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2022/6 Vol.125

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特集 新技術の安全・安心はいかにして確保されるべきか

保険制度によるリスクの分散

坂下 秀行〔三井住友海上火災保険(株)〕

はじめに

我が国が目指す未来社会Society5.0において、IoT(Internet of Things)ですべての人とモノがつながり、さまざまな知識や情報が共有され、今までにない新たな価値が生み出される。また、AI(人工知能)により、必要な情報が必要な時に提供されるようになり、ロボットや自動運転などの技術で、少子高齢化、地方の過疎化、貧富の格差などの課題が克服される。社会の変革(イノベーション)を通じて、希望の持てる社会、世代を超えて互いに尊重し合あえる社会、一人一人が快適で活躍できる社会の実現が可能となる。

その未来社会の実現の過程で、IoT、AIといった新技術が高度化し、モノとサービスが融合していく中で、従来は人の介在を前提として作成された法制度の見直しが必要となり、官民で活発な論議が行われている。法制度の整備を進めつつ、新技術で生み出された新たなサービスの普及を下支えする、また、新たなサービスによる被害者を救済する手法として、損害発生時の経済的負担を新技術の受益者と被害者間で公平にリスク分散する保険制度の活用が有効である。

本稿では、新技術で生み出された新たなサービスの一つである自動車の自動運転について、民事責任の本質を踏まえた保険制度によるリスクの分散の有効性を論じる。

交通事故の民事責任に関する法律

交通事故を起こし、他人の生命・身体を侵害した者は、民事上の責任を問われる。交通事故における民事上の責任とは、加害者が被害者の生命・身体又は財産を侵害した場合に、これによって生じた損害を被害者に対して賠償する責任である。その法的根拠は、不法行為責任である。

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