19.情報・知能・精密機器
19.1 コンピュータ・記憶装置・記憶メディア
2024年のパソコン(PC)総出荷台数は対2023年比1%増の約2億6270万台と,わずかながらもプラス成長を遂げた.
全体として前年に引き続き低成長で推移したが,年末に向けて市場の回復が見られた.
2024年のHDD(磁気ディスク装置)総出荷台数は2023年から横ばいの約1億2380万台と引き続き低調であった.
一方,記録容量は対2023年比50%増の約1250EBと大幅に増加した.これは2024年後半のエンタープライズ用途の需要の回復の影響が大きい.
2024年のSSD(Solid State Drive)総出荷台数は対2023比9%減の約3億4500万台であった.
一方,記録容量ベースでは429EBで前年から34%増と大きく回復した.HDDと同じく2024年後半のエンタープライズ用途の需要の回復の影響が大きいと思われる.
(統計はIDC社およびテクノ・システム・リサーチ社による)
〔江口 健彦 Western Digital〕
19.2 入出力装置
一般社団法人ビジネス機械・情報システム産業協会が集計,公表している「事務機械出荷実績」(1)によれば,2024年の主要出力機器の総出荷額(一般社団法人ビジネス機械・情報システム産業協会会員企業のみの集計)は,1兆6,708億円(対2023年110.5%)であった.内訳は,複写機・複合機が8,859億円(同109.7%),ページプリンタが4,971億円(同118.2%),ビジネスインクジェット2,057億円(同110.9%),大判インクジェット821億円(同83.1%)となっている(図19-2-1).総額で2022年比4.2%程度の減少を示した2023年に対し,大判インクジェット以外は9.7~18.2%の増加となった.大判インクジェットは,2023年に2022年比で30.7%と大幅に増加した反動で2024年は16.9%の減少となった.

図19-2-1 主要出力機器の総出荷額の推移
(ビジネス・大判インクジェット機は2020年から集計を開始)
電子写真方式が主流となっているオフィス向けの出力機器では,2024年に国内主要メーカーより29機種が新たに販売された(2).これら新機種では,環境対応技術として,再生プラスチック使用率やリユース率向上,CO2削減など新たな特長が訴求されてきている.また,用紙種を検知してプロセスを制御する紙種センサーの採用が新たに登場した.LEDマルチチップを採用した次世代露光デバイス,省エネ面状ヒーター定着,原稿搬送における紙折れ検知などの新規要素技術の搭載も見られた.
2024年には,4年に一度ドイツ・デュッセルドルフで開催される印刷機材と材料の展示会であるdrupaが8年ぶりにリアル会場で開催され(前回2020年はCOVID-19の影響によりオンライン開催),デジタル印刷用インクジェット機も多数展示された.drupaにおける国内主要メーカーからの展示では,新たに25機種が登場した.内訳は,商業印刷機13機種,ラベル機5機種のほか,包装印刷機,テキスタイル機,大判機が2機種ずつなどとなっている.技術としては,水性顔料インク,ポリマーインク,白インクや,循環機構の長尺ヘッドなど新規インク,ヘッドの開発のほか,乾燥機構や印刷品質監視技術の高度化,ラベル印刷機での前後工程のインライン統合化などが着目された.
研究討論会や講演会に関しては,昨年に引き続き対面会場を活用するハイブリッド開催が主流であった.対面会場での参加率も増加傾向にあり,懇親会なども復活してきている.日本画像学会が主催する年次大会では,画像出力技術などに関して約73件の研究発表がなされた(3)(4).インクジェット技術に関する報告が4割強と多数を占めており,インクジェット技術関連報告の44%が,インク滴の吐出や,メディア上に着弾したインク滴の浸透や蒸発などの現象に関する数値シミュレーションや可視化計測技術に関するものであった.電子写真方式に関しては,プロダクション機のオーガナイズドセッションが企画されたほか,新機な応用に関する発表も見られた.今後もさらなる成長が見込まれるデジタル印刷領域を中心とする高性能化・高機能化を目指した技術・製品開発・解析の活性化が期待される.
