Menu

機械工学年鑑2019
-機械工学の最新動向-

6. 機械材料・材料加工

関連部門ホームページ関連部門イベント


章内目次

6.1 機械材料
 6.1.1 鉄鋼材料
  a.生産/b.新設備/c.研究/d.新技術・製品
 6.1.2 非鉄金属材料
  a.アルミニウム/b.マグネシウム/c.銅/d.チタン
 6.1.3 無機材料
  a.生産/b.研究
 6.1.4 高分子・複合材料
  a.高分子材料/b.FRP生産/c.複合材料研究
6.2 材料加工
 6.2.1 鋳造6.2.2 塑性加工6.2.3 プラスチック加工6.2.4 溶接,接合6.2.5 粉末加工6.2.6 特殊加工

 


6.1 機械材料

6.1.1 鉄鋼材料
a.生産

 日本鉄鋼連盟によれば,日本経済は輸出や生産の一部に弱さも見られるが,緩やかな回復が続いており,国内鉄鋼市場は総じて堅調である.国土強靭化対策やインバウンド需要への対応や東京オリンピック・パラリンピックに向けた都市開発等の需要建築部門の需要が好調のほか,製造業についても自動車をはじめ概ね堅調に推移している.一方,米中貿易摩擦や中国をはじめとする世界経済の減速など鉄鋼需要の下振れリスクの懸念もある.

 鉄鋼業界の動向としては,引き続き鉄鋼業界の再編が進んでいる.新日鐵住金(株)が日新製鋼(株)を完全子会社化し,また,両社と新日鐵住金ステンレス(株)がステンレス鋼板事業を統合することになった.また,新日鐵住金は,山陽特殊製鋼を子会社化し,さらに,スウェーデンのOvako社を山陽特殊製鋼の子会社化することによって,グローバル事業展開に向けた体制整備を進めた.神戸製鋼所も中国における線材二次加工拠点の能力増強を行った.

 海外では,米国は依然堅調を維持しており,欧州は総じて底堅く,中国も景気は内需が堅調に推移している.さらに中国では政府による粗鋼生産能力削減の進展もあった.世界の粗鋼生産量は昨年の16億9,122万トンから,18億861万トンへと増加した.はじめて18億トンを超えた.その中で,中国の粗鋼生産量は過去最高の9億2,826万トンに達し,全世界生産量の50%を占めている.インドの粗鋼生産量は1億140万トンからわずかに増加し1億646万トンとなり,我が国の1億433万トンを超え,世界第2位の生産量となった.その結果,日本は第3位となった.

 国内の粗鋼生産量は2017年度の1億466万トンに対し,1億433万トンとほぼ同量であった.しかし,4年連続で前年を下回る結果となった.

b.新設備

 新日鐵住金やJFEスチールでは,老朽化したコークスの改修が続いている.また,薄板製造設備関連では,新日鐵住金君津製鐵所に超ハイテン鋼板製造のための溶融亜鉛めっきラインの新設や神戸製鋼所の加古川製鉄所では自動車用ハイテン鋼板製造のための連続焼鈍設備を新設するなど計画が発表された.

c.研究

 2018年度も2017年度に引き続き,環境・エネルギー,プロセス,材料分野で公的資金による研究が多く行われている.環境調和製鉄プロセス技術開発(COURSE50)は,CO2排出の抑制とCO2の分離・回収により,CO2排出量を約30%削減する技術を開発に向けて,ステップ2(2013~2017年度)から,2018年6月より実用化開発第1段階(フェーズⅡstep1)に着手している(1)

 材料関係では,革新的構造用金属材料創製を目指したヘテロ構造制御に基づく新指導原理の構築が継続中である.材料に存在する様々なスケールでの不均一性(heterogeneity)を積極的に利用することで,従来にない革新的構造材料を生み出すことを目的とした研究である.現在までに13テーマが終了し,10テーマが研究継続中である(2).2013年度からスタートした革新的構造材料技術開発ISMA(2013-2022)も6年目になり,1500MPa-20%を中炭素残留オーステナイトで達成し,異種材料の接合をはじめとするマルチマテリアル化の研究に重点を置きつつある(3)

 さらに,内閣府の戦略的イノベーション創造プログラム,SIPプロジェクト一期が2018年度に終了した.米欧が席巻する航空機産業の一角に食い込むための革新的構造材料の実現に向けたプロジェクトで,水島にある5万トンプレスによる航空機エンジン用部品の製造のために,金属の組織や力学特性予測モデルができつつある(4).2019年度からは統合型材料開発システムによるマテリアル革命がスタートする.

