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2022/6 Vol.125

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特集 新技術の安全・安心はいかにして確保されるべきか

自動運転の高度化と民事責任の変容

岡本 満喜子(関西大学)

交通事故に伴う法的責任とは

刑事・民事責任、行政処分の中で民事責任に着目する

自動運転車による事故について検討する前提として、従来の車両(ここでは人が常に運転の主体となる車両とする)により交通事故が起きた場合の法律関係について述べる。

Aが所有する車両を運転中、運転を誤って歩行者Bに衝突し、Bがけがをしたとする。この場合、ドライバーAの刑事・民事責任、行政処分が問題となる。このうち、刑事責任は違法行為に対する抑止・制裁のため(1)、罰金等の刑罰が科される。行政処分は道路における危険防止等の行政目的を達成するために、免許停止等の処分が行われる。

一方、民事責任は損害賠償責任が問題となる。一般法である民法の不法行為責任は、被害者の損害について金銭的賠償(民法722条1項)を行う一方、本事例の被害者Bにも過失(赤信号無視など)があれば、過失相殺が行われる(同条2項)。このように、民事責任は金銭的な賠償を通じ被害者救済を図るとともに、損害額の決定にあたっては被害者の落ち度も考慮し、公平な損害の分担を図っている。本稿は交通事故に伴う法的責任のうち、民事責任について検討する。

ここでは、従来の車両が事故を起こしたときの民事責任の概要について述べた後、完全自動運転車が事故を惹起したとき、従来の法律関係にどのような変化が生じうるのかについて検討を行いたい。

不法行為責任と運行供用者責任

一般法として不法行為責任、特別法として運行供用者責任

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