一般社団法人 The Japan Society of Mechanical Engineers

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会長挨拶

 

創立120周年の先を見据えて2016

岸本 喜久雄
[東京工業大学 環境・社会理工学院長]
Kikuo KISHIMOTO


本会は1897年(明治30年)6月12日に創立されました.当時の正員は僅かに72名でした.その後,本会は,我が国の機械工学の発展とともに成長し,現在は約35 000の会員を擁する我が国で最大級の学会としての地位を占めています.その第94期の会長を仰せつかりましたことは,大変名誉なことであるとともに,その重責に身の引き締まる思いであります.日本機械学会がこれまで発展して来たことは歴代の会長はじめ先輩諸氏の業績の賜であり,本会が更なる発展を遂げるべく,筆頭副会長,副会長,理事等の役員,事務局職員の協力を得て全力を尽くす所存でございます.

本会は2017年に創立120周年の大きな節目を迎えます.今期は,これまでの本会の120年間の活動を総括するとともに,120周年を越えた先の未来を見据えた活動を行って参りたいと思います.ところで,学会運営において1年で成果が出るような施策はほとんど無く,重要なものほど長期間の取り組みが必要になります.しかしながら,理事会活動は1年毎に区切りがあるために,理事会として中長期的な観点から施策を講じることは,これまで容易ではなかったように思います.このことを改善するために,第93期においては,理事会として「日本機械学会10年後に向けた課題と取組み~2015年度(第93期)の取組み~」と題する報告書を取り纏めました.本報告書は,本会の現状理解に必要なデータと第93期の活動内容及び次期の運営方針案で構成されています.今期は本報告書の内容を基礎において活動を行って参りたいと思います.

さて,創立100周年の前年の1996年に「第二世紀将来構想」の答申が提出されました.1998年に本答申に基づいた本会の基盤整備の方針,実行計画が提示され,引き続き,組織体制,財政運営,国際連携,産学官連携,工学教育などについて様々な改革が数年に亘って実施されました.その後は大きな改革は無く,この時に構築された体制で基本的に今日に至っています.20年を過ぎて社会環境も変化していることから見直すべき点も多くあるように思います.しかしながら,「第二世紀将来構想」で提示された基本的理念のなかで,以下の6つの事項は,本会の現状を見据えると,今後も取り組むべき指針となります.この6つの基本的理念をもとに,2014年度政策・財務審議会で本会の「10年後の姿」を描いています.

  1. 学会の情報発信ならびに情報交換機能の強化
  2. 会員の創造活動の啓発と支援
  3. 産業ならびに一般社会・地域と密着した活動の強化
  4. 新分野・萌芽的分野の積極的育成と支援
  5. アジアを視点に据えた国際的活動の推進
  6. 会員の多層化,多様化の推進

以上のことを基本認識として今期の活動を進めて参りたいと思います.その上で,本年度を創立120周年の先を見据えた基礎固めの年と位置づけ,取り組みの重点を以下の3点に置きたいと思います.

(1) 学術活動の充実に向けた取り組み

人類はエネルギー問題や環境問題をはじめとして様々な課題を抱えており,機械工学・機械技術に求められることも高度化・複雑化しています.これらのことに対応するために,本会は学術団体として学術活動をより一層充実させていく必要があります.イノベーションを創造し実現していくためには,ますます技術の融合化,学際化,さらには文理融合などを進めていく必要があります.本会では学術の中心を担うのは部門活動です.本会は,幅広い領域を包含する部門で構成されており,今後のイノベーションをリードできるポテンシャルを有していると言えます.ただし,その実現のためには部門活動のさらなる活性化が求められます.これまで部門制の改革については,幾度となく議論されてきましたが実現されていません.そこで,2015年度政策・財務審議会での議論の結果,「部門のあり方検討委員会」を発足させることにいたしました.部門のあり方の検討に加えて,会員のコンセンサスを得るなど新部門制度への円滑な移行についても合わせて計画をしていく必要があります.

年次大会,部門講演会,支部講演会の位置付けを含めた講演会のあり方の検討は引き続き進めて参りたいと思います.また,2014年の改編により4タイプに整理された学術誌のパワーアップは,本会の学術の発展にとって不可欠であります.幸い英文誌の投稿件数は伸びてきておりますが,掲載論文の価値の向上や社会的インパクトの向上策について引き続き検討を進めて参ります.

(2) 会員にとっての魅力ある学会に向けての取り組み

学会は学究的環境と産業界で働く専門家の集団であり,本会が活力のある組織であるためには,その学究的側面と技術的側面の両面の活動を通じて会員が互いに研鑽し,連携・協力することが必要です.しかしながら,会員数は1996年の約46 000人を頂点に,それ以降減少を続け,20年間で1万人減少しています.その要因は,本会からの企業技術者離れが急速に進んだことです.特に企業の若手技術者の減少が顕著です.本会の学究的な活動と産業界の活動の連携を促す機能の弱体化が懸念されます.したがって,本会にとっての喫緊の課題は,本会からの技術者離れに歯止めをかけることであり,そのためには,特に若手技術者にとっての魅力度を向上する必要があります.

本会の将来の発展には若手会員の積極的な活動が不可欠であります.若手会員が望むイベントの提案・実施,自己啓発や仲間同士の交流の場の提供などに向けて,若手会員と理事会が協同して取り組むことが求められます.2015年度に臨時特別委員会として発足した「若手の会」の活動が引き続き重要になるとともに,恒常的な組織への発展を目指していきたいと思います.

また,本会が世界から注目される活動を行うことも重要で,効果的な情報発信や国際連携の推進,国際会議の開催などを積極的に行っていくことが求められます.加えて,外国籍の会員の増強,特に留学生や国内の外国籍の研究者・技術者に対する魅力度の向上が必要です.2015年度末にJSME International Unionが立ち上がりました.この組織が実質的なものとなるように取り組んで参りたいと思います.

(3) 本会の活動に対する共通理解の醸成に向けた取り組み

学術の発展とともにその社会貢献や発展持続性に関する議論が活発になり,技術・工学のあり方に対する社会的関心が高まっています.その結果,技術や関連学術の本質的なあり方に関する認識を明確にすることが必要となってきています.本会は,社会的価値が高い活動を続けてきており,人類の未来に貢献できるポテンシャルを有しております.しかしながら,本会が寄って立つ普遍的な基盤そのものについての議論が整理された形でなされる機会はあまりなかったように思います.本会の未来を構想していくためには,学会活動の根源を長期的視点から広く見渡し,私達の使命や価値を再確認することが大切であると考えます.将来の発展の礎となる本会の活動に対する共通理解を持つために,機械工学・機械技術のミッションを再定義して,人材育成のあり方をも含めて,学会の根本となる考え方や位置付けについて取り纏める活動を進めて参りたいと思います.

以上の他にも取り組むべき課題は様々にあります.ただ,会員の皆様が学会活動を通じて充実感や満足感を得られることが大切なことですので,日本機械学会がそのような学会であるために腐心したいと思います.会員の皆様のご支援をお願いいたします.最後に,小豆畑茂前会長をはじめ,前期の理事会,支部・部門・諸委員会の皆様の献身的な活動に心から感謝申し上げますと共に,引続いて第94期にもご支援を賜りますようお願いして就任の挨拶といたします.

(2016年4月21日 定時社員総会あいさつより)