 JFEスチールと大阪大学は,鉄鋼材料溶接・接合に関する課題解決やメカニズム解明と,溶接・接合分野の新たなオープンイノベーションの創出を目的としてJFEウエルディング協働研究所を設立した.

d.新技術・製品

 新日鐵住金は,本田技研工業(株)の新型軽乗用車「N-BOX」のセンターピラー外板部品に1,180MPa級冷延ハイテンが,骨格部品(フロントサイドフレーム)に高穴広げ型980MPa級冷延ハイテンがそれぞれ適用された.最薄80ミクロンのステンレス鋼板に,1ミクロン超微細結晶粒をもつ精密加工用細粒ステンレス鋼板の製造販売を開始した.さらに,同社は1,770~1,960MPa級高強度ワイヤ用線材が「環境負荷低減型超ハイテン橋梁ケーブル用ワイヤ向け線材の開発」にて「大河内記念生産賞」を受賞した.JFEスチールは,プレス成形性を向上させた高潤滑自動車用溶融亜鉛めっき鋼板を開発した.

 昨年に引き続き,構造材料関係の3つの大型国家プロジェクト,ヘテロプロジェクト,ISMA,SIPが並行して行われるという鉄鋼材料にとっては,大変よい環境がつづいている.鉄鋼関連のプロジェクトは,上記を含め12あり,産官学連携して革新構造材料や鉄鋼プロセス技術の研究開発に取り組む好機であり,体制・拠点が確固たるものにして,永続的な発展を期待したい.

〔鳥塚 史郎 兵庫県立大学〕

参考文献

(1)http://www.jist.or.jp/course50

(2)http://www.jst.or.jp/kyousou/theme/

(3)http://isma.jp/pdf/isma_report_10.pdf

(4)http://www.jst.go.jp/sip/k03/sm4i/project/index.html

目次に戻る


6.1.2 非鉄金属材料
a.アルミニウム

 日本アルミニウム協会によると,2018年の箔を除くアルミニウム圧延品の生産量は2,003,951トンで前年比3.4%のマイナスとなったが,5年連続で200万トンを超えた.板材の生産量は1,219,033トンで前年比4.7%のマイナス,押出材の生産量は784,918トンで前年比1.4%のマイナスであった.板材のマイナスは缶材の不振によるところが大きい.国産缶の出荷量は前年比1.2%減の216.6億缶であった.低アルコール飲料(チューハイ,サワー等)は好調であったが,非アルコール飲料(コーヒー,炭酸飲料等)が5.2%減と落ち込んだ.非アルコール飲料の落ち込みは,ボトル缶の出荷量減(前年比11.5%減の26.1億缶)によるところが大きい.一方,乗用車へのアルミ需要増を受けて自動車用は年間を通じて好調であった.押出材のマイナスは,日本各地で発生した自然災害により建設工事が停滞したことによる建設用の減少と,大型トラックの生産台数の減少による.ダイカストの生産量は1,052,240トンで前年比3.2%の増加,鋳物は454,058トンで前年比2.8%の増加であった.ダイカストは自動車用が940,633トンと前年比3.3%の増加となった.鋳物は自動車用が424,382トンと前年比2.8%の増加となった.鍛造品は46,895トンで前年比2.0%の増加で,その内自動車用が32,142トンで前年比2.2%の増加となった.電線は28,676トンで前年比1.7%の増加であった.

b.マグネシウム

 日本マグネシウム協会によると,2018年の国内マグネシウム需要量は,構造材向けの需要が前年比18.0%増の7,490トン,添加剤向けの需要が同19.1%減の26,300トン,防食その他向けが同11.1%増の1,100トン,輸出が同13.7%増の258トンとなり,全体では同12.3%減の35,148トンと,5年振りに40,000トンを下回った.マグネシウム合金を使用する構造材向けの需要では,ダイカスト部門が前年比8.3%増の5,200トン,鋳物部門が同85.7%増の130トン,射出成形部門が同100%増の960トン,展伸材部門が同3.9%増の800トン,その他合金が同73.9%増の400トンと,各部門とも前年から増加し合計で7,490トンとなり,3年振りに7,000トン台へ回復した.環境規制の強化やEV化が進む自動車業界における軽量化ニーズの高まりにより,環境負荷の少ない製造工程である射出成形品をはじめとした自動車部品向けの需要が増えてきているものと思われる.純マグネシウムを使用する添加剤向けの需要の合計は26,300トンとなった.アルミ圧延品製造の海外移転,鉄鋼の高炉休止の影響もあり,5年振りに20,000トン台への減少となった.防食その他は,前年比11.1%増の1,100トンとなった.地金の輸出は,前年から13.7%増の258トンとなった.

c.銅

 日本伸銅協会によると,2018年の国内の銅鉱石の輸入量は前年比7.9%増の1,258,000トンだった.チリ,ペルー,カナダ,インドネシアからの銅鉱石輸入は増加した.パプアニューギニアや米国などからの輸入は減少した.銅地金の消費は前年比5.8%増の1,028,000トンだった.輸出は前年比16.7%増の605,000トンだった.銅電線における銅の消費量は,前年比1%増の695,000トンだった.自動車および建設電販分野で増加した.今後,2022年に向けて,電気機械,建設電販部門を中心に消費量は増加する見込みである.伸銅品における銅の消費量は,前年比1%減の650,000トンだった.金属製品および電気電子分野で減少した.

d.チタン

 日本チタン協会によると,2018年1~6月の展伸材出荷は前年同期比2.4%増の8,938トンだった.国内・輸出向けともにプレート熱交換器向けの出荷が大幅に増えた.インゴットの1~6月生産は同21.1%増の11,460トンだった.米国への2018年の輸出量は昨年度比14.3%増の22,165トンに増えた.米国の日本からの輸入比率は7.5%増の86%まで引き上がった.チタン需要は航空機や一般工業(熱交換器・電解等)向けが堅調に推移し,需要拡大に伴い展伸材,スポンジチタン,チタンスクラップの価格も上昇している.

