
第104期環境工学部門の部門長を仰せつかっております、工学院大学 小林潤と申します。2016年度より第2技術委員会にお誘いいただき早10年が経ちます。今回、大役を任され身の引き締まる思いです。
私は化学工学系学科の出身で、熱駆動型吸着ヒートポンプ用吸着材に関する研究を皮切りに、未利用熱エネルギー利活用や機能性エネルギー材料の開発などを手がけておりましたが、院生時代の同期である岐阜大学 小林信介先生と同じ研究室に所属していた際バイオマスの熱分解ガス化に関する研究に携わって以降、国立環境研究所にて廃棄物の熱分解ガス化・改質による水素製造、工学院大学にて引き続き熱分解ガス化に関する研究を進めつつ、ガス化ガスの利用を目的としたデュアルフューエルエンジンによる発電特性評価や電磁波を利用した加熱技術による混合廃棄物からの金属等有価物の分離回収技術の開発などエネルギーや資源循環をテーマとする研究課題に取り組んで来ました。技術委員会のカテゴリーに当てはめますと、第2および第4技術委員会の内容を網羅することになりますが、これまでの経験を生かし、環境工学部門全体の発展に寄与すべく尽力いたしますので、部門会員の皆様方のますますのご配慮・ご協力を賜りますようよろしくお願い申し上げます。
「環境問題」が定義付けられる領域は、地球規模の大気圏・地圏・水圏,大陸や国家という範囲から屋内や車内など極めて限られた空間に至るまで様々であり,影響を及ぼす時間スケールも即時的なものから漸次的なものまで幅広く存在しています。それ故に、それらの問題を解決するための学理も多岐に渡ります。地球温暖化問題の解決を目指すのであれば、温室効果ガスの大気中への排出量を限りなく0にする必要があります。そのためのエネルギー供給システムの構築のためには、再生可能エネルギーの更なる開発のみならず、既存の化石燃料を利用した熱機関の高効率化とCCSを組み合わせたゼロエミッションエネルギー利用システム等が提案されると考えられます。また、エネルギー利用システムについて考慮する場合、冷凍・空調機器の成績係数の向上、熱駆動型ヒートポンプの開発など、省エネルギーやコジェネレーションによるエネルギー総合効率の向上も重要な対策と考えます。さらに、セメント産業や製鉄業など製造プロセスから直接排出される温室効果ガスへの対応も同様の手法が適用されると考えます。一方、一旦排出されてしまった温室効果ガスの大気中の濃度を低減もしくは一定に維持することで解決を図るのであれば、生物学的には植物の光合成をより効果的に活用することが肝要となりますし、工学的には大気中の温室効果ガスを直接分離回収する手法(DACなど)等が対策として挙げられます。ここで述べさせていただいた個々の対策については技術的な課題はほとんど解決されているものの、主に経済的な理由により普及が進んでいないケースが少なくないように思われます。我々は工学的に問題点を解決に導くことを生業としているので、如何に優れた技術であったとしても経済性を無視して開発を進めることを是とすることは出来ないと考えます。第2技術委員会の分野で言いますと、廃棄物焼却発電では熱腐食のためボイラーの温度や圧力を上げることが難しく、結果として20%程度の発電効率にとどまっていますが、例えばボイラーの配管に高価な合金を使用する、あるいは交換・修復を頻繁に行うことで蒸気温度や圧力を上げることは容易なはずであり、廃棄物焼却発電でも40%近い発電効率を達成することは技術的に不可能では無いと考えられます。ただし、その代償として膨大なコストがかかり、そのコストは結局消費者が支払うことになります。
環境問題に対する工学的な取り組みとは、「優れた性能をより安価に達成する技術の開発」ということになるのでしょうか?環境問題を抜きにしても、効率の向上と経済性は相互に切り離すことが出来ない事柄であり、「低燃費車を安く提供する」ことを至上命題として開発を進めてきた自動車メーカーの努力が、この世界に革新的な成果をもたらしたことは周知の事実です。一方で、新たな知見・新たな原理がこれまでになく効率的で安価な技術となり得る可能性もあり(例えば青色発光ダイオードの発明に基づく省エネ照明の普及など)、環境工学は全く新しい理念に基づく専門的な技術開発と、これまでの知見を総合的にまとめ最適化を図る技術統合の双方を軸足として、その展開を進める必要があると当方は考えます。
環境工学部門は、4つの技術分野に分かれてそれぞれ活動を進めており、各分野において専門性の高い議論が行われているものと思われます。その一方で、4つの技術分野が相互に協力して環境問題にアプローチする取り組みも必要であると考えます。先にも触れました廃棄物焼却発電を例とするならば、焼却発電プラントや収集車による振動・騒音の軽減、施設内の臭気除去・排ガスの浄化やプラント内廃水の再利用、発電効率の向上および排ガス顕熱やボイラー排熱の有効活用など各分野がそれぞれの専門性を発現しつつ、これらの技術を相乗的に総括することで、より優れた環境低負荷型廃棄物焼却発電システムの確立を図ることも可能であると考えます。
昨今、日本機械学会内の部門間での交流や連携について、様々な取り組みが行われており学会としてもそのような活動を推進していますが、環境工学部門そのものが日本機械学会の様々な技術分野の横断的交流・連携を推進する場として機能することが可能であると当方は考えております。是非とも各技術委員会の相互交流を深め、環境工学部門での活動が環境問題解決に向け貢献出来るよう努めて参りたいと思います。
○第36回環境工学総合シンポジウム
表記シンポジウムは7月29〜31日に工学院大学 新宿キャンパスにて実施されます。同キャンパスは新宿駅から徒歩5分程度の距離に位置しており、地下道を通じて直接キャンパスにアクセスできます。また、新宿中央公園、新宿御苑、明治神宮、代々木公園、神宮外苑(国立競技場・神宮球場)など、意外にも緑あふれる公園が隣接しており、豊かな自然と高層ビル群が共存する地域となっています。
具体的なタイムテーブルは未定ですが、現在検討しているスケジュールでは、29日に見学会を実施、30および31日に研究発表会を実施する予定です。また、30日には特別講演および懇親会を企画予定です。真夏の暑い時期ではありますが、多くの方にご参加いただき活発な議論や相互交流の場を提供出来るよう尽力いたします。
○技術委員会・研究会での活動
・第1〜4技術委員会
例年と同様に、各技術委員会において講習会,見学会,親子向けイベント等様々なイベントの企画を予定しており、各々のイベントの運営や広報活動の支援などを推進したいと思います。また、それぞれの技術委員会の交流を図るべく、部門内横断型イベントなどについても検討したいと思います。
・部門所属研究会
前年度に引き続き、NEE研究会,音・振動快適化技術と新しい評価法研究会,サーモインフォマティクス研究会の活動に貢献します。
○会員数の増強
部門所属会員数が近年減少する傾向にあります。会員数の増強を図るべく、環境工学部門の魅力をアピールするための広報活動やイベントの開催などを積極的に行いたいと思います。特に本部門は企業に所属されている会員の方が多く在籍しておりますので、学術的なイベントのみならず、社会的・経済的・行政的側面など多方面にわたり興味を引くような講演会や意見交換が行える機会などを積極的に設け、当該部門での活動が様々なシーンで有効に活用出来るよう魅力的なイベントなどの企画・運営にも尽力したいと思います。
もちろん、現会員の皆様にとっても引き続き魅力ある部門であり続けるために、当該部門に参加することで得られるメリットを更に拡大出来るよう努力いたします。
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| 写真1 工学院大学 新宿キャンパス(中央) | 写真2 新宿キャンパス 1階アトリウム |