Menu

機械工学年鑑2019
-機械工学の最新動向-

2. 人材育成・工学教育

章内目次

2.1 人材育成・工学教育の動向
 2.1.1 工学教育の動向/2.1.2 工学系高等教育機関での学生の動向/2.1.3 日本機械学会の活動
2.2 技術者教育プログラム認定の動向
2.3 技術者資格認定・認証の動向
 2.3.1 ISO18436準拠機械状態監視診断技術者の認証/2.3.2 計算力学技術者認定

 


2.1 人材育成・工学教育の動向

2.1.1 工学教育の動向

 2018年11月に,文部科学省から「2040年に向けた高等教育のグランドデザイン」と題する中央教育審議会の第211号答申が公表された(1).この答申は,国連のSDGs「すべての人が平和と豊かさを享受できる社会」,Society5.0「超スマート社会」,人生100年時代,グローバル社会,地方創生といった2040年頃に実現されているであろう社会情勢を前提として,高等教育機関および高等教育のあるべき姿を提案したものとなっている.これからの予測不能な時代を生きる人材像として,普遍的な知識・理解と汎用的技能を文理横断的に身に付けていること,時代の変化に合わせて積極的に社会を支えられること,論理的思考力を持って社会を改善していく資質を有することなどが謳われ,そのような人材を育成するために,学修者個々人が学修成果を認識できるとともに生涯学び続けられる多様で柔軟な学修の仕組みと流動性を備えた「学修者本位の教育」への転換が求められている.具体的な施策として,教育・研究体制に多様性と柔軟性を持たせるため,18才の日本人を入学対象とした教育モデルからさまざまな背景を持つ留学生や社会人(リカレント教育)を積極的に受け入れる体制の構築,実務家・若手・女性・外国人など多様な人材から成る教員組織の編成,文理横断により学修の幅を広げる教育,時代の変化に迅速に対応できる教育,ICTを活用した教育といった新たな教育プログラムの推進,転入学・編入学の奨励など学生の流動性を高めることによる多様なキャリアパスの提供などが提案されている.また,このような教育の質を保証するとともに情報公開を促進するため,教学マネジメントの再構築が求められている.

 この答申では将来に向けた教育改革の詳細な具体策を説明している訳ではないが,高等教育機関の将来のあるべき姿(イメージ)が提示されており,将来の大学教育および教育改革の方向性を考える上で大いに参考になるものと考えられる.将来の高等教育に興味のある読者は,文部科学省のホームページから全文をダウンロードして,一読されることを勧める.

2.1.2 工学系高等教育機関での学生の動向(2)

 大学数は782校となり前年と比較して2校増加し,大学生は2,909千人で前年より18千人増加した.学生数は,学部が2,600千人,大学院が254千人で,学部が17千人増,大学院が4千人増であった.女子学生および社会人が占める割合はそれぞれ44.0%(0.3%増),24.0%(0.2%増)となり,いずれもここ数年の微増傾向が続いている.大学および大学院の専門別では,工学系の学部生が全体の14.7%で0.2%減,大学院修士課程は41.0%で0.1%増,博士課程は17.1%で0.1%減であり,ほぼ前年並みとなっていた.なお,大学の本務教員数は187千人で2千人増,うち女性教員の割合は24.8%で0.6%増となっており,女性教員の増加が著しい.

 大学生の学部卒業後の進路調査によれば,卒業者の大学院への進学は全体で10.9%,就職率は77.1%であり,就職率が0.5%増加した.ここ数年の好調な経済状況を反映して,平成30年度も就職率はゆっくりと改善を続けている.修士課程(前期課程)修了者の博士課程への進学率は9.3%で前年より0.1%増,就職率は78.5%で0.3%増であった.就職者のうち75.8%が正規の職員などに就いている.就職者総数を産業別に見ると,製造業が43.5%と最も高く,次いで情報通信業が11.7%,学術研究・専門技術サービス業が7.4%,教育・学習支援業が7.3%の順となっており,例年とほぼ同じ傾向であった.博士課程(後期課程)修了者は,就職率が67.7%で前年度と同率であった.ただし,正規の職員などは53.6%,非正規職員などが14.1%となっており,学部卒や修士修了に比べると正規職員に就職するのが難しい状況が続いている.職業別に見ると,専門的・技術的職業従事者が91.9%を占めていた.ポストドクターなどの数は1.3千人で,修了者に占める専攻分野別の割合は工学が23.7%で最も高かった.これらの動向は前年と同様であった.

2.1.3 日本機械学会の活動

 イノベーションセンターは,技術者の人材育成・活用,技術者資格の認証・認定,産業界の技術開発・生産活動を支援することにより,機械工学分野のイノベーションを牽引し,産官学の連携強化,学会事業の拡大,学会プレゼンスの向上などを目的として,2009年度から7委員会体制で活動を続けてきたが,経営企画委員会の答申に基づき,各種委員会のミッションに応じた組織化による事業強化を図り,理事会直属となることで運営効率を向上させることを目的として,2019年度より標準規格センターとともに組織改編を行うこととなった.特に,イノベーションセンターの技術者教育委員会と人材活躍・中小企業支援事業委員会を統合して「人材育成・活躍支援委員会」を新たに発足し,以下の活動を総合的に推進することとなった.

