10.動力
10.1 日本のエネルギー事情
2023年度は,5月に新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけが5類感染症になるなどして,経済・社会の正常化がさらに進展した.一方で,物価上昇による実質所得の目減り,節約意識などが需要の足を引っ張った.実質国内総生産(GDP)は2022年度比+0.7%と3年連続で増加したが(経済社会総合研究所「国民経済計算」(1)),内容はあまり良くなかった.需要側を見ると,内需は最大項目の民間最終消費支出が3年ぶりに前年度割れするなど,2022年度の減りから戻した民間住宅を除き,主要項目がすべて減少した.外需は輸出増の鈍化が継続したものの,控除項目である輸入が落ち込み,結果として実質GDPの増加に寄与した.生産側を見ると,状況はセクターによりまちまちであった.サービス業では,節約行動が影響して卸売・小売業は減少したが,新型コロナウイルス感染症にかかる行動制限の緩和により,宿泊・飲食サービス業や運輸・郵便業などが回復した.他方,製造業は,自動車製造業の供給制約が緩和した輸送用機械と化学を例外として減少した.エネルギー消費に大きな影響を及ぼす気温は,年度を通じて2022年度より高め傾向であった.特に夏は冷房度日が統計が比較できる1965年度以降の最大を更新するなど非常に暑かった.冬季は3月は冷え込んだが,2月までは温暖であった.
2023年度に日本が消費したエネルギー総量を表す一次エネルギー国内供給は,2022年度比-4.1%と2年連続で減少した(資源エネルギー庁「総合エネルギー統計(速報)」(2))(図10-1-1).マクロ経済がプラス成長を記録しているなかでのこの減少率は,東日本大震災直後,節電が強く要請された2011年度(-4.5%)に比肩する大きさである.素材系業種(鉄鋼,化学,窯業・土石,紙・パルプ)をはじめとしてエネルギー多消費な製造業の生産活動が低下したことに加え,エネルギーが高価格帯にとどまり,一般物価が上昇し続けたことなども効いた.また,2月までの冬の暖かさもエネルギー消費の減少に寄与した.

図10-1-1 実質GDPと一次エネルギー国内供給
一次エネルギー国内供給の8割以上を担う化石燃料(石炭,石油,天然ガス)は,2022年度比-7.0%で,統計が比較可能な1991年度以降で最大の減少率となった(図10-1-2).石炭は-8.4%と,全エネルギーのなかで最も落ち込んだ.電力需要が減少する状況下,原子力発電や再生可能エネルギー発電が増加したことなどで,一般炭の発電用消費が大きく減少した.また,製造時に石炭コークスや石炭を大量に用いる粗鋼が減産となったことで,原料炭も減少した.石油は-5.5%と,減少率を2022年度から拡大させた.石油化学基礎製品のエチレンが内外需ともに振るわず,原料のナフサの消費が引き続き落ち込んだ.C重油を主体とする事業用発電用の消費は,2022年1月からの燃料油価格激変緩和補助の開始後は相対的な割安感が出て増加していたが,2023年1月からの電気・ガス価格激変緩和対策の開始とともに,発電用燃料油は補助対象外となったため激減した.また,高気温傾向も暖房・給湯用消費を抑制した.天然ガス等は,石炭に次ぐ減少率(-7.9%)を記録した.用途の6割を占める発電用,4割を占める都市ガス用ともに,電力,都市ガスの消費が製造業の生産活動の不振や高気温により減ったことで減少した.さらに,発電用は石炭同様に原子力発電や再生可能エネルギー発電が増加したことも効いた.

図10-1-2 一次エネルギー国内供給
非化石燃料では,水力が2022年度比-1.6%と2年連続で減少した.これに対し,水力以外の再生可能エネルギーは,固定価格買取制度を追い風に太陽光やバイオマスを中心に引き続き伸張(+5.5%),14年連続で増加した.原子力は,2基の発電プラントが東日本大震災後,新たに再稼働し,また2022年度はテロなどに備える特定重大事故等対処施設の工事や定期点検のための運転停止日数が長かった反動も加わり,+51.2%と大幅に増加した.こうしたことから,非化石燃料が一次エネルギー国内供給に占めるシェアは,2.5%ポイント上昇して19.2%と,1998年度以来の水準となった.
発電では,製造業生産活動の縮小や冬の2月までの暖かさによる電力需要減のため,総発電量は2022年度比-1.6%と,2年連続で前年度割れして9,854億kWhとなり,統計がある2010年度以降では初めて1兆kWhを下回った(図10-1-3).化石燃料火力発電量がいずれも減少した一方,化石燃料火力以外の発電量は原子力,水力以外の再生可能エネルギーが軒並み増加した.再生可能エネルギー発電の増加率では,太陽光の鈍化が続いたのに対し,地熱が大型発電所の運開を背景に+14.1%と他を抑えて最大となった.二酸化炭素(CO2)を発電時に排出しないゼロエミッション電源の比率は31.4%と,東日本大震災後では初めて30%を超えた.

図10-1-3 発電量
エネルギー起源のCO2排出は,化石燃料消費が大きく減少したことで,2022年度比-4.8%の916Mtと,1990年度以降の最少を更新した.パリ協定基準年での日本の目標(国が決定する貢献[NDC])の基準年である2013年度比では-25.9%に相当する.2030年度に-45%という目標にはともかくも,数字のうえでは接近している形である.
2024年は,賃金の引き上げはあったもののその改善幅が物価上昇に追いつかず,民間最終消費支出が低調になるなどして,実質GDPは2023年比+0.1%にとどまった(経済社会総合研究所「国民経済計算」(3)).製造業の生産活動も電子部品・デバイス工業を除けばおしなべて芳しくなく,相次いだ自動車認証問題も下押し要因となった.また,気温は高温傾向が続き,3月と12月を除き2023年を下回る月はなく,冷房需要を喚起した一方,暖房・給湯需要を減退させた.一次エネルギー国内供給は,日本エネルギー経済研究所によると-0.6%,エネルギー起源のCO2排出は-2.1%であった.
2025年2月には,第7次エネルギー基本計画(4)が閣議決定された.また「2035年度,2040年度において,温室効果ガスを2013年度からそれぞれ60%,73%削減することを目指す」とする新たなNDCが国連気候変動枠組条約事務局に提出された.2030年度目標に向けては,省エネルギーおよびエネルギー消費当たりのCO2排出原単位低減の進捗が計画に比べはかばかしくない一方,低成長がエネルギー起源CO2排出の削減に大きく寄与している.「我が国が将来にわたって豊かな国として存続し,全ての国民が希望をもって暮らせる社会を実現するためには,エネルギー安定供給,経済成長,脱炭素を同時に実現していく必要がある」と謳う第7次エネルギー基本計画が掛け声倒れに終始しないことを期待したい.
