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機械工学年鑑2022

11. 宇宙工学

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11.1 宇宙輸送

2021年度にはH-IIAロケット2機,イプシロンロケット1機の合計3機のロケットが打ち上げられた.小型衛星の機動的打上げ手段の獲得・提供等を目指す固体燃料ロケットであるイプシロンロケットは内之浦宇宙空間観測所から2021年11月9日に革新的衛星技術実証2号機を搭載した5号機が打ち上げられた.革新的衛星技術実証2号機は小型実証衛星2号機(RAISE-2),4基の超小型衛星(HIBARI,Z-Sat,DRUMS,TeikyoSat-4),4基のキューブサット(ASTERISC,ARICA,Advanced OBC of Nanodragon,KOSEN-1)の合計9基の衛星で構成されており,革新的衛星技術実証1号機に引き続き複数衛星の打ち上げとなった.H-IIAロケットに関しては,2021年10月26日に準天頂衛星初号機後継機を搭載した44号機,12月23日には英国インマルサット社の通信衛星Inmarsat-6 F1を搭載した45号機が打上げられ,連続39機の成功となった.尚,45号機は三菱重工業株式会社が海外顧客から受注した5件目の衛星打上げ輸送サービスであり,着実に実績を伸ばしている.

自立性の確保と国際競争力のあるロケット及び打上げサービスの提供を目的として開発が進められているH3ロケットは,第一段エンジン用として新たに開発中のLE-9エンジンで確認された技術的課題への対応を確実に実施するため,試験機初号機の打上げを2022年度に見直す計画変更がなされたが,試験機打ち上げに向けた準備が着実に進められている.また,2021年度から開始されたイプシロンSロケットについても,開発が着実に進められている.

宇宙輸送システムの将来に向けた研究開発としては,ロケット第1段の再使用化を目指した研究が行われており.その実現に向けて,誘導制御,推進薬マネジメント,エンジン再整備技術に関する知見を蓄積すべく,1段再使用飛行実験(CALLISTO)の開発が,CNES(仏),DLR(独)との国際協力により進められている.また,そのフロントローディング研究活動として,JAXA独自の小型実験機(RV-X)による飛行試験を目指した研究も計画され,2021年9月に機体を用いたエンジン燃焼試験を完了し,飛行試験に向けた準備がなされている.また,我が国の宇宙輸送システムの継続的な自立性を確保した上で,2040 年代前半までに抜本的な低コスト化等を含めた革新的技術により将来宇宙輸送システムを実現するとともに,民間事業者が主体的に事業を展開することで,自立した宇宙開発利用を飛躍的に拡大させ宇宙産業を我が国の経済社会を支える主要産業とすることを目的として,文部科学省において革新的な将来宇宙輸送システム実現に向けたロードマップ(基幹ロケット発展型と民間主導による高頻度往還飛行型宇宙輸送システム)が設定された.その実現に向けスピード感のある研究開発として,宇宙航空研究開発機構(JAXA)において革新的将来宇宙輸送プログラムを開始しており,RV-XとCALLISTOで得られる成果を同プログラムの研究・開発へ反映する計画である.

〔紙田 徹 (国研)宇宙航空研究開発機構〕

11.2 科学・実用衛星

2021年は,大型の実用衛星として準天頂衛星「みちびき初号機後継機」(QZS-1R)が打ち上げられた.また,100kg級の超小型の実用衛星として小型SAR衛星2号機「イザナミ」,光学観測衛星GRUS-1B,GRUS-1C,GRUS-1D,GRUS-1Eが打ち上げられた.

「みちびき初号機後継機」(QZS-1R)は内閣府宇宙開発戦略推進事務局の航法衛星であり,2010年に打ち上げられた「みちびき初号機」の後継となる衛星である.2021年10月26日に種子島宇宙センターからH-IIAロケット44号機で打ち上げられた(1).衛星バスには三菱電機株式会社のDS2000が使用されており,測位信号用のL帯パッチ方式アンテナを搭載している(2).2022年1月以降に試験信号の送信を予定し(3),3月以降の正式運用を予定している.初号機後継機の運用開始に伴い「みちびき初号機」の測位信号の送信は停止され,待機運用に移行される.

「イザナミ」は株式会社QPS研究所の合成開口レーダ(Synthetic Aperture Radar:SAR)地球観測衛星である.2021年1月25日に米国フロリダ州ケープカナベラルのSLC-40から米国Space X社のFalcon 9ロケットにより打ち上げられた(4).衛星には直径3.6mの展開型のメッシュパラボラアンテナを搭載しており,Xバンド(9GHz帯)でのレーダ観測が可能である(5).2021年5月13日には高精細モードでの観測により,100kg級衛星としては日本初となる分解能70cmの画像取得に成功したことが発表された(6)

