和文学術誌目次
日本機械学会論文集 掲載論文 Vol.91, No.950, 2025
公開日:2025年10月25日
https://www.jstage.jst.go.jp/browse/transjsme/91/948/_contents/-char/ja
<機械力学・計測制御分野特集号2025>
変形とプリストレスを考慮したテンセグリティ構造の最小質量設計
橋本 和磨, 長瀬 賢二
https://doi.org/10.1299/transjsme.24-00237
本論文では,より現実的なテンセグリティ構造の部材太さ(断面積)の決定方法として,外力による変形を陽に考慮した最小質量設計について考える.外力としては特に重要と考えられる一軸圧縮を考え,構造物が指定した変形率となるように定式化を行う.部材の断面積は,力の釣り合いを満たし,かつ,降伏・座屈条件を満たすように決定される.力学解析より得られる最適化問題は,多変数の非線形最適化問題となる.そこで,動力学シミュレーションを併用した最適化の初期値の見積もり方法も示す.提案手法は部材の変形を陽に考慮しているため,プリストレスを考慮することも可能である.手法の有効性と妥当性は数値シミュレーションにより検証する.
すべり型免震装置を用いた小型構造物の挙動とその数値モデル
小笠原 幸永, 栗田 勝実, 青木 繁
https://doi.org/10.1299/transjsme.25-00007
本研究では,すべり型免震装置を導入した構造物の転倒防止の評価に向け,振動実験と作成した数値モデルによる解析結果の比較によりモデルの妥当性を検討した.振動実験では,構造物の転倒限界加速度より免震装置が作動し始める加速度振幅が低くなるよう装置の摩擦係数を設定することで,装置上に設置した構造物は転倒の起因となるロッキング振動を励起しないことを確認した.振動実験の結果と作成した数値モデルによる解析結果の比較では,入力波の振動数の変化に伴う応答の変化など,両者の対応が良いことから妥当性を確認した.以上より,作成した数値モデルはすべり型免震装置を設置した場合の構造物の挙動を確認,評価する上で有用である.
Rolling-ball damperの減衰性能
島野 寧々, 佐伯 暢人
https://doi.org/10.1299/transjsme.25-00008
複数の球が円筒面を転がる転動振り子型動吸振器に関して,高い減衰性能を得るためのパラメータの選定方法を理論的,実験的に検討した.転動振り子型動吸振器には主振動体に半円筒状の空間を設け,その円弧面に複数の球を載せ,球が円弧面から飛び出さないようにカバーを設けた構造とした.その制振性能を確認するために変位加振される水平振動系の実験装置を製作した.球の材質や直径を指定したとき,最適な円筒容器内径を個別要素法と進化計算アルゴリズムを用いて探索し,実験により探索した結果が好ましいものかを確認した.
空調機配管の伝達経路解析による騒音発生源の可視化(PLSに基づく実稼働TPAによる音響潜在モードの抽出)
岩田 健二, 山根 甲彰, 八重樫 直樹
https://doi.org/10.1299/transjsme.25-00009
本研究では,振動・音響連成問題における伝達経路解析手法として,PLSに基づく実稼働TPAを構築し,空調室外機の配管系を対象に伝達経路の寄与度の算出と妥当性検証を行った.既存手法である主成分分析に基づく実稼働TPAは,参照点である振動加速度の情報のみで主成分抽出を行うが,PLSに基づく実稼働TPAでは応答点である音圧の情報も利用し潜在変数(音響潜在モード)を抽出する.そのため,主成分と比較し少ない成分数で高精度に応答点信号が予測可能であり,伝達関数の安定性も向上した.さらに,誤差低減量を統計量とする有意性検定によりPLSの成分数選択を行うことで,信頼性の高い寄与度分析が可能であることを示した
ARゴーグルを用いた立ち乗り式車両の自動走行実験
松井 雄吾, 吉田 翔太, 中川 智皓, 新谷 篤彦
https://doi.org/10.1299/transjsme.25-00011
近年,Apple Vision ProなどのARゴーグルが発売され,普及しつつある.それと同時に人々の移動権の確保,新たな移動方法の提供として,立ち乗り型車両(PMV)も普及しつつある.本研究ではARゴーグルを使用しながら自動運転を行う立ち乗り型PMVで移動することの有効性や危険性,心理的影響を明らかにするため基本的な走行実験を行った.その結果,ARゴーグルは移動中の情報アクセスとエンターテイメント性を向上させるのに有効だが,転倒の危険性や乗り心地の低下を引き起こすことが明らかになった.
