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神戸大学大学院工学研究科 機械工学専攻 設計生産講座 機械ダイナミックス分野 神野研究室

1.研究室の概要

 当研究室は2011年10月に新しい体制で活動を始めました.振動工学をベースとして,設計・生産加工,また材料工学を要素技術として新しい技術分野を開拓することを目的に研究を進めています(図1).特に,圧電薄膜材料に関する研究は,材料開発からデバイス設計,試作,評価に至る一連のプロセスを研究対象としており,応用デバイスの機能・加工・設計の各段階の視点から圧電薄膜の開発に取り組んでいます.研究のための研究に終わるのではなく,産学連携を視野に入れた「実用を見据えた基礎研究」をテーマに活動しています.

[研究室HP   http://www.research.kobe-u.ac.jp/eng-dynamics/index.html]

research direction
図1: 研究方針

 

2.主な研究テーマ

 圧電薄膜材料の開発とそのMEMS応用に関する大きく2つのテーマを重点的に研究を推進しています.

 

3.新規圧電薄膜の開発

 圧電材料として広く実用化されているPb(Zr,Ti)O3 (PZT)セラミックス材料をスパッタ法で薄膜化し,その圧電特性を評価しています.特に,多元スパッタ法を用いたコンビナトリアル成膜によりPZT系圧電薄膜を作製し,結晶構造および組成と圧電性の関係を解明することで,圧電特性向上に向けた取り組みを進めています(図2). この他,同様の手法を用いて(K,Na)NbO3やBaTiO3系非鉛圧電薄膜の開発をはじめとする,新しい機能性薄膜材料の創製に関する研究を行っています.

PZT combinatorial
図2:コンビナトリアルスパッタ法によるPZT傾斜組成薄膜の作製

 

4.積層誘電体薄膜

 積層セラミックス(MLC)は,積層セラミックスコンデンサ(MLCC)や積層セラミックスアクチュエータ(MLCA)として広く実用化されています.MLCの特性向上には誘電体層の薄層化が必要ですが,我々はスパッタ法を用いた新しいMLC作製方法を提案しています.スパッタ法は,サブミクロン厚の高品質誘電体薄膜を量産レベルで形成可能です.我々は成膜中に交互に絶縁された内部電極を作製する技術を開発し,サブミクロン厚の誘電体積層薄膜をSi基板上に成膜する事に成功しました(図3).現在BaTiO3およびPZT系積層薄膜の作製を行い,そのデバイス応用に向けた取り組みを進めています.

MLC
図3:PLT/Pt積層薄膜の断面SEM写真

 

5.圧電MEMSアクチュエータ・センサ

 圧電材料は高い電気機械変換効率を有しており,高感度マイクロセンサ,また低電圧駆動マイクロアクチュエータとして広く応用されています.我々はスパッタ法を用いてSi基板の他に金属基板上に圧電薄膜を形成した新しい圧電MEMSを提案しています.金属の持つ高い材料強度に加え,あらかじめ微細加工した基板上に直接圧電薄膜を成膜することで,デバイスプロセスの大幅な簡略化が可能となります.これまで,Ti基板上に形成したPZT薄膜によるMEMSスキャナーミラー(図4),また新しい材料構成のジャイロセンサの研究を進めており,Si-MEMSの限界を超えた新しい圧電MEMSの応用展開に関する研究を進めています.

scanner mirror
図4:Ti基板上PZT薄膜によるMEMSスキャナーミラー

 

6.圧電MEMSエナジーハーベスト

 バッテリフリーセンサノードの実現に向けてMEMS振動発電の研究が注目を集めています.我々は高効率かつ実用的な圧電MEMSエナジーハーベストを目的として,エピタキシャルPZT薄膜,また金属基板上に成膜した圧電薄膜成膜による振動発電素子を試作し,基本的な発電特性を評価しています(図5).機能性材料の有する特長を引き出すことにより,汎用的な高効率マイクロ発電デバイスの基礎技術の確立に取り組んでいます.

 
図5:ステンレス基板上圧電薄膜を用いたMEMSエナジーハーベスト

Last Modified at 2012/12/19