21. 交通・物流
21.1 自動車
21.1.1 概況/21.1.2 四輪自動車の技術動向/21.1.3 二輪車の技術動向/21.1.4 生産技術・材料/21.1.5 基礎研究
21.2 鉄道
21.2.1 概況/21.2.2 新幹線・リニアモーターカー/21.2.3 在来鉄道・都市鉄道/21.2.4 海外における動向
21.3 航空宇宙
21.3.1 概況/21.3.2 航空/21.3.3 宇宙
21.4 昇降機・遊戯施設
21.4.1 概況/21.4.2 技術動向
21.5 荷役運搬機械
21.5.1 概要/21.5.2 物流システム機器/21.5.3 運搬車両
21.1 自動車
21.1.1 概況
a.生産
2020 年の四輪車生産(1)は807万台(前年比16.7%減)で,内訳は乗用車696万台,トラック104万台,バス7 万台で,二輪車生産は49万台(同14.5%減)である.
b.輸出
2020 年の新車輸出(1)は乗用車341万台(同22.0%減)で生産に占める割合は49.0%で2019年より6.1%減少した.二輪車は31 万台( 同8.4%減) で生産に占める割合は64% で2019年より8.2%減少した.
c.輸入
2020年の日本メーカー車を含めた輸入車新規登録台(2)数は31.8 万台で,前年比8.2%減となった.
d.保有台数
2020年12月末で,乗用車6220 万台,トラック1447万台,バス22 万台,原付を除く二輪車380 万台になっている(3).
〔関根 康史 福山大学〕
参考文献
(1)統計データベース,一般社団法人 日本自動車工業会, http://jamaserv.jama.or.jp/newdb/index.html (参照日2020年3月9日)
(2) 輸入車統計データベース,日本輸入車組合(JAIA), http://www.jaia-jp.org/ (参照日2020年3月9日)
(3) 自動車保有台数,一般財団法人 自動車検査登録情報協会, http://www.airia.or.jp/ (参照日2020年3月9日)
21.1.2 四輪自動車の技術動向
BEV(Battery Electric Vehicle)やHEV(Hybrid Electric Vehicle)等,内燃機関以外に動力源を持つ電動車両の2020年の世界販売台数は526万台となり,前年比で20%の増加であった.BEV及びPHEV(Plug-in Hybrid Electric Vehicle)といった外部充電によるエネルギ供給可能な車両に限ると293万台と前年比46%の伸びを示した.特に欧州市場においては.企業毎平均燃費を定めたCAFÉ規制(Corporate Average Fuel Efficiency)の特例措置の影響もあり,PHEVの販売台数が前年の3倍以上に上った.コロナ禍で世界の自動車市場が前年比マイナス14%と縮小する中,確実に電動車へのシフトが進んでいることが見てとれる (1) .
BEVについては,動力源の置き換えに留まらず,床下バッテリ+後軸後方モータ配置による新しいパッケージが注目を浴びた(2)(3).また,エンジン車並みの航続距離を得るためにバッテリサイズが拡大傾向にある中,ライフサイクルでのCO2総排出量を最小にする目的で,あえてバッテリサイズを抑えたBEV(4)(5)や,2人乗りで最高速度を制限した超小型BEV(6)(7)が市場導入される等,多様化が進んでいる.PHVについては欧州都市交通における超低排出ゾーンに対応して,GPSジオフェンシング(仮想的な境界を設け,対象がその境界内に入ったかどうかを判定する技術)を応用し,ゾーン内では自動的にバッテリ走行モードに切り替える技術(8)が導入された.FC(燃料電池)車については,欧州市場向け大型トラックへの採用(9)や,プラグインタイプのFCEVの国内導入(10)があった.
日本政府は持続可能な社会の実現に向けて2050年カーボンニュートラルを目指すことを宣言した(11).これは自動車に関して言えば,製造・輸送・走行・廃棄等に必要なエネルギすべてにおいて二酸化炭素排出量を相殺してゼロにすることを意味する.電動化等の単なる動力源選択の問題に留まらず,脱化石燃料・再生可能エネルギ普及に向けた技術革新を推進し,カーボンニュートラルというゴールに向けた選択肢を広げていく取り組みが期待される.
安全技術では,社会問題化しているブレーキとアクセルのペダル踏み間違い事故抑制を目的として,既販売車向けに後付け可能な踏み間違い防止システムが広く提供された(12).国土交通省はこれらシステムの技術的調査・確認に基づき,認定および使用上の注意点を情報提供する先行個別認定を実施し,この取り組みを推進した(13).また,コネクティッドカーから得たビッグデータの解析結果から異常なアクセル操作を判別し,障害物のない状況でも加速を抑制するシステムが市場導入された(14).
欧州ではヘッドライトの昼間点灯や周囲の明るさが一定以下になると自動点灯するオートライト機能の義務化がすでに導入されている.国内でも歩行者などからの被視認性を確保するために,2020年4月から新型車へのオートライト機能装備が義務化された(継続生産車は2021年10月から)(15).また,国内の自動車アセスメント(JNCAP)の衝突被害軽減ブレーキ評価において,2020年度より「対歩行者:夜間街灯なし」の条件が追加された(16).これらの取り組みにより,発生率の高い薄暮時間帯や夜間の交通死亡事故の抑制が期待される.
衝突安全技術としては,前面衝突時に後席乗員を保護するエアバッグが採用された(17).
