Menu

機械工学年鑑2019
-機械工学の最新動向-

11. 宇宙工学

関連部門ホームページ関連部門イベント


章内目次

11.1 宇宙輸送
11.2 科学・実用衛星
11.3 宇宙探査
11.4 有人宇宙活動
11.5 小型宇宙システム
 11.5.1 小型輸送システム11.5.2 小型・超小型衛星の動向


11.1 宇宙輸送

 2018年度にはH-IIAロケット2機,H-IIBロケット1機,イプシロンロケット1機の合計4機のロケットが打ち上げられた.H-IIAロケットに関しては,2018年6月12に情報収集衛星レーダ6号機を搭載した39号機,2018年10月29日には温室効果ガス観測技術衛星「いぶき2号」(GOSAT-2)を搭載した40号機がそれぞれ打ち上げられ,連続34機の成功となった.また,H-IIBロケットは,宇宙ステーション補給機「こうのとり」7号機(HTV7)を搭載した7号機が2018年9月3日に打ち上げられ,所定の軌道に投入した.これらの打上成功により,H-IIA/Bロケットの信頼性の高さをあらためて実証することができたと考える.

 小型衛星の機動的打上げ手段の獲得・提供等を目指す固体燃料ロケットであるイプシロンロケットは内之浦宇宙空間観測所から2019年1月18日に革新的衛星技術実証1号機を搭載した4号機が打ち上げられた.革新的衛星技術実証1号機は小型実証衛星1号機(RAPIS-1),3基の超小型衛星(MicroDragon,RISESAT,ALE-1),3基のキューブサット(OrigamiSat-1,Aoba VELOX-IV,NEXUS)の合計7基の衛星で構成されており,イプシロンロケットとして初めての複数衛星の打ち上げとなった.この複数衛星搭載システムにより今後の超小型衛星打ち上げへの寄与が期待される.また,H3ロケットの固体ロケットブースタ(SRB-3)と1段モータの共有化や電子機器開発の共通化に関する検討を平行して実施している.

 自立性の確保と国際競争力のあるロケット及び打上げサービスの提供を目的とし,2020年度の初号機打ち上げを目指して開発が進められているH3ロケットは,固体ロケットブースタ(SRB-3)の地上燃焼試験や第1段厚肉タンクステージ燃焼試験(BFT),2段エンジン(LE-5B-3)認定型の燃焼試験等が実施され,着実に開発が進められている.

 宇宙輸送システムの将来に向けた研究開発としては,H3ロケットの次の世代に向け,更なる低コスト化を図り国際競争力を確保する方策として,JAXAにおいてもロケット第1段の再使用化を目指した研究が進められており,打上げから着陸,再使用までの一連の運用における重要技術として,誘導制御技術,推進薬マネジメント技術,エンジン再整備技術を識別し,小型実験機の開発と飛行実験を通じてこれらの技術に関する知見を蓄積すべく,1段再使用飛行実験(CALLISTO)の研究が,CNES(仏),DLR(独)との国際協力により進められている.また,そのフロントローディング研究活動として,JAXA独自の小型実験機(RV-X)を用いた飛行試験に関する研究も実施されており,2018年9~10月にエンジンの作動特性や音響・振動等の機械的環境条件に関するデータ取得を目的として機体を用いたエンジン燃焼試験が実施された.この成果を反映して機体開発をすすめ,2019年度中の飛行試験が計画されている.

〔紙田 徹 (国研)宇宙航空研究開発機構〕

目次に戻る


11.2 科学・実用衛星

 2018年は科学・実用衛星として6機の打上げが行われ,また以前に打ち上げられた衛星による堅実な成果が得られた年であった.

 小型衛星を短期間に低コストで実現するための衛星開発運用アーキテクチャを確立し,低コスト・短期の開発期間実現を目指す先進的宇宙システム(ASNARO)において,Xバンドレーダ衛星の「ASNARO-2」が2018年1月18日にイプシロンロケット3号機によって打ち上げられた.「ASNARO-2」は日本初となる商用高解像度レーダ衛星であり,1.0m分解能の観測モードで高精細画像を撮影でき,運用確認フェーズを終え2018年9月25日に商業画像販売を開始した.