〔栁澤 明 (一財)日本エネルギー経済研究所〕
10.2 火力発電
10.2.1 日本の火力発電の動向
a.電気事業者の発電設備
2024年12月末現在の電気事業者の発電設備は合計2億6,329万kWで,その内訳は火力1億5,640万kW(構成比59.4%),原子力3,308万kW(12.6%),水力4,970万kW(18.9%)などである(表10-2-1).2024年中に完成した主な火力発電設備は2地点となっている(表10-2-2).
表10-2-1 電気事業者の発電設備(1)(出力単位:MW)
|
種別 |
2023年12月末 |
2024年12月末 |
||
| 出力 | 構成比 | 出力 | 構成比 | |
| 水力 | 49,673 | 18.7% | 49,699 | 18.9% |
| 火力 | 159,611 | 60.1% | 156,402 | 59.4% |
| 原子力 | 33,083 | 12.5% | 33,083 | 12.6% |
| 新エネルギー等 | 22,949 | 7.7% | 23,934 | 9.1% |
| その他 | 60 | 0.02% | 172 | 0.07% |
| 合計 | 265,376 | 100.0% | 263,290 | 100.0% |
(注)数字は四捨五入であるため合計は必ずしも一致しない
表10-2-2 2024年中に完成した主な火力発電設備
| 発 電 所 名 | 事 業 者 名 | 出力(MW) | 燃 料 | 完成年月 |
| 五井火力発電所
新1号機 |
五井ユナイテッドジェネレーション
合同会社 |
780 | LNG*1 | 2024/8 |
| 五井火力発電所
新2号機 |
五井ユナイテッドジェネレーション
合同会社 |
780 | LNG*1 | 2024/11 |
※1:コンバインドサイクル発電
b.自家用発電設備
2024年9月末現在の自家用発電設備は合計2,904万kWで,その内訳は火力2,090万kW(構成比72.0%),水力37万kW(1.3%),新エネルギー等(風力・太陽光など)777万kW(26.8%)などであり,昨年度と比較して新エネルギー等の発電設備が増加していることが分かる(表10-2-3).
表10-2-3 自家用発電設備(1)(出力単位:MW)
| 種別 | 2023年9月末 | 2024年9月末 | ||
| 出力 | 構成比 | 出力 | 構成比 | |
| 水力 | 393 | 1.4% | 373 | 1.3% |
| 火力 | 20,657 | 72.7% | 20,897 | 72.0% |
| 原子力 | 0 | 0.0% | 0 | 0.0% |
| 新エネルギー等 | 7,366 | 25.9% | 7,769 | 26.8% |
| 合計 | 28,416 | 100.0% | 29,039 | 100.0% |
(注)数字は四捨五入であるため合計は必ずしも一致しない
c.計画中の主な火力発電設備
今後計画されている火力発電設備(環境アセスメント手続き実施中・実施済のものなど2024年末時点で公表されているもの)のうち,主なものは6地点,738万kWである(表10-2-4).
表10-2-4 計画中の主な火力発電設備(2024年末時点)
| 発 電 所 名 | 事 業 者 名 | 出力(MW) | 完成予定年月 |
| ひびき発電所 | ひびき発電合同会社 | 620 | 2025年度 |
| 姫路天然ガス発電所 | 姫路天然ガス発電 | 622.6×3 | 2026/1,2026/5,2029/10 |
| 知多火力発電所7,8号機 | JERA | 650×2 | 2029/10,2030/1 |
| GENESIS 松島 | 電源開発 | 500 | 2028年度 |
| 石狩湾新港発電所2,3号 | 北海道電力 | 569.4×2 | 2034/12,2037/12 |
| 千葉袖ケ浦天然ガス発電所 | 千葉袖ケ浦パワー | 650×3 | 2029年度より |
d.火力発電の新技術
LNGを燃料とする発電設備では,コンバインドサイクル発電においてさらなる高効率化が図られ,現在では1,600℃級ガスタービンによる熱効率63%以上(低位発熱量基準)を達成する発電設備が運転を開始している.
近年では,カーボンニュートラルの実現に向けて温室効果ガスの排出削減に必要となるゼロ・エミッション化技術の開発や検証が進められており,燃料の水素・アンモニア専焼/転換技術やCO2の分離・回収・貯留技術(CCS Carbon dioxide Capture and Storage),回収したCO2の利用技術(CCUS:Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage)等が上げられる.
燃料の水素転換については,2023年度に東北電力新潟発電所(LNGコンバインド:10.9万kW)において1%混焼の実証試験が行われた(2).他にも三菱重工では,高砂水素パーク内の実証設備(GT コンバインド:56.6万kW)で30%混焼の実証試験が行われている(3).2024年3月からは沖縄電力吉の浦発電所(LNG GT:3.5万kW)において,30%混焼の実証試験が行われている(4).
アンモニア転換に関しては,2024年度にJERA碧南発電所(汽力:100万kW)で20%の燃料転換実証試験が行われた(5).
〔大橋 憲二 (株)JERA〕
10.2.2 海外の火力発電の動向
国連エネルギー統計2022によると,2022年末における世界の火力発電設備容量は47.0億kWで前年比0.6%増,同年中の発電電力量は18.4兆kWhで前年比1.3%の増加を記録した(1).
2023年における米国の石炭火力発電電力量は6,751億kWh(発電シェア16%)となり,対前年比19%の減少を記録した(2).また,天然ガス火力発電電力量は1兆8,061億kWh(同43%)で,対前年比7%の増加となった.米国では,天然ガス価格の低位推移に加え,環境規制の影響もあり石炭火力の相対的な競争力が低下しており,国内の石炭火力による年間発電電力量は2015年以降,低下傾向を継続している.一方で,連邦大での税制優遇措置,各州のRPS制度,太陽光モジュールなどの価格低下に支えられる形で再生可能エネルギーの導入量が増えることに伴い,一部地域においては天然ガス火力についても年間稼働率の低下,容量市場への参加容量の制限など事業環境が厳しくなりつつあり,近年の石炭火力の閉鎖に加えて,ガス火力建設計画から撤退する動きもみられる.