GRUS-1B,GRUS-1C,GRUS-1D,GRUS-1Eは株式会社アクセルスペースの光学観測衛星である.2021年3月22日にカザフスタン共和国のバイコヌール宇宙基地よりロシアGK Launch Services社のソユーズ2.1aロケットにより打ち上げられた(7).衛星には地上分解能2.5mの光学センサが搭載されている.2018年12月に打上げられたGRUS-1Aと合わせて5機での観測体制となることで,観測頻度は2週間に1度から2~3日に1度へと向上する(8).2021年5月7日には今回打ち上げられた4機のファーストライト画像が公開された.軌道遷移中にGRUS-1DとGRUS-1Bが同一地点を6分差で観測した画像からは駿河湾内を船舶が移動する様子が確認できた(9)

また,実証段階ではあるが,GRUSと同じソユーズロケットで打ち上げられたAstroscale社のデブリ除去衛星ELSA-dはデブリ除去サービスの可能性を拓く重要な第一歩と言えよう(10)

国外の実用衛星としては,2020年に引き続き,超小型衛星のコンステレーション構築に注目したい.数社においては既に運用体制が構築され,通信および地球観測の各種サービス提供が本格的に始まっている.

Space X社のStarlink衛星は2021年中に989機が打ち上げられた.2021年12月末時点で累計約1900機を打上げ,最終的には数万機体制とする計画である(11).個人向けサービスの提供はすでに開始されている.日本においてはKDDI株式会社がバックホール回線用としてStarlinkを使用することを表明している(12).また,英国OneWeb 社のOneWeb衛星は2021年中に284機が打ち上げられた.2021年12月末時点で累計約400機を打上げ,2022年末には第一世代の衛星群となる648機の打上げ完了を目指している(13).ソフトバンク株式会社が日本および世界での衛星通信サービス展開に向けてOneWeb社と協業することに合意した(14)

この他,米国Swarm Technologies社の通信衛星SpaceBEEおよびSpaceBEE NZが76機,米国Planet Labs社の地球観測衛星Flock-4s (Super Dove)が48機,米国Spire Global社の地球観測衛星LENOUR-2が16機,カナダKepler Communications社の通信衛星Keplerが10機,スイスAstrocast社の通信衛星Astrocastが10機,などが打ち上げられた.

2021年の国内科学衛星の打上げは無かった.国外で最も大きなイベントと言えたのは米国NASAの赤外線宇宙望遠鏡JWST(James Webb Space Telescope)の打ち上げであろう.JWSTは2021年12月25日に南米フランス領ギアナのギアナ宇宙センターからAriane5で打ち上げられた.1996年のNGST(Next Generation Space Telescope)の開発開始から約25年,2008年3月のPDR終了から約14年の歳月と,開発費約100億ドルをかけた巨大プロジェクトである(15)(16).2022年3月現在,衛星の状態は健全であり観測に向けた調整作業が続いている.

その他の科学観測衛星としては,2021年10月14日に中国初となる太陽観測衛星「羲和号」(Xiha)が中国山西省太原衛星発射センターから長征2Dで(17),2021年10月16日にNASAの木星トロヤ群小惑星探査衛星Lucyが米国ケープカナベラル空軍基地からULAのAtlas V 401で(18),2021年11月24日にNASA小惑星の軌道変更実験衛星のDART(Double Asteroid Redirection Test)が米国カリフォルニア州のヴァンデンヴァーグ宇宙基地からSpace X社のFalcon 9(19)で,2021年12月9日にNASAとイタリア宇宙機関ASIのX線観測衛星IXPE(Imaging X-ray Polarimetry Explorer)がフロリダ州のケネディ宇宙センターからSpace X社のFalcon 9で(20),それぞれ打ち上げられた.

〔柳瀬 恵一 (国研)宇宙航空研究開発機構〕

参考文献

(1) みちびき初号機後継機の打上げ結果, https://qzss.go.jp/overview/status/st37_211026.html

(2) みちびき初号機後継機の概要, https://qzss.info/michibiki1r.html

(3) 「みちびき初号機後継機」の試験信号の送信について(変更のお知らせ), https://qzss.go.jp/info/information/qzs1r_220119.html

(4) 2021年1月25日(月)に小型SAR衛星2号機「イザナミ」が打ち上げられ、初交信に成功しました!, https://i-qps.net/news/417

(5) 鍵は開くパラボラアンテナ、小型SAR衛星で主要都市の高頻度撮像を目指す, https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/mag/nmc/18/00062/00006/

(6) 2021年5月13日(木) 小型SAR衛星2号機「イザナミ」が 日本初(※1)の分解能70cmの画像取得に成功しました!, https://i-qps.net/news/522

(7) アクセルスペースが衛星4機の打ち上げに成功、6月にも観測サービスを本格化, https://news.mynavi.jp/techplus/article/20210325-1839147/

(8) 日本初の量産衛星GRUS 4機の打上げ成功!, https://www.axelspace.com/ja/news/press_20220114-8/

(9) GRUS 4機による初撮影画像を公開, https://www.axelspace.com/ja/news/press_20220114-9/

(10) アストロスケール、デブリ除去技術実証衛星「ELSA-d」で模擬デブリの再捕獲に成功, https://astroscale.com/ja/astroscales-elsa-d-successfully-demonstrates-repeated-magnetic-capture/