 温室効果ガス観測衛星「いぶき」の後継機で,温室効果ガスの観測機能・性能の向上を目指す「いぶき2号」(GOSAT-2)は,2018年10月29日にH-IIAロケット40号機により打ち上げられた.2018年10月30日にクリティカル運用期間を終了し,2018年11月9日に雲・エアロソルセンサ2型(CAI-2)の初画像取得,2018年12月26日には温室効果ガス観測センサ2型(FTS-2)の初観測を行っている.一酸化炭素を観測対象として追加し,二酸化炭素と組み合わせて観測することにより人為起源の二酸化炭素の排出量推定を目指すと共に,PM2.5の濃度推定に必要なデータの観測を行う.

 商用衛星では,カタールの国営衛星通信事業者であるEs’hailSat(エスヘイルサット)社から受注した通信衛星「Es’hail -2」は,2018年11月16日(日本時間)に,米国フロリダのケープカナベラル空軍基地からFalcon-9により打ち上げられた.広範囲で大容量かつ高セキュリティーな商用TV通信や商用データ通信および政府系機関向け通信サービスに加え,静止衛星として世界で初めてアマチュア無線通信サービスにも利用される.

 2017年以前に打ち上げられた衛星では,日本のほぼ天頂を通る軌道を持つ人工衛星を複数機組み合わせ,GPSを補いより高精度で安定した衛星測位サービスを実現する準天頂衛星システム「みちびき」は,準天頂軌道衛星3機と静止軌道衛星1機を2017年度までに順次H-IIAロケットにより打ち上げ,4機体制での正式サービスが2018年11月1日から開始された.2010年に打ち上げられた初号機の後継機を2020年に打ち上げる予定であり,また2023年度をめどに7機体制での運用が開始される予定である.

 2017年12月23日に打小さく上げられた気候変動観測衛星「しきさい」(GCOM-C)は放射収支と炭素循環に関わる雲・エアロゾルや植生などを全球規模で長期間継続して観測することを目的とし,初期機能確認運用及び初期校正検証運用を終了し,2018年12月20日より観測データの提供を開始した.

〔栗林 豊 三菱電機(株)〕

目次に戻る


11.3 宇宙探査

 欧米および中国等が月・惑星探査ミッションを遂行している中,日本も宇宙探査を積極的に推進している.2014年12月3日に打ち上げた小惑星探査機「はやぶさ2」は,2018年6月27日に無事,小惑星「リュウグウ」に到着し,1年半ほど滞在して小惑星の観測およびサンプル採取等を行っている(Science, DOI: 10.1126/science.aaw0422, 19 March 2019)(Science, DOI: 10.1126/science.aav7432, 19 March 2019)(Science, DOI: 10.1126/science.aav8032, 19 March 2019).2018年9月21日には,探査ローバ「ミネルバ2」の分離に成功,世界で初めて小惑星表面の移動探査とその場観測を行い,さまざまな小惑星表面の画像を地球に送った.また,続いて,2018年10月3日にドイツDLRとフランスCNESが開発したロボットランダ「MASCOT」の分離にも成功し,表面探査を行った.その後,「はやぶさ2」探査機は,2019年2月22日に約3mの高精度着陸(タッチダウン)に成功し,サンプル採取を行った.さらに,2019年4月5日にインパクタによる約10mの人工クレータの生成にも成功し,内部物質の露出を行う快挙を成し遂げた.今後,詳細な解析を行い,タッチダウンおよびサンプル採取を行うかの判断を行い,2019年末頃に小惑星を出発,2020年末頃に地球に帰還する予定である.「はやぶさ2」が探査を行っている小惑星「リュウグウ」は,C型の始原天体で,太陽系が生まれた頃(今から約46億年前)の水や有機物が今でも残されていると考えられており,表面において微量ながら水成分も検出されている.地球の水はどこから来たのか.生命を構成する有機物はどこでできたのかなどの疑問を解く手がかりを得ることが期待できる.