米国では,上記の経済性の観点に加え,脱炭素を志向する州政府や投資家の意向を受けて,多くの大手電気事業者が独自の温室効果ガス(GHG)の排出削減目標を設定し,これに伴い石炭火力の段階的廃止を図るようになってきている.米国エネルギー情報局は2024年10月時点で,2024年の石炭火力発電電力量は前年比3%程度の減少となる見通しを示している.一方,地域的には上記のような事業環境や,将来的には排出規制の議論もありながらも,天然ガス価格が低位推移していることや新設設備において高効率ガスタービン発電機が稼働することなどから,2024年の天然ガス火力の発電電力量は前年比3%程度の増大が予測されている.
一方,2025年に発足したトランプ政権では,脱炭素を推進したバイデン政権から大きく方針を変え,米国ファーストの経済政策を多く掲げて化石燃料の開発支援や環境規制の緩和など化石燃料の優遇政策を進めている.さらに,データセンター需要など電力需要の増加が見込まれている中,データセンターと天然ガス火力を併設(コロケーション)する企業も増加している.世界的に天然ガス火力は脱炭素移行への調整力とする認識に大きな変わりはなく,上記の様な政策に立脚した形で天然ガス火力を取り巻く事業環境が大きく変化する見方は少ない.
欧州では2022年のロシアによるウクライナへの軍事進攻以降,ロシアからのガス供給の減少などにより,エネルギー安全保障が強く意識されるようになった.エネルギー調達の多様化,省エネルギーの推進,再生可能エネルギー導入の加速の3つの柱を基に, 2022年に欧州委員会が打ち出した「REPower EU」政策では,ロシアからの化石燃料依存脱却を目指し,EUにおける経済・社会の脱炭素化の更なる加速を進めている.同政策に基づき,欧州の多くの国でクリーンエネルギーシフトが加速しており,太陽光・風力などの再生可能エネルギー増加が進む長期的な方向性は変化しないと見られている.その結果,2023年におけるEU27カ国合計の石炭火力発電電力量は3,192億kWh(発電シェア12%)となり,前年比29%の減少を記録した.また,天然ガス火力発電電力量は4,586億kWh(同17%)で,前年比15%の減少となった(3).
2024年には,欧州の太陽光・風力発電の拡大に伴い石炭火力が再エネを初めて下回り,石炭火力の重要性は大幅に低下した.実際,2025年1月に環境エネルギー系のシンクタンクEmberが公表したデータによると,2024年のEUにおける石炭火力発電電力量は,前年比で16%程度減少した(4).一方,エネルギー価格高騰やインフレなど欧州の経済環境に大きな影響を与える中,至近のEUエネルギー政策は域内産業の競争力強化に軸足を移しつつある.そこでは,気候変動動対策と域内産業競争力の強化を包括的な成長戦略の下で同時に達成することを目指している.脱炭素化の流れは大きく変わることがないと予想されるが,より現実的な軌道修正が図られる可能性はある.
一方,トランプ政権の火力発電に対するエネルギー政策とは異なり,火力発電は電源構成の中で位置付けが相対的に低くなりつつあるものの,低炭素エネルギー経済への移行期間において,調整力としての役割が期待されており,脱炭素化政策との両立を図る形で活用されている.
〔山中 洋和 (一社)海外電力調査会〕
10.3 原子力発電
10.3.1 日本の原子力発電の動向
a.軽水炉
わが国の原子力発電は,2024年12月現在,改良型沸騰水型軽水炉(ABWR)を含む沸騰水型軽水炉(BWR)が17基,加圧水型軽水炉(PWR)が16基の計33基が稼動し,このうち計13基が営業運転を再開している.2024年は,東北電力の女川発電所2号機が営業運転を再開した.また,3基が建設中であり,8基が計画中である(1).
表10-3-1に,最近5年間の原子力発電所の基数,合計出力及び年平均の設備利用率の推移を示す.2024年は,廃止が決定した原子炉は無く,合計出力は2020年から変わらず3308万kWであった.また,年間の平均設備利用率は2023年から上昇して30.6%となった(2).他の原子炉の運転再開についても,各電力会社からの申請に基づき,新規制基準に基づく安全性審査が進められている.
表10-3-1 最近5年間の原子力発電の推移
| 項 目 | 2020 | 2021 | 2022 | 2023 | 2024 |
| 基 数 | BWR 17
PWR 16 |
BWR 17
PWR 16 |
BWR 17
PWR 16 |
BWR 17
PWR 16 |
BWR 17
PWR 16 |
| 合計出力(万kW) | 3308 | 3308 | 3308 | 3308 | 3308 |
| 設備利用率(%) | 15.5 | 22.1 | 18.7 | 28.0 | 30.6 |
BWR : 沸騰水型軽水炉,PWR : 加圧水型軽水炉
b.新型炉
2025年2月に閣議決定された「第7次エネルギー基本計画」では,原子力を最大限活用するとし,新たな安全メカニズムを組み込んだ次世代革新炉の開発・設置,ならびに高速炉,高温ガス炉,ヒュージョンエネルギーについても実用化に向けた技術開発に継続的に取り組むことが示された.
高温ガス炉は,(国研)日本原子力研究開発機構(原子力機構)のHTTR(高温工学試験研究炉)に新たに水素製造施設を接続し,高温ガス炉と水素製造施設の安全な接続技術を確立するためのHTTR-熱利用試験を着実に進めている.2024年6月に,HTTRを用いた熱負荷変動試験と放射性ヨウ素定量評価試験を実施し,HTTR-熱利用試験や実証炉開発に資するデータを取得した(3).また,資源エネルギー庁の委託事業「高温ガス炉実証炉開発事業」では,三菱重工を中核企業として実証炉建設に向けた取り組みが進められている.日本の高温ガス炉の国際展開に向けた協力も着実に進められている.原子力機構の高温ガス炉燃料設計技術と国内民間企業の高温ガス炉燃料製造技術を基に,英国国立原子力研究所(NNL)と連携して英国で高温ガス炉用燃料製造技術を確立する計画が進められており,2024年4月に,原子力機構とNNLとで英国高温ガス炉燃料開発プログラムに係る実施覚書及びライセンス契約が締結(4)された.
国際熱核融合実験炉(ITER)計画では,主要コンポーネントの製作や真空容器セクターの修理作業などによりITER建設が進展(5)し,国内でも日本が分担する部品の製造が進められた.一方で,コロナ禍の影響等による建設遅れにより,当初2025年としていた実験開始が,2034年を目指す工程へと見直された(6).また,核融合エネルギーの早期実現を目指し,ITER計画の支援と核融合炉の原型炉の研究開発に取り組む活動(幅広いアプローチ(Broader Approach:BA)活動)を日欧共同で実施しており,(国研)量子科学技術研究開発機構では,先進超伝導トカマク装置(JT-60SA)の統合試験運転を経て,性能を向上させるための増力作業を進めている(7).