(11) SpaceX passes 2,000 Starlink satellites launched, https://spacenews.com/spacex-passes-2000-starlink-satellites-launched/

(12) SpaceXの衛星ブロードバンド「Starlink」と業務提携、au通信網に採用する契約に合意, https://news.kddi.com/kddi/corporate/newsrelease/2021/09/13/5392.html

(13) ONEWEB SECURES INVESTMENT FROM SOFTBANK AND HUGHES NETWORK SYSTEMS, https://oneweb.net/resources/oneweb-secures-investment-softbank-and-hughes-network-systems

(14) ソフトバンクとOneWeb、日本およびグローバルでの衛星通信サービスなどの展開に向けた協業に合意, https://www.softbank.jp/corp/news/press/sbkk/2021/20210513_02/

(15) James Webb Space Telescope (JWST) Technology Discussion For APPEL Forum, https://appel.nasa.gov/wp-content/uploads/2013/04/456656main_PIF_1_decker_jwst.pdf

(16) 総費用1兆1000億円 ケタ外れの最新鋭宇宙望遠鏡、25年越しの打ち上げ迫る, https://www.sankeibiz.jp/article/20211215-I74R7ZZHRBGA7PH2MXTLZVPVFQ/

(17) 中国、初の太陽観測衛星を打ち上げ Hαスペクトルを使用した分光器を搭載, https://sorae.info/space/20211022-xihe.html

(18) NASA小惑星探査機「ルーシー」打ち上げ成功!しかし太陽電池アレイに問題発生か, https://sorae.info/space/20211021-nasa-lucy.html

(19) NASA、小惑星に衝突させて軌道を変える探査機「DART」の打ち上げに成功 ミッションは来年9月頃, https://sorae.info/space/20211126-dart.html

(20) X線偏光観測衛星「IXPE」、打ち上げ成功, https://www.astroarts.co.jp/article/hl/a/12383_ixpe

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11.3 宇宙探査

欧米はじめ,中国,インド,UAE,韓国など,世界各国において月惑星探査計画が進められている.NASAは,2020年に小惑星探査機「オシリス・レックス」のタッチダウンおよびサンプル採取に成功し,2021年5月に小惑星ベンヌを出発,2023年9月に地球帰還する予定である.また,大型の火星探査ローバ「パーサビアランス」は2021年2月に火星表面の着陸に成功,ジェゼロクレータの探査を行っている.また,「パーサビアランス」に小型の火星ヘリコプター(インジェニュイティ)を搭載,2021年4月に史上初の飛翔に成功した.中国は,2020年7月24日に打上げた火星周回探査機「天問1号」から2021年にカプセルを分離,探査ローバ「祝融」の着陸に成功,表面移動探査を行っている.インドは 2019年7月に打上げた大型月探査機「チャンドラヤーン2」の着陸機「ヴィクラム」による月面着陸は失敗に終わった.これを受け,インドではリベンジとなる「チャンドラヤーン3」を開発し,2023年に打上げを計画している.UAEは2020年7月20日に火星探査機を打ち上げ,2021年2月に火星軌道の投入に成功した.韓国やルクセンブルグなども月探査を計画している.日本では,月や火星圏,小天体,水星や金星などの宇宙探査を積極的に推進している.

小惑星探査機「はやぶさ2」は,2020年12月にカプセル分離後,ジェットを吹いて軌道を変更し,新たなミッションに移った.「はやぶさ2」拡張ミッションでは,2021年12月にプロジェクトチームが発足し,マルチスイングバイ・長期航行技術を磨きつつ,L型小惑星2001CC21にフライバイし,C型小惑星1998KY26のランデブを目指すものである.一方,「はやぶさ2」が観測したデータの解析も進み,「はやぶさ2」の小惑星リュウグウへの接近運用中に取得された中間赤外カメラ(TIR)および光学航法カメラ (ONC)の高解像度画像の解析から,水に浮くほど軽い超高空隙率の岩塊が発見された(1).発見した岩塊は,太陽系内の惑星誕生のきっかけとなった微惑星の姿を最も色濃く残している物質である推定,また超高空隙率岩塊と同様の物質の破片がリュウグウ表面に全球的に分布しており,「はやぶさ2」のリュウグウ採取試料にも一部含まれている可能性があることが分かった.一方,小惑星リュウグウから持ち帰ったサンプルの初期観測およびキュレーション作業が進められ,詳細な分析が行われている.

金星探査機「あかつき」は,金星を楕円軌道にて順調に周回し,科学観測を行っている.「あかつき」が取得した赤外線画像の解析から,金星の夜間の大気循環のメカニズムについて解明(2)することに成功した.金星が夜の間,雲頂にどのような流れのパターンが生じるのかは,40年来の謎だったが,夜間には昼間とは逆方向の南北風が生じることが判明,スーパーローテーションと呼ばれる高速大気循環のメカニズムや平均的な南北循環の理解が得られた.

