Home > ニュースレター バックナンバー > ニュースレター36号 > 【研究室紹介】 技術研究組合 BEANS研究所

【研究室紹介】 技術研究組合 BEANS研究所

BEANS研究所 副所長
安達 淳治

1.はじめに

 技術研究組合BEANS研究所は、平成21年4月NEDO技術開発機構が推進する「異分野融合型次世代デバイス製造技術開発プロジェクト(BEANSプロジェクト)」1)を受託し研究開発を進める機関として設立された。

  本プロジェクトにおいては、MEMS技術とナノテクノロジー、バイオテクノロジー等の異分野技術を融合させ、未来社会の「環境・エネルギー」、「医療・福祉」、「安全・安心」分野で新しいライフスタイルを提供する革新的次世代デバイス群 BEANS(Bio Electro-mechanical Autonomous Nano System)を創出するための基盤プロセスを構築することを目的としている。具体的には、以下の4つの研究開発項目について、各項目間の連携にも配慮しながら研究開発を実施する。

@ バイオ・有機材料融合プロセス技術の開発
A 3次元ナノ構造形成プロセス技術の開発
B マイクロ・ナノ構造大面積・連続製造プロセス技術の開発
C 異分野融合型次世代デバイス製造技術知識データベースの整備

2.各BEANSセンターの概要

  BEANSプロジェクトの研究開発を推進するための組織として後述する5つのBEANSセンターと本部が設置されており、プロジェクトリーダー遊佐厚氏のもと約100名の研究員、アフィリエートが16企業、9大学、2研究所、4団体から参画し研究開発を進めている2) 。

☆ Life BEANSセンター (東京大学生産技術研究所内)
  バイオ融合プロセス技術の開発を担当。竹内昌治センター長を中心に、バイオ機能材料をマイクロ技術に融合させるプロセス開発に取り組み、将来的には1分子レベルの物質センシング、体内埋込デバイス、創薬デバイス等への展開を狙う。

☆ Life BEANSセンター九州 (九州大学未来化学創造センター内)
  有機材料融合プロセス技術の開発を担当。安達千波矢センター長を中心に、有機半導体のナノ構造を制御することで、エネルギー変換効率を飛躍的に引き上げ、将来のエネルギーハーベスティングデバイスへの応用を狙う。

☆ 3D BEANSセンター (東京大学生産技術研究所内)
  超低損傷・高密度3次元ナノ構造形成技術、及び異種機能集積3次元ナノ構造形成技術を担当。杉山正和センター長のもと原子層レベルで低損傷な3次元ナノ構造の形成と、その構造へ無機/有機のナノ機能材料を修飾させた、超高感度センシング、超高密度記録デバイスの創製を狙う。

☆ 3D BEANSセンター滋賀 (立命館大学内)
  宇宙適用3次元ナノ構造形成技術を担当。木股雅章センター長のもと宇宙応用を念頭に置いたマイクロ・ナノ複合構造を形成し、遠隔地センシング、ネットワークの構築を狙う。

☆ Macro BEANSセンター (産総研つくばセンター東事業所内)
  マイクロ・ナノ大面積・連続製造プロセス技術の開発を担当。伊藤寿浩センター長を中心に、非真空高品位薄膜形成技術、及び繊維状基材へのマイクロ・ナノ構造連続形成技術を開発し、低コスト、大面積、フレキシブルデバイスへの応用を狙う。

☆ BEANS研究所本部
  本部は東京都千代田区の秋葉原駅近くにあり、遊佐プロジェクトリーダー他研究支援スタッフによるプロジェクトの円滑かつ効率的な推進を図る。また、本部では同時に異分野融合型次世代デバイス製造技術に関する知識DBの整備を担当しており、プロジェクトの成果を広く活用できるDBシステムの構築を進めている。

3.プロジェクトマネジメント体制

  BEANSプロジェクトが目的とする融合プロセスの構築のためには、これらの5つのBEANSセンター相互及び本部との間で密接な連携が必要不可欠である。そのため、BEANS本部に産業界からの人員を交えたマネジメントチームを構成し、各センター長と連携しながらの研究開発を推進している。

  また、プロジェクトの成果を具体化する上で、戦略的な知財出願も重要となる。BEANSプロジェクトは、特許庁の知財プロデューサー制度3)の第1号に採択されており、特許マップ等の分析やライセンシング体制も含め、戦略的な特許出願を推進している。

4.おわりに

  BEANSプロジェクトが狙うMEMS技術とナノ&バイオとの異分野技術融合研究については、現在、欧州ではEUの第7次研究枠組み計画(FP7)の一部として国家プロジェクトレベルでの研究が推進されており4) 、また米国でもDARPAが推進するMicrosystems Technology Officeとして研究が進められているなど5)、欧米でも注目されている分野である。

  我々は今後も、こうした諸外国の研究組織との国際的協働を進め、異分野融合のプロセス開発による革新的デバイスを創製し、新しいライフスタイルの提案を目指す。

参考文献

1) NEDOホームページ「事業・プロジェクト紹介」: http://www.nedo.go.jp/activities/portal/p09008.html
2) BEANSプロジェクトホームページ: http://www.beanspj.org/
3) 「知財プロデューサー」派遣に向けてスキーム確立や支援体制の整備を検討中:
   Fuji Sankei Business i 知財情報&戦略システムNo.12, pp21-23, 2008
4) Seventh Framework Programme (FP7): http://cordis.europa.eu/fp7/
5) DARPA、Microsystems Technology Office: http://www.darpa.mil/MTO/

Last Modified at 2009/11/5