マルチエージェントシステムにおけるタスクアサインの最適化について(計算負荷低減による実用的な解探索手法の提案と低速降下物体の空中回収への応用)
山崎 光一, 原 進
https://doi.org/10.1299/transjsme.25-00012
本研究は,マルチエージェントシステムにおける各エージェントに対して,知的コンピューティングを活用して最適なタスクアサインと各タスクに応じた最適な行動計画の立案を目指す研究である.本報では特に,人間の組織における意思決定方法を参考に,簡易的な行動計画に基づいてタスクアサインを最適化する手法を提案した.一例として,複数無人機による低速降下物体の空中回収ミッションに対して提案する手法を適用し,数値シミュレーションを行った結果,数学的に厳密なタスクアサインと行動計画の同時最適化を行う従来手法に比べ,短時間に実用的な解を導出可能であることが示され,本報が提案する手法の有用性を明らかにした.
プラズマアクチュエータを用いた縦渦誘起による偏揺角を有する鈍頭物体周り流れの能動制御
今井 隆矢, 瀬川 武彦
https://doi.org/10.1299/transjsme.25-00013
縦渦を誘起できるプラズマアクチュエータ(VG-PA)を2種類試作し,1/4円柱と平板から構成される鈍頭物体からのはく離流れの能動制御を実験的に行った.鈍頭物体モデルは開放型風洞の出口から200 mm下流に設置し,Re = 28,000のもとで主流に対して10度の偏揺角で固定した.プラズマアクチュエータのスパン方向中央下流では,設置した上で非制御時の排除厚さに対して吹出し型VG-PAで64%,吸込み型VG-PAで85%低減した.吸込み型VG-PAでは,誘起した縦渦がスパン方向へ顕著に発達することに起因し,吹出し型VG-PAと比較してスパン方向の広い範囲で高いはく離流れ抑制効果を得られることが明らかになった.
深層学習を援用した免震・制振装置の検査手法に関する提案(正常な荷重−変位関係の画像データに基づく異常検出)
深沢 剛司, 藤田 聡
https://doi.org/10.1299/transjsme.25-00014
本論文では,免震装置および制振装置を対象とした新たな検査システムを提案する.本システムは,教師なしの深層学習手法を活用することで,検査の客観性と信頼性を高めることを目的としている.従来,これらの装置に関する評価は載荷試験による荷重および剛性の測定が中心であり,検査には人間の判断が関与していた.しかし,製造者と利害関係をもたない第三者による評価の実現には,人間の介在を抑えつつ客観性を向上させる仕組みが求められる.提案するシステムでは,正常データのみを用いた教師なし学習を採用することで,未知のパターンからも異常を検出可能とする.
本論文では,データ作成と深層学習モデルの学習・推論までの手順を示すとともに,オイルダンパーおよび積層ゴムを対象とした検証結果を提示する.さらに,異常検出の可視化により,装置の健全性を直感的に把握できることを示す.これらの知見を活用することで,免震および制振装置の品質管理において,客観性と信頼性の向上が期待される.
外形変化を伴う直方体状粘弾性体に埋め込まれた質量球を用いた多モード制振デバイスの開発
戸田 祐真, 富岡 隆弘, 高橋 武彦
https://doi.org/10.1299/transjsme.25-00015
本論文では,シート状(板状)粘弾性体中に質量や大きさが異なる多数の質量球を分散して埋め込み,それらが異なる共振周波数を持つことで複数の制振対象周波数に対応可能な多モード制振デバイスeMDVA(embedded Mass DVA)の実現を目指した検討を行った.シート状粘弾性体の部分要素を想定し,側面の外形変化を伴う直方体状粘弾性体に質量球を埋め込んだ構成のeMDVAについてFEM解析による検討を行い,粘弾性体の厚さと質量球のサイズによりeMDVAの振動設計が可能なことを示した.また,直方体状粘弾性体を用いたeMDVAを製作し単体加振試験を実施してeMDVAの振動特性を確認するとともに,実構造物を対象に弾性振動のマルチモード制振効果を確認した.
空気ばねとコイルばねを併用したばね定数および減衰係数調整機構を有する動吸振器の開発
内藤 学哉, 富岡 隆弘, 高橋 武彦
https://doi.org/10.1299/transjsme.25-00017
本論文では,極力単純な機構でばね定数と減衰特性を独立に調整可能な動吸振器について検討した.補助空気室を持つ空気ばねをもとにした振動系を用い,空気ばねと補助空気室間に設けたオリフィス径により減衰特性を調整し,空気ばねと並列に設置したコイルばねの有効巻き数を変化させることでばね定数を調整する機構を提案した.この着想に基づく動吸振器を試作し,加振試験を行ってばね定数と減衰係数の変化特性を調査した.さらに,鉄道車両の台枠を約1/10スケールで模擬した平板状構造物に動吸振器を取り付け,その弾性振動に対する制振効果を確認するとともに,任意の評価点におけるばね定数および減衰係数の最適調整について検討した.
