和文学術誌目次
日本機械学会論文集 掲載論文 Vol.92, No.955, 2026
公開日:2026年3月25日
https://www.jstage.jst.go.jp/browse/transjsme/92/955/_contents/-char/ja
<材料力学,機械材料,材料加工>
改良9Cr-1Mo鋼溶接継手のクリープ強度に及ぼす補修溶接の位置及び回数の影響
山下 勇人, 豊田 晃大, 鬼澤 高志, 山本 賢二, 久保 幸士
https://doi.org/10.1299/transjsme.25-00176
高速炉実証炉の蒸気発生器の構造材料として,改良9Cr-1Mo鋼が採用される方針である.改良9Cr-1Mo鋼の溶接継手は高温長時間におけるクリープ強度が母材よりも低下する.また,改良9Cr-1Mo鋼の補修溶接を行った溶接継手は,補修溶接を行っていない溶接継手よりもクリープ強度が低下する.本研究では改良9Cr-1Mo鋼溶接継手への補修溶接の位置,回数がクリープ強度へ及ぼす影響を調査し,高速炉実証炉建設時の補修溶接法を開発した.補修溶接の位置,回数に依らず,補修溶接を溶接後熱処理(PWHT)の前に行うことで,クリープ強度の低下を大きく抑えられることが明らかとなった.さらに,熱履歴の重畳及び溶接金属への溶接熱影響部(HAZ)の形成はクリープ中のフェライト粒の粗大化を促進し,若干のクリープ強度低下を起こすことを明らかにした.そして,補修溶接をPWHTの前に全て行い,熱履歴の重畳及び溶接金属HAZの形成を最小限とする補修溶接法を開発した.
高温ガス炉中間熱交換器の非弾性挙動とクリープ疲労寿命評価
廣瀬 悠一, 平野 敏行, 時吉 巧, 猪狩 敏秀,
本田 尊士, 谷島 寛斗
https://doi.org/10.1299/transjsme.25-00191
水素製造に向けた高温ガス炉機器の詳細非弾性解析を行い,900℃近傍におけるクリープ支配の非弾性挙動は弾性シェイクダウン挙動であり,定格運転時の応力緩和に弾性追従や一次応力の影響が含まれることを明らかにした.開発初期段階での概念設計に用いる「弾性解析に基づく簡易非弾性評価手法」として,応力緩和挙動の特徴パラメータ「弾性追従係数」と「緩和後応力」の定量化を行うとともに,簡易非弾性評価手法によるクリープ疲労損傷の具体的な予測手順を提案した.簡易非弾性評価手法が,詳細非弾性評価手法に比べて安全側に評価できることを示すとともに,950℃の多孔板クリープ疲労試験結果にも適用できることを確認した.
<流体工学,流体機械>
受動的制御デバイスがアスペクト比2の長方形噴流の三次元渦構造に与える影響
梶谷 尚希, 木綿 隆弘, 河野 孝昭, 酒井 雅晴, 松井 良彦, 佐藤 英明
https://doi.org/10.1299/transjsme.25-00192
本研究では,受動的制御デバイスがアスペクト比2の長方形噴流の三次元渦構造と下流域における軸スイッチング現象との関連性を調査した.制御デバイスとして,ノズル出口に鋸歯状タブ,偏向板,テーパ三角形管を設置した.長方形ノズルの高さはH=30mm,幅はB=60mmであり,噴流のレイノルズ数は9,000であった.噴流のy方向およびz方向への拡散は受動的制御デバイスの影響を大きく受け,渦輪の変形は渦度の分布と強度に関連することが判明した.特にテーパ三角形管を有する噴流の場合,x/H = 4 でノズルの長辺と短辺の渦度にほとんど差がない.その結果,下流方向においても噴流形状はその他の噴流と比較して最も初期の長方形の噴流断面形状を維持する.