〔西田 進一 群馬大学〕

目次に戻る


6.1.3 無機材料
a.生産

 (一社)日本ファインセラミックス協会(JFCA)が毎年実施している産業動向調査(1)によれば,2017年のファインセラミックス部材の総生産額は2兆7,253億円(前年比8.9%増)となり,2012年より継続的に生産額が増加するとともに過去最高を更新した.さらに,2018年も,引き続き過去最高生産額を更新する見通しである.また,1990年代と比べても生産額は倍増加しており,2018年も,引き続き過去最高生産額が初の3兆円超えに達する見通しである.内訳を見ると,全生産額の67.9%を占めている「電磁気・光学用」部材がもっと多く,ついで,「機械的」部材と「熱的・半導体関連」部材がそれぞれ全生産額の11.2%,さらに「化学,生体・生物・他」部材が全生産額の9.6%となっている.「汎用及びその他」は,全生産額の0.1%とわずかである.その中では,「電磁気・光学用」部材と「熱的・半導体関連」部材が相対的に大きい伸び率を示している.この要因は,スマートフォンに代表される情報通信機器の需要と自動車の電装化・電子化が挙げられている.全体的には,部材の割合はここ数年大きな変動はなく推移している.

b.研究

 2018年9月に関西大学で開催された日本機械学会年次大会において,「セラミックスおよびセラミックス系複合材料」が企画運営され,7件の講演発表があった.その他のセッションでの関連講演を含めると10件程度の発表があった.また,M&P2018が山形大学で開催され,「セラミックス/セラミックス系複合材料」や「自己治癒材料・システム」をはじめ,16件のセラミックスに関する講演があった.講演内容としては,一般的な構造用セラミックスの他,セラミックス複合材料(CMCs),自己治癒セラミックス,歯科セラミックスなど,多岐にわたっていた.また,日本セラミックス協会でも機械材料としてのセラミックスはエンジニアリングセラミックスとしてセッションが設けられており,20件以上の講演が活発に行われている.
 近年,SiC系CMCsの航空機エンジンの応用をGEが進めたことを皮切りに,日本でも国家プロジェクトが立ち上げられている.また,この材料を軽水炉の燃料管に応用しようとする動きもある.海外では,CMCs以外に,自己治癒セラミックスが徐々に注目されており,研究グループが増加している.また,三元系層状構造炭化物窒化物であるMAX相セラミックスが注目されている.この材料は,機械的強度や破壊靱性値が比較的高い上,超硬合金による切削加工が可能であるという特徴を有する.Cr2AlCやTi2AlCなど,化学組成によっては,優れた高温耐酸化性や自己治癒機能を有している.しばしば,大きな国際会議ではMAX相セラミックスのセッションが企画されている.

〔南口 誠 長岡技術科学大学〕

参考文献

(1)(一社)日本ファインセラミックス協会, 2018年日本ファインセラミックス産業動向調査.

目次に戻る


6.1.4 高分子・複合材料
a.高分子材料(1)

 2018年におけるわが国のプラスチック原材料の生産実績は前年比3.6%減の1067万tである.3.0%増の2017年から減少に転じた.熱硬化性樹脂全体の生産量は97.0万t(3.9%増)である.主な内訳は,フェノール樹脂(30.2万t,0.3%増),ユリア樹脂(6.0万t,7.7%減),メラミン樹脂(8.3万t,2.5%増),不飽和ポリエステル樹脂(12.4万t,24%増),エポキシ樹脂(13.2万t,5.6%増)である.一方,熱可塑性樹脂全体の生産量は948.2万tで2017年比3.9%減となった.主な内容は,ポリエチレン(246.7万t,7.1%減),ポリスチレン(78.4万t,1.4%増),AS樹脂(7.2万t,1.4%減),ABS樹脂(38.1万t,3.5%減),ポリプロピレン(235.8万t,5.9%減),メタクリル樹脂(15.2万t,1.9%減),ポリビニルアルコール(21.3万t,7.8%減),塩化ビニル樹脂(169.0万t,0.9%減),ポリカーボネート(32.0万t,3.2%増),ポリエチレンテレフタレート(39.3万t,7.3%減),ポリブチレンテレフタレート(12.1万t,10%増)などとなっている.

b.FRP生産(2)

