特集 宇宙エレベーター実現へのハードルと可能性
宇宙エレベーターの基礎研究と技術転用
宇宙エレベーター実現へのハードル
宇宙エレベーターの実現には多くの課題がある
宇宙エレベーターは宇宙開発を飛躍的に進展させる可能性をもった宇宙往還システムとして期待されている。ユーリ・アルツターノフが提案した1960年代はケーブル素材の破断強度が足りないなど実現不可能なシステムとされてきたが、1990年代のカーボンナノチューブの発見により、理論的には実現可能と考えられるようになり、B.Edwardsによるフィジビリティスタディ(1)が行われた。また、2012年には大林組の「宇宙エレベーター建設構想」(2)も発表され、研究者にも知られる存在となった。ロケットの場合には推進装置や燃料をロケット本体に搭載せねばならないが、宇宙エレベーターの場合は索道のように端部のステーションに駆動装置や駆動エネルギ供給装置を設けてしまえば、運行体に搭載物格納スペースや最低限の電源のみで運行が可能である。宇宙空間へのアクセス手段としては、高い輸送効率や安全性、安定運用など、宇宙ロケットに対して優位性の高い点も多くある。ただし、現時点ではケーブル材料の強度不足のみならず、宇宙太陽光発電、エネルギ回生、可動部摩擦熱放熱、シールド技術、宇宙環境劣化など、関連要素技術の検討課題が多くある。宇宙太陽光発電については、すでに米海軍調査研究所(NRL)では、軌道上で太陽発電を行い、地球にマイクロ波で送電する技術を開発中であり、SolarEn社も同様の発電を2016年に開始する計画との情報があり(3)、2024〜2025年時点も、宇宙太陽光発電市場において先駆的な技術を持つトップ10企業として挙げられ、引き続きクリーン電力を提供する計画を進めている。また、エネルギ回生とは位置エネルギや運動エネルギ、ならびに熱エネルギをクライマ駆動エネルギに回生する技術のことであり、位置、速度と加速度の高精度な制御が必要な宇宙エレベーターでは減速や制動、放熱に際してのより合理的なエネルギ回生技術が必要とされる。さらに真空となる宇宙空間では、熱を逃がす媒介となる空気や水が存在せず、放熱が困難となるため、摩擦熱を生ずるようなクライマ機構は避けるべきである。現状の摩擦車による自律昇降機構は必ずしも合理的でなく、位置制御に関しても不利な要因を有するため、新たな昇降機構を検討する必要性を感じている。シールド技術については、宇宙空間やバンアレン帯では宇宙線・紫外線に直接曝されるので、生体のみならず素材や電子部品においても環境劣化への対策が必要となる。特に宇宙線についてはこれを遮蔽する素材は限られるため、シールド技術や表面処理技術のブレークスルーが求められる。このほか、宇宙環境劣化としては、地球低軌道環境(高度700km以下)ではその領域に多く存在する原子状酸素による素材の劣化が発生するため、原子状酸素耐性が要求される。耐性を有するシリカやシルセスキオキサンなどの主要部材へのコーティング技術向上なども望まれる。
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