〔竹上 弘彰 (国研)日本原子力研究開発機構〕
高速炉開発の戦略ロードマップ(1)で示されたマイルストーンに従い,2023年から開始した高速炉実証炉の概念設計及び燃料サイクルの検討が進められ,2024年7月には,炉と燃料サイクルの研究開発全体を一定のレベルまで完遂するとともに,両者を統合して基本設計に繋ぐ機能を担う研究開発統合組織が,原子力機構に設置された(2).原子力機構では,同ロードマップで示された今後の開発計画に従い,高速炉実証炉の実現に向けた研究開発を,日仏・日米等の国際協力も活用して進めている.日仏協力に関しては,高速炉実証炉の概念設計に対して,仏での開発実績及び運転経験の反映を目的とした新たな協力取決めを2024年12月に締結した(3).
また,高速中性子照射場や医療用ラジオアイソトープ製造実証のための利活用が期待されている高速実験炉「常陽」は,2024年9月に茨城県及び大洗町より茨城県原子力安全協定に基づく新増設等に対する事前了解(4)を得るとともに,2024年10月には原子炉施設におけるラジオアイソトープ生産に関する研究開発のための原子炉設置変更許可を取得した(5).現在,2026年度の半ばの運転再開を目指し,安全対策強化に係る工事を進めている.
新型炉開発を含めた原子力イノベーションの実現に向けた取組みとして,経済産業省と文部科学省との連携により推進されるNEXIP(Nuclear Energy × Innovation Promotion)イニシアチブが進められている.経済産業省の補助事業の一つとして原子力機構が民間企業とともに開発を進めている浮体式免振技術があり,(国研)防災科学技術研究所との共同研究として実大三次元震動破壊実験施設(E-ディフェンス)を用いた実証試験が実施されるなど,小型モジュール炉(SMR)に向けた革新技術の開発も進展している.
〔大高 雅彦 (国研)日本原子力研究開発機構〕
c.核燃料サイクル
日本原燃(株)の六ヶ所再処理工場は,2020年7月に新規制基準への適合性確認に関する事業変更許可を取得し,現在,設計及び工事の計画の変更認可申請(2分割申請のうち第2回申請分)の審査中である.再処理工場の竣工時期は,2024年8月に「2024年度上期のできるだけ早期」から「2026年度中」に変更した.また,設工認審査対応を計画的に進めるため,同月から「説明の全体計画」を策定し,進捗管理を徹底した.なお,本計画は日本原燃(株)のホームページでも公表している.
MOX燃料工場は,2020年12月に新規制基準への適合性確認に関する事業変更許可を取得し,現在,設計及び工事の計画の変更認可申請(4分割申請のうち第2回申請分)の審査中である.MOX燃料工場の竣工時期は,2024年8月に「2024年度上期」から「2027年度中」へ変更し,現在建設工事を進めている.
ウラン濃縮工場は新型遠心機を導入し,2012年3月に生産運転を開始した.2017年5月に新規制基準への適合性確認に関する事業変更許可を取得,2022年2月に設計及び工事の計画を認可,2023年8月に新規制基準適合に係る使用前確認証等を受領し,同月に生産運転を再開した.新型遠心機については順次生産能力を拡大していく予定である.
(国研)日本原子力研究開発機構の東海再処理施設では,2018年6月に廃止措置計画の認可を受け,廃止措置段階に移行した.当面,保有する放射性廃棄物に伴うリスクの低減を最優先課題として高放射性廃液のガラス固化処理に取り組んでいる.現在ガラス固化を最短で進めるため,新型の3号溶融炉への更新を前倒しし2026年度の熱上げ開始を目指し準備を進めている.また,2020年8月より新規制基準を踏まえた地震,津波対策などの安全対策工事を実施し、2024年度に完了している.
高レベル放射性物質研究施設では,再処理技術開発としてMOX燃料の硝酸溶解挙動に係るデータの取得やMA分離の技術開発等を実施している.
プルトニウム燃料技術開発施設では,MOX燃料に関する研究開発,核燃料施設の廃止措置及びプルトニウム系廃棄物の処理に関する技術開発等を実施するとともに,日本原燃(株)への技術協力を行っている.
〔竹内 謙二 (国研)日本原子力研究開発機構〕
10.3.2 海外の原子力発電の動向(1)
2025年1月1日現在,世界で営業運転中の原子力発電所は436基,4億1,698.6万kWで,世界の原子力発電設備容量は,過去最高を記録した. 中国で2基,インド,韓国,アラブ首長国連邦(UAE),米国で各1基の合計6基,706.4万kWが営業運転を開始した一方,カナダで2基,ロシア,台湾で各1基の合計4基,306.7万kWが閉鎖された.
中国では,中国が独自開発した第3世代PWR「華龍一号」(HPR1000)を採用している防城港4号機と漳州1号機が営業運転を開始した.韓国では4基目のAPR-1400となる新ハヌル2号機が2024年4月に営業運転を開始,韓国の原子力発電所輸出の第1号となったUAEのバラカ発電所では,4号機が9月に営業運転を開始したことにより,同発電所は全基が運転中となった.インドでは2基目の70万kW級国産重水炉となるカクラパー4号機が3月に営業運転を開始した.米国ではアルビン・W・ボーグル4号機(PWR=AP1000,125.0万kW)が2023年7月の同3号機に続き,2024年4月に営業運転を開始した.
2024年中,9基1,100.7万kWの原子力発電所が着工し,世界で「建設中」の原子力発電所は合計75基,7,841万kWとなった.新たに着工した9基のうち,中国では,中国版AP1000の標準設計CAP1000を採用する廉江2号機,徐大堡2号機,華龍一号を採用する漳州Ⅱ-1,2号機,寧徳5号機,石島湾1号機の6基が着工した.エジプトでは,2022年のエルダバ1,2号機,2023年の同3号機に続き,4号機が着工した(エルダバ1~4号機いずれもVVER-1200).ロシアでは,レニングラードⅡ-3号機(VVER-1200)の建設が開始され,パキスタンでは,中国の華龍一号を採用したチャシュマ5号機が新たに着工した.中国のパキスタンへの華龍一号の輸出は,カラチ2,3号機に続く3基目となり,中国の国際展開が注目される.2024年に世界で着工した9基はすべて中国製かロシア製であり,中国とロシアが原子力発電所の新設を引き続き主導している.