 2012年に見直しを受けた用途別FRP出荷数量統計について2017年分について示すと(カッコ内は前年比%),合計242千t(3.0%増)となった.その内訳は,建設資材34.3千t(3.6%増),住宅機器72.5千t(3.1%増),浄化槽28.1千t(1.8%増),舟艇/船舶6.9千t(9.5%増),自動車/車両22.8千t(8.1%増),タンク/容器18.5千t(3.4%増),工業機材22.6千t(2.3%増)などとなっている.

c.複合材料研究

 国内で開催された複合材料に関わる行事として,2019年3月に第10回日本複合材料会議(JCCM-10,日本複合材料学会,日本材料学会主催,東京)が行われた.この会議は「日本を代表する複合材料に関する会議」の設立を目的に2010年京都で第1回が行われ,第2回(2011年東京にて開催予定であった)が震災で講演中止となったものの,その後毎年東京と京都で交互に行われているものである.構造の軽量化要求への一つの回答として複合材料実用化への期待から,企業からの参加者数が引き続き増加傾向にある.材料および構造の複合化のみにとどまらず,機能化・知能化等にも関連する幅広い分野からの講演が行われた.また,歴史ある国内会議として,2018年9月に第43回複合材料シンポジウム(日本複合材料学会主催,富山),10月に第63回FRP総合講演会・展示会(FRP CON-EX,強化プラスチック協会主催,東京)が開催された.これらは,それぞれ,学会,産業界が中心となり特徴ある情報発信を続けている.さらに,日本機械学会2018年度年次大会(9月,関西大学,大阪)では,機械材料・材料加工部門と材料力学部門により合同セッション「先端複合材料の加工と力学特性評価」が企画された.さらに,日本機械学会機械材料・材料加工部門主催の第26回機械材料・材料加工部門技術講演会(M&P2018,11月,山形大学)においては「高分子/高分子基複合材料」,「高分子/高分子基複合材料の成形加工」といったセッションが組まれ,成形から評価まで多くの研究成果が発表された.国際会議に目を向けると2018年はギリシャ・アテネで第18回ヨーロッパ複合材料会議(ECCM-18,6月),タイ・バンコクで第5回材料加工に関するアジアシンポジウム(ASMP2018,12月)が開催された.

〔荻原 慎二 東京理科大学〕

参考文献

(1)日本プラスチック工業連盟ホームページ, http://www.jpif.gr.jp

(2)強化プラスチック協会ホームページ, http://www.jrps.or.jp

目次に戻る


6.2 材料加工

6.2.1 鋳造

 生産量において,2018年における鋳鉄銑鉄鋳物鋳鉄管と可鍛鋳鉄),鋳鋼鋳品,非鉄鋳造(銅合金,アルミニウムとダイカスト)および精密鋳造品を合計した鋳物の総生産量は557万tであり,2017年の総生産量545万tに対して,若干の増加傾向を示した.総生産量が695万tとピークであった2007年と比較して,2018年は80%と全盛期に比較してまだ低い水準にある.銑鉄鋳物は351万tで前年と比較して102%と増加し,2017年から連続してのプラスとなった.用途別では,自動車を含む輸送機械用が239万tで前年から微増し,産業機械器具用,金属工作・加工機械用を含む一般・電気機械用は96万tと前年比106%増加した.鋳鉄管は25万tで,前年度とほぼ同等で横ばい傾向である.可鍛鋳鉄は4.0万tで前年比95%と減少した.鋳鋼品は船舶,土建鉱山機械,鋳鋼管,破砕機・摩砕機・選別機などを中心に合計16.8万tが生産され,前年比108%と2年連続の増加となった.非鉄鋳物では,銅合金鋳物が7.5万tで前年と同等,アルミニウム鋳物は45.4万tの生産量で前年比102%と微増した.ダイカストは108万tで前年比104%と増加した.精密鋳造品は5,053tで前年比92%と減少した.2018年の鋳造品の生産量に関して,可鍛鋳鉄以外で前年度より増加または横ばい傾向を示した.2018年の生産金額は,1兆9456億円となり前年比+6%であり,2年連続のプラス傾向となった.生産金額は,1990年,2008年のピーク時には,2.5兆円であったのに対して,現在は82%程度の水準である.しかし,非鉄金属鋳物の生産額の比率は年々増加し,2017年は50.7%と3年連続で5割を超えた(1).(公社)日本鋳造工学会では,以下のテーマについてオーガナイズドセッションが開催されている.セッションでは「鋳鉄の材質と機械的性質」,「球状黒鉛鋳鉄球状黒鉛鋳鉄における黒鉛粒数増加の新しいメカニズム」,「現場記述改善事例」,「T5やT6熱処理に伴うミクロ組織と機械的性質」,「鉛フリー銅合金鋳物の評価と製造技術開発」に関する報告がなされた.また,「鋳造工場における省人化技術の最新動向」,「IoT技術の最前線」と題した2件の技術講習会が開催された.鋳造工場へのIT/IoT技術の導入及び自動化プロセスなどの講習が行われた(2)(3).(一社)日本鋳造協会では鋳造産業ビジョンでスマートファウンドリーを提言し,IoTの研究・導入推進,支援を目的としたIoT推進委員会を発足した(4).また,鋳造技術の伝承と高度化を目指した「鋳造カレッジ」は11年目を迎え,協会認定の鋳造技師の認定数は累計923名(2017年度まで)を数えている.2018年度は鋳鉄コース,軽合金コース,銅合金コースの3コースに77名が受講した(5)