運転支援・自動運転技術では,自動車専用道のジャンクションや出口への接近時の車線変更指示および自動速度調整機能と,緊急車両接近時に必要に応じて路肩への誘導をアシストするシステム(18),信号認識機能によりストップ&ゴーをサポートするアダプティブクルーズコントロール(19)が欧州市場に導入された.国内では道路交通法と道路運送車両法の自動運転に関する規定が改正され,世界に先駆けてレベル3(特定条件下での運転自動化)の導入が可能になった.これにより,型式認証を受けた2021年発売予定のレベル3の自動運転車が日本の公道を走行することが認められた (20).さらに,レベル3走行中の自動車事故について,自動車保険の更新契約の保険料に影響しない(等級が下がらない)保険商品(21)が導入される等,自動運転普及への課題として議論されていた法整備や過失責任問題等に,少しずつ方向が定まりつつある.また,自動運転に限らず,自動車のソフトウェアは大規模化・高度化しているが,国内において車載ソフトウェアの無線通信アップデートの許可制度が施行された(22).これにより,他のIoT機器と同様に自動車にもOTA(Over The Air)による機能追加・性能向上が可能になり,新車中古車を問わず新たな価値の創出が期待される.一方で,サイバー攻撃の脅威にさらされる可能性も生じることから,OTA技術にとって堅牢なセキュリティの構築がより重要度を増していくものと考えられる.
2020年より国内でも第5世代移動通信システム(5G)の商用サービスが開始された.5Gの高信頼・低遅延・大容量といった特性を活かした自動車技術への応用として,都内での自動運転タクシー (23),高速道路を想定した合流時車両支援 (24),新東名高速道路でのトラック隊列走行(25)といった,遠隔運転や高速車車間通信の実証実験が多くなされた.また,都心から空港までを自動運転を含む複数の交通手段をひとつの移動サービスとして提供する自動運転MaaSの実証実験(26)や.公道上で小型自動配送ロボットを活用したラストワンマイル配送の実証実験(27)が実施された.このように,さまざまな交通・物流問題へのソリューションとして,自動運転技術の応用検討が進められている.
その他,車両系の新技術として,コーナリング時に車体をコーナ内側にリーンさせるアクティブサスペンションを備えた車両(28),最大切れ角を10度まで高めた後輪操舵システム(29),前後トルク配分を0:100から100:0まで可変可能な4輪駆動システム(30),ドライバの視界に合わせ進路案内を実際の風景に重畳表示させるヘッドアップディスプレイ(31),電気的に調光可能なガラスを用いたパノラマルーフ(全面ガラスのルーフ)(32)が市場導入された.
〔門崎 司朗 トヨタ自動車(株)〕
参考文献
(1) 各販売台数データはマークラインズ株式会社の情報より集計
(2) ID.3 | Volkswagen Newsroom, https://www.volkswagen-newsroom.com/en/id3-4984 (参照日2021年4月23日)
(3) 【ホンダe(イー)メカニズム解説】|Motor-Fan(モーターファン), https://motor-fan.jp/article/10015854 (参照日2021年4月23日)
(4) MAZDA NEWSROOMマツダ,初の量産電気自動車「MAZDA MX-30 EV MODEL」を発売|ニュースリリース, https://newsroom.mazda.com/ja/publicity/release/2021/202101/210128a.html (参照日2021年4月23日)
(5) 日本の使い方にピッタリ? ルノー・トゥインゴのEVは少なめのバッテリーで180kmを走る | clicccar.com, https://clicccar.com/2020/02/26/957186/ (参照日2021年4月23日)
(6) シトロエンの往年の名車「Ami(アミ)」が超小型EVとして復活! | CAR and DRIVER, https://www.car-and-driver.jp/newcar/2020/03/20/amiev/ (参照日2021年4月23日)
(7) トヨタ C+pod | トヨタ自動車WEBサイト, https://toyota.jp/cpod/index.html (参照日2021年4月23日)
(8) eDrive Zones, https://www.bmwgroup.com/en/elektromobilitaet/ezones.html (参照日2021年4月23日)
(9) hyundai-xcient-fuel-cell-heads-to-europe-for-commercial-use, https://www.hyundai.news/eu/articles/press-releases/hyundai-xcient-fuel-cell-heads-to-europe-for-commercial-use.html (参照日2021年4月23日)
(10) GLC F-Cell試乗レポート.燃料電池×バッテリーならではの走りとは|Mercedes-Benz LIVE!, https://mb-live.jp/drive/testdrive-2020-08-25/ (参照日2021年4月23日)
(11) 環境省_2050年カーボンニュートラルの実現に向けて, http://www.env.go.jp/earth/2050carbon_neutral.html (参照日2021年4月23日)
(12) デンソーの「後付け踏み間違い加速抑制アシスト」,日産の純正用品にも採用 | レスポンス(Response.jp), https://response.jp/article/2020/09/03/338091.html (参照日2021年4月23日)
(13) 報道発表資料:後付け急発進等抑制装置の先行個別認定結果を公表します – 国土交通省, https://www.mlit.go.jp/report/press/jidosha07_hh_000341.html (参照日2021年4月23日)
(14) トヨタ自動車,ビッグデータを活用した,ペダル踏み間違い時の「急アクセル時加速抑制機能」を開発 | トヨタ自動車株式会社 公式企業サイト, https://global.toyota/jp/newsroom/corporate/31430950.html (参照日2021年4月23日)
(15) オートライト義務化へ | SIP cafe 〜自動運転〜, https://sip-cafe.media/column/1667/ (参照日2021年4月23日)
(16) 衝突被害軽減制動制御装置 / 独立行政法人自動車事故対策機構 NASVA(交通事故), https://www.nasva.go.jp/mamoru/active_safety_search/collision_avoidance_system.html (参照日2021年4月23日)
(17) 2021 Mercedes S Class – World’s First Rear Seat Frontal Airbags – YouTube, https://www.youtube.com/watch?v=9FwQjS5MhlI (参照日2021年4月24日)
