第88期環境工学部門長

小野田 弘士( 早稲田大学)

2010 年度の環境工学部門活動への抱負

  私は、第68期部門長を務めた永田勝也・早稲田大学理工学術院教授のもと、廃棄物・リサイクル、温暖化対策技術等に関する研究に従事しています。その縁で、本部門の運営に携わることとなりました。

 現在も永田教授とともに「新しい機械工学のあり方を社会に提言したい。」という思いで研究活動を展開しています。従来は「供給・提供・作る側」の論理で技術・システム・製品等の開発が行われてきました。我々は、それを環境と資源・エネルギーを基軸に「需要・受容・使う側」からの論理で考え、デザインするというスタンスで研究を行っています。

 私個人としては、各種製品の環境配慮設計(DfE, Design for Environment)の定量評価手法の開発およびライフサイクルマネジメントシステムの設計を原点に、一般廃棄物処理システムや広域的な資源循環システム、民生・業務施設のエネルギーマネジメント、省エネルギー・創エネルギー技術、次世代モビリティシステム等をキーワードとした分野を専門としています。とりわけ、研究の成果を社会に還元することを目的とした活動も自ら実践しており、ベンチャービジネスやNPO法人の設立・運営等にも携わっています。

 こうしたなかで、市民や企業担当者等の環境問題への関心が日に日に高まっていることを肌で感じています。とくに、地球温暖化、つまり、CO2の問題がそれに拍車をかけているのは間違いないところでしょう。現実問題として、温暖化への対応が企業経営等にも影響を与える時代になりつつあることも周知のとおりです。しかしながら、その一方で、「地球温暖化=環境問題」というような偏った論調やCO2削減効果等の数値が十分な理解や説明が得られないまま独り歩きをして、企業の広告・宣伝等に使用されている場面も見受けられ、懐疑的な消費者の意見も私のところに届くことも多くなってきているのも事実です。私自身は、環境問題(例えば、温暖化との関連でいえば、環境税や排出量取引等が挙げられます)の是非を問うだけでなく、その客観的で冷静な視点を育てることが重要であると考えています。そのために、「学会」の果たす役割は極めて大きい、あるいは、より大きくしていかなければならないと痛切に感じています。

 本部門は、社会インフラを支える「騒音・振動評価・改善技術分野」、「資源環境・廃棄物処理技術分野」、「大気・水環境保全技術分野」、「環境保全型エネルギー技術分野」の4つの分野から成り立っています。低炭素社会、循環型社会への変革が求められるなかで、極めて重要な役割を担う分野であることは言うまでもありません。本部門では、「先進サステナブル都市」をキーワードに分野横断的な活動を行っています。サステナブルな技術・社会システムとは、環境負荷の低減(環境利得)と経済性(効用)が両立するものであると考えています。どんなにすばらしい技術・システムが存在するだけでは「サステナブル」は実現できません。ライフスタイルや社会システムの変革も視野に入れたアプローチが必要となります。工学的、技術的な視点をベースにしながら、より幅広い視野を持ち、先進サステナブル都市のデザインの具現化が進展できればと考えています。
2010年度は、例年どおり環境工学総合シンポジウムを6月末に横浜にて開催します。「再生可能エネルギー2010国際会議」が同時期に併催されることもあり、相乗効果をねらっていきたいと考えています。

 また、昨年度、第87期佐藤部門長の尽力により、先進サステナブル都市(ASC, Advanced Sustainable Cities)をキーワードに環境工学国際ワークショップInternational Workshop on Environment & Engineering 2009 (IWEE2009) が開催されました。我が国の環境工学に関連したアジア等の発展途上国への技術移転が社会的な要請となっているなかで、こうした国際的な活動にも本部門として注力していく必要があると考えています。

 さらに、部門としての情報発信を積極的に行っていくことの重要性を鑑みて、WEBサイト( http://www.env-jsme.com/ )の改良も行っていきたいと思っています。
本部門の活性化、発展に微力ながら貢献できるよう努力してきたいと思っています。皆様のご協力を心よりお願い申し上げます。
 

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