日本とヨーロッパ(European Space Agency(ESA):欧州宇宙機関)と共同で推進している水星探査「BepiColombo(ベピコロンボ)」ミッションは,水星の磁場,磁気圏,内部,表層を初めて多角的・総合的に観測し,「惑星の磁場・磁気圏の普遍性と特異性」や「地球型惑星の起源と進化」について明らかにするミッションである.JAXAは,日本の得意分野である磁場・磁気圏の観測を主目標とするMMO探査機「みお」を担当し,ESAはMPOを担当している.MMOとMPOは,2018年10月にアリアン5型ロケットで打ち上げられ,2021年10月2日に初回の水星スイングバイに成功し,水星の詳細な写真を取得できた. MMOとMPOは,2025年12月に水星の周回軌道に投入され,約1年間の観測を行う予定である.

月着陸実証機SLIM (Smart Lander for Investigating Moon)は,将来の月惑星探査に必要なピンポイント着陸技術を獲得するミッションである.従来の「降りやすいところに降りる」着陸ではなく,「降りたいところに降りる」着陸へと質的な転換を果たすもので,世界的にもユニークなミッションである.小型の探査機によって月への高精度着陸技術の実証を早期に実現し,我が国として重力天体への着陸技術を獲得することは重要であり,将来の科学ミッションや国際協働有人探査ミッションに貢献するものである.2022年度打ち上げに向けて開発中である.そのほか,ESAが推進している木星やその氷衛星を調べる次世代探査計画「JUICE(The Jupiter Icy moons Explorer:木星氷衛星探査機)」ミッションに,日本も観測機器の一部の開発を担い,参加している.「JUICE 」は,2022年夏にアリアン5にて打ち上げ,2031年に木星圏到着,2034年にガニメデ周回軌道に投入し,約8か月後の2035年9月にミッションを完了する計画で,世界初の氷衛星の周回機となる.

さらに,今後の宇宙探査ミッションとしては,JAXAは2024年度打ち上げに向けて火星衛星探査ミッション(MMX)を推進している.MMXでは,火星の衛星フォボスの試料サンプルを地球に回収(サンプルリターン)して詳細な分析を実施する.これにより火星衛星起源を実証的に決定して,原始惑星形成過程の理解を進めるとともに,生命材料物質や生命発生の準備過程(前生命環境の進化)を解明する.また,小天体フライバイミッション「DESTINY+」の計画を進めている.DESTINY+も2024年度に打ち上げ予定の小型探査機で,ふたご座流星群の母天体である小惑星「ファエトン」の探査などを行うとともに,小型探査機による深宇宙探査を可能にするための技術実証を行うことを目指している.

国際有人探査計画については,我が国も,本格的な月惑星探査を進める計画である.現在,月や火星を対象に,国際協働による宇宙探査の検討が活発に行われ,15カ国の宇宙機関より構成される国際宇宙探査協働グループ(ISECG)が,シナリオ検討および技術検討を行っている.そこでは,月極域探査,月周回有人拠点(Gateway)計画,月サンプルリターン計画,月・火星有人探査などが議論されている.米国NASAは,2025年以降に有人月面着陸を目指し,2030年頃に月面基地建設を開始するアルテミス計画を推進している.

月周回有人拠点(Gateway)は,月面及び火星に向けた中継基地として,米国提案のもと,ISSに参加する宇宙機関から構成された作業チームで概念検討が進められている.規模は,国際宇宙ステーションの6〜7分の1で,Gatewayの組立てフェーズでは,4名の宇宙飛行士により年間30日程度の滞在が想定されている.日本は, ESAとの連携による国際居住棟(International Hab)のサブシステム(環境制御・生命維持装置)での参画,及び地球からGatewayへの物資補給には,宇宙ステーション補給機「こうのとり」を改良して現在開発中の「HTV-X」に,月飛行機能を追加して使用することを検討している.Gatewayでは,Near Rectilinear Halo Orbitという軌道をとることにより,軌道面が常に地球を向き,地球との通信が常時確保される.地球からの到達エネルギーが月低軌道までの70%程度であり,輸送コストが比較的小さくなるという利点がある.また,月の南極の可視時間が長く,南極探査の通信中継としても都合がよい軌道となっている.

月極域探査では,月の水資源が将来の持続的な宇宙探査活動に利用可能か判断するために,水の量と質に関するデータを取得することを目的とし,インド宇宙機関(ISRO)との国際協働ミッションを計画している.月極域におけるその場観測によって水の分布,状態,形態等を明らかにする.また,将来の月面活動に必要な「移動」「越夜」「掘削」等の重力天体表面探査に関する技術の獲得も目指す.さらに, JAXAとトヨタ自動車株式会社は,燃料電池車技術を用いた月面でのモビリティ「有人与圧ローバ」の共同検討について,有人宇宙ローバの開発及び国際協力による月面探査での活用を目指し,共同研究を推進,将来の月面有人探査を目指す計画である.また,「有人与圧ローバ」の実現に向けて,JAXAおよび株式会社タカラトミー,ソニーグループ株式会社,同志社大学の4者の共同開発による変形型月面ロボットを用いて,株式会社ispaceが2022年に実施予定の月着陸ミッションを活用した月面でのデータ取得を行う計画である.このように,海外のみならず日本においてもベンチャー企業など民間企業の月惑星探査の参画も計画されている.