(18) BMW,最新の先進運転支援システム採用…今夏から欧州で | レスポンス(Response.jp), https://response.jp/article/2020/07/01/336129.html (参照日2021年4月24日)
(19) New BMW Urban Cruise Control recognizes traffic lights, https://www.bmwblog.com/2020/09/24/new-bmw-urban-cruise-control/ (参照日2021年4月24日)
(20) 報道発表資料:世界初! 自動運転車(レベル3)の型式指定を行いました – 国土交通省, https://www.mlit.go.jp/report/press/jidosha08_hh_003888.html (参照日2021年4月24日)
(21) 東京海上日動火災保険株式会社 2020年度ニュースリリース, https://www.tokiomarine-nichido.co.jp/company/release/pdf/201111_01.pdf (参照日2021年4月24日)
(22) 報道発表資料:自動車の特定改造等の許可制度を本年11月より開始します – 国土交通省, https://www.mlit.go.jp/report/press/jidosha08_hh_003789.html (参照日2021年4月23日)
(23) 東京都『自動運転技術を活用したビジネスモデル構築に関するプロジェクト』にて 5Gを活用した自動運転タクシーの実証実験を実施 ~事業化に向けて複数車両の同時走行と目的地に応じたルート判別機能を実装~ | 株式会社ティアフォー, https://tier4.jp/media/news/tokyo-autonomous-project/ (参照日2021年4月24日)
(24) ソフトバンクとSUBARU,自動運転車のユースケースに関する実証実験を実施 | プレスリリース | ニュース | 企業・IR | ソフトバンク, https://www.softbank.jp/corp/news/press/sbkk/2020/20201124_01/ (参照日2021年4月24日)
(25) 5Gの車両間通信を活用して,新東名高速道路で車間距離10mのトラック隊列走行に成功|お知らせ|Wireless City Planning 株式会社, https://www.wirelesscity.jp/info/press/2020/03/5g10m.html (参照日2021年4月24日)
(26) 世界初,自動運転タクシー&自動運転モビリティを活用した空港から丸の内店舗までのMaaS実証実験, https://www.zmp.co.jp/event/zmp-maas2019 (参照日2021年4月24日)
(27) 自動配送ロボットによるラストワンマイル配送へのルート最適化技術の提供について | ニュース一覧 | オプティマインド|世界のラストワンマイルを最適化する, https://www.optimind.tech/news/20201204-1.html (参照日2021年4月23日)
(28) テクノロジー | https://www.mercedes-benz.co.jp/, https://www.mercedes-benz.co.jp/passengercars/mercedes-benz-cars/models/gls/gls-suv/technology/technology-x167.module.html (参照日2021年4月23日)
(29) Mercedes S-CLASS 2021 – REAR AXLE steering (10 degrees), manoeuvrable as a compact car! – YouTube, https://www.youtube.com/watch?v=48X-qz0B2xo (参照日2021年4月24日)
(30) 新型車「GRヤリス」のスポーツ4WDシステム「GR-FOUR」について聞く – Car Watch, https://car.watch.impress.co.jp/docs/news/1262255.html (参照日2021年4月24日)
(31) 実際の風景に案内を表示する画期的機能! 新型SクラスがOP採用した「ARナビ」の実用度とは | 自動車情報・ニュース WEB CARTOP, https://www.webcartop.jp/2021/03/666248/ (参照日2021年4月23日)
(32) AGCの調光ガラス WONDERLITE® Dxがトヨタ自動車株式会社 新型ハリアーに世界初採用 | ニュース | AGC, https://www.agc.com/news/detail/1200903_2148.html (参照日2021年4月24日)
21.1.3 二輪車の技術動向
走行性能や環境性能の向上とともに,乗る楽しみを追求した技術開発が進められた.様々な走行状況に応じてエンジン・ブレーキ・サスペンション特性を最適化する電子制御機能,通話・メッセージやナビゲーションが利用可能なスマホアプリ連携,停車時や押し歩き時に便利な車両自立アシスト機能,日常での扱いやすさと足つき性に配慮した低シート高仕様の発表が,各社から相次いだ.安全面では,ミリ波レーダーを搭載した先進運転支援の二輪車用システムを発表する例が見られた.
環境面では,各国での排ガス規制強化が進んでいる.2020年12月より,国内新型車に対してEURO5の適用が開始された.二輪車の灯火器取付けに関して,国際基準を導入する法整備が行われた.電動化の波が加速し,新興国市場メーカーの新規参入が盛んである.シェアリングサービス,配車サービスでの運用,優遇措置,充電インフラ拡充,交換式バッテリー標準化などにより,普及促進を行っている.
〔品川 晃徳 ヤマハ発動機(株)〕
21.1.4 生産技術・材料
2020年度はCOVID-19の感染拡大と半導体の供給不足などの影響により,世界生産台数は減少したがCASE(主に電動化)へ対応は継続的に求められており,生産設備・品質保証機器・生産管理システムなどの知能化AI・IoT利用による進化も着実に進められた.
車体系材料の軽量化の進化としては,ハイテン鋼板材でホットスタンプ材に並ぶ超高強度材が次々に開発適用され,アルミニウム材料や様々な繊維強化プラスチックなどの樹脂材料が,骨格部品から外板部品への適用も拡大,各材料に最適な製法,レーザー高速加工の適用等も進んでいる.
パワートレイン系材料では,鉄系軸物部品の鋳造・鍛造材料の歩留向上と高精度化技術と局所熱処理技術など,エンジン・ミッション・電動化ユニットのモータケース類で薄肉化・軽量化のためのアルミニウム鋳造材・鍛造材などが表面処理加工技術と共に適用が進んでいる.
車両生産ラインでは電動化対応が加速され,電池パック搬送・組付,先進自動運転支援ADAS検査機器などの進化と適用が進んでいる.電動化デバイスであるモータ磁石や各種電池に必要とされるレアアース(Nd,Co,Ptなど)希少金属材料は継続した使用量削減開発と共に,SDG’Sなどの高まりから資源リサイクル・材料再資源化技術への取組みも急務となり開発加速が求められている.