また,中国では,華龍一号を採用する徐圩1,2号機,招遠1,2号機,三澳3,4号機,66万kWの高温ガス炉(HTGR)を採用する徐圩3号機,中国版AP1000の標準設計CAP1000を採用する広西白龍1,2号機の9基が新規計画入りした.ウズベキスタンでは,東部ジザク州を建設予定サイトとする6基のSMR(RITM-200N,各5.5万kW)が計画入りし,世界で「計画中」の原子力発電所は合計95基,9,452.3万kWとなった.
一方,カナダでは、ピッカリング1(A)号機(PHWR=CANDU500A,54.2万kW)が2024年10月,ピッカリング4(A)号機(同)が同年12月にそれぞれ40年間の運転を終え、永久閉鎖となった.ロシアでは,クルスク2号機(LWGR=RBMK-1000)が約45年間の運転期間を満了し,2024年1月に閉鎖した.2025年までの脱原子力政策をめざす台湾では,2024年7月に馬鞍山1号機(PWR,98.3万kW)が閉鎖され,残る原子炉は,馬鞍山2号機(PWR,97.5万kW)の1基だけとなった.同機は,2025年5月に40年の運転期間を満了し,永久閉鎖した.
〔津田 容子 (一社)日本原子力産業協会〕
10.4 新エネルギー技術
10.4.1 燃料電池
(一財)コージェネレーション・エネルギー高度利用センター(コージェネ財団)によると,家庭用燃料電池(エネファーム)の2024年度の販売台数は3.0万台であり,2021年度の4.0万台,2022年度の4.7万台,2023年度の3.9万台とこれまでの4万台レベルから減少した.固体酸化物形では,マイクロガスタービンと組み合わせた加圧ハイブリッド型250kW級システムが2017年度に市場投入された.りん酸形も百kW級定置用システムが内外で着実に導入されている.これら燃料電池は都市ガスを主に燃料とするが,水素を燃料とする燃料電池システムとして,東芝エネルギーシステムズが100kWを2016年から,パナソニックが5kWを2021年,9.9kWを2024年から,トヨタエナジーソリューションが50kWを2022年から供給している.一方,燃料電池自動車に関しては,2015年にトヨタMIRAIの販売が,2016年にホンダCLARITYのリースが開始され,2020年には新型MIRAIが販売された.燃料電池自動車の普及目標として2020年までに4万台程度,2025年までに20万台程度,2030年までに80万台程度の普及が掲げられている.また,水素ステーションに関しては,トヨタやENEOSなど11社が日本水素ステーションネットワークを2018年2月に設立し,水素ステーション普及を推進している.水素ステーションの普及目標は,2025年度までに320カ所程度,2030年度までに1000カ所程度であるが,2024年度の設置数は154カ所と2021年度の168カ所,2022年度の163カ所,2023年度の164カ所と比較して微減した.
〔麦倉 良啓 (一財)電力中央研究所〕
10.4.2 太陽電池
(一社)太陽光発電協会(JPEA)によると(1),2023年度の日本における太陽電池モジュールの総出荷量は約5,909MW(2022年度比116%)であった.総出荷量は2014年(9,872MW)をピークに,以降は減少傾向となった.2017年度(5,670MW)を底に,2018年度(5,914MW),2019年度(6,430MW)と一時的に増加傾向が見られたが,2020年度(5,312MW),2021年度(5,134MW),2022年度(5,106MW)と僅かながら連続で前年比減少となり,2023年度は久しぶりの増加となった.太陽電池モジュールの総出荷量のうち,国内向け出荷量は5,843MW(2022年度比115%)で総出荷量の99%を占め,ほとんどが国内向け出荷となった.2023年度の用途別(国内)では,住宅用が1,359MW(2022暦年比113%),非住宅用が4,483MW(2022暦年比117%)と共に増加であった.
固定価格買取制度において50kW以上で入札制度対象外の20年間の調達価格は,2021年度11円/kWh,2022年度10円/kWh,2023年度9.5円/kWh,2024年度9.2円/kWh,2025年度8.9円/kWhと引き下げが続いており,2025年度は8円台となっている.2023年10月から新たに設定された屋根設置については,2025年10月以降,10kW以上の屋根設置において買取期間20年のうち当初5年間を高く設定,住宅用においては買取期間10年間のうち当初4年間を高く設定するなど,より投資回収の予見性が高まるような価格設定の変更が行われている.
技術動向としては,「2050年カーボンニュートラル」に向けた技術開発となる「グリーンイノベーション基金」において,ペロブスカイト型太陽電池を中心に技術開発が活発化しており(2),今後は軽量・フレキシブルといった特徴を活かした分野に加えて,タンデム型のTopセルにペロブスカイトを用いる高効率太陽電池についても技術開発が活発化していく状況である.経済産業省資源エネルギー庁は,次世代型太陽電池の導入拡大及び産業競争力強化に向けた官民協議会を開催し,2024年11月に「次世代型太陽電池戦略」をまとめた.2030年を待たずにGW級の生産体制の構築を目指すなど,技術開発と市場創出,量産体制の構築を同時に進める戦略(3)が示された.
〔植田 譲 東京理科大学〕
10.4.3 バイオマス・廃棄物発電
環境省環境再生・資源循環局廃棄物適正処理推進課資料「一般廃棄物処理事業実態調査の結果(令和5年度)について」(1)によると,2023年度の国内ごみ排出量は3,897万t(2022年度4,034万tに対して3.4%減)で,2014年度以降減少傾向が続いている.直接焼却量は3,024万t(直接焼却率は80.3%)で,2014年度以降概ね減少傾向である.ごみ焼却施設数は1,004施設で,このうち発電設備を有する施設数は411と,全ごみ焼却施設の40.9%を占めている.発電能力合計は223万kW,平均発電効率は14.16%である.特に最近は,高温高圧ボイラ(蒸気条件:4MPa×400℃~6MPa×450℃級)の採用による高効率発電が進んでいる.2021年4月22日の第45回地球温暖化対策推進本部での野心的な削減目標に端を発し,CCUS(二酸化炭素回収・有効利用・貯留)を前提とした廃棄物処理システム・施設のあり方も検討が進みつつある(2).国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構は,カーボンニュートラル型廃棄物処理システムへの転換による炭素循環の実現を目指して,グリーンイノベーション基金事業「廃棄物・資源循環分野におけるカーボンニュートラル実現」に着手した(3).2024年8月に閣議決定された「第五次循環型社会形成推進基本計画」では,循環経済への移行を前面に打ち出しつつ,気候変動や生物多様性保全といった環境面に加え,経済安全保障や産業競争力強化,地方創生,質の高い暮らしの実現への貢献も折り込まれている(4).