〔中山 信行 日本画像学会/東京工芸大学〕
19.3 ホームエレクトロニクス機器
一般社団法人 日本電機工業会の発表(1),(2)によると,2024年度のルームエアコン,冷蔵庫,洗濯機などの白物家電の国内出荷額は,約2.6兆円,2023年度比102.4%と2年ぶりのプラスとなり,直近10年平均(約2.4兆円)を上回り,高い水準を維持している.2023年度からの増加は,夏の記録的な猛暑,および冬の寒波により,ルームエアコンの国内出荷が好調だったことが牽引している.また,コロナ禍の需要増の反動減が底を打つとともに,高機能高付加価値製品の人気が単価を押し上げた調理家電や,インバウンド需要や高機能高付加価値製品の人気により電気シェーバー,ヘアドライヤー等の理美容機器が好調に推移したことも出荷額が増加した要因となっている.
製品別の出荷数量では,ルームエアコンは900万台を下回った2023年度に対し,941万台(107.3%)と大きく増加し,4年ぶりのプラスとなっている.冷蔵庫に関しては,製品価格の高騰による買い控えや買い替えサイクルの長期化などが継続しており,2023年度を下回る94.5%と,4年連続のマイナスとなっている.洗濯機も製品全体では同様で,2023年度比98.1%と4年連続のマイナスとなっている.一方,乾燥機能付きの洗濯機は,縦型洗濯乾燥機対してドラム式洗濯乾燥機の構成比が増加しており,ドラム式洗濯乾燥機の出荷数量は2023年度比103.9%とプラスとなり,年度として5年連続で過去最高の出荷数量を更新している.電気掃除機は,2年連続のマイナスで,2023年度比97.3%に留まっている.また,軽量化や吸引力を強化した製品がユーザの支持を集めており,タイプ別の構成比でスティックタイプは11年連続で伸長し,7割程度まで上昇している.
2025年度の国内出荷金額は,賃上げによる消費マインドの上昇が期待できるが,2024年度に天候影響で大きく伸長したエアコンがその反動で減少する見通しに加え,冷蔵庫の大型から中型へのシフト,洗濯機の緩やかな需要減などにより,2024年度を下回る予想となっている.ただし,直近10年平均の出荷金額は上回る水準を維持する見通しである.
〔黒澤真理 日立製作所〕
19.4 医療・福祉機器
2024年度における医療・福祉分野の技術革新として、手術支援ロボットやAI技術の進展が注目されている。
これまでの年鑑でも言及されている手術支援ロボットda Vinciシリーズは、引き続き市場をリードしている。2024年3月には第5世代となるda Vinci 5がFDA認証され、さらなる精度の向上、フォースフィードバックの搭載、計算能力の拡張が実現した。これにより、手術操作の精緻化が進み、執刀医の負担軽減や手術精度の向上が期待されている(1)。また、国産の手術支援ロボットが海外での手術に成功し、グローバル展開を強化している。世界有数のロボット製造国である日本産製品の今後の躍進に期待する(2)。
一方で、医療業界が世界全体の温室効果ガス(GHG)排出量の約4%を占めているという報告があり(3)、特に手術室における廃棄物やエネルギー消費が環境負荷の要因とされている。こうした状況を受け、学界でも環境に配慮した手術であるGreen Surgeryが注目されており、医療分野におけるサステナビリティの観点からも議論が進められている。手術支援ロボットや内視鏡手術機器における使い捨て部品の削減やエネルギー効率化が、今後の技術開発の課題となっている。
AI技術の進展も医療・福祉分野に大きな影響を与えている。特に、S-XAI(自己説明型AI)が注目されている。S-XAIは、AIモデル自体がその意思決定プロセスを内在的に説明できる技術であり、医療画像解析分野で特に注目されている。従来のポストホック型XAI(事後説明型)とは異なり、モデルの訓練過程そのものに説明可能性を組み込むことで、AIが判断を下す根拠を直接的に示す特徴を持っている。病変部位の可視化と根拠提示が組み合わされ、医療従事者がAIの判断結果を理解しやすい仕組みが導入されるなど、診断の信頼性向上と臨床応用の推進が期待されている。