 一方,2010年5月に打ち上げた金星探査機「あかつき」は,2015年12月7日に姿勢制御用エンジンを用いて金星周回軌道投入に成功,現在も,金星を楕円軌道にて順調に周回し,金星の科学観測を行っている.高解像度数値計算により,2mmカメラ(IR2)が発見した大規模な筋状構造を再現することに成功している(Nature Communications,2019年1月9日,神戸大学,JAXA,慶應義塾大学,京都産業大学,JAMSTEC共同プレスリリース,2019年1月10日)などの科学成果を挙げている.

 日本とヨーロッパ(European Space Agency(ESA):欧州宇宙機関)と共同で推進している水星探査「BepiColombo(ベピコロンボ)」計画は,水星の磁場,磁気圏,内部,表層を初めて多角的・総合的に観測し,「惑星の磁場・磁気圏の普遍性と特異性」や「地球型惑星の起源と進化」について明らかにするミッションである.JAXAは,日本の得意分野である磁場・磁気圏の観測を主目標とするMMO探査機の開発と水星周回軌道における運用を担当し,ESAが打ち上げから惑星間空間の巡航,水星周回軌道への投入,MPOの開発と運用を担当する.MMOとMPOは,2018年10月20日にアリアン5型ロケットによる打ち上げに成功した.現在,順調に飛翔中で,2025年水星到着後に分離して,協力しながら約1年間の観測を行う予定である.

 月着陸実証機SLIM(Smart Lander for Investigating Moon)プロジェクトが2016年4月より,正式にスタートした.SLIMでは,将来の月惑星探査に必要なピンポイント着陸技術を開発し,それを小型探査機で月面にて実証する計画である.従来の「降りやすいところに降りる」着陸ではなく,「降りたいところに降りる」着陸へと質的な転換を果たすもので,世界的にもユニークなミッションである.小型の探査機によって月への高精度着陸技術の実証を早期に実現し,我が国として重力天体への着陸技術を獲得することは重要であり,将来の科学ミッションや国際協働有人探査ミッションに貢献するものである.そのほか,ESAが推進している木星やその氷衛星を調べる次世代探査計画「JUICE(The Jupiter Icy moons Explorer:木星氷衛星探査機)」ミッションに,日本も観測機器の一部の開発を担い参加する.「JUICE」は,2022年にアリアン5にて打ち上げ,2030年に木星系到着,2032年にガニメデ周回軌道に投入し,約8か月後の2033年6月にミッションを完了する計画で,世界初の氷衛星の周回機となる.

 将来計画としては,火星衛星探査計画(MMX)を準備している.MMXでは,火星の2つの衛星(フォボス・ダイモス)の探査を計画しており,試料採取を実施し,地球に回収(サンプルリターン)を行い,詳細な分析を実施する計画である.これにより火星衛星起源を実証的に決定して,原始惑星形成過程の理解を進めるとともに,生命材料物質や生命発生の準備過程(前生命環境の進化)を解明する.そのほか,小天体フライバイミッション「DESTINY+」やソーラー電力セイルによるトロヤ群探査ミッション「OKEANOS」計画を検討している.

 国際有人探査計画なども視野にいれて検討しており,我が国も本格的な月惑星探査を進める計画である.現在,月や火星を対象に,国際協働による宇宙探査の検討が活発に行われ,15カ国の宇宙機関より構成される国際宇宙探査協働グループ(ISECG)が,シナリオ検討および技術検討を行っている.そこでは,月極域探査,月周回拠点のゲートウエイ計画,月サンプルリターン計画,月・火星有人探査などが議論されている.2018年3月には,日本で第2回会合(ISEF2)開催が開催され,将来の宇宙探査に関する共通の原則や方向性について議論がされた.日本は,現在,2022年度目標に月面の水氷探査を国際協力で行うミッション計画と2025年度目標に月サンプルリターンを国際協力で行う計画(HERACLES)の検討を推し進めている.