干渉の抑制を考慮した複数のフィードバック制御系の融合手法
髙﨑 楓道, 岡本 峰基
https://doi.org/10.1299/transjsme.25-00018
異なる複数のフィードバック制御系を融合する制御手法をコントローラフュージョンという.従来のコントローラフュージョンでは,制御系間の干渉による制御性能の低下を抑えるために,フィードバック制御器の設計(外乱抑制特性)に制限を加えるか,定式化した干渉特性を用いた干渉補償器を用いていた.本論文では,2つの異なるフィードバック制御系の操作量をフィルタを通して加算する構成のコントローラフュージョンを提案し,干渉補償器を用いなくとも融合後の制御系の特性に干渉の影響が生じず,良好な目標値追従特性と外乱抑制特性を得られる条件を明らかにしている.
<熱工学,内燃機関,動力エネルギーシステム>
ガソリンエンジンにおける燃焼起因による振動騒音の起振力解明
佐藤 広直, 大羽 将広, 廣本 孝史, 佐藤 清史, 園部 俊幸, 関根 紀朗, 森吉 泰生, 森川 弘二, 窪山 達也
https://doi.org/10.1299/transjsme.25-00147
エンジン燃焼による振動騒音の起振力解明に関する実験的研究を行った.高回転高負荷の振動伝達が主成分となる燃焼起因の車内音を対象とした.燃焼系と構造系それぞれの起振力が合わさった現象を燃焼起因の車内音と定義した.燃焼と振動騒音は従来アンサンブル平均で論じられることが多いが,振動騒音の非定常性に鑑み,サイクル毎に振動に対する両起振力特性を分析した.燃焼系起振力指標として,燃焼速さ:最大熱発生2階微分値と燃焼位相:CA50を特定した.構造系起振力指標として,最大ピストン傾き角度,最大傾き速度,最大並進速度を特定した.両起振力指標を基に,燃焼起因の振動騒音抑制に対して様々な手段が考案できるようになった.
<設計,機素・潤滑,情報・知能,製造,システム>
電気インピーダンス法によるヘリカルギヤの潤滑状態の実動作下計測
大久保 光, 渡邉 明日香, 中野 健
https://doi.org/10.1299/transjsme.25-00116
本研究では,ヘリカルギヤ噛み合い部の潤滑状態を電気インピーダンス法を用いてモニタリングする手法の有効性を検討した.ヘリカルギヤ噛み合い部における潤滑状態を電気インピーダンス法で計測し,取得した電気インピーダンス信号の時間変化を解析することで,ヘリカルギヤ噛み合い部の潤滑膜の無次元膜厚および破断率を推定した.その結果,電気インピーダンス法により,単に印加交流電圧と外部抵抗交流電圧の時間分解計測を通じて,ヘリカルギヤ噛み合い部における潤滑状態の時間変化が追跡可能であることを明らかとした.また,印加交流電圧と外部抵抗交流の解析から無次元膜厚および破断率を算出することで,ヘリカルギヤ噛み合い部の潤滑領域も推定可能であることが示された.従って,電気インピーダンス法は,はすば歯車の潤滑状態をリアルタイムで計測するための効果的な手法である.
<生体工学,医工学,スポーツ工学,人間工学>
摩擦発電機により動作するマイクロカレントサポーターの開発
谷 弘詞, 信岡 祐哉, 佐野 加奈絵, 呂 仁国, 小金沢 新治
https://doi.org/10.1299/transjsme.25-00094
本研究では,摩擦帯電発電機(TENG)を用いた自己発電式マイクロカレントサポーターの開発を行った.歩行時の生体力学的エネルギーを利用し,皮膚に微弱電流を供給可能なシステムを構築した.TENGは100V程度の出力を持ち,エネルギー抽出回路により50~500µAの電流範囲に調整された.導電性スポンジ電極の使用で接触抵抗が低減され,電流供給が安定化した.筋硬度測定では,運動後の腓腹筋において有意な筋硬度増加抑制効果が確認され,本デバイスの運動中利用による筋肉ケアの有用性が示唆された.
<環境工学,産業・化学機械,システム安全>
空調機用マイクロチャンネル熱交換器の高性能化に関する開発動向
早瀬 岳, 宮崎 隆彦
https://doi.org/10.1299/transjsme.25-00103
空調機用熱交換器は一般的にアルミフィンと銅管により構成され,1970年以降,数十年に渡って高性能化が進められてきた.一方,マイクロチャネル熱交換器は,マイクロチャネルチューブによる冷媒側伝熱性能の向上と空気側の通風抵抗の低減,およびフィンとチューブを炉中ろう付けすることによるフィンーチューブ間の接触熱抵抗の低減を通して大幅な性能向上を実現しながら,オールアルミニウム化することで材料費の低減も可能とし,近年,空調機への適用を通してシステムの効率向上と製品のコンパクト化および冷媒量削減を可能とする技術として注目されている.本稿では,これま でマイクロチャネル熱交換器を空調機に適用するために行われた研究開発内容を整理するとともに,現状の課題と今後の展望について示す.
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