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機械工学年鑑2022

21. 交通・物流

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21.1 自動車

21.1.1 概況

a. 生産

2021 年の四輪車生産(1)は785万台(前年比2.7%減)で,内訳は乗用車662万台,トラック115万台,バス7 万台で,二輪車生産は50万台(同3.9%増)である.

b. 輸出

2021 年の新車輸出(1)は乗用車337万台(同1.2%減)で生産に占める割合は51.0%で2020年より3.9%増加した.二輪車は41 万台( 同31.7%増) で生産に占める割合は82% で2020年より26.7%増加した.

c. 輸入

2021年の日本メーカー車を含めた輸入車新規登録台数(2)は34.4 万台で,前年比8.2%増となった.

d. 保有台数

2022年2月末で,乗用車6215 万台,トラック1450万台,バス22 万台,原付を除く二輪車390 万台になっている(3)

〔関根 康史 福山大学〕

参考文献

(1)統計データベース,一般社団法人 日本自動車工業会, http://jamaserv.jama.or.jp/newdb/index.html  (参照日2020年3月9日)

(2) 輸入車統計データベース,日本輸入車組合(JAIA), http://www.jaia-jp.org/  (参照日2020年3月9日)

(3) 自動車保有台数,一般財団法人 自動車検査登録情報協会, http://www.airia.or.jp/ (参照日2020年3月9日)

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21.1.2 四輪自動車の技術動向

2021年の電動車両(BEV(Battery Electric Vehicle)やHEV(Hybrid Electric Vehicle)等,内燃機関以外に動力源を持つ車両)の世界販売台数は949万台で前年比81%の増加であり,全販売車両に占める割合が初めて1割を超えた.BEV及びPHEV(Plug-in Hybrid Electric Vehicle)といった外部充電によるエネルギー供給可能な車両に限ると639万台と前年比118%の伸びを示しており,ここ10年来の電動化の流れがより鮮明になった(1).BEVについては各社で専用プラットフォームの採用がみられ,バッテリーの床下搭載による低重心化や電動モータの高応答特性によって,環境面だけでなく運動性能の向上も注目された.電動車両のキーデバイスである2次電池については,専用工場での大量生産による低コスト化が進んでいるが,次世代の電池開発にも注目が集まっている.中でも全固体電池については小型・大容量化や充放電性能等への期待から各方面で開発が進められている(2).また,既存の液系リチウムイオン電池についても,ドライ電極と呼ばれる電池製造の技術革新(3)が進行中である.現在の電池製造工程では大量のエネルギーが必要であるが,ドライバッテリによりこれが低減可能であり,BEVの課題のひとつであるライフサイクルでのCO2総排出量削減が期待される.また,HEV用のニッケル水素電池において,正極と負極を1枚の集電体に統合することで高出力化したバイポーラ型電池(4)が市場導入された.

電動化は単にエンジンとバッテリーというハードウェアのシフトにとどまらず,ソフトウェア改革を推し進めている面も無視できない.ソフトウェアファーストの動きに呼応して,これまで個別の機能ごとに装備されていたECU(電子制御ユニット)が,ある程度まとまった機能ごとに統合されたドメインアーキテクチャや,セントラルECUを中心に車両の各位置に配置されたコンピュータに接続するゾーンアーキテクチャといった構成に変化しつつあり(5),一部のBEVではすでに市場導入が進んでいる.他にも電動化とは直接関係しないが,内装のデジタル化に伴うインストルメントパネルの液晶ディスプレイ化や大型タッチスクリーンの採用等,電動化やコネクティッドの普及を契機に自動車の様々な技術が次世代のものに変化しつつある.

自動運転技術では,世界初の運転自動化レベル3(特定の走行環境条件を満たす限定された領域において,すべての運転操作を自動化)を搭載した車両(6)が国内で市販化された.レベル2ではドライバがハンドルから手を放す「ハンズオフ」は可能ではあるが,運転の主体はあくまでドライバ自身であるため,これは運転支援機能と位置付けられる(7).一方,この車両では高速道路の渋滞走行時に限りドライバが前方から視線をはずす「アイズオフ」も可能であり,運転の主体もシステムが担う.高速道路での追突事故のほとんどが渋滞による疲れ等に起因するドライバの不注意によるものであることから,同様のシステムの普及による事故低減が期待される.自動運転技術の中核のひとつとして高精度デジタル地図が挙げられ本システムでも採用されているが,これまでの高速道路・自動車専用道路に加え,2023年には一般道にも高精度3次元地図データが導入されることがアナウンスされた(8).一般車両の自動運転範囲拡大に加え,物流・運送等幅広い領域での活用も見込まれる.また,自動運転専用車両を用いたモビリティサービスについても,東京2020オリンピック・パラリンピック選手村の送迎サービス実証(9)を始めとして,大規模な実証実験が国内で実施された(10)(11).近年地方自治体を中心に進められてきた日本版MaaS(Mobility as a Service)(12)の実証実験と合わせて,様々な移動課題解決に繋がる取り組みとして期待が高まっている.

