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2022/4 Vol.125

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特集 IT技術・自動運転技術が担う交通安全

鉄道における自動運転のあゆみと将来ー自動車の自動運転と対比してー

松本 陽(日本大学)・篠田 憲幸〔(株)しのだ技研〕

はじめに

最近、自動車の自動運転の急速な進展に影響されてか、鉄道の自動運転も注目されるようになって来た。例えばJR東日本が将来の山手線の自動運転化を念頭において試験を行った等々のニュースが報道されている。しかし、鉄道の自動運転は、1961年の地下鉄日比谷線や1970年の大阪万博モノレールでの試験的な運行を除いても、40年も前の1981年に神戸、大阪の新交通システムで既に実用化されているのである。これは、神戸のポートライナー(ポートアイランド線:三宮~中埠頭;6.4km)と大阪南港ニュートラム(住之江公園~中ふ頭;6.6km)のゴムタイヤ式車両が運行する「新交通システム」と呼ばれる路線であるが、法規的には「案内軌条式鉄道」の範疇に入り、りっぱな鉄道路線である。あまり知られていないが、これは鉄道の完全無人自動運転が実用化された、世界で初めての例である。

また、無人運転ではないが、駅から駅への列車の操縦を自動化した運転(鉄道分野では“ATO=Automatic Train Operation”と呼ばれている)は、これに先立つ1976年に札幌市地下鉄東西線で開始され、それに次いで神戸市地下鉄西神線でも1977年から開始されている。その後、札幌地下鉄では東西線ひばりが丘駅から車両基地までの列車の無人自動回送が1982年に開始されたほか、ATO運転は全国の地下鉄、モノレールなどで、既に一般的に実用化されている(1)(これらの自動運転では動力車操縦免許を持つ運転士が先頭に乗務しているが、運転士が押しボタンを押せば、列車は自動的に運転され次駅の停止目標に自動的に停止する)。

図1 世界で初めて無人自動運転を実現した神戸ポートライナー(1981年)

ではなぜ30~40年の月日を経て、鉄道の自動運転が最近、話題となって来たのか?この理由を考えるためには、自動車の自動運転と鉄道における自動運転の違いを考える必要があるのだが、これまでそのような観点から整理した捉え方がなされていないので、本稿ではそれを解説していきたい。

鉄道と自動車(必要とする制御の違い)

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