永久磁石を用いた空気の自然対流からの保冷(レイリー数の影響)
益田 卓哉, 辻 優人, 早水 庸隆, Alam M. M. A., 田川 俊夫
https://doi.org/10.1299/transjsme.25-00205
冷却壁近傍の磁石は,高温酸素を排斥し低温酸素を吸着して渦を形成し,高温空気の接近を妨げる.この機構は作動流体に直接作用し,冷却壁面を低温に保つ.本研究では,左壁を加熱し右壁を冷却した正方形容器の周囲に正方形断面の永久磁石を配置し,二次元数値解析を行った.プラントル数Pr=0.71,磁気数Ma=1,レイリー数Ra=10^3~10^6の条件下で検討した結果,磁石を上側または右側の適切な位置に置くと熱伝達が著しく抑制された.上側配置では冷却壁近傍に渦が生じて暖気の接近を防ぎ,右側配置では高レイリー数で冷却壁に沿う渦が形成されたが,低レイリー数かつ底部付近では熱伝達が促進された.
高分子溶液の壁面注入を伴う平板上乱流境界層に設置された有限長角柱周り流れの平均速度および乱流統計量
横井 絢斗, 武藤 真和, 玉野 真司
https://doi.org/10.1299/transjsme.25-00232
本研究の目的は,平板上乱流境界層に対して垂直に設置された有限長角柱周りの流れに及ぼす粘弾性の影響を調査することである.粘弾性流体として高分子(PEO)溶液を壁面上に設けたスリットから注入し,その拡散過程をPLIF計測により可視化するとともに,角柱周り流れの速度場をPIV計測により取得した.PLIF計測の結果,角柱設置に伴い「巻き上げ構造」が周期的に発生し,その傾斜角が流体の粘弾性の影響により変化することを明らかにした.また,PIV計測の結果,PEO溶液を注入した際には,水流とは異なる速度分布やレイノルズせん断応力分布が得られ,粘弾性の影響により角柱周り流れのダイナミクスが変化することを示した.本知見は粘弾性流体の流動挙動の解明に向けた理解を深めるものとして期待される.
<機械力学,計測,自動制御,ロボティクス,メカトロニクス>
モジュラー型柔軟トラスロボットの有限要素法に基づくフィードフォワード制御
大場 友暁, 磯部 大吾郎
https://doi.org/10.1299/transjsme.25-00171
受動変形を許容するモジュラーロボット(MDR)がその高い適用性を十分に発揮するためには,複雑な力学特性を考慮可能な制御法の開発が望まれる.本研究は,汎用性が高く複雑な力学特性を解析可能な有限要素法をMDRの制御に適用し,実験的検証を実施したものである.研究では,MDRの一種であるモジュラー型柔軟トラスロボットを制御対象とし,トラス要素を使用した有限要素法に基づく制御系の構築,および実験機の製作を行った.そして複数の形態や外力条件下での制御実験を実施し,有限要素法はMDRの複雑な力学特性や外力の影響を高精度に把握可能であり,MDRの適用性を十分に引き出し得ることを示した.
個別要素法を用いたスティックスリップ現象の解析(単層配列モデルの検討)
成田 学司, 高橋 芳弘
https://doi.org/10.1299/transjsme.25-00173
製品の摺動部でスティックスリップ現象が発生すると品質の低下に繋がる.すべり挙動は摺動部の接触力や変形などの影響を受けて種々の挙動を示す.この現象の解析には,物体の変形や接触状態を表現できるモデルが必要である.本研究は,個別要素法を用いてスティックスリップ現象の解析を検討するものである.要素同士を回転ばねで結合させ要素の集合体として対象物体を表現し,速度依存の摩擦モデルを個別要素法に適用した.単層に円形要素を配列した単純な解析モデルを用いた.解析の結果,提案モデルでスティックスリップ現象が発生し,スティックスリップ周期の傾向,スリップ時のスリップ量が実験と同様の傾向を示した.
物理的に結合された3台のドローンのマルチボディダイナミクス解析(数値シミュレーションによる結合方法の検討)
真崎 裕大, 米安 哲史, 大川内 利来, 尾﨑 太一, 岩村 誠人
https://doi.org/10.1299/transjsme.25-00201
近年,ドローンは多分野での活用が期待されているが,墜落事故や可搬重量の制限などの課題がある.本研究では,同型の複数台ドローンを物理的に結合し,協調的に制御することによって墜落事故を防ぎ,重量物輸送を可能にする新たな手法を提案する.単体ドローンの3次元空間における動力学モデルを導出した後,マルチボディダイナミクスに基づいて複数台ドローンの高精度な動力学シミュレータを構築する.閉ループ接続および直鎖状接続の二つの結合方法について数値シミュレーションを行い,それらの結合方法の特徴を比較・検証する.
