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2021年度部門表彰者の声:ベストプレゼンテーション表彰

九州工業大学
小村 啓

 この度は,IIP2021部門講演会において発表しました「心地よさを生起する Hapticデバイス開発に向けた触覚の Gestaltの定式化」に対し,情報・知能・精密機器部門ベストプレゼンテーション賞を頂き大変光栄に存じます.

 本研究は,視覚・聴覚研究で考えられたGestaltグルーピングという統合の仕組みを,触覚にも当てはめ定式化を行うことを目的とした研究です.Gestaltとは「部分では説明できない複合的なまとまり」とされ,視覚認識で考えられた概念です.視覚のGestaltにおいてパーツのまとまりがデザイン,聴覚のGestaltにおいて音の繋がりがメロディとして認識されることが知られておりますが,一方で触覚のGestaltに生起する感覚は未解明な部分が多く研究課題となっています(図1).そこで私たちは,触覚のGestaltと関連すると考えられる触錯覚現象であるベルベットハンドイリュージョンに着目し,錯覚生起に必要な刺激の物理量と,錯覚で生起する心理量の関係から定式化を試みました.定式化に際して,Gestaltの法則であるプレグナンツの法則を触覚に合わせて拡張し,新たに“伸縮の要因”と“平行移動の要因”(図2)を導入することで実験結果とおおむね一致するモデルを作成することができました.この研究成果は,触覚への刺激がどのように統合され物体面の触り心地になるのかを定式化したものであるため,将来的にはヒトに触り心地を与える触覚ディスプレイ開発で用いられることが期待されます.

 最後になりますが,日本機械学会情報・知能・精密機器部門のこれから益々のご発展を祈念し,御礼の挨拶とさせていただきます.


図1 視覚・聴覚・触覚のGestaltの特徴


図2 平行移動の要因と伸縮の要因

平行移動の要因とは同方向に平行移動している要素をまとまりとして認識しやすい人の性質を法則化したものである.伸縮の要因とは伸縮する要素をまとまりと認識しやすい人の性質を法則化したのものである.

Last Modified at 2022/6/8