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乱流数値解析とのかかわり
小林敏雄
東京大学国際産学共同研究センター生産技術研究所
機械学会100周年の年に計算力学部門功績賞をいただき、光栄に思います。
学生時代から流体力学にコンピュータを利用する環境にありましたので、計算流体力学(CFD)とは比較的長い付き合いになりますが、今回の受賞には巡り合わせというものを強く感じます。本格的にCFD、その中でも特に乱流数値解析に取り組んだのは1980年で、大学院学生とLarge Eddy Simulation(LES)を始めました。そのLESが機械学会の論文として初めて掲載されたのが1984年のことでした。1982年の冬、西ドイツ(当時)のWolfsburgにあるVolkswagen社で自動車の空気力学に関するシンポジウムが開催され、たまたま、Karlsruhe工科大学に滞在していた関係で、W. Rodi教授らと参加し、既にk-εモデルが工業の現場へ応用されつゝあるとの印象を受けたことを覚えています。帰国後、直ちに東大生研にNST(Numerical Simulation for Turbulent Flows)研究グループを建築の村上周三教授、流体物理の吉沢徴教授と結成し、協力、競争して乱流解析に集中して研究をすすめてきました。また、機械学会ではCFDの研究分科会(PSC, RC)が進行しており、これらに参加することによって、保原充教授、大宮司久明教授による文部省科学研究費重点領域『数値流体力学』と『乱流の数理モデル』の参加へと進むことができたと思っております。節目節目で多くの先輩、仲間と後輩に助けられての今回の受賞であり、心から感謝申し上げる。
さて、CFDに携わって15年以上も経ちますと、外からの評価と内からの反省が沸き起こることになります。CFDは実用面で役にたっているか、学術面では何をなしたかという問いに近いうちに答えねばなりません。先日、Stanford大学のP. Moin教授を招き、懇談する機会があり、燃焼を伴う乱流解析の可能性について議論しました。彼は乱流解析における数値流体力学の人気はますます高くなっており、次の10年には、おそらく、研究者はジェットエンジン内の主要な流路の流れをシミュレートし、内燃機関における吸気、燃焼、排気を含む一連のピストンシリンダの運動を現実的にシミュレートするであろうと予想されていました。私はそれほど楽観しておりませんが、流体力学の未開な部分である乱流とその周辺にはコンピュータサイエンスが挑戦するターゲットがまだまだ存在するように思っています。この度の受賞を機会にCFDの将来を様々な面から考えてみたいと思っています。