〔久保田 孝 (国研)宇宙航空研究開発機構〕

参考文献
(1) N.Sakatani et al., Nature , Anomalously porous boulders on (162173) Ryugu as primordial materials from its parent body, DOI: 10.1038/s41550-021-01371-7, 24 May 2021.

(2) K.Fukuya et al., Science, The nightside cloud-top of the atmosphere of Venus, DOI: 10.1038/ s41586-021-03636-7, 20 July 2021.

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11.4 有人宇宙活動

国際宇宙ステーション(ISS:International Space Station)の「きぼう」日本実験棟(図11-4-1)は,2022年に,2009年の完成から14年目を迎える.

地上からISSへの物資補給は,米国・ロシア・日本の3カ国が分担して行っており,「こうのとり」(HTV:H-II Transfer Vehicle)シリーズは,2009年の技術実証機の打ち上げ以降,全9機すべてにおいて物資補給を成功させ,ミッションを完遂した.現在,輸送能力や運用性の向上,コスト低減,新たな機能や発展性を具備した新型宇宙ステーション補給機「HTV-X」を開発中である.また,HTV-XのISSへの物資補給機会を活用し,国際宇宙探査時代において重要な技術となり得る軌道上拠点への自動ドッキング技術の実証も計画している.

「きぼう」における実験環境の整備として,地上技術の進歩や軌道上実験に対するニーズの拡大等を踏まえ,最新のハイスペックの民生部品を活用し,「きぼう」全体の通信高速化(Gbpsオーダ)に向けたシステム改修にも着手している.さらに,「きぼう」運用・利用における宇宙飛行士の時間をより高度で付加価値の高い業務に充てるため,船外ミッションにて使用する「きぼう」エアロックの宇宙飛行士による操作については,地上からの遠隔操作を可能とした.更にカメラ撮影や打上げ・保管用バッグの取り扱いなどの汎用タスク,高頻度な実験支援タスク等についての遠隔操作化・自動化・自律化についても研究開発を進めているところである.

船内実験では,小動物飼育装置(MHU:Mouse Habitat Unit)を使用したミッションを継続実施した.これまでの実施成果として,多くの学術論文が発表されるとともに,微小重力環境での血液(血漿)中で変化する代謝物質の同定や腎機能変化と骨量減少の関係など,分子レベルでの解析データが蓄積されてきている.これらデータは,将来の有人宇宙探査に資する他天体の重力環境の生体への影響に関する研究の礎となることが期待される.更に,ISSの利用成果最大化に向けた日米協力枠組み(JP-US OP3)のもと,有人火星探査に先立ち,火星などの低重力が生体(動物個体)に及ぼす影響を評価するため,2023年をターゲットとして,JAXA-NASAと共同で実施する低重力ミッション計画の準備を進めている.

また,人工重力発生装置では,将来月探査に向けて実施した月のレゴリスを模擬した粉粒体の低重力環境の下での挙動確認実験の成功に続き,現在は有人与圧ローバの1/6G環境下での潤滑オイルの挙動を評価するための新たな軌道上実証の準備が進行しており,今後も,「きぼう」が宇宙探査への応用を目的とした基礎実験や技術実証等に効果的に活用されていくことが期待されている.

更に,我が国独自の環境制御・生命維持システム(ECLSS: Environmental Control and Life Support System,水再生,空気再生等)の技術開発・ISSにおける技術実証に向けた準備等も推進している.これは,物資補給量の制約が大きい月・火星等の低軌道以遠における有人宇宙活動のために不可欠であり,国際宇宙探査における我が国からの大きな貢献となり得る技術として期待されている.

タンパク質結晶生成実験(PCG:Protein Crystal Growth)においては,年に複数回の実験機会の提供のほか,創薬研究需要に応える結晶化温度条件(4℃と20℃)を提供し,アカデミアや民間に広く利用されている.現在,タンパク質実験の一部の民間企業への事業移管を進めており,更なる利用の拡大と成果の創出が期待される.

静電浮遊炉(ELF:Electrostatic Levitation Furnace)は,年間を通じて安定運用を実施しており,近年,実験数が大幅に増加している.2021年は,公募で選定した科学実験,民間の有償利用,国際協力に基づく米国実験を実施して,2021年の約2倍のサンプル数を浮遊・溶融させ,密度,表面張力,粘性の測定を継続的に進めている.