 第73回世界鋳造会議(The 73rd WFC)が2018年9月23日~27日にクラクフ(ポーランド)で開催され,各国から900名以上が参加した(6).Best scientific paperに安田秀幸,K.Chatcharit,森下浩平,杉山昭が発表した「Time-resolved and in-situ 2D/3D imaging of solidification in ductile cast iron」とBest Technical Paper最優秀賞に富田祐輔,藤井英俊が発表した「Cast components in super duplex alloys intercomparison between bench moulding and three dimensional printing」,優秀賞に菅野利猛が発表した「Problems and improvements on the production of large castings with Hi-Si ductile iron」が選ばれた(7)

〔長船 康裕 室蘭工業大学〕

参考文献

(1)素形材工業生産実績,素形材,Vol.60,No.3 (2019),pp.76-80.

(2)171回全国講演大会講演概要集,公益社団法人日本鋳造工学会,(2018)

(3)第172回全国講演大会講演概要集,公益社団法人日本鋳造工学会,(2018)

(4)協会ニュース,鋳造ジャーナル,vol.14,No.11(2018)pp.17-20.

(5)山元裕二,鋳造ジャーナル,vol.14,No.7(2018)pp.38-39.

(6)Organizing committee of the 73rd WFC, https://www.73wfc.com/(参照日2019年4月)

(7)清水一道,楠本賢太,素形材,Vol.60,No.1 (2019)pp.45-47.

目次に戻る


6.2.2 塑性加工

 ビッグデータ,AI技術を背景に,加工情報や生産情報の収集,加工プロセスの可視化(見える化)が注目されており,塑性加工用の加工設備・機器や金型への各種センサの組み込みが取り組まれた.各種センサやシステムによるデータ収集の段階であるが,今後,収集されたデータを活用して,加工プロセスの最適化や新しい加工プロセスの開発が進められることが期待される.

 圧延分野では,アルミニウム合金マグネシウム合金等の非鉄金属,CFRPに代表される新材料やコバルト系合金等の特殊な材料を中心に,圧延による材質(組織)変化・制御に主眼が置かれた研究報告が多数なされた.圧延による潤滑油の特性評価に関する研究報告も一定数あり,トライボロジー特性の評価試験法として定着している.一方,材料の変形,形状および加工プロセスに主眼が置かれた研究報告は少なく,クラッド板,テイラード板を取り扱ったものやリングローリングに関するものであった.押出し分野においても,熱電材料等の特殊な材料の押出し特性等,いずれも材質(組織)変化・制御に主眼が置かれたものが研究報告の中心であった.

 鍛造分野では,国内外問わず,軽量化,複雑形状をターゲットとした研究報告が多数を占めた.国内ではトライボロジー特性に着目した研究報告が多く,金型表面処理,工程設計やサーボプレスによるモーション制御を代表とする先進的な鍛造プロセスの研究報告が多数なされた.また有限要素シミュレーションの高精度化を目的として,流動応力-ひずみ曲線や摩擦係数に代表される入力パラメータの高精度な測定手法や同定手法の研究報告も多数なされた.特に熱間域でのチタン合金,ニッケル基合金を対象としたものが多く,これは内閣府・戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)の一つ「大型精密鍛造シミュレータを用いた革新的新鍛造プロセス開発と材料・プロセスデータベース構築」が最終年度をむかえたことが関係している.同時に熱間鍛造によるチタン合金,ニッケル基合金の材質(組織)変化・制御に関する研究報告も目立った.一方で板鍛造に関する研究報告や形状精度に主眼を置いた研究報告は減少した.板鍛造は国内外関わらず,特に産業界からの関心が高いため,一時的な減少の可能性がある.

 板材成形分野では,国内外問わず,研究開発がさかんであり,対象も材料特性の測定,数値シミュレーションの高精度化,加工プロセスの開発等の多岐にわたり,研究報告がなされた.特に高張力鋼鋼,チタン,CFRPの難成形材料を対象として,多軸引張り試験等の材料試験による変形特性(異方性成形限界)の把握と有限要素シミュレーションのためのモデリング化の研究報告が多数なされた.また結晶塑性有限要素シミュレーションによる成形解析も取り組まれた.一方,摩擦攪拌インクリメンタル加工,熱間スピニング加工等の各種逐次成形法やホットスタンピング等の加工プロセスに主眼を置いた研究報告も多数なされた.

 塑性接合分野では,高張力板やアルミニウム合金板を対象としたメカニカルクリンチング,ヘミング加工やリベットによる接合が研究報告されている.また国内外問わず,構造部材のマルチマテリアル化をターゲットに,異種金属の接合のみならず,金属とCFRP,樹脂の接合が取り組まれた.