〔倉橋 秀範 本田技研工業(株)〕
21.1.5 基礎研究
2020年はCovid19による歴史的なパンデミックによる影響で,全世界的にさまざまなイベントが中止となり,通勤通学なども含め人々の移動が自粛された.研究設備への移動も制限され,特に大学を中心とする研究活動への影響は大きかったと思われる.しかし厳しい状況の中でも,得られた研究成果についてはインターネットを通して盛んに発表され,未来の自動車に関する基礎研究の発表も多くみられた.
学術講演会では,研究成果の発信は会場講演するという形式から,オンラインで画面を通じて発信する形式となった.「対面式の発表と違い臨場感に欠ける」,「聴き手の反応が分からず発表しにくい」など意見が出た一方で,「現地へ赴かなくとも遠隔地から最新の研究発表が聴講できる」,「実験設備のある現場から直接情報を発信することができる」などのメリットも確認され,研究成果の発信形態については様々な方法が提案され将来の課題となった.
2020年は日本の第5期科学技術基本計画(1)で掲げた取り組み最後の年にあたり,その中で謳われている「Society5.0」に基づき新たな未来社会の技術に関する発表が盛んに行われた.「Society5.0」を実現するためのキーテクノロジーとして「AI」,「IoT」,「Big date」,「Robot」,「Control」などが挙げられているが,自動車の開発においてもそれらのキーテクノロジーの研究は欠かせず,特に自動運転車両の実現においては,(A)状況把握するための認識技術「IoT」,「Big data」,(B)判断するための人工知能「AI」,(C)正しく操作するための制御技術「Robot」,「Control」といった様々な要素技術が不可欠とされている.2020年に研究発表された例としては,(A)の観点では参考文献(2)-(4)などが,(B)の観点では参考文献(5)-(7)などが,(C)の観点では参考文献(8)-(10)などがある.
また乗員を中心とした自動車のありかたについて「楽しさ」,「気持ちよさ」,「人にやさしい」といった人の感性に関する研究報告も多くなされた.人の感性を対象とした自動車関連の基礎研究の発表例としては,参考文献(11)-(13)などがあげられる.感性の研究については,自動車-人の最適な相互作用を考えた自動車の開発に活かす基礎研究として更なる取り組みが期待される.
自動車技術に関する基礎研究は,快適な人の移動を実現させるため「人-自動車-交通社会」を繋ぎ,それらが最適にコントロールされる自動車社会の実現に向け,自動車のみならず交通システム全体を進化させる研究分野として,今後もますます世界的に活況を呈すると思われる.
〔豊島 貴行 (株)本田技術研究所〕
参考文献
(1) 第5期科学技術基本計画(平成28~平成32年度),内閣府, https://www8.cao.go.jp/cstp/kihonkeikaku/5honbun.pdf (参照日2021年3月10日)
(2) 綿貫啓一,AI/IoT/VR/HMI技術を融合した人に優しい感性認知工学,日本機械学会2020年度年次大会講演論文集(2020)(F12101) , DOI: 10.1299/jsmemecj.2020.F12101.
(3)井上 功一朗, 中野 公彦, 楊 波, 北崎 智之,物体認識結果をドライバに提示することが先進運転支援システムに対するメンタルモデルに与える影響,日本機械学会第29回交通・物流部門大会講演論文集(2020), 2703, DOI: 10.1299/jsmetld.2020.29.2703.
(4)青田 勝義, 山川 淳也, 江藤 亮輔,実走データ取得による車両のタイヤに作用する力の推定,日本機械学会第29回交通・物流部門大会講演論文集(2020), 2603, DOI: 10.1299/jsmetld.2020.29.2603.
(5) 福田収一,身体感覚とEmotional Engineering,日本機械学会2020年度年次大会講演論文集(2020), F12102, DOI: 10.1299/jsmemecj.2020.F12102.
(6)岩井孝法,自動運転社会の実現に向けた学習型通信システム,日本機械学会2020年度年次大会講演論文集(2020), F25101, DOI: 10.1299/jsmemecj.2020.F25101.
(7) 市原 智哉ほか,大型トラックのPath Following 制御における適応機構を用いたロバスト性の向上に関する研究,日本機械学会2020年度年次大会講演論文集(2020), J18107, DOI: 10.1299/jsmemecj.2020.J18107.
(8) 稲垣貴弘ほか, 自動操縦システムによる中低速域の車両運動性能評価,日本機械学会第29回交通・物流部門大会講演論文集(2020), 1401, DOI: 10.1299/jsmetld.2020.29.1401.
(9) 石井ほか, 操舵トルクシミュレータにおける 操舵トルクシミュレータにおけるLuGreモデルとMasingモデルの比較,日本機械学会第29回交通・物流部門大会講演論文集(2020), 2602, DOI: 10.1299/jsmetld.2020.29.2602.
(10)岩井秀麿ほか,タイヤ-路面間の摩擦特性を考慮したブレーキ制御に関する研究,日本機械学会2020年度年次大会講演論文集(2020), J18122, DOI: 10.1299/jsmemecj.2020.J18122.
(11)成田和樹ほか,定常応答に基づく立位バランスモデルの構築と過渡応答への適用,日本機械学会2020年度年次大会講演論文集(2020), J23201, DOI: 10.1299/jsmemecj.2020.J23201.
(12)柳澤秀吉,感性の数理モデリング(情報論を用いたアプローチ),日本機械学会2020年度年次大会講演論文集(2020), F01102, DOI: 10.1299/jsmemecj.2020.F01102.
(13)竹内清孝,生理的指標を用いたドライビングシミュレータにおける動揺病解析,日本機械学会2020年度年次大会講演論文集(2020), J18115, DOI: 10.1299/jsmemecj.2020.J18115.
