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2024/8 Vol.127

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Myメカライフ

天長地久 ー研究の道ー

山田 駿介(九州工業大学)

2023年度(令和5年度)日本機械学会奨励賞(研究)を、テーマ「イオン液体とMXeneによる生分解性蓄電素子の研究」で受賞いたしました。この場を借りて共同研究者・審査員・学会関係者の皆様に厚く御礼申し上げます。本研究はグラフェンや二硫化モリブデンのような二次元ナノシート構造をもつ複合原子層物質MXeneを使用して、体内や環境中で分解する安全・安心な電池を作製したものです。

本研究の着想に至った経緯は、博士課程の学生時に振動発電素子の研究していた時でした。MEMS・半導体技術によりIoTが進展した場合、膨大な数の無線センサ端末が屋内や環境中に設置されると想定され「その電源やメンテンナンスをどうするか?」という課題があります。この課題に対して環境中からエネルギーを回収(発電)して無線センサ端末をメンテナンスフリー(電池交換不要)で駆動する環境発電が注目を集めており、JST CREST、さきがけに「微小エネルギーを利用した革新的な環境発電技術の創出」という分野が設置されていました。私の指導教員(東京大学 生産技術研究所 年吉先生)は、東京大学 藤田先生、静岡大学 橋口先生、鷺宮製作所 三屋氏と一緒にCRESTに参画しており、私は振動発電素子の出力を効率よく使用して無線センサ端末を駆動する研究に取り組んでいました。その際、「電池交換不要ということは設置された無線センサは最終的にどうなる・どうあるべきだろう?」と考えたのが現在取り組んでいる研究の源流になります。環境中や人体で駆動したあと分解する電池がSociety 5.0時代に求められると考え、学位取得後は蓄電素子、材料工学、電気化学の研究を開始しました。

奨励賞を取るくらいだから、さぞかし恵まれた環境にいるだろうと思われるかもしれません。しかしながら、私の研究のバックグラウンドが電気電子工学・MEMSであるため、電池の知識が「ない」、装置が「ない」、研究費が「ない」の3「ない」状態から開始しました。蓄電素子は材料合成からX線分光法、FT-IR、TEMなどの分析技術が求められるため、広範囲の知識が必要です。さらにポテンショスタット(150万円)、ドラフト(400万円)、グローブボックス(300万円)など高額な装置が必要となり、研究が思うように進展しないことがありました。幸いなことに、民間の財団法人やJSPS科研費の支援を受けることで測定系の構築ができ、文部科学省先端マテリアルリサーチインフラ事業 ARIMの装置を利用してデバイスを作製できました。材料合成は合成、分析、検証の繰り返しであり、何十回も失敗してようやく成果が出ます。このため研究を進めていくことで最も重要な点は根気強く・粘り強く取り組むことです。研究を進めるうえで座右の銘としているのが、三國志の英雄の一人である曹操が読んだ「對酒當歌(さけにむかいてうたうべし)」という詩です。タイトルだけ見ると呑兵衛のぼやきに聞こえますが、内容は「人生はつらいことや後悔することが多い、そのぶん目の前のことを楽しもう」という意味です。私の経験上、実験結果がでない、類似の先行研究があった、研究費が集まらないなど、研究はつらいことが90%、10%が楽しいことと感じています。楽しいことの例としては、論文が採択された、受賞した、未知の現象を発見したが挙げられます。私にとってはこれらの楽しいことが「對酒當歌」における酒のようなものですが、みなさんも自分がやりたい・成し遂げたいことに、ひたすら挑戦して悔いのない人生を送ってみてはいかがでしょうか。

今後の研究方針として、生分解性に注目した環境に優しいマテリアル合成手法の開発や生体に吸収されるセンシングプラットフォーム開発を行いたいと考えています。これらの研究で得られた知見をもとに、高性能な蓄電素子や電気化学デバイスの研究開発を行い、グリーントランスフォーメーションへの貢献とその延長として地球規模の課題である温室効果ガスの削減に挑戦したいと考えています。

 MXeneのTEM画像と本研究で実現した生分解性電池


山田 駿介

◎九州工業大学 大学院工学研究院 電気電子工学研究系 助教

◎専門:MEMS、電気化学、材料工学

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