船外実験では,ISSでもユニークな特徴である「きぼう」独自のエアロックを中心に,各国の宇宙機関だけでなく,国内外の様々な企業等から多くの利用要請を受けている.中規模の船外実験を簡易に実施可能な中型曝露実験アダプタ(i-SEEP:IVA-replaceable Small Exposed Experiment Platform)については利用事業者による利用の拡大が進められており,2021年度はi-SEEP上でキューブサットクラスの小型実験を複数実施可能な実験支援装置(SPySE:Small Payload Support Equipment)の開発が完了し,軌道上で初となる全固体電池実証など軌道上実験運用を開始している.また軌道上実験を終えた光通信軌道上実証装置(SOLISS:Small Optical Link for ISS)については,部品を軌道上から回収し,次号機での信頼性向上に向け各種調査・分析を行う予定である.

エアロックから船外に搬出し,ロボットアームにて超小型衛星を地球周回軌道に投入する衛星放出ミッションは,JAXA管理分及びNASA管理分を合わせて,衛星の放出実績が合計290機を超え,超小型衛星の軌道投入手段として定着してきている.JAXAでは本プラットフォームを国連との連携を通じた加盟国の宇宙開発技術底上げの場として毎年一定枠の放出機会を提供している.現在では民間事業者による放出サービスも開始され,また,九州工業大学が主導する海外の超小型衛星群(BIRDSシリーズ)を始めとする諸外国での宇宙開発基盤の構築,人材育成の場としても活用されており,これらの活動はSDGsへの貢献としても重要なものとなっている.

観測ミッションの場を提供する船外実験プラットフォームにおいて,高エネルギー電子・ガンマ線観測装置(CALET:CALorime- tric Electron Telescope)は,2021年に観測運用6年を超え,現在も順調に観測を継続している.全天X線監視装置(MAXI:Monitor of All-sky X-ray Image)は,良好に観測およびデータの速報等を継続しており,2022年度から観測運用13年目に入る.また,経済産業省が開発・運用を担当している「HISUI」(Hyperspectral Imager SUIte)は現在,定常運用を続けている.同ミッションは地表の材料分析を目的としており,将来的に石油や金属・鉱物などの資源調査等への活用が期待されている.

日本人宇宙飛行士については,野口聡一宇宙飛行士が,米国のスペースX社が開発した新型宇宙船「クルードラゴン」の運用初号機に米国人以外の宇宙飛行士として初めて搭乗してISSへ飛行し2020年11月から21年5月までISS長期滞在した.過去2度の宇宙滞在の豊富な経験を活かし,宇宙環境を利用した様々な実験・ミッションを行った.

また,星出彰彦宇宙飛行士が,「クルードラゴン」の運用2号機に搭乗し,2021年4月から11月までのISS長期滞在を行った.滞在中は,日本人2人目のISS船長として指揮を執るとともに,宇宙実験,国際宇宙探査に向けた技術実証,ISSのメンテナンスなど様々な任務を完遂した.

2022年秋からは若田光一宇宙飛行士が,2023年には古川聡宇宙飛行士がISS長期滞在を行う予定であり,現在,それぞれフライトに向けた訓練・準備を実施中である.油井亀美也宇宙飛行士,大西卓哉宇宙飛行士,金井宣茂宇宙飛行士は,日本人宇宙飛行士の長期滞在ミッションを支援しつつ,それぞれ次の搭乗員任命に向け資質維持向上訓練等を行っている.

また,2021年に,ISSのみならず,国際宇宙探査での活躍が期待される,新たな日本人宇宙飛行士候補者の募集を行い,最終的に4000人を超える応募者数となった.2022年度末頃の候補者決定を目途に,現在,選抜試験を実施中である.

国際宇宙ステーションは,2024年までの運用について国際的に合意されており,米国は,2020年1月(日本時間)に,2030年までの運用延長を発表した.我が国においても政府においてISS運用延長に関する議論が進められている.また,2021年は,世界的に見れば,多くの民間人が宇宙飛行を行うなど,民間による低軌道活動が本格化している.現在,JAXAでは,今後,低軌道は経済活動の場としても発展していくことを想定し,我が国として,将来においても地球低軌道を利用できる能力を維持・発展するため,2030年以降の地球低軌道活動の在り方についての検討を実施している.今後,我が国において,2025年以降もISS運用延長に参画することが決定された場合には,その活動が将来の地球低軌道活動や国際宇宙探査活動の更なる発展に資するものとなるよう,国際宇宙探査に必要な技術実証,民間企業等による利用の促進,国の課題解決や人材育成に繋がる利用,国際協力や民間企業等との連携など,様々な角度からの検討や準備を進めている.