安全技術では,2021年11月より新型車への衝突被害軽減ブレーキ搭載が義務化された(13).また,自動ブレーキが作動する要件について,これまでの車両・歩行者に加え,自転車を追加することが発表された(2024年7月より新型車に適用)(14).横断自転車への衝突回避は対象物の速度が歩行者に対して高いことから,センサ等の検出性能に加えて制御ブレーキの応答性向上が必要となってくる.商用車系では,大型トラックの左折時(左側通行の場合)の巻き込み事故抑制機能として,助手席側の死角に入った歩行者や自転車を検出して自動ブレーキを作動させるシステム(15)が市場導入された.また,トレーラ火災の原因の多くを占めるブレーキの異常な温度上昇を検知してドライバに警告するトレーラブレーキ温度監視システム(16)が実用化された.欧州市場では,路面の凍結やすべりやすい状態をリアルタイムでドライバに警告するシステムが実用化された(17).これは,コネクティッドカーから集約されたプローブデータをクラウドで解析し,滑りやすい路面のマップを作成する技術がベースとなっている.国内でもコネクティッドカーから得られる車両データと気象データを活用した路面凍結等の推定(18)や,通信型ドライブレコーダーのデータをもとに事故の予兆を検知するシステムの実証実験(19)が進められるなど,安全技術へのコネクティッドの活用事例が多くみられた.

車両系の技術では,近年大舵角の後輪操舵システムの採用が増加傾向にあるが,4輪同相操舵のモードを備えて斜め走行を可能にするユニークなシステム(20)が導入された.また,車体軽量化のために高張力鋼板の採用が一般化しているが,プレス成型時のスプリングバックを抑制する工法により1.5GPa級高張力冷延鋼板がボディ骨格に採用された(21)

〔門崎 司朗 トヨタ自動車(株)〕

参考文献

(1) 各販売台数データはマークラインズ株式会社の情報より集計

(2) 米国における自動車の電動化に伴う市場と技術の動向 PART2 EV用バッテリー p.25-28, https://www.jetro.go.jp/ext_images/_Reports/01/f2f14f8e96472c59/20210036_02.pdf (参照日2022年5月5日)

(3) 蓄電池産業の競争力強化に向けて 経済産業省 p.19, https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/joho/conference/battery_strategy/0002/03.pdf (参照日2022年5月5日)

(4) トヨタも採用する「バイポーラ型電池」,出力を向上できる仕組みとは:今こそ知りたい電池のあれこれ(7)- MONOist, https://monoist.itmedia.co.jp/mn/articles/2110/11/news012.html (参照日2022年5月5日)

(5) 安全性と快適性を両立する自動運転向け車載ユニット:日立評論, https://www.hitachihyoron.com/jp/archive/2020s/2021/05/05c01/index.html (参照日2022年5月5日)

(6) Technology 機能編 _ Honda SENSING Elite 特設サイト _ Honda公式サイト, https://www.honda.co.jp/hondasensing-elite/function/index.html (参照日2022年5月5日)

(7) 国土交通省 – 自動運転車両の呼称, https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001377364.pdf (参照日2022年5月5日)

(8) 国内初,高速道路と自動車専用道路から一般道路へ整備路線を拡張した,次世代の高精度3次元地図データ(HDマップ)を導入 _ NEWS _ ダイナミックマップ基盤株式会社, https://www.dynamic-maps.co.jp/news/2021/0407_2.html (参照日2022年5月5日)

(9) 進化したe-Palette,その全貌を公開, https://toyotatimes.jp/toyota_news/115.html (参照日2022年5月5日)

(10) 日産自動車とドコモ,自動運転車両を用いたオンデマンド配車サービスの実証実験を開始, https://global.nissannews.com/ja-JP/releases/210719-01-j (参照日2022年5月5日)

(11) Honda _ 日本での自動運転モビリティサービス事業実現に向け,技術実証を9月中に開始, https://www.honda.co.jp/news/2021/c210908.html (参照日2022年5月5日)

(12) 国土交通省日本版MaaSの推進, https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/japanmaas/promotion/ (参照日2022年5月5日)

(13) 報道発表資料:乗用車等の衝突被害軽減ブレーキに関する国際基準を導入し,新車を対象とした義務付けを行います.~道路運送車両の保安基準の細目を定める告示等の一部改正について~ – 国土交通省, https://www.mlit.go.jp/report/press/jidosha08_hh_003618.html (参照日2022年5月5日)

(14) 道路運送車両の保安基準等の一部を改正する省令及び道路運送車両の保安基準の細目を定める告示等の一部を改正する告示について, https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001425717.pdf (参照日2022年5月5日)

(15) 大型トラック「スーパーグレート」の新型モデルを発売 -国内初のさらに進化した運転自動化レベル2の高度運転支援機能で安全性の強化を実現-, https://asia.daimlertruck.com/jp/press-releases/international/new-super-great/ (参照日2022年5月5日)

(16) デンソー,「トレーラブレーキ温度監視システム」を開発 | ニュースルーム | ニュース | DENSO – 株式会社デンソー _ Crafting the Core _, https://www.denso.com/jp/ja/news/newsroom/2021/20210420-01/ (参照日2022年5月5日)

(17) Precise data for greater safety_ Audi warns its drivers faster about slippery roads _ Audi MediaCenter, https://www.audi-mediacenter.com/en/press-releases/precise-data-for-greater-safetyaudi-warns-its-drivers-faster-about-slippery-roads-13799 (参照日2022年5月5日)

(18) コネクティッドカー情報を用いて道路凍結を推定する実証実験を開始 _ Weathernews Inc., https://jp.weathernews.com/news/34580/ (参照日2022年5月5日)

