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2020年度部門表彰者の声:ベストプレゼンテーション表彰

中道 友
山陽小野田市立山口東京理科大学
(前所属 理化学研究所 脳神経科学研究センター)

この度は,2020年度年次大会において発表しました「機能的OCT Angiographyによる血管網と脳神経活動の同時計測法の開発」に対して,情報・知能・精密機器部門ベストプレゼンテーション表彰をいただき大変光栄に存じます.共同研究者である谷藤学先生,Kai-Shih Chiu氏をはじめ,ご協力をいただきました皆様に深く感謝申し上げます.

 本発表の内容は,生体組織の3次元構造をマイクロスケールで計測する光干渉断層法(OCT)という技術を利用した,脳の血管網分布と神経活動部位の同時計測手法(機能的OCT Angiography)の開発に関するものです.脳や網膜の機能診断において血管網分布と神経活動部位の検出は極めて重要ですが,これらを同時に計測する手法は確立されていませんでした. 

 本研究では,げっ歯類の体性感覚野にあるバレル皮質を利用し,提案手法の妥当性を検証しました.バレル皮質はげっ歯類のヒゲに与えられた感覚情報を処理する脳領域で,各ヒゲの感覚情報を処理する「バレル」という小領域が規則的に配置されています(図1).実験では,2本のヒゲ(B2,C2)を物理的に刺激しながらバレル皮質に提案手法を適用し,血管網分布と神経活動部位を同時計測しました.その結果,バレル皮質の血管網分布と,刺激した各ヒゲに対するバレルの神経活動を3次元検出することができ(図2),提案手法が脳や網膜の機能診断に対して有用であることを示しました.

 今後も,人や社会の役に立つ技術の開発を目指し,より一層研究活動に精進する所存です.最後になりましたが,日本機械学会 情報・知能・精密機器部門の益々の発展を祈念し,受賞の挨拶とさせていただきます.


図1 (左) ヒゲとバレル皮質の位置関係.(中) ヒゲの配置と番号.
(右) 各ヒゲに対するバレルの配置.

Last Modified at 2021/8/31