〔久保田 孝 (国研)宇宙航空研究開発機構〕

目次に戻る


11.4 有人宇宙活動

 国際宇宙ステーション(ISS)後をにらんだ国際的な有人宇宙開発の姿が見えてきた.ISSに参加した宇宙機関に加えて中国,韓国などを含めた16カ国の宇宙機関で構成する国際宇宙探査協働グループ(ISECG)において,ISSに続く国際有人宇宙プログラムとしての有人宇宙探査計画について国際的な調整が始まっており,国際協力で行う有人宇宙探査のシナリオ検討を行っている.それを受けて各国で検討が進んでおり,JAXAでは国際宇宙探査に関する組織として2018年7月に国際宇宙探査センターを設立し,月近傍の無人探査計画として宇宙科学研究所が検討している小型月着陸実証機(SLIM)に引き続き,国際宇宙探査として米国主導の月近傍有人施設(Gateway)に我が国が優位性を持つ技術で参画することを見据えている.2018年度改訂宇宙基本計画にも以下のように計画が取り込まれた.すなわち,米国が構想する月近傍の有人拠点(Gateway)への参画について,我が国の科学探査への貢献等にも留意しつつ,国際調整や技術実証を主体的に推進する,とある.さらにGatewayと連携して月面からサンプルリターンを行う月離着陸実証機(HERACLES)などについて国際的な検討が進められている.Gatewayに関しては,2018年7月の日米包括対話で米国から日本へ参加の呼びかけがあったところである.さらにISS計画に関して,2024年までの運用延長が決まっているところ,2019年度に,地球低軌道における2025年以降の我が国の有人宇宙活動の在り方を整理すると宇宙基本計画に謳われた.2019年は日本の有人宇宙活動が次のステップへと進む重要な年になる.

 然るにISSを取り巻く2018年の有人宇宙活動を振り返ると,これまで順調にISSへ人間を送り込んでいたロシアのソユーズ宇宙船が2018年10月11日の56Sの打上げにおいて失敗した.このロケットは第1段に問題が発生したが,幸い搭乗していた2名の宇宙飛行士は緊急脱出して無事に地上に帰還した.この事故は9月23日に「こうのとり」7号機を打ち上げてISSに到達していた日本の計画に微妙に影響する.7号機には日本初のISSからの物質回収のための小型回収カプセルが搭載されており,ISSで組み立てた後にISSから離脱する「こうのとり」に搭載されて帰還時に放出され回収される予定であったが,カプセルをISSで組み立てる訓練を受けていたのがソユーズから緊急脱出した宇宙飛行士であった.JAXAは急遽ISSに滞在する宇宙飛行士を訓練し,結果として小型回収カプセルは無事組み立てられ,2018年11月11日に無事南鳥島近くの海上で回収され,大成功を収めることが出来た.小型回収カプセルの成功により,今後の日本の有人カプセルの開発へ向けて第一歩を踏み出すことが出来た.

 「きぼう」の利用は有効活用を目指して更に多様化し,ISS参加モジュールでは随一の成果を挙げているとも言える.船内実験室においては流体実験ラック,細胞実験ラック,温度勾配ラックに多目的実験ラックと多岐にわたる実験装置を備え,活動中である.また宇宙飛行士の負担軽減を目指してロボット等を活用した汎用業務の遠隔操作,自動化,自立化を進めており,今後のより有用な宇宙飛行士の軌道上の活動が期待できる.さらに船外実験プラットフォームにおいても,開発当初には想定してなかった利用の仕方を開発し,海外からも多くの利用要請を受けるような多様な実験を行っている.エアロックとロボットアームを組み合わせた宇宙利用は「きぼう」独自のものであり,これらによる超小型衛星の放出も定常化し,2018年には九州工業大学による海外の超小型衛星群の放出を行い,また発展途上国の衛星利用手段としても機会提供を行い,国際貢献が著しい.

 日本の宇宙飛行士は,2018年は金井宇宙飛行士が168日間の長期滞在を行い医師としての経験を元にした活動や,日本人4人目となる船外活動を行った.今後は野口宇宙飛行士及び星出宇宙飛行士の長期滞在が予定されている.