スパースな構造変更によるOperating Deflection Shapeの変形
松村 雄一, 森下 龍生, 加藤 由幹, 村上 賢吾, 稻葉 雅至
https://doi.org/10.1299/transjsme.25-00209
特定の周波数における振動を低減するには,ODS(Operating Deflection Shapes)を小さな構造変更で変形させることが有効である.本研究では,スパースモデリング技術を用い,可能な限り少ない構造変更でODSを変形する構造変更を実現する手法を開発した.この手法は,CEAM(Constrained Eigenstructure Assignment Method) と LASSO回帰を組み合わせて実現され,初期の質量行列と剛性行列をスパースな状態に保ちながら,行列の値を持つ一部の要素のみを変更するという二重にスパースな構造変更を考案できるようにして開発された.
<設計,機素・潤滑,情報・知能,製造,システム>
分散型フローショップラインのロット生産を対象としたブロッキング時間の解析に基づく高速生産計画方式の開発
宮田 康平, 藤井 紀輔
https://doi.org/10.1299/transjsme.25-00184
バッファなしのサブラインが複数並列に配置された分散型フローショップラインにおいて,ロット生産の生産性向上には,負荷を平準化するロット割付と,ブロッキング時間を削減する投入順序の最適化が重要である.さらに,実務において最適化を活用する場合,大規模な計画問題に対する高速性が求められる.しかし,従来のIterated Greedy(IG)手法は,大規模問題において投入順序の探索効率が低下する.これに対し,本研究では,ブロッキング時間の解析に基づく3-opt法により,高速な投入順序の探索を可能とした.評価の結果,従来のIG手法に比べ高速性と生産性の両面で優れた効果を確認した.
フェノール樹脂複合材の摩擦分解に伴う気体発生
岡山 勝弥, 勝呂 信太朗, 平塚 健一
https://doi.org/10.1299/transjsme.25-00187
フェノール樹脂複合材の摩擦界面において,金属酸化物に還元作用が生じることを既報で報告した.この摩擦還元の作用は,樹脂の分解によって引き起こされると推定したが,摩擦試験での試験片温度は約100℃であり,その分解開始温度の300~400℃と乖離があった.そこで本研究では,摩擦での樹脂の分解を確認するため,摩擦試験機に接続した質量分析計で発生気体をin-situ計測し,さらに試験片を摩擦せずに350℃以上に加熱した際の気体と比較した.その結果,両者の発生気体には類似する特徴がみられたが,摩擦すると加熱よりも著しく低い40℃程度でもフェノール樹脂に分解が生じることが明らかとなった.これにより摩擦還元の原因を説明する証拠が確認された.
量子アニーリングを応用した油圧システムの静粛設計
中川 修一, 池上 聡一郎, 大内田 剛史
https://doi.org/10.1299/transjsme.25-00208
油圧システムを有する建設用/農業用車両は,高負荷運転が長時間続くため静粛設計が重要である.騒音源の圧力脈動は非線形系であり,モデルベース開発の進展により,静粛設計のNP困難問題化が予見される.本研究は,静粛設計への新しいアプローチとして量子アニーリングを提案し,適用可能性を示した.目的変数と設計変数からなるデータセットを前提とし,量子スピンの主効果と交互作用を表現したQUBO形式で最適化問題を定式化した.オープンソースライブラリOpenJijを用い,評価関数であるハミルトニアンの最小解を求めることで,事前に得ているパレートフロント上に最小解が位置し,量子アニーリングが静粛設計の最適化に有効であること実証した.