(19) 自動車事故の予兆通知サービスの提供に向けたグローバルベースでの実証実験, https://www.tokiomarine-nichido.co.jp/company/release/pdf/211111_01.pdf (参照日2022年5月5日)

(20) 2022 GMC HUMMER EV _Crab Walk_ Mode In Action _ Tesla Fans don’t LIKE this ! – YouTube.html, https://www.youtube.com/watch?v=lsvJShy7-lA (参照日2022年5月5日)

(21) 『ストレスリバース™工法』がレクサスの1.5GPa級高張力冷延鋼板を使用した自動車部品製造に採用~超高張力鋼板のスプリングバック抑制成形技術を開発~_JFEスチール株式会社, https://www.jfe-steel.co.jp/release/2021/10/211022.html (参照日2022年5月5日)

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21.1.3 二輪車の技術動向

走行性能や環境性能の向上とともに,乗る楽しみや快適さを追求した技術開発が進められた.様々な走行状況に応じてエンジン・ブレーキ・サスペンション特性を最適化する電子制御機能,ライダーに伝わる二輪車からの振動を軽減する浮動式ハンドル機構,通話・メッセージ・ナビゲーションの利用や車両運転状況の取得が可能なスマホアプリ開発の発表が,各社から相次いだ.

安全面では,新技術の導入が進められた.レーダーシステムによるアダブティブクルーズコントロール・ブラインドスポット検知機能を含む運転支援技術,日中の非視認性を上げるデイタイムランニングライト,ライダーのスキルアップ支援のための走行技量の可視化技術を発表する例が見られた.協調型高度道路交通システムの普及に向けた二輪メーカー協働のコンソーシアム活動の継続が発表された.

環境面では,電動化の波が加速し,シェアリングサービス,配車サービスでの運用,優遇措置,充電インフラ拡充,交換式バッテリー標準化などにより,普及促進を行っている.国内では,ビジネス用電動三輪スクーターの法人向け販売が発表された.アセアンでは,配車業者大手が地場メーカーと協業し,電動バイク生産を開始,運用する二輪車の電動化が推進された.

〔品川 晃徳 ヤマハ発動機(株)〕

21.1.4 生産技術・材料

2019年からの新型コロナウィルス感染症(COVID-19)拡大影響により減産傾向にあった世界の自動車生産も2021年は緩やかに復調の兆しが見えてきたが,深刻な半導体不足は解消されず自動車産業サプライチェーンへ大きな打撃を与え自動車メーカーは生産制限や代替えチップの調達に奔走するなど混乱は2021年度も継続している.このような混乱の中でも各自動車メーカーはSDGsの目指す持続可能な社会の実現に向けて積極的に取り組みをはじめており,特に気候変動対策としてCO2を排出しない電動車開発の加速や,ゼロエミッション生産システムの実現を目指し脱炭素社会に向けた取り組みを進化させている.

電動車の車体骨格には電池パックを衝突から保護するためにハイテン材やホットスタンプ材など超高張力鋼板が採用されることが多いが,更なる軽量化を目的に骨格には高張力鋼板,外板にはアルミニウム合金を採用するメーカーや,高強度フレームの中にアルミニウム合金を内包するメーカー(1)など鉄とアルミニウムのハイブリット構造が見受けられた.また車体構造にアルミ鋳造大物一体成型を採用するなど軽量化と部品点数削減を目指した車体生産技術(2)も登場し話題となった.

電動ユニットのモーターケース材料はアルミニウム鋳造材が一般的であるが,電池パックのケース材料は高張力鋼板やアルミニウム鋳造材,アルミ押し出し材を使用するなど多様な生産方法があり,今後は車体との連結性も含め進化が期待される.

自動車産業はこれまでコスト,軽量化を考慮し材料選定してきたが,SDGs観点からリサイクル材料の使用拡大やCO2を排出しない材料の開発など環境に配慮した設計,生産をするよう求められており,サプライチェーン含め業界全体でSDGsへの取り組みがますます活発になると考えられる.

〔樋口 英生 (株)本田技術研究所〕

参考文献
(1) 久米秀尚,Disassembly Report VW「ID.3」 日経Automotive 2022.2月 p.70-73

(2) Bill Visnic ,Tesla casts a new strategy for lightweight structures, https://www.sae.org/news/2020/06/tesla-model-y-big-castings (参照日2022年3月29日)

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21.1.5 基礎研究

よりよい世界の実現を目指し,世界共通の課題として2030年の達成に向けた持続可能な開発目標(SDGs)が,2015年9月に開催された国連サミットにおいて採択された.以来日本でもアクションプランとしてSociety 5.0(1)の推進を掲げるなど,豊かさを追求しながら地球環境を守るための具体的な目標達成にむけた研究が活発化している.自動車の分野においても,未来志向の社会づくりや,必要となる基礎技術の研究,データ連携によるビジネスモデル構築などが課題として掲げられている(2).

また2020年から2021年にかけては新型コロナウイルス感染症の世界的なパンデミックの影響もあり,これまで遅々として進まなかったデジタル化が急速に進み,大きな社会的変化を生み出している.そのため2022年のアクションプランで,DX(Digital Transformation)に関する新たな技術を活用した新しい社会作りは,日本の総力を挙げて取り組む必要があると謳われている(3).そうした社会的背景の中で,カーボンニュートラル,自動運転車,空飛ぶ自動車,等々さまざまな次世代の自動車の在り方が模索されており,それらを成立させるための基礎研究に対する関心はますます高まっている.