21.2 鉄道
21.2.1 概況
国土交通省ホームページの鉄道車両等生産動態統計調査月報(1)によると,2020年1月から12月の1年間の車両生産数は,総生産数1861両(内新幹線車両は280両)であった.また,国内向け車両が1639両,輸出向け車両は222両であった.2019年1年間の生産数は,1984両(内新幹線車両290両,国内向け:1751両,輸出向け:233両)であり,2020年は,前年比で総生産数−6%(内新幹線車両数−4%),国内向け車両数−6%,輸出向け車両数−6%という結果であった.
2020年3月には,2011年の東日本大震災により9年間不通となっていたJR常磐線が全線開通した.常磐線再開事業は,震災復興のまちづくりと並行して鉄道需要インフラを再構築するものであり,日本の鉄道関係者の誇るべき歴史として日本鉄道大賞が授与された(2).
2020年に世界的に大流行した新型コロナウイルス感染症は,日本の鉄道業界にも多大な影響を与えた.感染症の拡大防止対策として多くの企業が在宅勤務や出張自粛等の措置を取った結果,鉄道需要は大幅に減少し,多くの鉄道事業者が最終赤字となった(3).
また,2020年9月以降,首都圏の鉄道各社は2021年春のダイヤ改正において終電の時刻を繰り上げることを相次いで発表した(4).保線作業時間の確保がその理由であるが,新型コロナウイルス感染症の流行による深夜帯の利用者の減少もこれを後押しすることとなった.
本会に関連する行事としては,11月に第29回交通・物流部門大会(TRANSLOG2020)が,12月に第27回鉄道技術・政策連合シンポジウム(J-RAIL2020)が開催されたが,いずれもオンラインでの開催となった.
また,2020年9月に開催予定であった世界最大の国際鉄道技術見本市であるInnoTransも2022年まで延期となるなど,ほぼ全て行事において現地開催が見送られた.
21.2.2 新幹線・リニアモーターカー
2020年7月,東海道・山陽新幹線の新型モデルである「N700S」が営業運転を開始した.フルアクティブ制振制御装置やバッテリー自走システムなど,先行試作車において搭載されていた新技術はどれも量産車にも搭載されたが,フルアクティブ制振制御装置においてはチューニングがなされ,バッテリー装置は1編成当たり4台から8台に増加している(5).
JR東日本のE956形新幹線用高速運転試験電車「ALFA-X」においては,2020年2月に初めて青函トンネルを抜け,新函館北斗駅まで入線した.冬場のブレーキ性能や耐雪能力,青函トンネル内外の温度や湿度の変化が機器に与える影響の確認がなされた(6).
リニアモーターカーについては,2020年3月にL0系をブラッシュアップさせた改良型試験車が完成し,8月から試験走行が開始された.山梨実験線の設計最高速度である550km/hでの走行試験が実施され,安全上の問題がないことが確認されている(7).
このほか,JR東日本は,2021年にE7系新幹線を用いて新幹線の自動運転に向けた試験走行を行うことを発表した(8).列車が遠隔から自動発車・加減速し,決められた位置に停車できるかどうか,また,緊急時に遠隔で列車を停止できるかといったATO(自動列車運転装置)の機能検証と,新幹線と指令室等との間で大容量の情報をリアルタイムで送受信できるかといったローカル5Gの性能確認を行う予定である.
21.2.3 在来鉄道・都市鉄道
在来線における2020年の技術動向としては,2019年までに引き続き,気動車の電動化や自動運転関連が多く報じられた.
気動車の電動化に関して,JR東海では2019年12月から,ディーゼル機関で発電した電力と主蓄電池の電力とを組み合わせ,主電動機を駆動して走行するハイブリッド技術の確立に向け,HC85系試験走行車が試験運転を行っている(9).また,鉄道における燃料電池車について,2020年10月にJR東日本がトヨタ自動車,日立製作所と連携して新たなハイブリッド車両(燃料電池と蓄電池)を開発し,2022年に実証試験を行うことを発表した(10).
自動列車運転装置(ATO)は地下鉄や新交通システムにおいてはすでに導入されているが,2020年12月にJR九州において,地上の既存路線におけるATOの実証運転を開始した(11).この実証運転では,ATS区間や踏切がある区間としては初の自動運転となる.また,JR東日本においても,2020年度内に常磐緩行線区間においてATOによる営業運転を開始することが発表されており(12),JR西日本でも大阪環状線において自動で列車を走行させる試験を実施している(13).
このほか,近畿日本鉄道において電気式フルアクティブサスペンションを搭載した新型特急車両80000系“ひのとり”が営業運転を開始した(14).
また,2020年特有のトレンドとして,新型コロナウイルス感染症関連の研究が多く報じられた.鉄道総研や理化学研究所,産業総合技術研究所において車内の換気に関する調査研究が行われたほか(15),J-RAIL2020ではテレワークやWeb会議等の鉄道利用への影響を分析する研究も複数件発表されている(16)-(18).
21.2.4 海外における動向
中国においては,2019年末に北京と張家口を結ぶ高速鉄道が全線開業した.車両は「復興号」CR400BF型をベースとしたもので,北斗衛星ナビゲーションシステムにより350km/hでの自動運転が可能とされている(19).
海外の車両メーカーの動きとして,世界3位のアルストム(フランス)が同4位のボンバルディア(カナダ)の鉄道関連事業を買収した(20).これにより,それまで世界2位であったシーメンス(ドイツ)を抜き,世界1位の中国中車(中国)に次ぐ鉄道車両メーカーとなった.今後の日本の車両メーカーの海外での受注獲得への影響が懸念される.