〔下田 孝幸 (国研)宇宙航空研究開発機構〕

目次に戻る


11.5 小型宇宙システム

11.5.1 小型輸送システム

 キャノン電子やIHIエアロスペース等の出資により2017年8月に設立された「新世代小型ロケット開発企画株式会社」は,2018年7月に1億円から14億円に増資され,小型衛星に対する商業宇宙輸送サービスを提供する事業会社「スペースワン株式会社」として新たに発足した(1).2021年度中の事業化と,2020年代半ばに年間20機の打上げを目指す.2019年3月には打上げ射場の建設予定地として和歌山県串本町田原地区周辺を選定した(2)

 北海道大樹町を拠点に小型液体ロケットを開発するインタステラテクノロジズ社は,2018年6月30日,観測ロケット「MOMO 2号機」の打上げ実験を実施した.2017年7月の不具合要因を修正して臨んだ実験であったが,離昇後すぐに推力を失い,地上に落下,炎上した.その後の調査により,姿勢制御用スラスタの不具合が要因であることが判明した(3)(4).同社は2019年3月に,宇宙輸送事業の実現を後押しする法人サポーターズクラブ「みんなのロケットパートナーズ」を発足させ,地球周回軌道投入ロケット「ZERO」の2023年中の打上げを目指すと発表した.

 米国の小型ロケットベンチャー企業であるロケットラボ社は,2018年11月に初の商業打上げを成功させた(5).その後も,翌12月にNASAの小型衛星(6),2019年3月にはDARPAの技術実証衛星の打上げ(7)をそれぞれ成功させる等,小型衛星打上げ用ロケットの分野で世界を牽引し続けている.

 中部日本放送株式会社は,2018年11月,有人宇宙機開発を行うPDエアロスペースへの出資を発表した(8).PDエアロスペースは2019年に無人宇宙飛行実験機による高度100kmへの到達および帰還を目指しており,今回調達した資金をもとに,同実験機に搭載する新型エンジンおよび機体の開発を更に進める計画である.

〔永田 晴紀 北海道大学〕

参考文献

(1)「小型ロケット打上げ事業の実施に向けた事業会社化について」

https://www.space-one.co.jp/doc/pressrelease180702.pdf

(参照日 平成31年4月1日)

(2)「小型ロケット打上げ射場の建設予定地の選定について」

https://www.space-one.co.jp/doc/pressrelease190326.pdf

(参照日 平成31年4月1日)

(3)「MOMO2号機打上実験調査結果報告書(第1報)」

https://drive.google.com/file/d/1R5JJOge_8q8qpK-REootBdhEdupZ0vvV/view?usp=sharing

(参照日 平成31年4月1日)

(4)「MOMO2号機打上実験調査結果報告書(第2報)」

https://drive.google.com/file/d/1MDsDZaa9uGJ2sQBIq2PlKotbzFF8EkbA/view?usp=sharing

(参照日 平成31年4月1日)

(5)”Rocket Lab reaches orbit again, deploys more satellites”

https://www.rocketlabusa.com/news/updates/rocket-lab-reaches-orbit-again-deploys-more-satellites/

(参照日 平成31年4月1日)

(6)”Rocket Lab successfully launches NASA CubeSats to orbit on first ever Venture Class Launch Services mission”

https://www.rocketlabusa.com/news/updates/rocket-lab-successfully-launches-nasa-cubesats-to-orbit-on-first-ever-venture-class-launch-services-mission/

(参照日 平成31年4月1日)

(7)”Rocket Lab successfully launches R3D2 satellite for DARPA”

https://www.rocketlabusa.com/news/updates/rocket-lab-successfully-launches-r3d2-satellite-for-darpa/

(参照日 平成31年4月1日)

(8)「中部日本放送株式会社(本社:愛知県名古屋市)が民間で宇宙旅行・宇宙輸送の実現を目指すPDエアロスペース株式会社に出資」

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000212.000015357.html

(参照日 平成30年4月2日)

目次に戻る


11.5.2 小型・超小型衛星の動向

 100kg以下衛星の打上数は,Cubesat型規格を中心に2013年以降は年間100機以上が打ち上げられているが2018年は274機が打ち上げられた.このうちCubesat規格でもある10kg以下は234機が打ち上げられ,サイズ別では3Uサイズの141機,次いで6Uサイズの36機と,Cubesat規格利用が堅調に推移し,大型化も進んでいる動向が新たに見られている.特に6Uサイズでは,従来の民間GPS-ROミッションCICEROや地球観測ミッションLandmapper-BCに加え,新たに火星通信中継機のMarCO(2機),地球観測とADS-B/AISのマルチミッションのAISTECH,IoTミッションのHIBER,光通信ミッションのXIAOXINGなど,実用的ミッションが開発・利用されている.