(1)機械工学技術者の能力開発・継続教育を図り,国際的に通用する技術者を育成するとともに技術者の地位向上を図る活動を行う.

(2)地域産業振興への寄与を目指した技術者教育や技術相談など,会員シニアが活躍する場を創出するための活動を行う.

(3)初等・中等および高等教育における技術者教育について,関係する教育者も含めた検討を行う.

(4)(1)〜(3)に関する施策提言を行う.

すなわち,小中学生からシニアに至るすべての階層の人材をターゲットとして,各種人材育成施策を推進し,技術者の地位向上に資することを究極の目標としている.どのような取り組みを進めて行くのかは今後の議論によるが,長期に渡りさまざまな事業を進めていく必要があり,会員の皆様には人材育成・活躍支援委員会が実施する各種事業へのご支援・ご協力をお願いする次第である.

〔山本 誠 東京理科大学〕

参考文献

(1)文部科学省:「2040年に向けた高等教育のグランドデザイン(答申)」,
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushin/1411360.htm(2018.11).

(2)文部科学省:学校基本調査―平成30年度結果の概要―, http://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/chousa01/kihon/kekka/k_detail/1407849.htm(2019.4).

目次に戻る


 

2.2 技術者教育プログラム認定の動向

 日本技術者教育認定機構(JABEE)が行う高等教育機関における技術者教育プログラムの認定審査において,当初から本会は機械及び関連の工学分野審査委員会の幹事学会として活動を行っている(1).2017年度(2018年4月認定)には,5プログラムが新たに認定され,JABEEにおける全16技術分野の認定プログラムの累計は175教育機関で506プログラムになり,認定プログラムからの修了生の累計は約28万人に達している.これらのうち,本会が幹事学会を担当する機械及び関連の工学分野のプログラム数累計(旧基準の機械および機械関連分野のプログラムを含む)は83と16技術分野中で最多(約16.4%)で,引き続き認定分野の中核の位置を占めている.認定プログラムの一覧は,JABEEのホームページ上で公開されている(2)

 2018年度にはこれらのJABEEプログラム修了者の中から2635名が技術士二次試験に臨み221名が合格しており,合格率も8.4%と全体の合格率9.1%に匹敵する値となりつつある(3).これに伴い合格者の平均年齢も全体では43.2歳であるのに対JABEE修了者は32.0歳,最年少の合格者は26歳と,引き続き若い技術士を生み出すことに寄与している.

 2017年度の審査対象は,中間審査が44%,認定継続審査が50%であり,新規審査は6%と昨年に増して低い水準にある.今回は,中間審査を実施したプログラムが半数近くあったことから,認定審査に当たっては教育改善の進捗状況が特に注目された.また,認定継続を取りやめるプログラムの数が新規認定プログラム数を上回る傾向が続いており,認定中のプログラム数が漸減しているため,同一校複数プログラムの一斉審査による効率化,変更通知と変更時審査の撤廃など,受審校の負担を減ずる方策を採るとともに,企業関係者の実地審査の視察などを通して,特に産業界からの理解を得るための取り組みを継続して実施している.さらに,的確な審査を実施するため,審査員研修会を実施するとともに,将来,オブザーバーとなって審査員を目指す者に向けたeラーニング講習が開始された.本会でも,前年に引き続き,2018年度年次大会会期中の9月10日に関西大学において,イノベーションセンターJABEE事業委員会の主催で新人審査員研修フォーラムを開催した.

 また,JABEEは認定する技術者教育の国際的同等性を担保するためのワシントン協定への加盟が認められてきたが,2018年6月のワシントン協定総会において,次回審査までの6年間の継続加盟が全会一致で承認された.さらに,JABEEはアジア諸国における技術者教育認定団体設立の動きに合わせて国際協力機構(JICA)に協力する形でインドネシアでの認定制度立ち上げの準備作業を実施しており,2018年には同国における技術者教育認定団体IABEEの設置と認定審査活動の支援,ワシントン協定への暫定加盟準備のサポートを行っている(4)

 一方,認定基準については,現行の基準が2012年度に適用されて以来,大きな改定は行われてこなかったが,修了生のアウトカムズ保証を主眼とする教育の継続的改善を重視するとともに,教育機関の機関別認証評価との整合性を高め,プログラムと審査員双方の負担を軽減することを目的に,2018年度に新基準(5)が策定され,各地で説明会が開催された.この新基準は2019年度の審査から適用される.新基準移行に伴う経過措置は実施されない予定なので,各教育プログラムにおいても,新基準の趣旨を十分勘案しつつ,継続した教育改善に取り組まれることを期待したい.