とくに2021年においては,電動自動車に関する将来構想について,大手自動車メーカー各社から相次いで発表があり,世界的に電動化技術,自動運転技術への関心が高まった年となった.またそれらに関する研究成果も多数発表されている.例えば電動化技術に関しては,電動自動車の核となる二次電池に関する研究や(4)(5),燃料電池に関する研究(6),超小型電動車に関する研究成果などが報告された(7).自動運転技術に関しても,障害物回避システム(8),運転支援システム(9),フィードバック制御ロジック(10),センシングデバイス(11)など,さまざまな車両運動制御に関する基礎研究の成果が多岐にわたり発表されている.

一方,人中心で人にやさしい社会づくりという観点から,安心して運転できる自動車であることが重要であり,自動車の安全に関わる基礎研究や,車両運動の解析モデルに関する研究も多数発表された (12)-(15).また自動車を“車両-人”で構成されるシステムと捉え,人の感性に関わる研究報告も複数発表されており(16)(17),さらに運転しやすい車づくりへの応用が期待される.

将来の自動車に必要とされる重要な技術であるとして,2019年頃からCASE(Connected,Autonomous,Shared/Service,Electric)が大きな話題となって以来,自動車に求められる性能や機能は多岐にわたって求められるようになった.同時に豊かさを増す自動車社会の中で,ユーザーの自動車に対する価値も多様化している.さらに基礎研究の成果が応用される対象も,自動車単体システムにとどまらず自動車社会全体のシステムへと広がっている.変革する自動車社会の中では,新たな価値の創造を一つの研究成果に頼るのではなく,複数の分野にわたる基礎研究の成果を連成させてよりスケールの大きな研究成果とすることが鍵となってきている.そのために,多分野にわたりしっかりとした基礎研究の重要性は,今後もますます増してゆくと考えられる.

〔豊島 貴行  (株)本田技術研究所〕

参考文献

(1) Society 5.0,内閣府, https://www8.cao.go.jp/cstp/society5_0/index.html(参照日2022年3月23日)

(2) JAPAN SDGs Action Platform,外務省, https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/sdgs/effort/index.html(参照日2022年3月23日)

(3) SDGsアクションプラン2022すべての人が生きがいを感じられる新しい社会へ,SDGs推進本部, https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/sdgs/pdf/SDGs_Action_Plan_2022.pdf(参照日2022年3月23日)

(4) ナトリウムイオン電池の負極材料開発に光,総合科学研究機構,東京理科大学,高エネルギー加速器研究機構J-PARC, https://www.kek.jp/wp-content/uploads/2021/12/pr20211203.pdf(参照日2022年3月23日)

(5) 小野将太,岸本喜直,小林志好,大塚年久,伊藤靖仁,山崎博司,リチウムイオン電池負極材クリープ変形メカニズム,日本機会学会2021年度年次大会予稿集, J065-09 (2021).

(6) Kensaku Kodama, Tomoyuki Nagai, Akira Kuwaki, Ryosuke Jinnouchi and Yu Morimoto, Challenges in Applying Highly Active Pt-based Nanostructured Catalysts for Oxygen Reduction Reactions to Fuel Cell Vehicles, Nature Nanaotechnology, Vol.16,pp.140–147(2021), DOI: https://doi.org/10.1038/s41565-020-00824-w.

(7) 久保登,小竹元基,超小型電気自動車「NNC コンセプト」の提案,日本機械学会論文集,Vol.87, No.904, (2021), DOI: 10.1299/transjsme.21-00090.

(8) 松永信智,武内雄大,岡島寛,MRを用いた走行環境の空間マッピングによる福祉車両の障害回避システムの一構成法,日本機械学会論文集,Vol.87, No.894, (2021), DOI: 10.1299/transjsme.20-00033.

(9)  西脇和弘,家澤雅宏,髙橋正樹,車間距離と車両加速度のトレードオフを考慮したアダプティブクルーズコントロール,日本機械学会論文集,Vol.87, No.900, (2021), DOI: 10.1299/transjsme.21-00069.

(10) 左合貴,植山祐樹,原田正範,深層学習を用いた回転型振子の最短時間フィードバック制御,日本機械学会論文集,Vol.87, No.904, (2021), DOI: 10.1299/transjsme.21-00080.

(11) 文字山竜,水野毅,石野裕二,髙﨑正也,MEMS 技術を応用したゼロコンプライアンス式微小力測定装置の開発,日本機械学会論文集,Vol.87, No.901, (2021), DOI: 10.1299/transjsme.21-00122.

(12) 牛嶋哲朗,プリテンショナー付き車両の前面衝突時胸部減速度解析手法に関する考察,

日本機械学会論文集,Vol.87, No.895, (2021), DOI: 10.1299/transjsme.20-00206.

(13) 酒井英樹,ヨー共振モードについての基礎的研究(ヨー共振モードの車速による変化),日本機械学会論文集,Vol.87, No.902, (2021), DOI: 10.1299/transjsme.21-00068.

(14) 豊島貴行,松澤俊明,穂高武,樋口英生,タイヤ物理特性モデルのトレッド部のモデル化に関する研究(TM Tire Model の理論的妥当性の検証),日本機械学会論文集,Vol.87, No.898, (2021), DOI: 10.1299/transjsme.21-00003.