また、IIP部門講演会でも、医療・福祉関連の技術が数多く議論された。医療技能支援(4, 5)やバイタルセンシング(6)、看護業務の自動化(7, 8)、ウェアラブルデバイスの開発(9)など、医療現場でのニーズを反映したテーマが中心であり、特に医看工連携を通じた医療機器開発の取り組みに関心が高まっている(10)。工学研究者と医療従事者が協働し、現場ニーズを重視した技術革新が進められており、今後の臨床実装が期待される。
医療・福祉分野では、AIとロボット技術の融合が進む一方で、環境問題への対応や現場ニーズを反映した開発が課題として浮上している。これらを解決するための技術革新が今後も求められるであろう。
〔森田 実 山口大学〕
19.5 フレキシブル体を基材とした高機能製品と関連技術
柔軟媒体ハンドリング分野では紙やフィルムなど薄い媒体のハンドリング技術や周辺技術を取り扱い,1998年から官民学で研究会を継続的に行ってきた(1).また,学理的に得られた知見を2019年に書籍「柔軟媒体ハンドリング技術の理論と応用」として発行した(2).2021年より新たな製品展開への取り組みとして,プリンテッドエレクトロニクスや機能性フィルムなどの大量生産に向けた基礎や応用研究を行っている(3).
2024年に開催された日本機械学会講演会における報告事例は以下(A)(B)(C)(D)に大別される.
(A)従来技術における現象の理論的解明や仮説の検証
(B)フィルム搬送における欠陥の可視化・条件最適化・対策へのアプローチ
(C)新規基礎研究や応用研究
(D)その他
上記(A)の例として「2ローラベルトシステムにおけるベルトの横方向運動に対するベルト幅の影響(4)」がある.ベルト横ずれに関するメカニズムを実験と理論で解明する研究内容の一環である.
(B)の例として光干渉断層法(OCT)を用いたフィルムローラ内空気層厚さ検出法(5)や欠陥検知(6) ,特殊なロールを用いた「エキスパンダーロールを用いたウェブ拡幅性能の評価(7)」や「マイクロビンガムロールによる巻取りロールへの影響の実験的検証(8)」等の事例が興味深い.その他フィルム搬送における課題(シートのフラッタやトラフ)にフォーカスした研究事例が多く寄せられた(9)-(20).
(C)の例として,プリンテッドエレクトロニクス向けインクの開発やその他分野への応用事例が報告された(21)-(26).
(D)の例として,薄い媒体のハンドリング技術の周辺技術としては新しい,異常予兆検知に関する技術紹介(27)があった.自動改札機を対象として内部センサから得られるシーケンシャルパターン解析の結果を切符の状態による物理現象と関連づけて検証している.また,ケーブルやチューブといった柔軟な対象物のモデル構築に関する発表があった(28).
報告事例の動向としては,2023年度同様に2024年度も(B)のフィルム搬送における課題解決に向けたアプローチが最も多く(16件),続いて(C)の新規基礎研究や応用研究が多かった(6件).(C)に関しては日本画像学会とも関連性が深いので2023年度から継続して連携活動を行っている.今後は異常予兆検知のような新しい周辺技術も増えてくると予想される.
〔小林 祐子 (株)東芝〕
19.6 社会情報システム・セキュリティ
国内のネットワークセキュリティ市場は,2024年度に7,195億円(前年比10.2%増)と推計される(1).ゼロトラストの導入が進む中,生成AI,OT/IoT,クラウド環境などの新領域へのセキュリティ投資が拡大し,市場は堅調に成長している.また,サプライチェーン攻撃の増加を背景に,政府や業界団体がガイドラインを改定し,セキュリティ強化を促進している.これにより,企業規模を問わずセキュリティ対策の必要性が高まり,中堅・中小企業での取り組みの加速が期待される.