〔林 隆三 東京理科大学〕
参考文献
(1)鉄道車両等生産動態統計調査,国土交通省,https://www.e-stat.go.jp/stat-search?page=1&toukei=00600310(参照日2020年3月1日)
(2)第19回「日本鉄道賞」の受賞者について,国土交通省,https://www.mlit.go.jp/common/001373669.pdf(参照日 2021年3月2日)
(3)首都圏 私鉄大手9社 コロナ影響で全社最終赤字に 9か月間決算,NHK,https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210212/k10012862861000.html(参照日 2021年3月5日)
(4)鉄道各社の3月のダイヤ改正における終電繰り上げについて,国土交通省,https://www.mlit.go.jp/tetudo/tetudo_tk2_000052.html(参照日 2021年3月5日)
(5)橋村 季真,新幹線N700S、試験車と量産車の「超」微妙な違い,東洋経済,https://toyokeizai.net/articles/-/334231(参照日 2021年3月5日)
(6)次世代新幹線「ALFA-X」初めて北海道へ JR東日本,日本経済新聞,https://www.nikkei.com/article/DGXMZO55503940S0A210C2L41000/(参照日 2021年3月5日)
(7)山梨リニア実験線 走行試験の再開について,JR東海,https://jr-central.co.jp/news/release/_pdf/000040669.pdf(参照日 2021年3月5日)
(8)新幹線 E7 系で自動運転の試験を行います,JR東日本,https://www.jreast.co.jp/press/2020/20201110_ho02.pdf(参照日 2021年3月5日)
(9)中村修二,木野村晃,江崎浩康,森加久見,JR 東海 HC85 系優等用ハイブリッド車(試験走行車),車両技術,Vol.259(2020),pp.14-31.
(10)水素をエネルギー源としたハイブリッド車両(燃料電池)試験車両の開発,JR東日本,https://www.jreast.co.jp/press/2020/20201006_4_ho.pdf(参照日 2021年3月5日)
(11)自動列車運転装置の走行試験を実施します,JR九州,https://www.jrkyushu.co.jp/news/__icsFiles/afieldfile/2019/12/20/0012.pdf(参照日 2021年3月5日)
(12)常磐線(各駅停車)に自動列車運転装置(ATO)を導入します,JR東日本,https://www.jreast.co.jp/press/2019/20191008_ho03.pdf(参照日 2021年3月5日)
(13)自動で列車を走行させる試験を実施しています,JR西日本,https://www.westjr.co.jp/press/article/2020/02/page_15644.html(参照日 2021年3月5日)
(14)垂水健一,近畿日本鉄道 80000 系特急形直流電車,車両技術,Vol.260(2020),pp.62-87.
(15)波多野敦士,鉄道における新型コロナウイルス感染症対策の取り組み, R&m, Vol.29, No.2(2020), pp.29-31.
(16)黒土晴基,金子雄一郎,東京圏におけるテレワークの拡大による鉄道利用及び生産性への影響分析,第27回鉄道技術・政策連合シンポジウム(J-RAIL2020)講演論文集,S5-3-2.
(17)山田真也,奥ノ坊直樹,石部雅士,山下良久,Web会議が東京都市圏の鉄道需要に及ぼす影響に関する研究,第27回鉄道技術・政策連合シンポジウム(J-RAIL2020)講演論文集,S5-3-3.
(18)奥ノ坊直樹,日比野直彦,テレワークの進展が鉄道需要へ与える影響の把握に向けたアクティビティパターンの変化に関する路線間比較,第27回鉄道技術・政策連合シンポジウム(J-RAIL2020)講演論文集,S5-3-4.
(19)北京-張家口結ぶ高速鉄道が開通 時速350kmで自動運転,人民網日本語版,http://j.people.com.cn/n3/2019/1231/c94475-9645034.html(参照日 2021年3月5日)
(20)アルストム,ボンバルディアの鉄道事業買収を正式発表,日本経済新聞,https://www.nikkei.com/article/DGXMZO55752400Y0A210C2MM0000/(参照日 2021年3月5日)
21.3 航空宇宙
21.3.1 概況
(一社)日本航空宇宙工業会によると,2020年の航空機生産額は2019年より3,853億円(20.7%)減の1兆4716億円となった.2013年から2015年まで増額基調が続いた後,2016年は一旦減額となったが,2017年以降は再び穏やかな増額基調となった。2020年には1兆8,569円となったが,2020年は大幅減となった(1).また,国土交通省航空局によると,2020年12月末の登録航空機数は2,857機となった.毎年末の登録航空機数がピークだったのは1991年末の2,882機であり,2011年末の2,633機まで減少基調が続いた.以降は増加基調であったが,2020年はわずかな減少となった(2).日本政府観光局(JNTO)によると,2020年の訪日外客数は前年比87.1%減の411万6千人で,JNTOが統計を取り始めた1964年以降,最大の下げ幅を記録した(3).航空旅客の大幅な減少に伴い,様々な新型コロナウイルス感染症対策が空港においてもとられている.羽田空港第3旅客ターミナルにおいて,国際線自動化ゲートの運用が開始された.従来は搭乗ゲート前で航空会社職員が搭乗券を預かり搭乗可否を判断していたが,これを自動化搭乗ゲートとすることにより,よりスムーズな運用となることが期待される(4).
21.3.2 航空
国内においては,三菱航空機が開発を進めるMitsubishi SpaceJet(三菱スペースジェット) M90について,開発活動は「いったん立ち止まる」と発表した(5).これに伴い,米国モーゼスレイクで実施中の飛行試験は中止となっている(6).今後は航空需要の推移を見ながら事業再開のタイミングを検討する.三菱重工はボンバルディア・エアロスペース社(カナダ)とカナダエア・リージョナル・ジェット(CRJ,双発ジェット旅客機)の事業買収が完了し,MHI RJ Aviationグループが発足したと発表した.この結果,CRJシリーズの型式証明と関連知的財産と共に,整備,技術支援等の事業を獲得した(7).川崎重工は2020年10月8日に,エアバス・ヘリコプターズ社と国際共同開発および分担製造しているBK117ヘリコプターシリーズの最新型「H145//BK117 D-3」が世界で初めて,Norwegian Air Ambulance Foundation(ノルウェー)に納入されたと発表した(8).またSUBARUは,2020年1月2日に,ボーイング社(米国)向けにボーイング787型機1,000号機の中央翼ワークパッケージを出荷したと発表した(9).