2011年7月に施行された「再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT:Feed in Tariff)」は,2017年4月に改正されたが,この制度によりバイオマス発電の導入が進み,2024年9月末の時点で認定量は837万kWとなっている(5).2020年6月に導入が決まった「FIP制度(Feed in Premium)」は2022年4月からスタートしたが,これはFIT制度のように固定価格で買い取るのではなく,再エネ発電事業者が卸市場などで売電したとき,その売電価格に対して一定のプレミアム(補助額)を上乗せすることで再エネ導入を促進する取り組みである(6).2023年度調達価格等算定委員会の検討で,バイオマス発電においてもFIP制度の範囲が拡大され,2025年度以降,一般木質等のバイオマス発電区分は1,000kW以上でFIPのみとなる(7).バイオマス発電では,2024年2月時点でFIP制度が新規認定で1件1.0万kW,移行で27件32.2万kWとなっている(8).2023~2024年にかけて稼働した主な木質バイオマス等の発電事業は,多くが新型コロナなどの影響で予定より稼働が遅れた.2017年にかけこみ認定された事業の稼働期限が迫っていることもり,輸入バイオマスを使う大規模な発電所が相次いで稼働を始めた(7).
〔今田 潤司 三菱重工業株式会社〕
10.4.4 水素利用技術
「エネルギー基本計画」(2025年2月に閣議決定)(1)において,「水素はアンモニアや合成メタン,合成燃料の基盤となる材料であり,これら水素等は幅広い分野(鉄鋼,化学,モビリティ分野,産業熱,発電等)での活用が期待される,2050年カーボンニュートラル実現に向けた鍵となるエネルギーである」とされている.水素社会の実現に向け,日本政府は2023年6月に「水素産業戦略」と「水素保安戦略」を重要な柱として盛り込んだ新しい「水素基本戦略」を公表(2),2024年10月には,低炭素水素等の供給及び利用を早期に促進することを目的とした「水素社会推進法」が施行された(3).
国内の燃料電池自動車の保有台数は2024年3月末現在で7,748台(4),運用中の水素ステーションは2025年3月現在で154箇所となった(5).乗用車に加え,大型トラックや鉄道,船舶,建設機械,農業用機械,産業用機械などの大型・商用モビリティ(HDV)での水素利用の検討が進められており,国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は,2025年2月に「FCV・HDV用燃料電池技術開発ロードマップ」の改訂版を発表した(6).水素エンジン車の開発も進められており,2023年5月に水素小型エンジンの開発と普及を目指した技術研究組合が設立された(7).
低炭素水素の製造技術として,水電解による水素製造技術の開発が活発に進められており,NEDOは2025年3月に「水電解技術ロードマップ」を策定し公表した(8).高温ガス炉による低炭素水素製造技術の研究も進められている(9).
大規模な水素利用技術として,水素運搬船を含む水素輸送設備の大型化や水素発電(混焼,専焼)の実機実証(10),製鉄プロセスにおける水素利用(11),水素燃料船の開発(12),水素航空機に向けた技術開発(13),再エネ由来電力を活用した水電解による水素製造技術開発(14),水素とCO2からの合成燃料の開発(15),製造分野における熱プロセスの脱炭素化のための水素利用技術の開発(16)等が進められている.
これらの個別の用途での水素利用技術の開発に加え,コンビナートや港湾などの特定地域において大規模に水素を利用する統合的な水素利活用モデルの検討が国内外で進められており,国内においても国交省によるカーボンニュートラルポート形成に向けた取り組み(17)等が進められている.
〔飯田 重樹 (一財)エネルギー総合工学研究所〕
10.4.5 風力発電
2024年末時点で風力発電(陸上+洋上)は,世界の年間電力供給量の10%(英国を含む欧州では20%)を占めており,再生可能エネルギーの中では大型水力発電に次ぐ発電量となっている.
世界全体の風力発電の累積導入量は,2024年末で11億3,600万kWと2023年末の10億2,100万kWから11%増加した.この累計値は日本の原子力・火力を含む発電設備の合計3億kWの3倍以上である.2024年の新規導入は11,700万kW/年で,2023年の11,659万W/年から0.4%増加した(表10-4-1,図10-4-1)(1)(2).
表10-4-1 世界の風力発電の導入状況(陸上と洋上の合計)(1)(2)
| 2023年 | 2024年 | ||||
| 新規導入 | 年末累計 | 新規導入 | 年末累計 | 年成長率 | |
| 世 界 | 116.6 GW | 1021 GW | 117.0 GW | 1136 GW | 0.4 % |
| EU(含む英国) | 18.3 GW | 272 GW | 16.5 GW | 272 GW | ‐10 % |
| 中 国 | 75.7 GW ① | 441 GW ① | 79.8 GW ① | 521 GW ① | 18 % |
| 米 国 | 6.4 GW ② | 150 GW ② | 4.1 GW ② | 154 GW ② | 3 % |
| ドイツ | 3.8 GW ④ | 69.5 GW ③ | 4.0 GW ③ | 72.8 GW ③ | 6 % |
| インド | 2.8 GW ⑤ | 44.7 GW ④ | 3.4 GW ④ | 48.2 GW ④ | 8 % |
| ブラジル | 4.8 GW ③ | 30.4 GW ⑥ | 3.3 GW ⑤ | 33.7 GW ⑤ | 11 % |
| 英 国 | 1.4 GW ➉ | 29.6 GW ⑦ | 1.9 GW ⑥ | 31.5 GW ⑥ | 6 % |
| スペイン | 0.8 GW | 30.6 GW ⑤ | 1.2 GW ⑩ | 31.3 GW ⑦ | 4 % |
| フランス | 1.8 GW ⑧ | 22.8 GW ⑧ | 1.7 GW ⑦ | 24.6 GW ⑧ | 8 % |
| カナダ | 1.7 GW ⑨ | 17.0 GW ⑨ | 1.4 GW ⑧ | 18.4 GW ⑨ | 8 % |
| スウェーデン | 2.0 GW ⑥ | 16.4 GW ➉ | 1.2 GW ⑨ | 17.6 GW ➉ | 7 % |
| 日 本 | 0.5 GW | 5.2 GW | 0.7 GW | 5.8 GW | 13 % |

図10-4-1 世界と日本の風力発電の新規導入量(単位はGW/年)(1)(3)
洋上風力発電(主に着床式)の累計は2024年末で8,316万kWと,2023年末の7,516万kWから11%増加した.新規導入は800万kW/年で,2023年の1,085万kW/年から26%減となった(表10-4-2)(4).洋上風力発電が全体に占める比率は,累積で7%(2023年も7%)新規で7%(同9%)である.建設単価は,陸上で約30万円/kW,洋上で約50万円/kWなので,世界全体の建設費はそれぞれ約37兆円/年,約4兆円/年に相当する.部品製造,運転保守等の波及効果を含めると更にその2~3倍の経済効果がある.