 日本機械学会第26回機械材料・材料加工技術講演会(M&P2018)では塑性加工のオーガナイズドセッションが設けられた.また平成30年度塑性加工春季講演会(1)では塑性接合,押出し加工,ナノ・マイクロ塑性加工,引抜き加工,CFRP,マグネシムの塑性加工に関するテーマセッション,第69回塑性加工連合講演会(2)では,熱間鍛造,ポーラス金属の塑性加工,衝撃塑性加工,成形シミュレーションに関するテーマセッションが設けられた.一方,第17回塑性加工国際会議(Metal Forming 2018)(3)が2018年9月に豊橋にて開催され,249件(27カ国)の講演発表があった.これは2010年(豊橋)以来の日本での開催であった.また国際生産工学アカデミー(CIRP)第68回総会(CIRP 2018)が2018年8月に東京にて開催され,塑性加工部門では16件(7カ国)の講演発表があった.こちらは2006年(神戸)以来の日本での開催であった.

〔松本 良 大阪大学〕

参考文献

(1)楊明, 平成30年度塑性加工春季講演会の報告, ぷらすとす, Vol.1, No.9 (2018), pp.662–663.

(2)外本和幸, 「第69回塑性加工連合講演会」実施報告, ぷらすとす, Vol.2, No.15 (2019), pp.174-175.

(3)森謙一郎, 第17回塑性加工国際会議Metal Forming 2018の報告, ぷらすとす, Vol.2, No.14 (2019), p.126.

目次に戻る


6.2.3 プラスチック加工

 制御装置のデジタル化が推進され,インダストリ−4.0と呼ばれるモノづくりの手法が広く採用されるに至り,成形機においても成形・生産上の群管理に加えて,稼働状況の管理,アフターサービスの事前予知などの手法が提案されている.成形機は精密制御とともに成形工程の複合化が進み,ファクトリーマシン,ターンキーマシンと呼ばれる複合成形法の研究が推進されている.また,射出成形装置を応用した3Dプリント装置による大型部品の実用化も進められている.

 プラスチックの高付加価値化への押出・ブロー技術の貢献は大きく,多くの技術報告が行われている.多様なコンポジットの検討が報告される中,二軸押出機には,高混練,高精度,省エネルギー化が求められており,高トルク対応,高速回転,スクリュ深溝化が進む.また,CAE(Computer Aided Engineering)支援によるスクリュ形状最適化の報告なども見られ,高機能化とプロセス合理化の両立に応える.また,持続可能な素材として注目される天然セルロースによるプラスチック強化技術においては,セルロースをナノレベルに解繊するプロセスとして,混練押出機が重要な役割を果たす.

 ブロー成形は,中空形状を活かしたダクト,ホース,タンクなどの自動車部材に適用される.この分野では,物理発泡押出ブローによるダクト成形や,燃料電池車向け高圧タンク成形の報告が見られる.ポリエチレンテレフタレート(PET)ボトルの延伸ブロー成形においては,サーボポンプ採用や電動化などにより,省エネルギー,ハイサイクル,低コスト化とプロセスの洗練が進む.また,ブロー成形の形状自由度を活かし,多品種小ロット対応によるユニーク形状ボトルの報告は,魅力的な差別化手法の提案である.

 地球環境改善を目的とした自動車の軽量化に伴い,長繊維強化樹脂に代表される高分子基複合材料が採用され,同材料の成形加工で生じるスクリュ内での繊維の圧損・分散挙動や金型内での繊維配向挙動の研究が進んでいる.長繊維強化樹脂の成形加工では,コストダウンを目的とした,連続繊維直接成形と呼ばれる,直接繊維と樹脂を成形機に投入する成形加工法が欧米で進み,日本においても研究が進んでいる.一方で,溶融積層法を用いた炭素繊維強化熱可塑性樹脂の三次元造形に関する結果も報告され始めた.加えて,天然繊維,木粉に加えて,セルロースナノファイバーの分散性の向上,乾燥技術,成形加工法の研究が活発化している.自動車部品,特に外装品へのプラスチック材料の採用にあたっては,燃焼性の改善が熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂においても行われている.一方で近年,エレクトロニクスデバイスの高性能化,小型化に伴い,発生する熱管理が重要となっている.プラスチックは絶縁性や柔軟性に優れるものの,熱伝導性の低さが弱点であり,窒化ホウ素や窒化アルミといった高熱伝導性と絶縁性を有するフィラーを複合化することにより樹脂の熱伝導性を向上させる技術が検討されている.

 また,金属材料と繊維強化樹脂,あるいは樹脂材料と繊維強化樹脂の組み合わせによるマルチマテリアル化が推進されている.この異種材料による複合化にあたって,物理処理や化学処理によるアンカー効果の発現,接着剤の研究など異種材料間の接合接着に関する研究も多く,自動車部品などへの実用化に向け今後の展開が期待される.

