Myメカライフ
高効率なガスタービン開発への貢献に至る道のり

この度は「高効率で広作動域を有する発電用ガスタービン圧縮機の開発」というテーマで日本機械学会奨励賞(技術)を受賞したことに際し、執筆の機会をいただきました。これまで流体工学やターボ機械に携わってきた経験を振り返りつつ、研究テーマへの想いや今後の目標について紹介させていただければと思います。
私は、答えが一つに求まる数学の美しさが好きで理系に進み、機械科へと進級したあと、流体力学の授業で、その面白さに魅了されました。例えば、ミレニアム懸賞問題としても有名な、流体力学の基礎方程式であるNavier-Stokes方程式の解の存在と一意性はいまだに解決されていません。そういった謎が多く、難しい部分に惹かれ、少しでも自分で理解したい、目に見えない流れをもっと理解したい、と思うように至ったと思います。
流体力学を前提に設計されているターボ機械は、さらに複雑な内部流動に加え、熱、振動、騒音、構造、材料、トライボロジ、などの学問をフル活用する必要があるだけでなく、機械工学的にも絶妙なバランスで成り立っています。大学時代からガスタービンの圧縮機を対象とした空力研究を行いましたが、その奥深さに俄然、興味が湧きました。一方で、専門とする空力だけでなく、「さまざまな方々と交流することで自身の視野を広げ、人間として成長したい」、「世界最先端の技術開発に関わりたい」という想いから、三菱重工業(株)に入社しました。
入社以来、発電用ガスタービンの多段軸流圧縮機の空力設計や流体解析、実験計測といった技術開発を行ってきました。多段軸流圧縮機は、逆圧力勾配条件下で空気を20倍程度まで圧縮するため、境界層が肥大化し、空力的な段の負荷配分が非常に難しいです。実現可能な範囲で、いかに無駄のない洗練された形状とできるかは、見えない内部流動をいかに把握し、設計に反映できるかにかかっています。
そこで、今回受賞したテーマにおいては、金属製3Dプリンタを活用した最先端の計測技術や、社内に独自のスーパーコンピュータシステムを構築してGPUを用いた数値流体解析技術を駆使し、多段軸流圧縮機を対象に、実際の製品形状の改良に取り組みました。動翼の翼端隙間が空力性能に与える影響を定性的かつ定量的に把握し、空力安定性が高く、高効率なフローパターンコンセプトを開発しました。また、タービン冷却に用いる空気を圧縮機から抽出する、抽気システムにおける損失発生メカニズムを特定し、損失低減可能な改良形状を考案しました。
最先端の技術開発に貢献し、それを使って背後にあるフィジックスを明らかにして、ガスタービンの高性能化や広作動域化を解決できるよう、モノの形に落とし込むところにこの仕事の醍醐味を感じます。シミュレーション上ではうまくいっていても、実際のモノは嘘をつきません。リグ試験や社内の実機での実験計測で、それらが意図通りとなったかを確認する、といった一つ一つの積み重ねが大事だと思っています。
これら蓄積してきた技術をフル活用し、安心・安全で世界最高効率のガスタービンエンジンの開発に貢献できているのは、技術者としてはこの上ない喜びだと感じています。ノーベル賞やオリンピックとは言わず、機械工学におけるひとつのニッチな分野であっても、世界でもトップレベルの技術開発に携われることは、なかなかできない経験かと思います。また、ターボ機械関係の世界中のトップ研究者たちと情報共有しながら、新しい技術開発に取り組み、それを製品開発に反映していくことも飽きがきません。
今後は、ガスタービンで培ったトータルの技術をさらに発展・飛躍させるとともに、それに限らず、多様な製品にも展開していくことで、カーボンニュートラルな社会創りに少しでもお役に立てればと考えています。

図 水素ガスタービン
(出典:https://power.mhi.com/jp/special/hydrogen)
<正員>
関 亮介
◎三菱重工業(株) 総合研究所 流体研究部 主任研究員
◎専門:流体工学、熱工学、計算力学
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