(15) 河田哲明,河野忠士,佐久間均,低速および高速走行時のタイヤコーナリングフォースとセルフアライニングトルクに関する研究,日本機械学会論文集,Vol.87, No.901, (2021), DOI: 10.1299/transjsme.21-00193.

(16) 番場雅典,柳澤秀吉,情報利得を用いた操作主体感の数理モデリング(応答遅れ時間を用いた証),日本機械学会論文集,Vol.87, No.893, (2021), DOI: 10.1299/transjsme.20-00035.

(17) 増田慶,藤井康夫,毛利宏,Human-Centered Shared Control による人間と機械の競合抑制,日本機械学会論文集,Vol.87, No.899, (2021), DOI: 10.1299/transjsme.21-00026.

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21.2 鉄道

21.2.1 概況

国土交通省ホームページの鉄道車両等生産動態統計調査月報(1)によると,2021年1月から12月の1年間の車両生産数は,総生産数1782両(内新幹線車両は358両)であった.また,国内向け車両が1649両,輸出向け車両は133両であった.2020年1年間の生産数は,1861両(内新幹線車両280両,国内向け:1639両,輸出向け:222両)であり,前年と比べ国内向けはやや増加したものの,輸出向けは減少した.

2021年の鉄道業界も,2020年春から世界的に広まった新型コロナウイルス感染症の影響を大きく受けた.新幹線から都市圏まで大幅な需要の消失という事態を受けて鉄道旅客各社は対応に苦慮し,終電の繰り上げや一部列車の運転取りやめ,臨時列車化などにより輸送体制の大幅な見直しを迫られた.

本会に関連する行事としては,11月23~25日には第9回鉄道技術国際シンポジウム(STECH2021)が第7回鉄道技術展と同時開催され,国内外を問わず鉄道分野の研究開発成果が数多く報告された.一般講演と招待講演はオンライン,基調講演は現地(幕張メッセ)で実施するハイブリッド方式で開催された.また12月1~3日には,第30回交通・物流部門大会(TRANSLOG2021)と第28回鉄道技術連合シンポジウム(J-RAIL2021)がオンライン形式で合同開催された.

21.2.2 新幹線・リニアモーターカー

北海道新幹線は2020年12月31日~2021年1月4日までの5日間,青函トンネル内を最高速度210km/hで初めて営業運転した.貨物列車とのすれ違いが発生するため,新在共用走行区間においては速度140km/h運転で開業したが,2019年3月からは青函トンネル内のみ速度160km/hに引き上げて運行している.今回は貨物列車の運転が少ない年末年始に青函トンネル区間において新幹線と貨物列車がすれ違わない時間帯を設定し,速度210km/hで営業運転することで,東京~新函館北斗間の到達時分を3分短縮したものである(2)

2月13日には最大深度6の福島県沖地震が発生し,新白河~古川間の東北新幹線設備が被災した.深夜時間帯に発生したため同区間に在線列車はなかったが,電柱の折損20本,電柱のひび割れや傾斜他約40本,架線断線6本,高架橋の柱損傷10本などの大きな被害が確認された.地震翌日からは那須塩原~盛岡間が運転見合わせとなったが,16日に一ノ関~盛岡間,22日に仙台~一ノ関間,24日に那須塩原~仙台間で運転を再開して全線再開に至った(3),(4)

JR東日本によるオール2階建て新幹線車両のE4系が,10月1日に定期運用を終了した.16両編成時に1634人の世界最大級の座席数を有するE4系は1997年に東北新幹線で営業運転を開始し,2014年からは上越新幹線のみで運用されていたが,E7系に置き換えられることになったものである.この取り扱いに伴い,1985年に運転開始した100系以来続いてきた新幹線の2階建て車両は,定期運用から姿を消すことになった(5)

JR東日本は10月19日~11月17日までの延べ11日間,新幹線の自動運転の試験を実施した.新潟駅から新潟新幹線車両センターまでの片道約5kmの回送線において,E7系の回送列車が最高速度110km/hで1日最大3往復したものである.新幹線の営業車両を使った自動走行試験は,全国で初めてであった.試験結果は良好であり,今後も実用化に向けて検証を重ねていく方針とされている(6)

21.2.3 在来鉄道・都市鉄道

2021年8月と10月には,列車内で傷害事件が相次いだ.8月6日には走行中の小田急線車内で包丁を持った男が乗客を襲い10人が重軽傷を負い,また10月31日には走行中の京王線車内で男が乗客を刺したうえで,ライターオイルをまいて火をつける事件が発生した.この京王線車内傷害事件においては,緊急停止した列車のドアとホームドア位置がずれたために車掌がドアを開けず,乗客の避難を妨げる結果となった.本事件を受けて,駅停車時にホームドアと列車のドアがずれている場合の対応として,ホームドアと列車のドアの双方を開けて乗客を安全に誘導・救出することを基本とするように国土交通省は鉄道事業者に指示した.また,複数の非常通報装置のボタンが押され,かつ内容が確認できない場合は緊急事態と認識し,当該列車は速やかに適切な箇所に停止させることを基本とすることも指示した(7)