〔宮崎 和宏 (国研)宇宙航空研究開発機構〕

図11-4-1 「きぼう」外観(JAXA提供)

11.5 小型宇宙システム

11.5.1 小型輸送系

インターステラテクノロジズ社は,2021年7月3日,北海道大樹町の北海道スペースポートから観測ロケット「MOMO-7号機(ねじのロケット)」を打ち上げ,高度100 kmへの到達に成功した(1).2019年5月のMOMO-3号機以来の宇宙空間到達となった.続けて7月31にもMOMO-6号機(TENGAロケット,機体番号は受注順)により高度92 kmへの到達に成功した(2).同社は2020年から約1年をかけて,MOMOの信頼性向上を目指した全面改良を実施.7号機は改良型の「MOMO v1」初号機にあたる.一箇月以内に2機続けて予定日に打ち上げを実施し,成功させたことで,MOMO v1の高い信頼性を示した.同社の打ち上げ拠点である「北海道スペースポート(略称:HOSPO)」は,民間宇宙港として2021年4月に本格的な稼働を開始した.新たに設立されたSpace Cotan(株)が運営にあたる(3).国外の打ち上げ事業者も受け入れる「世界に開かれた宇宙港」を目指している.

キャノン電子やIHIエアロスペース等が出資する宇宙輸送ベンチャー企業であるスペースワン(株)は,2021年6月,小型衛星打上げサービスを提供するロケットの名称をカイロス(KAIROS (Kii-based Advanced & Instant ROcket System)と命名した(4).カイロスロケットは3段の固体推進剤ロケットに液体推進剤PBS(ポストブーストステージ)を組み合わせた小型ロケットで,和歌山県串本町の「スペースポート紀伊」を拠点とした小型衛星打上げ事業を目指して開発が進められている.2021年6月に3段目,同年12月に1段目固体モータの燃焼試験を,共にJAXA能代ロケット実験場で成功裏に実施した.スペースポート紀伊の建設工事は概ね終了しており,初号機の打上げは,当初は2021年度中に計画であったが,新型コロナウイルス感染拡大でロケットや発射場の部品を海外から調達するのが遅れた影響等により,2022年末に延期された.

神奈川大学の高野敦教授らのグループは,2021年9月19日,秋田県能代市の海岸からハイブリッドロケットの打ち上げ実験を行い,高度10.1 kmに到達した.ハイブリッドロケットによる到達高度の国内記録は2013年に北海道大学と植松電機が開発したCAMUI型ロケットによる8.3 kmであったが,これを8年ぶりに更新した(5).酸化剤に亜酸化窒素を,燃料に3Dプリンタで成型した星形フラクタル旋回構造樹脂を使用した.アルミ合金を複合材で補強した軽量酸化剤タンクを使用する等,機体重量の削減が高高度到達に寄与している.

米ロケット・ラボ社の小型ロケット「エレクトロン」は2021年中に7回の打ち上げを行い,通算で24回の打ち上げとなった.ただし,5月に行われた20号機では2段目エンジンが途中で停止し,目標軌道への到達に失敗している.同社は衛星のバス機能とキックステージを搭載した小型衛星プラットフォーム「Photon(フォトン)」を開発し,2020年8月に1機目を打ち上げているが,2021年3月23日にエレクトロン19号機で2機目を打ち上げた.2021年11月に米衛星企業BlackSkyの地球観測衛星を軌道投入した際には,初段ロケットを回収して再利用する技術開発の一環として,回収予定海域に降下する初段ロケットを待機したヘリコプターから観測する試験を成功裏に実施した(6)

〔永田 晴紀 北海道大学〕

参考文献
(1) 「観測ロケット「ねじのロケット」打上げ結果」https://www.istellartech.com/archives/3648(参照日2022年3月31日)

(2) 「「TENGAロケット」 打上げ成功、2機連続の宇宙到達」https://www.istellartech.com/archives/3719(参照日2022年3月31日)

(3) 「北海道スペースポートの推進のため「SPACE COTAN株式会社」を2021年4⽉設⽴」https://hokkaidospaceport.com/news/94(参照日2022年3月31日)

(4) 「小型ロケットの機体名称について」https://www.space-one.co.jp/doc/pressrelease210618.pdf(参照日2022年3月31日)

(5) 「【続報】高度10.7km 日本新記録達成!! ハイブリッドロケット打ち上げ成功の軌跡」https://www.kanagawa-u.ac.jp/news/details_22406.html(参照日2022年3月31日)

(6) “Rocket Lab Launches 107th Satellite To Orbit, Successfully Tests Helicopter Recovery Operations” https://www.rocketlabusa.com/updates/rocket-lab-launches-107th-satellite-to-orbit-successfully-tests-helicopter-recovery-operations/(参照日2022年4月6日)

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11.5.2 小型・超小型衛星の動向

2021年における100kg以下の衛星は410機が打ち上げられ,2020年の208機,2019年の229機,2017年に最大を記録した294機を大幅に上回り,過去最高を更新した.この背景には,前年である2020年に打上遅延したFALCON-9小型衛星クラスター打ち上げが本年(2021年)にズレ込んだことで,衛星数を押し上げた結果に加え,民間投資拡大により民間地球観測衛星(光学&SAR)やIoT(AIS/ADS-B/M2M)通信及び,民間電波受信(SIGINT)衛星の打上数が増加したことが要因とみられる.またメガコンステと言われているStarlinkは989機,ONEWEBも284機が打ち上げられ,Starlink通信のユーザーはベータテスト段階であるにもかかわらず,2021年末時点て15万ユーザーの獲得に成功している.