国内のサイバー事案では,2024年5月19日,岡山県の医療センターがランサムウェア攻撃を受け,電子カルテシステムに障害が発生した(2).最大4万人分の患者情報が流出した可能性がある.同年6月9日,書籍販売や動画配信を行う企業が,グループの複数のWebサイトでシステム障害が発生したと公表(3).ランサムウェアが原因で,動画配信サービスの完全復旧には約2か月を要した.また,盗まれたとみられる情報がSNS上に拡散される事案も確認された.12月26日には,大手航空会社がサイバー攻撃を受け,一部の国内外便に遅延が発生(4).攻撃は午前7時24分に始まり,内部・外部システムに影響を及ぼしたが,顧客情報の漏洩やウイルス感染は確認されなかった.ルーターの不具合が原因と報告されている.
海外では,2024年2月,米国で中国政府と関連が疑われるハッカーグループ「Volt Typhoon」による攻撃が確認された(5).同グループは,米国内のインターネットサービスプロバイダーのネットワークに侵入し,機密情報の窃取を試みたとされる.攻撃者は,世界的ベンダ製のルーターなどのコアネットワーク機器にアクセスし,インターネットトラフィックのリダイレクトや,さらなる攻撃の足掛かりを構築していた可能性が指摘されている.欧州では,ドイツ・ハンブルク港がロシアのウクライナ侵攻開始以降,サイバー攻撃の急増を報告(6).攻撃件数は100倍以上に達したが,港湾管理局(HPA)は国際的なパートナー港や連邦情報セキュリティ庁(BSI)と協力し,大規模攻撃の阻止に成功している.
政策面では,日本政府がサイバー攻撃への対策として「能動的サイバー防御」の法制化を検討し,2024年11月29日に提言をまとめた(7).本提言では,攻撃の兆候を早期に検知し,被害を未然に防ぐ積極的な対策の重要性が指摘されている.官民連携の強化,通信情報の活用,アクセス制御・無害化措置などが含まれ,今後のセキュリティ政策の方向性を示している.
〔甲斐 賢 (株)日立製作所〕
19.7 生体知覚・感覚機能の機械システム応用
これまでの機械システムの設計仕様では,力学的な出力性能・安全性やメンテナンス性など,機械性能に関わる要求が基本的な検討事項であった.近年では,機械システムの設計仕様にヒトと機械の関わりも含まれるようになり,ヒトの感覚特性やその感覚機能を利用した機械システムの開発が進められている.この実現のために,個々の感覚単位や五感の感覚間相互作用についての調査が行われてきている.本稿では,特に進展があった味覚,嗅覚,触覚の各感覚について,機械システムへの応用に関する最新の研究事例を紹介する.
味覚については,食の体験を他者と共有する技術の開発が進んでいる.この基盤技術として,味のデータ化や,ヒトが持つ主観的な味覚のデータ化,その主観を考慮したカトラリー型味覚提示デバイスTTTV4(1)による味の調合・提示を実現している.この構成により,言葉では伝えづらい味の印象を共有することを可能にしている.また,これまで使われていた様々な溶液を混合する方式は保存期間が短いという課題が存在していたが,粉末混合式であるPTTVが提案されて,保存期間の問題も解決されつつある(2).
嗅覚に関しては,深層学習と嗅覚センサの統合による新たな技術が実現されつつある.例えば,言葉のイメージに基づいて深層学習を用いて香りを自動創作する技術が開発された(3).また,スマートウォッチ型嗅覚センサも開発され(4),スマートウォッチ内部に微小ガスセンサアレイや温度/湿度センサなどを組み込むことで,匂いを常時計測することを実現した.この装置は,災害現場での有毒ガス検知や,個人の健康管理への応用が期待される.また,香りの生成技術では,インクジェット式ディスプレイ(5)を用いて,複数の香料液を霧化し混合・発散させることで,任意の香りを提示させることが可能となった.このように,嗅覚領域においてはセンサ技術と提示技術の両面で顕著な進歩が見られた.
触覚に関しては,技能伝承支援や触覚センシング,質感推定など,多岐にわたって進展が見られた.技能の中でも力触覚を伴う身体的技能は,感覚の共有が困難であるため習得が特に難しい.鶴岡らは,技能者の触覚情報を学習者の特性を考慮した触覚情報に変換することで,個人差が軽減され,さらに技能者の触覚情報を学習者の特性に適応させる効果があることを明らかにした(6).また触覚データを保存する手段として,フェイシャルマッサージ手技の記録で使われる触譜を活用する方法も提案されている(7).遠隔触診システムも注目されており,装着型デバイスで患者の体表の硬さを計測し,離れた医師に力触覚として伝える技術も報告されている(9).また,触覚データの高度な解析や生成に深層学習を用いる方法も提案された.たとえば,果物や野菜の成熟度判定においては,画像と触覚データの対応関係をTransformerモデルにより学習し,アボカドの外観画像からその熟れ具合(触感)を予測するマルチモーダル手法も試みられている(8).