JR東日本は12月7日,首都圏の輸送システムの変革について発表した.運行管理と列車制御の融合と高機能化により,旅客の需要に応じたオンデマンドな輸送サービスの提供と効率的でサステナブルな鉄道運営を目指したものである.具体的には山手線と京浜東北線の一部区間において無線式列車制御システムATACSを導入し,高性能化した自動列車運転装置ATOと連携して線区トータルでの効率的な運転を実現する.また,山手線,京浜東北・根岸線,南武線,横浜線,常磐線各駅停車などにおいてはワンマン運転を導入することとし,必要な車両改造工事や駅設備工事を進める.ATACS導入・ATO高性能化は2028~2031年頃の使用開始,ワンマン運転は2025~2030年頃の導入を目指すとした(8)

阿佐海岸鉄道は12月25日,デュアル・モード・ビークルDMVでの営業運転を開始した.阿波海南駅から甲浦駅までの約10kmを鉄道モードで,その他の約5kmをバスモードで運行することを基本としている.DMVは約80年前からイギリスやドイツなどで開発が試みられてきたが実用化には至っておらず,今回が世界で初めてのDMVの本格営業運行になる(9)

21.2.4 海外における動向

2021年10月31日から11月13日にかけて気候変動枠組条約締約国会議COP26が英国で開催されたこともあり,欧州車両メーカーの脱炭素指向が強まった.アルストム(仏)は,英国初の水素燃料車両の納入を目指し,同国の主要鉄道車両リース会社と協力覚書を締結した.水素燃料列車10編成を製作予定で,2022年初頭に本契約締結の見込みである(10).またシーメンス(独)は,ベルリン近郊の鉄道会社と2両編成のバッテリー車両31編成の納入・保守契約を締結した.同車両は非電化区間を90km以上走行可能で,電化区間においては走行中に充電可能である.2024年内に運転開始予定とされる(11)

〔太田 衆一郎 東海旅客鉄道(株)〕

参考文献

(1) 鉄道車両等生産動態統計調査,国土交通省, https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&toukei=00600310(参照日2021年3月31日)

(2) 北海道新幹線速度向上の取り組みについて~青函トンネル内年末年始期間の時速210km営業運転~,JR北海道,https://www.jrhokkaido.co.jp/CM/Info/press/pdf/20201014_KO_speedup-1.pdf(参照日2021年3月31日)

(3) 福島県沖を震源とする地震による東北新幹線の被災状況と今後の見通しについて, JR東日本,https://www.jreast.co.jp/press/2020/20210214_ho01.pdf(参照日2021年3月31日)

(4) 福島県沖地震に伴う東北新幹線の被害と復旧状況等について,JR東日本,https://www.jreast.co.jp/press/2020/20210226_ho05.pdf(参照日2021年3月31日)

(5) さよならMAX,鉄道ジャーナル第55巻第12号,pp.8-15.

(6) JR東日本・運転士不足に備え新幹線自動運転を公開,日本経済新聞,https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC16CRY0W1A111C2000000/ (参照日2021年3月31日)

(7) 京王線車内傷害事件等の発生を受けた対策をとりまとめました,国土交通省,https://www.mlit.go.jp/report/press/tetsudo01_hh_000167.html (参照日2021年3月31日)

(8) 首都圏の輸送システムの変革を進めます,JR東日本,https://www.jreast.co.jp/press/2020/20211207_ho03.pdf(参照日2021年3月31日)

(9) DMV(デュアル・モード・ビークル)とは?,阿佐海岸鉄道株式会社,https://asatetsu.com/archives/156/(参照日2021年3月31日)

(10) Agreement signed for Britain’s first new hydrogen train, International Railway Journal, https://www.railjournal.com/fleet/agreement-signed-for-britains-first-new-hydrpgen/train/(参照日2021年3月31日)

(11) Siemens to build 31 battery-electric trains for VBB network, International Railway Journal, https://www.railjournal.com/fleet/siemens-to-build-31-battery-electric-trains-for-vbb-network/(参照日2021年3月31日)

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21.3 航空宇宙

21.3.1 概況

(一社)日本航空宇宙工業会によると,2021年の航空機生産額は2020年より3,100億円(21.1%)減の1兆1598億円となった(1).2010年以降概ね増額基調が続き,2019年には過去最高の1兆8,569億円となったが,新型コロナウイルス感染症の影響により,2020年と同様に大幅減となった(2).また,国土交通省航空局によると,2021年12月末の登録航空機数は前年度より14機減の2,843機となり,2020年に引き続きわずかな減少となった(3).日本政府観光局(JNTO)によると,2021年の訪日外客数は前年比94.0%減の245,900人であり,2019年(2年前)と比較すると99.3%減を記録した(4).新型コロナウイルス感染症に関する水際対策の強化に伴い,外国人の入国が厳しく制限されたことが数字に表れている.2022年3月1日以降,受入責任者の管理の下,観光目的以外の新規入国が認められるようになったことから,2022年の訪日外客数は増加が見込まれる(5).なお,成田空港では新型コロナウイルスの感染拡大への対策が評価され,国際空港評議会(ACI)が実施する「Airport Health Accreditation(AHA)プログラム」の認証(全世界で 200 を超える空港が取得している国際認証)を日本で初めて取得した(6)

21.3.2 航空

国内においては,2021年3月31日に宇宙航空研究開発機構(JAXA)は,日本航空機開発協会(JADC),日本航空宇宙工業会,三菱重工業,川崎重工業,SUBARUおよびIHIと我が国の超音速機技術の研究開発を連携して進めて行くための協定を締結し,Japan Supersonic Research(JSR)協議会を設置した(7).また,川崎重工業は2021年5月31日,エアバス・ヘリコプターズ社が国際共同開発したBK117ヘリコプターシリーズの最新型「H145//BK117 D-3」(以下,D-3)が,国土交通省航空局の型式証明を取得したと発表した(8).今後,救急医療,消防・防災,警察,報道,人員輸送,物資輸送などで活躍が期待される.

