2018年度活動報告
1. 技術ロードマップ委員会ワークショップ
日本機械学会技術ロードマップ委員会では、2017年度より年1回のペースで合宿形式のワークショップを開催し、2050年の社会像とそれを支えるものづくりに関するロードマップの作成を進めています[1]。実践とともに、バックキャスティング(backcasting)の考え方を用いたロードマップの作成方法も開発しています[2][3]。2017年度ワークショップでは、図1に示すように2050年のものづくりに向けた2つの将来ビジョン(A: 健康いきいき幸せ社会、B: Connected Planets)を作成しました[4]。
図1: 2017年度ワークショップの成果[4]
2018年度ワークショップは、2018年12月21日(金)~22日(土)の2日間の日程で、東芝研修センター(神奈川県横浜市)にて開催しました。本ワークショップは、図1の将来ビジョンと現在をつなぐロードマップの作成を目的としました。ワークショップには、佐々木直哉・日本機械学会会長(当時)をはじめとして15名の専門家が参加し、活発な議論を行いました(図2)。
図2: 2018年度ワークショップのもよう
また、外部講師として安永裕幸氏(UNIDO 東京投資・技術移転促進事務所長)と山崎美稀氏(日立製作所)の2名を招き、以下の話題提供をいただきました。
- 話題提供(1)「技術ロードマップの今日的課題と実践のための試論」(安永裕幸氏・UNIDO 東京投資・技術移転促進事務所長、北陸先端科学技術大学院大学客員教授、研究・イノベーション学会副会長)
- 話題提供(2)「企業からの機械学会ロードマップへの期待と要望」(山崎美稀氏・日立製作所)
現在、ワークショップで得られた成果をとりまとめ、分析を進めている段階です。これまでのところ、ワークショップについては参加者からおおむね高い満足度をいただいており、2050年のものづくりに向けたブレーンストーミングの場としてそれなりに役立っているようです。その一方で、ロードマップのコンテンツはいまだ発展途上であり、具体的な技術課題の抽出に向けてさらなる詳細化・高度化が必要です。引き続き、技術ロードマップ委員会委員の皆様、日本機械学会員の皆様のご協力をよろしくお願いいたします。
【参考文献】
[1] 大富浩一, 「2050年ロードマップ作成活動」, 日本機械学会2018年度年次大会, W252001, 大阪, 2018年9月11日.
[2] Phaal, R., Farrukh, C.J.P., Probert, D.R., “Technology Roadmapping: A Planning Framework for Evolution and Revolution”, Technological Forecasting and Social Change, Vol. 71, No. 1-2 (2004), pp. 5-26.
[3] 木下裕介, 「2050年のものづくりに向けたロードマップ作成手法」, 日本機械学会2018年度年次大会, W252004, 大阪, 2018年9月11日.
[4] Yusuke Kishita, Robert Phaal, Yuki Okada, Yutaka Nomaguchi, Tomoaki Yano, Koichi Otomi, “Integrating Backcasting into the Roadmap Design Process for Future Manufacturing: A Japanese Case Study,” Scenario Planning and Foresight 2018, Stream C, Session 3, December 10-11, 2018, Coventry, UK, (2018).
2. ロードマップセミナー「JSME Seminar on Technology Roadmapping for Sustainability」
2019年3月22日(金)に、日本機械学会技術ロードマップ委員会主催のセミナー「JSME Seminar on Technology Roadmapping for Sustainability」を日本機械学会にて開催しました。本セミナーでは日本と英国の研究者を交えながら、技術ロードマップに対する最新動向について理論と実践の両面から情報交換を行いました(図1)。当日のプログラムを表1に示します。
図1: セミナー参加者の集合写真
セミナー当日の概要は次のとおりです。大富浩一・技術ロードマップ委員会委員長の開会挨拶に続き、基調講演としてケンブリッジ大学のRobert Phaal氏より、豊富な事例を交えながらロードマップ法(roadmapping)が持つ特徴・意義と手法開発の現状についてお話しいただきました。その後、国連の提唱する持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals; SDGs)に向けたロードマップの活用という観点から2件の特別講演を頂戴しました。1件目は、NEDOの渡邉政嘉氏と仲上祐斗氏よりNEDOにおける技術ロードマップの位置づけと、SDGsを対象としたロードマップに対するNEDOの取り組みを紹介いただきました。2件目は、JSTの中村道治氏よりSDGs達成のための科学技術イノベーション(STI for SDGs)の概要について紹介いただきました。ケンブリッジ大学の廣瀬雄大氏からは、過去のロードマップの事例分析に基づいて、テクノロジーベンチャーの発生パターンを明らかにしたという研究成果が報告されました。産総研の関根重幸氏からは、日本の産業界における技術ロードマップの実践事例をもとに、ロードマップ作成・運用における留意点についてのいくつかの指摘がなされました。
最後に、参加者全員で今後の技術ロードマップ活動の発展に向けた課題を議論しました。今後の方向性として、日本の未来社会ビジョンであるSociety 5.0のもとでものづくりのロードマップを描くこと、ロードマップ作成においては国内の産官学連携を推進すること、諸外国で作成されているものづくり系のロードマップも参考とすべき余地があること、などの重要性を参加者間で共有することができました。
表1: セミナーのプログラム
14:00-14:15 | Introduction – Purpose & Scope of the Seminar
Dr. Koichi Ohtomi, Chair of JSME Technology Roadmap Committee |
14:15-15:00 | Keynote Lecture: Theory and Practice on Technology Roadmapping in Cambridge
Dr. Robert Phaal, Principal Research Associate, University of Cambridge |
15:00-15:30 | Special Lecture (1): Technology Roadmaps as Facilitating Vehicle to Plan and Management of Governmental R&D Projects and to Implementation of the SDGs by NEDO
Dr. Masayoshi Watanabe, Executive Director, NEDO and Dr. Yuto Nakagami, Researcher, NEDO |
15:30-16:00 | Special Lecture (2): Overview of Science & Technology Innovation for SDGs Roadmapping
Dr. Michiharu Nakamura, Counsellor to the President, JST |
16:00-16:15 | Break |
16:15-16:45 | An Application of Roadmapping for Characterising the Emergence of Technology Ventures
Dr. Yuta Hirose, Industrial Associate, University of Cambridge |
16:45-17:15 | Lessons Learnt from Industrial Practice on Technology Roadmapping in Japan
Dr. Shigeyuki Sekine, Principal Manager, AIST |
17:15-17:45 | JSME Roadmapping Workshop for Sustainable Manufacturing Visions
Dr. Yusuke Kishita, Lecturer, the University of Tokyo and Ms. Yuki Okada, Master’s student, the University of Tokyo |
17:45-18:00 | General Discussion – Way Forward
Moderator: Dr. Yusuke Kishita, the University of Tokyo |
お問い合わせ先
木下裕介(東京大学、技術ロードマップ委員会委員)
E-mail: kishita@pe.t.u-tokyo.ac.jp
お知らせ 2019/05/23