軌道投入された小型衛星のうち,10cm四方のCubeSat規格衛星は0.25U~12Uサイズまで310機あった.特筆すべきは6Uサイズや12Uサイズの打上数が56機と過去最大となり,大型化のトレンドが見えている.また,民間のPLANET社の48機,及びSPIRE社の18機を抜いて,Swarm Technologies社が76機(0.25Uサイズ)打ち上げられているが,同社を2021年8月にSpaceX社が買収したことも大きなニュースとなった.SpaceXのStarlinkメガコンステビジネスに加えて,IoT通信ビジネスにもSpaceXが乗り出したことを示している.さらに大型衛星運用会社であるEUTELSATがCubeSat型IoT衛星のELO Alphaを打上げた一方,米国以外のスイス,カナダ,ルクセンブルク,オーストラリア,ポーランドの民間小型コンステが打ち上げられたのに加え,日本でも9機のCubeSatが打上げられた.

このような民間ビジネスの拡大に加え,技術的成長も拡大している.2021年の国際学会では,小型衛星をフォーメーションフライトさせて,焦点距離1kmの望遠鏡を形成する技術開発計画をNASA-GSFCが発表し,米AEROSPACECORP社がRouge-α,βという2機の3UサイズCubeSatを打ち上げたが,これは民生の近赤外カメラを搭載し,油田の炎,FALCON-9やSOYUZロケット飛翔時に発生する炎の検出に成功した.さらにこれら観測データを光通信速度200Mbpsで衛星-地上間光通信にデータダウンリンクに成功し,これは1パスで2.5GBのダウンリンクに成功したことを意味し,Cubesatによる衛星-地上間光通信が可能であることを証明した.また,民間Cubesatコンステを運用するSPIRE社も航空機や船舶の位置情報を1日に3000万件以上を収集しているが,これらデータを早期に地上局へ送信するために,衛星間通信の実用化を進めている動向も発表されている.2021年は電波による衛星間データ中継に成功し,2022年は光通信による衛星間データ中継実験を行う計画であることが発表された.またPLANET社では400機以上のCubesat光学衛星が運用されているが,この自動化運用動向が発表され,基本的に初期DOVEは姿勢確立&太陽電池展開までが自動化されていたが,現在ではDrag制御とバッテリ容量試験以外は全て自動化運用されていることが発表されている.このように,徐々に小型衛星の自動化運用やデータの早期伝送技術の先進化動向がみられている.

これら伝送技術や自動化技術が進んでいることから,衛星が撮像した地球観測データを地上へ伝送してから解析するのではなく,軌道上にある衛星内で解析するオンボード解析技術も発展している,スウェーデンのUNIBAP社は観測した光学やSARデータから航空機や船舶,山火事検出などを軌道上解析ツールの技術を発表,SpaceCloud-as-a-Service(SCaaS)として発表した.これを米国の小型衛星ベンチャーであるSARANIASAT社が採用し,撮像後の画像を10-43秒で解析できると発表し,顧客地上局へ対し,解析結果を直接デリバリーできるサービス技術を成立させようとしている.

サイエンスミッション分野では,アースサイエンスミッションに加えて天文ミッションを実施するトレンドが2021年には見られている.具体的には米コロラド大学等は紫外線天文ミッションCUTE,ボストン大等は広視野の軟X線天文観測衛星を打ち上げている.どちらも6UサイズのCubesatであり投入軌道も大型ロケットの相乗りとしてGTOへ打ち上げられた.

コロナ禍においても,2021年は宇宙投資は過去最高を更新し,日本においても200億円以上の資金調達が行われており,米国においては2021年に入ってから,SPACを活用した宇宙ベンチャーのIPOに関する動きが活発化している.

以上から2021年はコロナ禍や経済停滞と言われているにもかかわらず,投資額は過去最大,打上衛星数共に過去最高を記録し,光通信を含む通信速度の高速化,オンボード処理による観測データ解析の迅速化などや自動運用技術の進歩がみられており,小型衛星技術開発が今国際技術競争を加速させているともいえる.

〔金岡 充晃 シー・エス・ピー・ジャパン(株)〕

参考文献
(1) Dee W. Pack, et al, The Aerospace Corporation, (2021, small satellite conference),Flight Operations of Two Rapidly Assembled CubeSats with Commercial Infrared Cameras: The Rogue-Alpha,Beta Program

(2) Robert Wright, University of Hawaii at Manoa, et al, (2021, small satellite conference),HyTI: Thermal Infrared Spectroscopy from a 6U Platform

(3) https://unibap.com/en/news/unibap-and-saraniasat-inc-demonstrate-high-performance-analysis-of-satellite-imagery/(参照⽇ 令和3年4⽉10⽇)

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