〔佐藤 勲 東京工業大学〕

参考文献

(1) 日本機械学会ホームページ,https://www.jsme.or.jp/jabee/

(2) 日本技術者教育認定機構ホームページ,https://jabee.org/accreditation/program

(3) 日本技術士会ホームページ,https://www.engineer.or.jp/c_topics/001/attached/attach_1013_2.pdf

(4) JICA教育ナレッジマネジメントネットワークニュースレター「教育だより」,No.23,p.2,(2018-8)
https://www.jica.go.jp/activities/issues/education/ku57pq000027dz1y-att/education_news_201808.pdf

(5) 日本技術者教育認定機構ホームページ,https://jabee.org/accreditation/basis/accreditation_criteria_doc

目次に戻る


2.3 技術者資格認定・認証の動向

2.3.1 ISO18436準拠機械状態監視診断技術者の認証

 我が国の産業界は,競争力維持,強化のため,機械設備の安定安全操業が不可欠な環境にある.本会では,その一助として,2004年よりISO18436-2に準拠した機械状態監視診断技術者(振動)を,また,2009年からは日本トライボロジー学会と協力して,ISO18436-4に準拠した機械状態監視診断技術者(トライボロジー)の資格認証事業を実施している.以下に,両診断技術者の2018年度の資格認証試験の概要と現況のトピックスを示す.

(1)ISO18436-2に準拠した機械状態監視診断技術者(振動)

 第1回試験が6月23日(カテゴリIVの記述,面接試験は7月14日)に,第2回試験が11月17日に実施された.合格者数(合格率,受験者数)は,カテゴリI/II/III/IVでそれぞれ,18名(100%,18名)/240名(90%,268名)/27名(68%,40名)/1名(17%,6名)であった.2018年末での合格者数総数は,5,170名となった.

(2)ISO18436-4に準拠した機械状態監視診断技術者(トライボロジー)

 第1回試験(カテゴリI/II/III)を12月1日に実施した.合格者数(合格率,受験者数)は,カテゴリI/II/IIIでそれぞれ,75名(90%,83名)/13名(93%,14名)/3名(60%,5名)であった.結果,2018年末での合格者数総数は,1,263名となった.

(3)その他の活動

 機械状態監視診断技術者(振動)については,年1回,コミュニティを開催し,資格認証者間での情報交換,共有を推進している.第10回目となった2018年は大阪で開催され,技術交流の幅を広げている.2019年度は10月4日に愛知での開催予定である.コミュニティに関する情報は,本会のホームページ(https://www.jsme.or.jp/conference/joutai/)を参照されたい.本ホームページには機械状態監視診断技術者の認定試験の詳細についても記載されている.
 2018年度で終了したマレーシアにおける認証事業では認証者の更新のみを行っていく.海外での実情を把握し,国内における認証事業を推進するため,引き続き韓国KSNVE,米国VIと定期的に会合を行っていく.当該資格認証事業が,機械技術者,機械状態監視診断技術者の技術レベルおよび社会的地位の向上に貢献できるよう,更に事業推進していく.

〔藤原 浩幸 防衛大学校〕

目次に戻る


2.3.2 計算力学技術者認定

 機械設計プロセスにおける計算力学(CAE)の急速な普及とともに,産業界において,計算力学技術者の品質保証が重要な課題となっている.本会では,CAEに携わる技術者の能力レベルを認定・保証するため,2003年度から計算力学技術者認定試験を実施している.2018年度も,イノベーションセンターの主催により,本会関連部門・支部の協力,国内53学協会の協賛,日本機械工業連合会,日本産業機械工業会,日本電機工業会の後援を得て,固体力学,熱流体力学,振動分野の上級アナリスト試験を9月8日(土)に,1・2級認定試験を12月15日(土)に実施した.固体分野は全国5会場(関東,東海,関西,北陸,九州地区),熱流体分野と振動分野は全国4会場(関東,東海,関西,九州地区)で試験が行われた.合格者数および合格率は,固体分野が上級アナリスト:6名(55%),1級:105名(56%),2級:189名(30%),熱流体分野が上級アナリスト:6名(100%),1級:78名(50%),2級:156名(62%),振動分野が上級アナリスト:3名(75%),1級:66名(61%),2級:100名(63%)であった.また,書類審査による初級認定者は,固体分野が96名,熱流体分野が32名,振動分野が7名であった.認定試験開始以来,各級の受験者数・合格者数は共に順調に増加し,これまでの累計で8,989名という多くの認定者が誕生している.

 また,2014年度から開始した非営利組織NAFEMS(The National Agency for Finite Element Methods and Standards)におけるPSE(Professional Simulation Engineer)資格と上級アナリスト資格との国際相互認証の協定に基づき,固体分野上級アナリスト3名,熱流体分野上級アナリスト4名がNAFEMSのPSEとして新たに認定された.

 計算力学技術者の認定試験の詳細や合格者のリストなどについては,https://www.jsme.or.jp/cee/をご覧いただきたい.

〔長嶋 利夫 上智大学〕

目次に戻る