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2024/8 Vol.127

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学会賞受賞論文のポイント

二重回転管の自励振れ回り

吉住 文太〔(株)豊田中央研究所〕

2023年度日本機械学会賞(論文)受賞

Unstable inner cylinder whirl of concentric double rotating cylinder system

吉住文太,入谷昌徳
Mechanical Engineering Journal, 2023, 10巻, 1号, p. 22-00103.
DOI: 10.1299/mej.22-00103

はじめに

両方の管が回転する二重回転管をもつ機構として、フライホイールバッテリーの風損低減機構(1)などが提案されている。これらの機構では、円筒状の回転体のまわりに同心でつれ回り管を設置した構造が採用されており(図1)、著者らも高速回転機器における二重回転管の研究に関わった。その過程で、高速で回転する管どうしが接触する問題に遭遇し、毎分数万回転以上の差回転数のあるアルミ管どうしが接触する状況を、「ギヤァ~」という接触音を聞きながら恐ろしく感じた記憶がある(安全のため保護カバー内で実験したことを付記する)。

管どうしの接触は高回転数域で突発的に生じ、自励的な振れ回り、もしくは静的発散が生じたものと推察された。このような不安定現象の基本原理は、すべり軸受や環状シールの不安定問題と同種であろうと推定はしたものの、すき間量が軸受より大きく(すき間/回転体半径~10%)、かつ両管とも回転している場合の不安定問題に取り組んだ文献が見当たらなかった。

現象の本質を数理モデルで説明し、それを実証したいという思いから、両管とも回転する場合の振れ回りを、理論と実験の両面から調べる研究方針を決定した。

理論モデル

理論モデルは、本質である励振のメカニズムを捉え、かつ両管の回転数の組合わせを多数計算できるものとしたい。そのために、低自由度のモデルを指向し、すき間流れに関する先達の取組みをなるべく取り入れることとした。

まず、バルクフローモデルを用いて周方向(図1x方向)の1次元流れ問題とし、作動流体が空気であるため圧縮性を考慮することとした。そして、すき間量が大きいため、慣性力の影響を考慮するとともに、乱流も考慮することにした。今回の問題は、軸受よりすき間が数オーダー大きいものの、すき間を代表長としたレイノルズ数で整理されていることを踏まえて、軸受用のモデル(乱流係数)を適用することとした。ただし、軸受では外側の円環は回転しないため、乱流係数中の軸の回転数としては、両方の管の差回転数|Ωi – Ωo|を用いた。

以上のモデル化の下で、1次の微小項のみを拾う線形化の手計算を地道に行った。

図1 二重回転管のモデル

実験

実験装置の構成として、極力平行モードで振れ回る支持構造を内管に採用した。具体的には、両端固定の4本のロッドで、回転用モーターを含む内管の取り付け板を支えた(図2)。ロッドの曲げ変形により、回転軸に直角の水平二軸(X-Y)の弾性変位(振れ回り運動)が可能となる。また、管をオーバーハング支持する軸受の距離を長めにとって、ベアリング剛性による管の傾き剛性を十分高くした。安全のため、固有振動数および回転数を低めの試験条件に妥協し、互いに逆回転の場合も試験することで差回転数としては所要の域まで試験することとした。

図2 実験装置

実験をしてみると、逆回転も含めて、回転の方向を考慮した両管の回転数の和(絶対値)が大きいほど不安定で、自励振れ回りが生じやすかった(図3)。また、逆回転では、自励振れ回りが生じない回転数の組合わせ帯、いわば「振れ回りの不感帯」が存在し、そこからいずれかの回転数を変化させていくと、やがて回転数(絶対値)が大きい方の回転方向に振れ回りだした。これらの結果は、既存の軸受理論からある程度予想されることではある。しかし、とくに、逆回転において、片方の管の回転を止めると振れ回るのに、両方が回っていると振れ回らない「振れ回りの不感帯」の存在を実際目の当たりにすると、多少不思議な感覚とともに、‘やっぱりそうなるんだ’という納得感が得られた。

図3 不安定振れ回りの発生境界

理論と実験の比較

理論は、層流と推定される回転数の組合わせ域(Ωi ≈ Ωo)で実験からやや乖離するものの、それ以外では、振れ回りが発生する回転数域について実験とほぼ整合した(図3)。そして、不安定の大きさは、理論においても、すき間流体の輸送速度に相当する両管の回転数の和で特徴づけられることがわかった。また、乱流による不安定化の促進や、流体慣性力による振れ回り振動数の低下など、先達のモデルにより総じて現象を説明できることもわかった。

おわりに

不安定性の本質を表す基本的な理論モデルは得られたと考えているが、実験では、上記のように不安定域が理論とやや乖離する回転数域があるほか、逆回転では回転数とともに負減衰量が乱高下する複雑な推移も観察される。大まかな傾向は理解できたと思うが、この二重回転管の振動問題には、物理的(特に流体力学的)に未解明の現象がいろいろ残っていると考えている。


参考文献

(1) 特許3388241(2003)


<正員>

吉住 文太

◎(株)豊田中央研究所 機械システム研究領域 主任研究員

◎専門:流体工学、機械力学、機素潤滑

 

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