Home > ニュースレター バックナンバー > 32号 目次> 米国カリフォルニア大学バークレー校留学滞在記

米国カリフォルニア大学バークレー校留学滞在記

富士通研究所 窪寺裕之

 2005年9月から2006年8月までの1年間,米国University of California, Berkeley校の機械工学科, Computer Mechanics LaboratoryのDavid B. Bogy教授の研究室に客員研究員として滞在した.Berkeley校の機械工学科は比較的こじんまりした規模であるものの研究レベルは高く,全米でも最上位にランクされるほどである.キャンパスはカリフォルニア州北部のサンフランシスコ近郊にあり,サンフランシスコから湾を渡って車で20分ほどのBerkeley市に位置する.年間を通して気温の変化が少なく温暖な気候で,湿度も低く,春から秋に掛けては雨が降らず過ごしやすい.日本と比べ,海流の影響でこれほど気候が違うのかと驚きであった.近郊には広大な州立公園が多数あり,豊かな自然に触れ合うことができる.現地の人々は,社交的,陽気,おおらかであり,バスの中やお店のレジで待っている間などでも,フレンドリーに話しかけてくるのがとても印象的だ.また,Berkeleyは各国から多くの研究者が来訪するため外国人に対して寛容,親切な土地柄であり,初めて海外に赴任する私にとって非常に心強かった.また,多くの人々が家族と過ごす時間を大切にし,平日であっても家族とともに夕食を取り,木々の豊かな美しい公園で子供達と遊んでいる光景をよく目にした.アメリカの豊かさの一端を垣間見た気がした.

 話しを研究に移す.滞在した研究室はハードディスクのスライダの浮上解析ソフトウェアとして業界のデファクトスタンダードを開発していることで有名な研究室である.主に,ハードディスクのヘッド・ディスク・インターフェースに関する研究を行っており,10名ほどの博士課程の学生らで構成されている.指導教官のBogy先生はほぼ毎日研究室を数回訪れて気さくにかつきめ細かな指導が行なわれているが,先生が学生室に入って来た際の学生達の緊張した空気は想像していた以上のものがあった.米国の博士課程の学生の緊張感とはこういうものかと実感する瞬間であった.また,研究進捗報告会が週1回開かれ,博士課程の学生に混じって私も毎回参加し,進捗報告を行った.1週間でまとまった成果を出すこと,英語でのプレゼンであったこととでかなり苦労したのを記憶している.学生達の集中力には感心させられるものがあり,よく1週間でこれだけの成果を出せるものだと非常に良い刺激を受けた.彼らのような優秀な学生とともに緊張感を持って1年を過ごせたことは私にとって大きなプラスであった.

  私の研究テーマはディスク上に塗布された潤滑剤の流動挙動解析に関するものであり,スライダが浮上することにより潤滑剤がどのように振舞うのかを数値計算により解析するのが目的である.このため,解析のための流体解析ソフトウェアをゼロから自分で開発する必要があり,それまでの業務とは大きく違ったため大変苦労した.帰宅後朝方まで研究することも度々であったが,最終的に3件の学会発表,4件の論文としてまとめることができた.

  今振り返ると長かったようであっという間の1年間であったが,多くの人々と出会い,様々な文化に触れ,仕事としてだけでなく人生としても多くのものを得ることができたと思っている.(2006.11.21)

大学のシンボルSather towerと図書館.蔵書数は日本の国会図書館を上回るほど.
図書館前には芝生の広場が広がり,勉強したり歓談したりと学生達が思い思いの時間を過ごす.

 

機械工学科があるEtcheverry Hall.6階建てのビル.比較的こじんまりした規模の印象.

 

イタリア人,ノルウェー人,スペイン人家族とともに.Berkeleyには各国から研究者が訪れる.
様々な国,様々な研究分野の人々との交流は貴重な経験であった.写真左が筆者と妻子.

Last Modified at 2007/1/20