 平成29年度の容器包装リサイクル法に基づく一般廃棄物系の廃プラスチックのリサイクルは,回収量66万トン,再商品化量は約40万トンである.この量はここ数年ほぼ一定である.落札量は,プラスチックパレット等に再加工する,いわゆる材料リサイクルが約50%,コークス炉化学原料化が35%,ガス化が10%,高炉還元剤が5%程度である.これにより,CO2削減や,バージンプラスチックの削減に貢献している.

 平成29年のトピックスとして,中国が廃プラスチックの輸入を停止すると発表し,同年末に実施された.このため従来日本から中国へ輸出されていた年間約80万トン(香港経由分を含めると推定140万トン)の廃プラスチックが行き場を失うことになる.当面は,ベトナム等東南アジア諸国へ振向けられ,ペレット化したのち中国へ輸出する動きが中心となると思われるが,これらの諸国も将来は輸入を規制する可能性もあり,世界的に廃プラスチックのだぶつきが問題となりうる.したがって,コスト的に優位な材料・ケミカルリサイクルの利用拡大が期待される.海外の研究では,リサイクルPETの高次構造と機械的特性の時間依存性の検討など,基礎研究に基づく文献が報告されている.炭素繊維強化プラスチックCFRP)は構造部材用途で注目を集めており,欧米では既にCFRPのリサイクルの事業化事例が出てきている.邦文では,廃コンテナ及び包装プラスチックへの高度リサイクルプロセスの創出の検討,再生ポリプロピレンの非晶構造と力学特性との関係検討等がなされている.

〔高山 哲生 山形大学〕

目次に戻る


6.2.4 溶接,接合

 日本国内における溶接の研究開発動向は,溶接学会全国大会で確認できる(1).平成30年度春季と秋季の全国大会での一般講演の総数は280件であった.溶接法ごとの発表件数で比較するとアーク溶接54件,摩擦攪拌接合52件,レーザ/電子ビーム溶接29件,抵抗溶接18件,固相接合(超音波接合と摩擦圧接を含む)40件,ろう接13件であった.また,異材接合の発表件数は60件あり,異種金属接合49件,金属/樹脂接合10件,金属/セラミック接合1件であった.異種金属接合のうち15件が鉄とアルミの接合であり,そのうち摩擦攪拌接合4件,固相接合4件であった.また,3D積層造形のセッションが設けられており,発表件数は7件であった.春季全国大会では,「ISMAプロジェクトにおける接合技術開発」と題したオーガナイズドセッションが組まれ,輸送機器の軽量化を目指した新構造材料技術研究組合(ISMA)のプロジェクト(2)の成果10件が報告された.また春季と秋季の両方の全国大会で「溶接部品質保証のためのシミュレーション技術」と題したオーガナイズドセッションが組まれ戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)の「溶接部性能保証のためのシミュレーション技術の開発」(3)の成果など16件が報告された.

 皮膜形成技術である溶射法について2018年度の日本溶射学会全国講演大会(4)(5)における発表を各溶射法による発表件数を比較すると,一般講演全40件中でプラズマ溶射22件(このうちサスペンションプラズマ溶射が5件),コールドスプレー10件,HVOF溶射5件,エアロゾルデポジション2件,ウォームスプレー1件であった.材料別で比較するとセラミック20件,金属11件,樹脂3件,サーメット2件,TBC2件であった.なお,春季大会では日本ガスタービン学会との共同企画でオーガナイズドセッション「ガスタービンにおける溶射・コーティングの最前線」が設けられ遮熱コーティング(TBC)における溶射技術の重要性が議論された.

〔安井 利明 豊橋技術科学大学〕

参考文献

(1)溶接学会全国大会講演概要, 溶接学会

https://www.jstage.jst.go.jp/browse/jwstaikai/-char/ja(参照日2019年4月8日)

(2)新構造材料技術研究組合,

http://isma.jp/(参照日2019年4月8日)

(3)戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)革新的構造材料, 科学技術振興機構

http://www.jst.go.jp/sip/k03/sm4i/index.html(参照日2019年4月8日)

(4)日本溶射学会編集委員会編, 日本溶射学会全国講演大会講演論文集, Vol.107th (2018).

(5)日本溶射学会編集委員会編, 日本溶射学会全国講演大会講演論文集, Vol.108th (2018).