表10-4-2 世界の洋上風力発電の導入状況(1)(3)(4)
| 2023年 | 2024年 | ||||
| 新規導入 | 年末累計 | 新規導入 | 年末累計 | 年成長率 | |
| 世 界 | 10.9 GW | 75.2 GW | 8.0 GW | 83.2 GW | 11 % |
| EU(含む英国) | 3.8 GW | 34.0 GW | 2.7 GW | 36.7 GW | 8 % |
| 中 国 | 6.3 GW ① | 37.8 GW ① | 4.0 GW ① | 41.8 GW ① | 11 % |
| 英 国 | 0.8 GW ③ | 14.8 GW ② | 1.2 GW ② | 15.9 GW ② | 8 % |
| ドイツ | 0.3 GW ⑦ | 8.3 GW ③ | 0.7 GW ④ | 9.0 GW ③ | 9 % |
| オランダ | 1.9 GW ② | 4.8 GW ④ | 0.1 GW ⑥ | 4.9 GW ④ | 3 % |
| デンマーク | 0.3 GW ⑥ | 2.7 GW ⑤ | 0.0 GW | 2.7 GW ⑤ | 0 % |
| ベルギー | 0.0 GW | 2.3 GW ⑥ | 0.0 GW | 2.3 GW ⑥ | 0 % |
| 台 湾 | 0.7 GW ④ | 2.1 GW ⑦ | 0.9 GW ③ | 3.0 GW ⑦ | 1.4倍 |
| ベトナム | 0.0 GW | 0.9 GW ⑧ | 0.0 GW | 0.9 GW ⑧ | 0 % |
| フランス | 0.4 GW ⑤ | 0.8 GW ⑨ | 0.7 GW ⑤ | 1.5 GW ⑨ | 1.8倍 |
| 韓 国 | 0.0 GW | 0.1 GW | 0.1 GW ⑦ | 0.2 GW | 1.7倍 |
| 日 本 | 0.1 GW | 0.2 GW | 0.1 GW ⑦ | 0.3 GW | 1.6倍 |
浮体式洋上風力発電は,2024年末時点で運転中のものは世界7か国(ノルウェー,ポルトガル,日本,フランス,英国,中国,スペイン)の13サイトで221.4MW・33基とまだ少ないが,4つの準商用案件(基数は3~11基,総出力は25.2~94.6kW,形式はスパー型とセミサブ型が各2件)を含む.欧州,スペイン,米国西海岸,韓国等で百万kW級の入札が実施されている.
日本の風力発電の累積導入量は,2024年末で584万kW(2023年末から13%増),新規導入量は66.3万kW/年(2023年の36%増)と急増しているが(3),共にまだ世界全体の約1/200に過ぎない(図10-4-1).年間電力供給に占める比率も1%と小さい.しかし今後は毎年1GWを超える新規導入が見込まれている.2023年3月に風力発電用の北海道北部送電線(稚内市-中川町間,容量300MW)が供用を開始した(5).同送電線に連系する複数の大型風力発電所の運転が始まる.洋上風力発電も,2026年には北九州市響灘で220MW,2028年以降は一般海域(領海内)で毎年1~2GWが新規に導入される.さらに2030年代には排他的経済水域(EEZ)での浮体式洋上風力開発の本格化が期待されている(6).
洋上・陸上を問わず,風車の大形化が急速に進んでいる(図10-4-2).風車は大型回転機械であり,発電能力がロータの受風面積(寸法の2乗),機器の重量は立体なので寸法の3乗に比例するため,比例設計で大型化するとコストと強度は厳しくなる(2乗3乗則)(7).しかし風力発電では,輸送・建設や付帯工事(いわゆるBOP:Balance of plant)は,機器寸法以上に設置基数に依存するため,より大型の風車を採用して設置基数を削減した方が工数が削減でき,初期費用(Capex)やメンテナンス費が割安になる.このため,輸送と建設のインフラ(クレーン,トレーラー,関連船舶)が許す範囲で最も大きな風車が採用され易い.市場が好況であればインフラも増強が続くため,現時点では風車の大型化はまだ収まる様子は認められない.この傾向は建設費比率の高い洋上風力発電ではより顕著である.

図10-4-2 世界と日本の風車の大型化の状況(データ出典:WEC,WindEurope,CWEA,JWPA)
※縦軸は新規設置洋上風車の定格出力(単位MW)
世界で新規導入される洋上風車の平均サイズは,2024年設置分で約10MW(ロータ直径で約160~180m)に達している(図10-4-2,表10-4-3).日本でも,2024年1月に北海道の石狩湾新港洋上風力のSGRE(Siemens Gamesa)社の8MW風車(ロータ径167m)×14基,計10万kW(図10-4-3)が運開(8),2025年度中には福岡県北九州市の響灘洋上風力でVestas社の9.6MW×25基,計22万kWが竣工する.欧州では既に15MW級風車の商用導入(ドイツのEnBW He Dreiht洋上風力,Vestas社の15MW風車×64基=960MW,2025年運開予定)が始まっており(4),2,3年後には平均サイズが15MWに到達するのは確実である.さらに2028年運開予定のドイツのWaterkant洋上風力の一部を中国Mingyang社が18.5MW風車×16基で受注しており(9),大型化がどこで上限に達するかはまだ見通せていない.2024年時点では,中国海南島の試験サイトに建つMingyang社の22MW風車(ロータ径310m)が世界最大(10),デンマーク北部の試験場に建つスペイン/ドイツのSGRE社の21.5MW風車(ロータ径276m)が世界2位である(11).中国ではさらにDongfang社が工場内で26MW風車を出荷準備中,35MW用と40MW用の試験設備が建設されている.
