達とともに細分化が進み、質的に近く狭い領域に分化していくのが通例と思います。一般に環境という分野は、学際的で多様であるという言い方がなされます。ただ、環境が他と異なると思われるのは、既成の学問は概してもともと中心となる分野の分化であるのに対し、環境は個々別々の分野の集合であることでしょう。そもそも環境工学という体系はなかったとも言えます。すでに確立された分野がカバーする範囲から切り出されるような形で、たとえば、土木工学であれば上・下水道および水・廃棄物処理、機械工学であれば熱工学の応用とエネルギー、機械音響、化学工学であれば各種の単位操作、建築であれば空調や給排水などを主とする建築に付随した環境設備あるいは空間のデザインなどなど、きわめて幅広く、また、まとまりのつけにくい学問分野ということもできます。

 環境工学部門が現在4つの分野(第1技術委員会:騒音・振動評価・改善技術分野、第2:資源環境・廃棄物処理技術分野、第3:大気・水環境保全技術分野、第4:環境保全型エネルギー技術分野)から構成されているのも上記のような状況の結果ですが、私は、いずれは環境工学という学問分野が明快に定義されることを期待しつつ、まだしばらくは「近くはあるが遠くもある」異分野共存の形態をとるであろうことと思います。なお、現在、部門内で将来構想検討委員会が活動をしており、何らかの方向性が出されることと期待されます。ここ数年、環境工学総合シンポジウムの開催についての新しい展開(開催日程3日から2日へ、開催場所の変更、地方での開催)などにみられるように、先達の方々による変革への舵取りが徐々に新しいものを植えつけ始めています。

 この認識のもとで、2006年度の環境工学部門は何をめざすか、ですが、全体的な活動を通じた最大の目標は、「環境」のための「工学」を担うものとしてこの分野における求心力を増すことにおきたいと考えています。母体としての学会会員増強は、いずれの学会でも重要視され取り組みが行われています。それに加えて、関連するいくつもの学会に分散している人と研究活動の流れを呼び込むことが必要ではないかと思うのです。よく言われる異なる組織同士のコラボレーションも、具体化の一つかもしれません。ただ、単に連携的に行事を行うだけでなく、環境技術ならばあるいは環境工学と分類できる内容ならば環境工学総合シンポジウムに成果を発表し、また、情報を得るために出かけようと思わせるだけの力(いまふうの名づけ方をすれば「学会力」とでも呼ぶのでしょうか。)をつけることが非常に重要だと思います。それが、シンポジウムという点としての催しだけでなく、線としての環境工学部門活動への参画に結びつくようにしたいと思います。

 上記のような目標へすぐに到達できる妙案はありません。しかし、環境工学総合シンポジウムを手始めに、外部への情報発信と連携、新たな調査研究の企画と実施などを通じて「力」をつけていきたいと考えます。折りしも、2006年度には学会全体の流れに沿って、電子媒体による部門としての英文ジャーナルを発刊していく予定です。このような新機軸が徐々に実を結ぶことを願ってやみません。会員諸氏をはじめ環境工学に何らかの関心をお持ちの方々の積極的な係わりとお力添えをお願い申し上げまして、新たな年度における私の部門活動の抱負といたします。

第16回環境工学総合シンポジウム2006の概要は、以下の通りです。

上記を含めて、部門活動の詳細については、ホームページ(http://www.jsme.or.jp/env/)に随時掲載します。

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