国外においては,ボーイング社(米国)が2020年1月25日に777X型機の初飛行(3時間51分)に成功したと発表した (10).一方,エアバス社(欧州)は航空業界全体の脱炭素化への取り組みをリードすることを目的として,世界初のゼロエミッション旅客機(水素を主な動力)のコンセプトを4種類発表した(11).
21.3.3 宇宙
宇宙航空研究開発機構(JAXA)は,毎年6機程度を安定して打ち上げられる大型ロケットH3の開発を進めている.H3ロケットの第一段エンジン用として新たに開発中のLE-9エンジンにおいて技術的課題が確認されたことから,当初2020年度の打上げを目指していた試験機初号機の打上げを2021年度にする計画の見直しを2020年9月11日に発表した.これに伴い,試験機2号機の打ち上げは2022年度が見込まれている(12).
2020年11月15日午後7時27分(現地時間)に,野口聡一宇宙飛行士が搭乗したSpaceX社(米国)の新しい宇宙船Crew Dragonが,ケネディ宇宙センター(米国フロリダ州)から国際宇宙ステーション(ISS)へと打ち上げられた.ISSに無事に到着し,約半年間滞在する予定である(13).この打ち上げ成功により,野口聡一宇宙飛行士は,ソユーズとスペースシャトルを含めて3種類の宇宙船に搭乗したことになった(14).
種子島宇宙センターから2014年12月3日に打ち上げられた小惑星探査機「はやぶさ2」の再突入カプセルが,2020年12月6日に無事にウーメラ立入制限区域内(オーストラリア)にて回収された(15).「はやぶさ2」が採取した小惑星Ryugu(リュウグウ)サンプルは約5.4gであった(16).なお「はやぶさ2」は拡張ミッションの目的地である小惑星1998 KY26を目指して飛行を継続している(17).
〔今村 太郎 東京大学〕
参考文献
(1) 令和2年航空機生産額は前年比3,853億円の減額,(一社)日本航空宇宙工業会https://www.sjac.or.jp/common/pdf/kaihou/202103/20210303.pdf(参照日2021年4月1日)
(2)登録航空機の推移(1967年(S42)から2020年(R2)まで), 国土交通省航空局
https://www.mlit.go.jp/common/001382246.xlsx(参照日2021年4月1日)
(3) 国籍/月別 訪日外客数(2003年~2021年), 日本政府観光局(JNTO)
https://www.jnto.go.jp/jpn/statistics/since2003_visitor_arrivals.pdf(参照日2021年4月1日)
(4) ”国内空港初” 国際線にて自動化搭乗ゲートの運用を開始,日本空港ビルデング株式会社
https://tokyo-haneda.com/site_resource/common/data/000007984.pdf(参照日2021年4月1日)
(5) 中期経営計画(2021事業計画)について,三菱重工
https://www.mhi.com/jp/finance/library/plan/pdf/201030presentation.pdf(参照日2021年4月4日)
(6)三菱重工,米飛行試験拠点の閉鎖検討 スペースジェット「商業化」遠のく SankeiBiz
https://www.sankeibiz.jp/business/news/201106/bsc2011060630001-n1.htm(参照日2021年4月4日)
(7) 三菱重工業とボンバルディア社はCRJ事業承継のクロージング日 三菱重工
https://www.mhi.com/jp/news/20200507.html(参照日2021年4月4日)
(8)最新型ヘリコプター「H145//BK117 D-3」がエアバス・ヘリコプターズ社より世界初納入,川崎重工業株式会社
https://www.khi.co.jp/pressrelease/detail/20201008_2.html(参照日2021年4月4日)
(9)SUBARU ボーイング787型機中央翼の生産累計機数1,000機を達成,株式会社SUBARU
https://www.subaru.co.jp/press/news/2020_01_08_8150/(参照日2021年4月4日)
(10)New Boeing 777X Completes Successful First Flight
https://boeing.mediaroom.com/2020-01-25-New-Boeing-777X-Completes-Successful-First-Flight(参照日2021年4月4日)
(11)Zero emission. Bringing cleaner technology to aerospace.
https://www.airbus.com/innovation/zero-emission.html(参照日2021年4月7日)
(12)H3ロケットの開発計画の見直しについて
https://www.jaxa.jp/press/2020/09/20200911-2_j.html(参照日2021年4月6日)
(13)Commercial Crew Program, Month:November 2020, https://blogs.nasa.gov/commercialcrew/2020/11/(参照日2021年4月4日)
(14)JAXA 野口宇宙飛行士ISS 長期滞在ミッションプレスキットhttps://astro-mission.jaxa.jp/noguchi/news/images/noguchi_presskit_a.pdf(参照日2021年4月4日)
(15)小惑星探査機「はやぶさ2」再突入カプセルの回収結果についてhttps://www.jaxa.jp/press/2020/12/20201206-1_j.html(参照日2021年4月6日)
(16)小惑星探査機「はやぶさ2」が採取した小惑星Ryugu(リュウグウ)サンプルは約5.4グラム
https://fanfun.jaxa.jp/topics/detail/17721.html(参照日2021年4月6日)
(17)小惑星探査機「はやぶさ2」の記者説明会(20/12/24)
https://www.youtube.com/watch?v=CTCKo_Ia2Zw(参照日2021年4月6日)
21.4 昇降機・遊戯施設
21.4.1 概況
日本エレベーター協会の2020年調査(1)による2019年度の国内の昇降機全体の新規設置台数は28,292台(2018年度27,416台)であり,2015年度以降は27千台から28千台を推移している.新規設置台数の内訳は,エレベータが24,435台(2018年度23,697台),エスカレータが1,811台(2018年度1,504台),小荷物専用昇降機が1,967台(2018年度2,097台),段差解消機が79台(2018年度118台)であった.建物の用途別に見ると,2016年度以降の4年間で住宅,商業施設,事務所,工場・倉庫の昇降機は増加,駅舎・空港,学校・宗教・文化施設は現状維持しているのに対し,病院・福祉は減少している.