このように,味覚,嗅覚,触覚といった生体の感覚機能の機械システムへの応用は,デバイス開発に加えて,深層学習との統合により大きな技術的飛躍を遂げつつある.今後は,これらの感覚モダリティを複合的に統合したヒューマンセントリックなシステム設計がますます重要となるだろう.
〔小村 啓 九州工業大学〕
19.8 サイバーフィジカルシステム(Cyber Physical System: CPS)
CPSとは、実世界(フィジカル空間)にある多様なデータをセンサネットワーク等で収集し、サイバー空間で大規模データ処理技術等を駆使して分析や知識化を行い、そこで創出した情報および価値によって、産業の活性化や社会問題の解決を図っていくことを企図したシステムの総称である(1)。ただ、近年にはセンサネットワークで収集したデータのみならず、対象となるプラントやコンポーネントの設計・製造にあたって生成されるマスターデータや、保守履歴などの運用データ、パブリックデータやドメイン知識など、対象とするデータの種類は一層多様化しており、システムとしてはより幅広いものを指し示す語となっている(2)。このように、CPSという語の定義が徐々に曖昧になっていることからその市場規模も非常に曖昧であり、JEITAが2017年に「2030年には世界で404.4兆円、日本国内だけでも19.7兆円に達する」との予測(3)を発表して以降、国内政府系機関や有力団体による主だった調査は今年度も行われていない。
日本機械学会では、電子情報通信学会との共同企画として、2022年度、2023年度の年次大会においてCPSをベースとした先端技術フォーラムを開催し、その講演内容をベースとした特集を2025年2月の日本機械学会誌に掲載した(4)。この活動を契機に、両学会は学会横断テーマ「機械と情報通信の融合で実現する人間中心の未来社会」を立ち上げ、今後も様々な合同企画の実施を計画している。
日本機械学会情報・知能・精密機器部門では、同部門講演会において日本非破壊検査協会と連携して開催していたオーガナイズドセッション「DX時代の非破壊センシングとデータ活用-NDE4.0の実現に向けて」を、2016年から継続していたオーガナイズドセッション「IoT と情報・知能・精密機器」と統合し、新たにオーガナイズドセッション「スマートIoTシステムと非破壊センシング」として2025年度から再スタートさせた。本セッションは、部門講演会のコロケーション開催相手である生産システム部門のオーガナイズドセッション「スマートマニュファクチャリング」と同一時間枠内にて開催されており、インフラ保全系CPSと生産システム系CPSに新たに「非破壊検査」というキーワードを加えた俯瞰的な観点から議論を行う場を形成している。しかしながら、こうしたスコープの広いセッションは、個々の参加者からすれば自身の専門性とは異なる発表を多く含むセッションとなりがちである。こうした異分野技術の融合こそがCPSの本質であるとはいえ、それが参加者側の負担となっていることも事実であり、真に異分野技術間の連携が活発に議論される場の形成のためには更なる試行錯誤が望まれている。
また、昨今の生成AIの著しい進歩を受けたCPSの発達により、従来からしばしば語られていたディストピア的な社会論(5)も徐々に現実味を帯びてきているように感じられ、こうした傾向は昨今の世相における予測不可能性の拡大とも決して無関係ではないように思われる。これに対し、先の日本機械学会誌の特集において日立製作所の野中氏ら(6)は、人間も機械も対等に経験や知識を貯めた上で、機械やAIの社会参加はあくまで人間が生き生きと働くための支援や補填に留まるべきとの考えを示し、そうした社会の実現に向けて米欧の有識者と議論を重ねていると述べている。活動の続報が待たれる。
〔冨澤 泰 株式会社東芝〕