業界の動き
NEDO 懸賞金活用型プログラム“NEDO Challenge” の紹介

研究開発の効率的・効果的な推進、イノベーションの創出に向け新たに導入した懸賞金型研究開発
-(国研)新エネルギー・産業技術総合開発機構-
懸賞金事業導入の背景・目的
イノベーションを創出し、その恩恵を社会課題の解決によって国民や社会に還元していくためには、従来にない先端技術を社会実装に至らしめるための適切な方策を推進することが重要である。「イノベーション小委員会中間とりまとめ」(2024年6月21日、産業構造審議会 産業技術環境分科会 イノベーション小委員会)では、現在の委託型や補助型で実施してきている国の研究開発事業について、状況変化があった場合に柔軟な対応・変更が困難であること、潜在的に可能性のある者がエントリーするか・応募者が正しいアプローチを提案するか不明であること、正しい主体・アプローチを採択できるかは採択時点では不明であること、提案されたアプローチの実施が重視され、成果が達成できるかは担保されないことなど、研究開発事業の目標が複雑化・高度化している中でいくつかの課題も存在することを指摘し、研究開発の成果に報酬を支払う仕組みである「懸賞金型事業」については、アプローチを問わず成果の達成が受賞の前提であり、これを本格実施することとしている。
今後、我が国においては、カーボンニュートラル達成、サーキュラーエコノミーなどの社会構造変革、さらに多様化する技術、ニーズ、価値観に対応するため、先端技術が社会課題解決などに有効につながる研究開発事業を行うことが求められる。そのためには、従来のように研究開発を線形的・漸進的に進めるのではなく、多様な主体からの多様な知恵を集め、これらを融合・競争させ、得られた結果を研究現場にフィードバックすることを可能とする取組みを強力に進める必要がある。
(国研)新エネルギー・産業技術総合開発機構(以下、「NEDO」という)は2023年度から「NEDO懸賞金活用型プログラム“NEDO Challenge”」を導入し、技術課題や社会課題の解決に資する多様なシーズ・解決策をコンテスト形式による懸賞金型の研究開発方式を通じて募り、将来の社会課題解決や新産業創出につながるシーズをいち早く発掘することで、共同研究などの機会創出、シーズの実用化、事業化の促進を狙う(図1)。

図1 懸賞金型事業による委託・補助型事業の課題解決への期待
NEDO懸賞金活用型プログラムの概要
本プログラムは、懸賞広告において研究開発の目標を掲げて多数の応募を募り、共同研究などにつながる技術シーズの発掘を目指して実施するものである。
懸賞広告で掲げる課題は外部有識者からなる課題設定委員会における議論を踏まえて設定し、懸賞広告やコンテストの企画立案・運営、評価手法の検討(ルール・基準の明確化)、応募者のための研究開発環境整備、広報や周知活動・制度改善に資する調査などの企画運営業務については、コンテストなどの知見・経験を有する(企画運営)事業者への業務委託を通じて実施する。
その後、研究開発の目標、懸賞金額などを掲げて懸賞広告を行い、応募者による研究開発の成果をコンテスト形式で競わせ、目標水準以上の成果を上げた者のうち上位数者に対して民法に基づき懸賞金を交付する(図2)。
なお、本プログラムにおいては以下のアウトプット目標、アウトカム目標を設定している。

図2 NEDO 懸賞金活用型プログラムの業務プロセス
アウトプット目標
共同研究などにつながるシーズの発掘を目指すために、懸賞広告において研究開発の目標を掲げて多数の応募(「応募」とは「成果の提出」を意味する)を募る。
アウトカム目標
技術課題や社会課題の解決に向けて、懸賞広告応募者と当該シーズのユーザーとの連携の機会を創出し、短期(2年後まで)に共同研究などにつなげることを目指す。
懸賞金事業に係る具体的課題
「NEDO懸賞金活用型プログラム」は2023年度から開始した事業であるが、2023年度には衛星・宇宙、蓄電池、AIの3分野で課題を設定し、2024年度末までにはコンテストを終了したところである。課題の内容や懸賞金額などは図3のとおりであるが、3課題合計で約200者の方に応募いただき、結果的に計29者の方に懸賞金を交付した。関連分野の企業や大学などのみならず、異業種のベンチャー企業や学生含む個人の方に応募いただくとともに、コンテスト・表彰式も300名以上の方に参加いただくなど大変盛況であり、関係者のネットワーキングも活発に行われた。
2024年度、2025年度における設定課題は図4および図5のとおりであるが、現在コンテストの実施に向け準備中である。

図3 懸賞金課題の概要(2023年度)

図4 懸賞金課題の概要(2024年度)

図5 懸賞金課題(2025年度)
懸賞金事業における工夫
NEDO懸賞金活用型プログラムにおけるアウトプット目標は「多数の応募を募る」ことであるが、当然のことながら研究開発のクオリティを上げることも極めて重要である。そのため、応募者に対して企画運営事業者またはNEDOから、課題の内容などに応じて「個別メンタリング」や「セミナー等の教育プログラム」の実施、「開発環境の提供」などといった非金銭的支援を行っているところである。応募者は基本的に当該支援を無償で受けることができる。
また、課題によっては、スポンサー企業と連携し「アイデアコンテスト」を実施し、また、コンテスト会場に当該分野の第一人者や著名人を招待して特別講演を行うなど、成果やネットワーキングの最大化にも努めているところである。
今後の展望など
懸賞金事業はNEDOとして新しい取組みであり、有識者による課題設定委員会で課題内容などを審議しているものの、懸賞金に相応しい有意義な課題・研究テーマの設定に向けて今後経験や知見をさらに積んでいく必要があると考えている。同時に、応募者のモチベーションを引き出す魅力的な懸賞金額の設定、「懸賞金」と「委託」「補助」の最適な組み合わせなどを検討し、イノベーションを最大限創出していくことが求められる。
【NEDO懸賞金活用型プログラム“NEDO Challenge”】
https://www.nedo.go.jp/activities/ZZJP_100268.html
矢部 貴大
◎(国研)新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO) フロンティア部先導研究ユニット長(フロンティア・懸賞金チーム、新技術・未踏チャレンジチーム、国際共同研究開発チーム)
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