21.4.2 技術動向
国内の講演会では,エスカレータの滞留検知やビル内移動などの人流検知に関する研究,上下振動の乗り心地評価に関する研究,地震被害データの分析や自動復旧運転に関する研究,地震時や強風時のロープ振れに関する研究,およびワイヤロープの健全性評価や検査頻度などの保守作業軽減に関する研究について,11件の発表が行われた.(2020年11月:技術講演会“昇降機・遊戯施設等の最近の技術と進歩”).また,スマートフォンを用いたエレベーター振動計測(2)など,情報,電子分野の技術を昇降機の保守作業に適用する開発が進められている.
〔渡辺 誠治 三菱電機(株)〕
参考文献
(1)一般社団法人日本エレベーター協会, 2019年度昇降機設置台数等調査結果報告, Elevator Journal No.30,(2020).
(2)交通・物流部門ニュースレターNo.61, 日本機械学会
https://www.jsme.or.jp/tld/home/topics/NL_pdf/NL61_press.pdf (参照日2021年3月31日)
21.5 荷役運搬機械
21.5.1 概要
経済産業省の生産動態統計(確報)による,2020年1月~12月の荷役運搬機械(運搬機械からエレベータ,エスカレータを除いた)生産額は,4,645億円(2019年度比3.5%,157億円増)であった.このうち,クレーンは2019年度比22.0%減,巻上機は25.9%減,コンベヤは11.7%減,機械式駐車装置は1.2%減,自動立体倉庫装置は84.1%増である.
(一社)日本産業車両協会の調査による,2020年1月~12 月のフォークリフト生産台数は10.8万台で,2019年度比2.1%減,輸出を含めた販売台数は3.1%減,国内販売台数は1.3%増の状況である.
日銀短観によると,2021年の設備投資計画(大企業・全産業)は前年度比+3.0%と,期初の計画としては堅調であり,業績の回復が顕著な製造業を中心に,先送りしていた投資を再開する動きになると考えられる.
〔上田 雄一 (株)ダイフク〕
21.5.2 物流システム機器
2019年度の物流システム機器の総売上金額は,2018年度の5,859億円から1.7%減の5,758億円となった.一方,売上件数も2018年度の142千件から131千件へと減少した(前年度比7.4%減).
機種別に見ると,自動倉庫が1,202億(前年度比13.6%減),コンベヤが1,340億(前年度比5.7%増),台車関連が1,298億(前年度比0.08%微減),棚が321億(前年度比4.7%微増)となっている.
総売上金額は2020年度に引き続き5,000億を超えた.受注金額も2020年度とほぼ同等であることを踏まえると,メーカー各社が供給能力を高め,大規模案件を中心とした着工・出荷対応が継続されたものと推察される.
売上金額を領域別に見ると,海外向けは2020年度とほぼ同等,クリーンルーム向けは10.9%の減少となった,業種別に見ると,「電機・精密機器」に対する売上の比率が,依然として高水準となっている.
〔長部 洋介 住友重機械搬送システム(株)〕
参考文献
(1)2019年度 物流システム機器生産出荷統計 【概要版】,(公社)日本ロジスティクスシステムシステム協会,
https://www1.logistics.or.jp/Portals/0/2019_mh_statistics.pdf
21.5.3 運搬車両
2020年の産業車両の国内生産実績(1)は3,043億円(前年比92.6%),うち,主力機種のフォークリフトは2,225億円(前年比98.0%),108,419台(前年比97.9%)で,いずれも2年連続の減少となった(表1).2020年は世界的な新型コロナウイルス感染拡大の影響で,経済活動が大きな影響を受けたが,産業車両,とりわけフォークリフトについては,輸出向けは大きく減少したものの,国内向けは比較的堅調であった.これはEコマースの拡大により物流倉庫での需要が伸びたことや,三密を避けるため,作業の機械化や自動化に対するニーズが高まったことが背景にあるものと考えられる.
表1 産業車両及びフォークリフト生産実績
産業車両 | フォークリフト | ||
生産額(百万円) | 生産台数 | 生産額(百万円) | |
2016年 | 326,295 | 109,249 | 220,402 |
2017年 | 328,121 | 113,932 | 230,683 |
2018年 | 361,424 | 121,971 | 251,915 |
2019年 | 328,568 | 110,759 | 227,092 |
2020年 | 304,335 | 108,419 | 222,470 |
フォークリフトの国内販売では,電池を搭載した電気駆動車の割合が5年連続で全体の6割を超え,水素を燃料とする燃料電池車も国内各地で導入が進んでいる.各メーカーでは,ロボティクス,IoTや次世代電池等の新技術を取り込んだ,物流の効率化,安全向上,環境負荷低減に貢献する信頼性の高い商品やソリューションの開発と提供を引き続き推進している.
自動で走行・荷役を行うことができる無人搬送車システム(AGVS)も,これまでは製造業向けが多かったが,物流施設等の非製造業分野でも導入が進み,床面への誘導体の設置が不要な,自律移動式の導入も増えている.なお,無人搬送車システムに関する世界初の国際安全規格ISO3691-4が2020年2月に発行されたが,これに対応してJIS D6802「無人搬送車システム―安全通則」の改正審議が2021年2月から開始された.
〔高瀬 健一郎 (一社)日本産業車両協会〕
参考文献
(1)フォークリフト生産・販売統計, 一般社団法人日本産業車両協会
http://www.jiva.or.jp/data.html