国外においては,2021年2月25日,Honda Aircraft Company社は,HondaJetの2020年のデリバリー数が31機となり,小型ジェット機カテゴリーにおいて4年連続で世界第1位となったことを発表した(9).また,2021年5月27日には,HondaJetの最新型として,運用性能および操縦性を向上させたHondaJet Elite Sを発表した(10).ボーイング社(米国)は2021年6月18日に737 MAX10型機の初飛行(2時間31分)に成功したと発表した (11).一方,エアバス社(欧州)は単通路機でありながら4,700nm(海里)の航続距離を有するA321XLRの胴体組み立てを開始したことを発表した(12).2023年の運航開始を目指している.

21.3.3 宇宙

2021年は「宇宙旅行元年」と呼ぶにふさわしい一年となった.SpaceX社,Blue Origin社,Virgin Galactic社(いずれも米国)が開発した宇宙船に搭乗し宇宙に行った民間人は22名となり,国を代表するいわゆる職業宇宙飛行士18名を上回った(13).特に, SpaceX社によるInspiration4(2021年9月16日打ち上げ,2021年9月18日帰還)は,民間人のみ4名が搭乗した初めての地球低軌道宇宙旅行として注目を浴びた(14)

2021年度は2名の日本人宇宙飛行士が国際宇宙ステーション(ISS)に長期滞在した.2020年11月15日に打ち上げられた野口聡一宇宙飛行士は2021年5月2日(日)15時56分(日本時間)に無事に帰還(15),2021年4月23日(金)18時49分(日本時間)に打ち上げられた星出彰彦宇宙飛行士(16)は2021年11月9日(火)12時33分(日本時間)に無事に帰還した(17)

2021年11月19日に宇宙航空研究開発機構(JAXA)は,日本人宇宙飛行士の活動の場が国際宇宙ステーション(ISS)や日本実験棟「きぼう」,そして月周回有人拠点「ゲートウェイ」や月面に拡がることを想定し,新たな日本人宇宙飛行士候補者の募集を発表した(18).多様な方々に応募してもらうため学歴,専門性・実務経験,医学的要件等の応募資格は緩和されており,5段階からなる選抜を通じて総合的な評価が行われる.最終的な選抜結果は2023年2月頃に発表される予定である.

〔今村 太郎 東京大学〕

参考文献

(1) 令和3年航空機生産実績(一社)日本航空宇宙工業会, https://www.sjac.or.jp/common/pdf/info/news319.pdf(参照日2022年3月15日)

(2)日本の航空機工業(生産額・輸出入額データ集), https://www.sjac.or.jp/common/pdf/toukei/6_datashu_R3.6.pdf(参照日2022年3月15日)

(3)登録航空機の推移(1967年(S42)から2020年(R2)まで), 国土交通省航空局, https://www.mlit.go.jp/common/001459273.xlsx(参照日2022年3月15日)

(4) 国籍/月別 訪日外客数(2003年~2022年), 日本政府観光局(JNTO), https://www.jnto.go.jp/jpn/statistics/since2003_visitor_arrivals.pdf(参照日2022年3月15日)

(5)新型コロナウイルス感染症に関する水際対策の強化に係る措置について,外務省, https://www.mofa.go.jp/mofaj/ca/fna/page4_005130.html(参照日2022年3月15日)

(6)【日本初!】成田空港の感染症対策が評価され,国際認証を取得,成田空港, https://www.naa.jp/jp/docs/20210127-AHAprogram.pdf(参照日2022年3月15日)

(7) 超音速機技術の研究開発に関する国内産業界との協定の締結について,宇宙航空研究開発機構, https://www.jaxa.jp/press/2021/06/20210616-1_j.html(参照日2022年4月3日)

(8) 最新型ヘリコプター「H145//BK117 D-3」が日本での型式証明を取得,川崎重工業, https://www.khi.co.jp/pressrelease/detail/20210531_1.html(参照日2022年4月3日)

(9)「HondaJet」が4年連続でカテゴリートップのデリバリー数を達成, https://www.honda.co.jp/news/2021/c210225b.html(参照日2022年4月3日)

(10) 最新型「HondaJet Elite S」を発表, https://www.honda.co.jp/news/2021/c210527.html(参照日2022年4月3日)

(11)Boeing Completes Successful 737-10 First Flight, https://boeing.mediaroom.com/2021-06-18-Boeing-Completes-Successful-737-10-First-Flight(参照日2022年3月23日)

(12)Airbus starts the assembly of its first A321XLR front fuselage, https://www.airbus.com/en/newsroom/news/2021-07-airbus-starts-the-assembly-of-its-first-a321xlr-front-fuselage(参照日2022年3月23日)

(13)前澤友作さん乗せた宇宙船がドッキング 日本民間人初ISS滞在へhttps://www3.nhk.or.jp/news/html/20211208/k10013380101000.html(参照日2022年4月3日)

(14)Inspiration4, https://inspiration4.com/(参照日2022年4月3日)