<生体工学,医工学,スポーツ工学,人間工学>
四輪車の直進走行時の操舵感と上肢筋活動の関係(駆動力配分の違いによる直進安定性の実験的評価)
安木 佑介, 鈴木 浩一, 藤田 和樹
https://doi.org/10.1299/transjsme.25-00125
直進走行時の感覚は,自らの運転操作に加え,近年では運転支援システム作動時の良否を評価する上でも重要な要素となっている.しかし,車両の運動特性の変化が小さく,ドライバの操作量も微小なレベルに関する詳細な検討は十分に行われていない.本研究では,駆動力配分を任意に変更可能な実験車両を用いて,直進走行時にドライバが感じる操舵感の差が上肢筋活動にどのように現れるかを検証した.その結果,駆動力配分の違いによって生じる操舵感の差は,短母指外転筋の筋活動増加や左右三角筋の同時活動の高まりとして現れる可能性が示唆された.
微小重力環境下で誘発される細胞骨格および細胞核の構造変化とDNA損傷
池田 佳津希, 中村 麻子, 長山 和亮
https://doi.org/10.1299/transjsme.25-00194
微小重力は骨量減少や筋萎縮などの生理的障害を引き起こす,これまで微小重力下での細胞の生化学的シグナル伝達経路や遺伝子発現の変化に関する研究が主に進められてきたが,細胞骨格や核などの細胞内の機械的構造に対する微小重力の影響については,依然として不明な点が多い.本研究では,皮膚線維芽細胞を微小重力環境に24時間曝露し,蛍光観察法によってアクチン細胞骨格と核の形態および核膜の変化を詳しく調べ,核内のDNA損傷の変化を分析した.さらに,原子間力顕微鏡(AFM)を用いて,細胞の表面形状と表面弾性率を精密に測定した.結果として,微小重力環境への細胞曝露によって核内のDNA損傷が有意に増加した.微小重力環境への細胞曝露では,アクチン細胞骨格の張力低下,核膜の弱体化が見られ,核の機械的強度の低下が示唆された.これと同時に,核へ作用する圧縮力の低下に伴い,核膜の変形や核の縮小化が誘導される結果となった.以上の様な微小重力環境下での細胞骨格と核の機械的構造変化が,DNA損傷の誘発に密接に関わる可能性が示唆された.
突起面を撫でる動作に伴う触覚刺激の変化が自己の動作知覚と運動制御に及ぼす影響
川南 昇太, 奥山 武志, 田中 真美
https://doi.org/10.1299/transjsme.25-00218
本研究は,撫でる動作に伴う触覚刺激の変化が動作速度制御に及ぼす影響を調査した.7名が周期的な突起を持つ刺激面を撫でる課題を行った.課題は音声フィードバックで目標速度を学習し,フィードバックなしで再現する構成とした.動作の再現時には面を動作させ,突起の刺激頻度を変化させた.結果より刺激頻度の変化に対し,元々の刺激頻度を一定に保つ方向に撫でる動作速度が変化し,相対速度の変化が大きい条件でより顕著であった.観察された速度調整は元々の刺激頻度を完全に保つに必要な調整量の7~27%であり,被験者ごとに異なっていた.本結果は固有感覚優位な動作課題における触覚影響の程度を明らかにした.
<交通・物流>
鉄道車両用台車枠に発生する実働応力頻度分布の統計的評価
山本 勝太, 加藤 祐貴, 小笠原 柚
https://doi.org/10.1299/transjsme.25-00206
本研究は,実測データが得られない設計段階において,鉄道車両台車枠の健全性や安全性を評価するために,実働応力頻度分布の一般化と統計的評価を行ったものである.9路線・8車種から得た計113点のデータを分析した結果,最大応力で正規化した応力と,相対頻度の対数値との間に強い相関が確認され,その傾きは平均4.52,標準偏差0.66の正規分布に従うことが示された.さらに,総頻度1万回および10万回の分布を仮定し,仮定した分布の疲労き裂進展に対する等価走行距離を百分位数として評価した.本成果は,最大応力の推定や統計値の活用を通じ,疲労寿命予測への実用的枠組みを提供する.
日本機械学会学術誌規定が改訂され,日本機械学会論文集に「機械工学レター」(速報に値する短い論文)が投稿できるようになりました!是非とも投稿をご検討ください.
https://www.jsme.or.jp/bulletin/news20250409.pdf
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