 また2018年はCubesatコンステレーション事業を展開するPlanet社とSPIRE社が2017年の計128機から,2018年は計63機と大幅に打上数を減らした.背景には,軌道寿命の短いISS放出ではなく,国連の宇宙デブリがガイドラインに準拠した上で,より高高度の軌道(遠地点480~600km付近)へ投入してきたことがある.しかし,大手商用コンステレーションの打上数低下においてもなお,打上数が堅調に推移している背景には,中国が2018年に22機のCubesatを打ち上げ,少なくとも7社が民間事業で運用されていることや,オーストラリア・カナダ・オランダ・スイスが新たにIoT通信事業としてコンスレテーション衛星を打上開始したことで,米国以外の打上数が増大していることが影響している.

 今後の小型・超小型衛星の将来予測としては,2019年1月にSEI社が1~50kg衛星の需要予測を公表し,2019年は300機程度,2020年は340機程度になると予測し,ミッション割合も2019年~2023年間で,地球観測が41%,IoT/M2M/AIS/ADS-B/光等の通信ミッションが27%,技術実証が20%,サイエンスが10%,新規アプリミッション2%になると予測しており,引き続き需要が拡大すると予測している(1)

 小型・超小型衛星における政府開発と産業支援は,さらに加速している.米国ではNASA・軍・科学財団・民間投資の開発が引き続き堅調だが,欧州でもQB50プログラムの成果が十分に出せなかったことを背景に,ESAが2018-2023年ロードマップを発表,『LEOコンステレーション,近接オペレーション,LEOより先の軌道』へ利用が広がると定義した.これに対応する技術として,「ナノ推進器(電気推進)」,「耐放射線アビオ二クス」,「制御技術(RW&STT)」,「高出力型PCDU」,「多様な光学イメージャー」,「ハイゲインアンテナ」,「GNSSレシーバー」,「Ka,Xバンド通信」等を開発項目に挙げた.実証のため”ランデブードッキングミッション(RACE)”や”デブリのデオービットや軌道上サービスミッション”,”Kaバンド放射計ミッション”に加え月探査や深宇宙探査等のミッション計画を発表した.さらにESAは”Cubesat Support Facility”を開設し,ISO-8クリーンルームに加え加振機,熱真空チャンバー,電気系・通信試験機器,太陽シミュレータ等を用意し,欧州内における小型衛星の直接開発支援に乗り出している.また,ESAの地球観測衛星網コペルニクスのミッションを,6UサイズCubesat2機で行うミッション(マイクロ波放射計,GNSS反射計測器,VNIR/TIRハイパー)のイノベーション開発チャレンジを開催,地球観測衛星のミッションの一部を小型・超小型衛星が担う次代へチャレンジする政策を発表している(2)(3)

 これら小型・超小型衛星における欧米の開発及び投資の動向から,日本でも2018年は国内宇宙ベンチャー9社が約128億円の資金調達を行っている.国側も宇宙産業を育成する施策として,地球観測データ利用の促進として政府衛星データのオープン&フリー化や事業化が見込まれる先端技術の開発支援が進められる一方,JAXAも新たな事業を共創する研究開発プログラム『宇宙イノベーションパートナーシップ(J-SPARC)』を開始した.

〔金岡 充晃 シー・エス・ピー・ジャパン(株)〕

参考文献

(1) 2018 Nano/Microsatellite Market Forecast, SpaceWorks Enterprises, Inc. (SEI),

https://www.spaceworks.aero/nano-microsatellite-forecast-9th-edition-2019/(参照日 平成31年4月3日)

(2) ESA Roadmap for ESA IOD Cubesat Missions& Technologies 2018-2023, Roger Walker, 4S symposium ,Sorrento, Italy, 29 May 2018

(3) Cubesat at ESA, F.Teston/TEC and K.Mellab D/TEC ,7 Dec 2018,European Cubesat Symposium, Toulouse France.

目次に戻る