目次に戻る


6.2.5 粉末加工

 粉末成形~焼結法に関する国内の研究動向に関しては(一社)粉体粉末冶金協会の春季および秋季大会における講演の状況にて確認できる.2018年春季大会において「セラミックスの高機能化と製造プロセスの革新」,「ヘテロ組織制御による高機能材料創製」と題したセッションが企画された.前者では23件の講演が行われ,無焼成セラミックス固化メカニズムやスラリー最適化,ならびにナノ構造体を含めた特異な性質を有する結晶創成に関する研究がなされている.後者では高強度と延性を両立する焼結合金の開発動向が示されており,焼結鋼はもちろん,チタン合金アルミニウム合金,および銅合金に関するヘテロ構造・調和組織化の試みが進展している.2018年秋季大会においては,「熱電変換材料-実用化へ向けてのステップ」,「粉末,混合,成形,焼結等のシミュレーションの発展」と題したセッションが企画され,後者では離散要素法を用いた粉砕・混合プロセスの解析や,液相焼結を含めた緻密化挙動を有限要素法やモンテカルロ法等を用いて明らかにする試みが進展している.2018年も例年と同じく磁性材料の機能発現やアディティブマニュファクチャリングAM)に関する研究が活発であり,それぞれ講演特集として40件程度の報告がなされた.AM用に特化したCoレスマルエージング鋼粉末,アルミナ‐SiC粒子複合粉末等が開発された他,凍結乾燥パルス圧力印加オリフィス噴射法による球状ZrO2粒子の作製が行われている.その他,「自動車焼結部品の現状と展望」が特集されており,成形潤滑剤の脱脂性の向上,Cr銅と過共晶Cu-Zr合金を多層構造とした高導電性・高硬度複合焼結体の開発が報告された他,点火コイル用圧粉コアの成形形技術,ヘリカルギヤやスプロケットの緻密化・熱処理技術が進展している.

 国際会議はWorld PM(粉末冶金粉末冶金国際会議)2018が中国北京で開催された.口頭発表の内訳としてAMが最も多い37件,続いて粉末製造プロセス,焼結プロセス,粉末射出成形,硬質合金セラミックス,磁性材料,および焼結部品・構造材に関するものがそれぞれ30件程度で,他,耐熱超合金,非鉄および希少金属,ポーラス材料,電池材料といった機能材料に関する研究が報告されている.

〔谷口 幸典 奈良工業高等専門学校〕

目次に戻る


6.2.6 特殊加工

 近年,人工知能AI)や深層学習が注目を集めているが,元来の情報・制御分野にとどまらず,特殊加工分野への展開が実用化レベルで検証されている.深層学習は,複雑な現象から得られる複数のパラメータを入力として,学習・蓄積されたデータベースをもとに刻々と更新されるアルゴリズムを介して,ひとつの出力を得るシステムである.代表的な特殊加工や放電加工は,レーザ光の特性や放電加工機の電源特性自体もパラメータが多様なうえに,ワーク側の微視的な材料特性の揺れ,環境,装置側の固有のクセ,電極や発振器などの消耗具合といった状況が複雑に作用し加工結果を導くため,加工条件の選定は経験的あるいは試行錯誤的になりやすい.この課題はまさに深層学習の得意とするところであり,加工パラメータとその加工結果,加工状態を学習することで,深層学習により自動的に加工パラメータの最適化を図る試みがされている.

 産業界では,2018年に三菱電機が自社製の人工知能を搭載した形彫放電加工機を発表している(1).これは加工状態をリアルタイムに把握し,パラメータを即時に最適化することで,生産性向上を可能にしている.また,レーザ加工分野においても,2018年に三菱電機,パナソニック,東大などが人工知能による自動化を目指す連携組織を立ち上げたことが発表された(2)

 2018年の主要な国内会議発表を振り返ると人工知能深層学習と特殊加工を明確に結び付けた研究発表はまだ件数はまだ少ないが,2018年12月に開催されたレーザ加工学会では,深層学習のレーザ加工への応用が紹介され,関心を集めた(3).また,国際誌でも,例えばCondeらによるワイヤ放電加工機の高精度化のためのAI技術が発表され注目されている(4)

 この分野における今後の課題は,いかに加工結果,加工性状をin-situでサンプリングするかということである.AIがリアルタイムで状況を判断し装置パラメータの最適化を図るためには,加工速度に応じた高速な加工結果,加工状態のサンプリングが要求されるが,現状では電気信号と高速カメラ画像による情報取得が主であり,これらのデータから判断できない加工結果への要求をAIに求めることは難しい.特殊加工に限らず,材料加工におけるオンマシン計測の古くから研究報告されているが,今後,AIとの融合を念頭に置いた高速計測技術への要求がさらに高まるだろう.

〔青野 祐子 東京工業大学〕

参考文献

(1)形彫放電加工機「SP-Vシリーズ」発売のお知らせ, 三菱電機株式会社ニュースリリースFA No.1810 (2018.6.7), http://www.mitsubishielectric.co.jp/news/2018/pdf/0607-b.pdf(参照日2019年4月1日)

(2)レーザー加工, AIで自動化 三菱電機や東大が連携, 日本経済新聞電子版 (2018.3.12)

(3)谷峻太郎, 深層学習でレーザ加工をスマートに, 第90回レーザ加工学会講演会講演論文集 (2018) pp.101-104.

(4)Conde, A., Arriandiaga, A., Sanchez, J.A., Portillo, E., Plaza, S., Cabanes, I., High-accuracy wire electrical discharge machining using artificial neural networks and optimization techniques, Vol.49 (2018), pp.24-38.

目次に戻る