表10-4-3 最近開発された定格出力10MW以上の洋上風車(JWPA調べ)
| 風車メーカ(国名) | 風車機種名 | 定格出力 | ロータ | ステータス |
| Vestas(デンマーク) | V236 15.0 | 15 MW | 236 m | 商用 |
| SiemensGamesa/SGRE, (スペイン・ドイツ) |
SG11.0-200 DD | 11 MW | 200 m | 商用 |
| SG14.0-236 DD | 14~15 MW | 236 m | 商用 | |
| SG21-276 DD | 21.5 MW | 276 m | 試運転中 | |
| GE Vernova (米国) |
Haliade-X-220 | 12~14.7 MW | 220 m | 商用 |
| Haliade-X-250 | 15.5 MW | 250 m | 商用 | |
| Mingyang (中国) |
MySE14.0-260 | 14 MW | 260 m | 商用 |
| MySE18.X-280+ | 18~20 MW | 280+ m | 商用 | |
| MySE22-310+ | 22 MW | 310+ m | 試運転中 | |
| Goldwind (中国) |
GWH252-16.0 | 16 MW | 252 m | 商用 |
| GWH300-20(25) | 20/25 MW | 300 m | 初号機工場出荷 | |
| Dongfang/DEC (中国) |
– | 18 MW | 260 m | 商用 |
| – | 26 MW | 310+ m | 初号機工場出荷 |

図10-4-3 石狩湾新港洋上風力(執筆者撮影)
大型化は陸用風車でも顕著であり,世界では新規設置風車の平均サイズは5MWを超えており,日本でも3.7MWになっている.風車メーカは生産の中心を販売量の多い5~7MW級に移しており,3MW(ロータ径約100m)以下の生産ラインは既に廃止されている.山岳の多い日本では,山間部の屈曲した道路のブレード輸送に制約があり,輸送可能な大きさの風車が手に入らない状況が顕在化しつつある.
〔上田 悦紀 (一社)日本風力発電協会〕
10.4.6 地熱発電
2050年のカーボンニュートラル実現に向けて,再生可能エネルギー(再エネ)発電への期待が高まっている.第7次エネルギー基本計画が2025年2月18日に閣議決定され,世界第3位の地熱資源ポテンシャルを有する我が国では,燃料を輸入に頼らず,気象状況や季節変動,時間帯等の影響を受けることがなく,安定的に発電を行うことが可能な再エネベースロード電源である地熱発電に大きな期待がかかっている(1).
近年の地熱発電開発では,2019年5月に大規模開発としては23年ぶりの山葵沢地熱発電所(秋田県,出力46,199kW)が運転を開始した他,松尾八幡平地熱発電所(岩手県,出力7,499kW),安比地熱発電所(岩手県,出力14,900kW)や,バイナリー発電では,滝上バイナリー発電所(大分県,出力5,050kW)及び山川バイナリー発電所(鹿児島県,出力4,990kW)が運転を開始している.さらに,かたつむり山発電所(秋田県),木地山地熱発電所(仮称)(秋田県)等で大規模な新規地熱発電開発が進捗している.
一方,「エネルギー需給の見通し」(2)では,導入目標1.5GW(現状の2倍以上)を目指しており,さらなる導入拡大が期待されている.また,「グリーン成長戦略」(3)における長期の取り組みとして超臨界地熱発電が選定されている.なお,地熱発電開発における法規制等の運用見直し(4)(5)の動きも進んでいる.
このような背景において,(国研)新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)では,「地熱発電導入拡大研究開発」(6) プロジェクトを実施し,以下の研究開発項目3項目を柱として地熱発電導入量増大の早期実現を図っている.
「超臨界地熱資源技術開発」により,従来の地熱発電に比べてさらに深部の熱源を利用することで,大規模な出力が期待できる超臨界地熱発電の実現に向けた有望地域の地熱資源量評価と探査技術の開発を進め,地熱資源のポテンシャル拡大に取り組んでいる(図10-4-4).また,地域共生や環境保全に資する環境アセスメントの改善を実現するための「環境保全対策技術開発」,IoT-AI技術等を活用した地熱発電所の生産量の増大やコスト削減及び利用率向上により,発電原価低減につなげるための「地熱発電高度利用化技術開発」を進めている.
2024年11月には資源エネルギー庁と環境省の連名で「地熱開発加速化パッケージ」が公表され,超臨界地熱発電等の次世代型地熱においては実現可能性評価(経済性含む)及び国内での実証を強化するため,官民協議会を立ち上げて民間企業の参入を促しながら,関連基金や助成・ファイナンスによる支援を通じて,事業化を促進することが示された.
NEDOにおいても,地熱発電導入の加速化を進めるべく,2025年2月より地熱発電導入拡大研究開発プロジェクトでの追加公募を実施している.

図10-4-4 超臨界地熱資源と従来型地熱資源(概念図)(7)
〔松尾 純志 (国研)新エネルギー・産業技術総合開発機構〕
10.4.7 電力貯蔵
再生可能エネルギーの導入が進む中,電力の安定供給を実現する上で,周波数品質維持や需給バランス維持のための調整力の確保が必要である.一般送配電事業者が必要な調整力を効率的に調達するため,2021年4月1日に「需給調整市場」が創設された(1).需給調整市場の商品として,2021年度に三次調整力②,2022年度に三次調整力①が導入されたが,2024年度から一次調整力,二次調整力①,および二次調整力②が導入され,全ての商品区分で取引が始まった.蓄電池は脱炭素化された調整力のリソースの一つとして期待されており,特にリチウムイオン電池(LIB)を用いた系統連系型定置用蓄電システムの需要が拡大している.(一社)日本電機工業会(JEMA)の自主統計によると(2),系統連系型定置用LIB蓄電システムの2024年度上期の出荷台数は7.3万台で,2023年度下期比で93%とわずかながら減少した.一方,出荷容量は680MWhを超え,2023年度上期比で105%と増加しており,2024年度の年間出荷容量は1,400MWh(1.4GWh)を超えることが予想される(図10-4-5).
また,脱炭素化された調整力の確保や電力システムの柔軟性向上のための有望な技術として,長期エネルギー貯蔵を特徴とする電力貯蔵システム(LDES*注))の導入に向けた技術開発が国内外で加速している.LDESは,LIBと比較して応動時間が遅い,充放電効率が低い,技術によっては立地制約がある,などのデメリットがあるが,耐用年数が長い,資源制約が小さい,低コストで長時間kWh供出可能,慣性力の提供が可能,などのメリットがあり,将来的には資源調達リスクが低く,長時間率においてコストが低い電力貯蔵システムとして期待される(3).
*注)Long Duration Energy Storageの略称.例として,重力蓄電,圧縮空気貯蔵システム(CAES),岩石蓄熱などがある.

図10-4-5 系統連系型定置用LIB蓄電システムの出荷実績(容量)(2)
〔紀平 庸男 (一財)電力中央研究所〕