スケールシフト思考― 視点を変えると世界が変わる
第4回 常識への挑戦

学問は帰納的あるいは演繹的方法の研究で法則なりが確認され体系化される。それが普遍的と認められれば常識となる。しかし新たなエビデンスで天動説から地動説への逆転劇は周知のことであろう。これだけ学問が発展してくればそれは既知として、攻めるところがないようにも見える。でも研究は従来の常識を破ることであり、研究者は常にそれを意識しておかなければいけないと考える。そのツールとしてスケールシフトは価値がある。
▼無視できることとできないこと
前稿でフレッティングのクリティカルな振幅について述べた。cmやmのマクロな視点でみれば、10μmの事象は無視できる。無視というのは存在が分かっている前提があろうが、マクロな世界だけで見ていればそれが存在することも気づかない。無視する(気付かない)か無視しないかで考察は変わってくるであろう。
昔、学生実験で切削力測定を行っていた。そのデータをプロットすると直線近似ができるが原点を通らない(図1)。なぜかと学生に質問してもわからない。1週間後レポートを持ってきたので、質問は解決したかと尋ねると、「加工変質層は硬いので被削抵抗が高くなるのです」と答えた。よく調べたねと褒める一方で、「それは私にとっては正解ではないと思う」と言う。確かに加工学の教科書にはそう書かれているが、私の正解は工具と被削材の摩擦である。切り込み深さをゼロにしても工具と被削材は弾性変形をして摩擦が生じる。マクロ加工屋さんはそこまで見ていないかもしれない。試料表面の薄い加工変質層はそれが加工された際に生じ、バルクと比べ比切削抵抗が大きくなると解釈したのであろう。

図1 切削力と切り込み深さの関係
会員ログイン
続きを読むには会員ログインが必要です。機械学会会員の方はこちらからログインしてください。
パスワードをお忘れの方はこちらでメールアドレスを入力して次へ進んでください 。
ORCIDでログインされている方はこちらの操作でA-Passのパスワードを>作成してからログインしてください。
キーワード:スケールシフト思考― 視点を変えると世界が変わる