(15) 国際宇宙ステーション長期滞在クルー 野口聡一宇宙飛行士搭乗のクルードラゴン宇宙船(Crew-1)の帰還について, https://www.jaxa.jp/press/2021/05/20210502-1_j.html(参照日2022年4月3日)

(16) 国際宇宙ステーション長期滞在クルー星出彰彦宇宙飛行士搭乗のクルードラゴン宇宙船(Crew-2)の打上げについて, https://www.jaxa.jp/press/2021/04/20210423-1_j.html(参照日2022年4月3日)

(17) 国際宇宙ステーション長期滞在クルー星出彰彦宇宙飛行士搭乗のクルードラゴン宇宙船(Crew-2)帰還について, https://www.jaxa.jp/press/2021/11/20211109-2_j.html(参照日2022年4月3日)

(18) 2021年度 宇宙飛行士候補者の募集について, https://www.jaxa.jp/press/2021/11/20211119-1_j.html(参照日2022年4月3日)

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21.4 昇降機・遊戯施設

21.4.1 概況

日本エレベーター協会の2021年調査(1)による2020年度の国内の昇降機全体の新規設置台数は 25,478台(2019年度28,292台)であり,2015年度以降は27千台から28千台を推移していたが,2020年度はやや減少している.新規設置台数の内訳は,エレベーターが22,631台(2019年度24,435台),エスカレーターが1,186台(2019年度1,811台),小荷物専用昇降機が1,594台(2019年度1,967台),段差解消機が67台(2019年度79台)であった.建物の用途別に見ると,2016年度から2019年度までは,住宅,商業施設,事務所,工場・倉庫の昇降機は増加,駅舎・空港,学校・宗教・文化施設は現状維持しているのに対し,病院・福祉は減少している.一方,2020年度では,2019年度比で病院・福祉は一転増加しているが,他の用途では減少し,特に商業施設の減少が目立つ.

21.4.2 技術動向

国内の講演会では,ロープ横振動の共振曲線や簡易解析に関する研究,長尺物の振動抑制のための昇降行程分割手法に関する研究,テールコードの振れ挙動の解析と抑制に関する研究,ロープの張力変動の解析に関する研究,接着剤を用いたかご床構造の強度評価に関する研究,レール据付調整の最適化手法に関する研究,押しボタンの浮き出し文字形状の決定手法に関する研究(以上エレベーター関係),エスカレーター手摺のスチールワイヤ検査手法に関する研究,および漏洩磁束探傷法を用いたワイヤロープ検査手法に関する研究について,10件の発表が行われた(2021年12月:技術講演会 “昇降機・遊戯施設等の最近の技術と進歩”).

〔植田 和昌 フジテック〕

参考文献

(1)一般社団法人日本エレベーター協会, 2020 年度昇降機設置台数等調査結果報告, Elevator Journal No.35,(2021).

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21.5 荷役運搬機械

21.5.1 概要

経済産業省の生産動態統計(確報)による,2021年1月~12月の荷役運搬機械(運搬機械からエレベータ,エスカレータを除いた)生産額は,4,287億円(2020年度比7.7%,357億円減)であった.このうち,クレーンは2020年度比9.0%増,巻上機は3.9%増,コンベヤは4.1%増,機械式駐車装置は22.4%減,自動立体倉庫装置は28.9%減である.

(一社)日本産業車両協会の調査による,2021年1月~12 月のフォークリフト生産台数は11.9万台で,2020年度比10.2%増,輸出を含めた販売台数は8.8%増,国内販売台数は0.5%増の状況である.

日銀短観によると,2022年の大企業の設備投資計画はコロナ禍前対比高めの伸びになるなど,企業は積極的な投資姿勢を維持しており,設備投資は回復基調が続く見通し.

〔上田 雄一 (株)ダイフク〕

21.5.2 運搬車両

2021年の産業車両の国内生産実績は3,441億円(前年比113.1%),うち,主力のフォークリフトは2,436億円(前年比109.5%),119,477台(前年比110.2%)と,いずれも3年ぶりに増加した(表1).政府の「総合物流施策大綱2021-2025年度」が2021年6月に閣議決定され,今後取り組むべき施策として,労働力不足や非接触・非対面型の物流に資する自動化・機械化の取組の推進が掲げられたことから,産業車両の需要拡大にもつながると考えられる.

産業車両 フォークリフト
生産額(百万円) 生産台数 生産額(百万円)
2017年 328,121 113,932 230,683
2018年 361,424 121,971 251,915
2019年 328,568 110,759 227,092
2020年 304,335 108,429 222,470
2021年 344,087 119,477 243,571

フォークリフトの国内販売では,電池を搭載した電気車の割合が6年連続で全体の6割を超え,水素を燃料とする燃料電池車も国内各地で導入が進んでいる.各メーカーでは,ロボティクス,IoTや次世代電池等の新技術を取り込んだ,物流の効率化・高度化,安全の向上,環境負荷の低減・カーボンニュートラル等に貢献する製品や技術の開発が進められている.

無人搬送車システム(AGVS)の国際安全規格ISO3691-4:2020の発行を受け,対応国内規格であるJIS D6802「無人搬送車及び無人搬送車システム-安全要求事項及び検証」も2022年2月に改正発行された.

〔高瀬 健一郎  (一社)日本産業車両協会〕

参考文献

(1)フォークリフト生産・販売統計, 一般社団法人日本産業車両協会, http://www.jiva.or.jp/data.html

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