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2025/11 Vol.128

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特集 非破壊検査の最近の動向―日本非破壊検査協会との協議締結に際して―

特集にあたって

井上 裕嗣(東京科学大学)

JIS Z 2300「非破壊試験用語」によれば、「非破壊試験」とは“素材又は製品を破壊せずに,品質又はきず,埋設物などの有無及びその存在位置,大きさ,形状,分布状態などを調べる試験”であり、「非破壊検査」とは“非破壊試験の結果から,規格などによる基準に従って合否を判定する方法”であるとされている。ただし、多くの場合には非破壊試験と非破壊検査の区別は曖昧であるので、本特集においてもあえて厳格には区別しないことにする。そもそも工業的な非破壊検査は、製品や構造物などの安全性、健全性、信頼性を確保するために適用されるが、このことは医療においてX線(レントゲン)検査、超音波(エコー)検査、CT(コンピューター断層撮影)検査、MRI(核磁気共鳴画像)検査などが人間の健康を保つために適用されるのと基本的に同じである。

さて、非破壊検査は、電磁波や弾性波などの挙動が媒体(すなわち、製品や構造物など)の状態によって影響を受ける物理現象に基づいており、媒体の状態に応じて生じた変化を的確に検出し、結果として状態を正しく把握することによって成立する。よって、物理現象を正しく理解して巧みに利用するとともに、変化を高精度で計測し、結果を適切に表示することは、学術的にも産業的にも重要で魅力的な研究と技術開発の対象であり、日本機械学会(JSME)でも多くの部門や委員会などで非破壊検査に関連する活動が行われている。一方、国内には非破壊検査を主たる対象とする日本非破壊検査協会(JSNDI)があり、JSNDIの会員の多くはJSMEの会員でもある。そこで、非破壊検査に関わる学術・技術のさらなる発展を目的として、2025年10月にJSMEとJSNDIの間で連携協定が締結された。今回の特集は、この協定締結を契機に企画したものである。

今回の特集では、まず、両団体の前会長と現会長にお集まりいただき、協定締結の経緯と今後の展望について忌憚なく意見交換を行っていただいた。続いて、JSME会員の皆様にJSNDIの活動を知っていただくために、JSNDI前副会長に概要をまとめていただいた。さらに、鉄道、橋梁、水素利用、製鉄の4分野を取り上げて、非破壊検査の産業応用の先進事例を紙数の許す範囲で紹介していただいた。実際のところ非破壊検査に関わる学術と技術は多岐にわたるため、そのすべてをこの特集で網羅することは不可能であるが、今回の特集をきっかけに、これまで非破壊検査にはなじみのなかった会員の皆様にも関心を持っていただければ幸いである。

なお、2024年度に新たに発足した「機械・インフラの保守・保全,信頼性強化に関する連携分科会」は、JSME内の部門などの枠組みを越えて横断的に活動するためのプラットフォームであるが、非破壊検査はこの連携分科会の対象とする重要な一分野である。今後は、JSME内の部門間に留まらず、JSNDIなどの学協会との連携も視野に入れて、連携分科会の活動が発展することが期待される。


<フェロー>

井上 裕嗣

◎東京科学大学 工学院機械系 教授

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