和文学術誌目次
日本機械学会論文集 掲載論文 Vol.91, No.948, 2025
公開日:2025年8月25日
https://www.jstage.jst.go.jp/browse/transjsme/91/948/_contents/-char/ja
<材料力学,機械材料,材料加工>
パワーモジュール向けAlワイヤ疲労寿命の周波数依存性
芦田 喜章, 佐々木 康二, 安部 正高, 澄川 貴志
https://doi.org/10.1299/transjsme.25-00084
今後想定される175℃での使用環境下におけるパワーモジュールの寿命予測精度の向上を目的として,線径0.4 mmのAlワイヤを対象とし,当該温度環境下での機械的両振り繰り返し負荷試験手法を開発した.試験周波数f = 10,4,1,0.4および0.1 Hz の条件にて試験を実施した結果,fの増加に伴って疲労寿命は増加することがわかった.また,fをパワーモジュールの動作時間tonに変換すると,tonと疲労寿命との関係の傾きを表すαは,tonの長時間化に伴って0に漸近していくことを明らかにした.
フィレット寸法の全範囲に対して正確な応力集中係数を与える計算式(フィレット部を有する段付き丸棒のねじり)
高畑 泰幸, 小田 和広, 坂本 訓彦, 野田 尚昭
https://doi.org/10.1299/transjsme.25-00110
段付き丸棒のフィレット部の応力集中係数は,ほとんどの機械の強度・安全性の確保に極めて重要である.引張りと曲げ負荷については,すべての寸法範囲で有効な応力集中係数の計算式が提案されているが,ねじり負荷に対しては研究がない.そこで,本研究では,非軸対称荷重を受ける軸対称体に対する有限要素法により,段の高さが小さい場合と大きい場合の極限の解をまず求めた.それらを基準として段付き丸棒の応力集中の比を計算式で与えることで,すべての寸法範囲に対する計算式を誤差1%程度以内で求めた.よく使用される便覧等の応力集中係数は最大10%程度の誤差がある.Petersonのねじりの近似式は利用可能な寸法範囲が著しく狭く不便である.
<流体工学,流体機械>
機械学習を用いた空気抵抗を低減する自動車形状および流れ場の導出方法の開発
谷口 真潮, 新谷 浩平, 菅井 友駿, 森國 洋平, 伊藤 祐太, 山下 裕矢, 安岡 志朗
https://doi.org/10.1299/transjsme.25-00052
自動車の開発期間短縮が求められる中,機械学習が重要な役割を果たしている.本研究では,変分オートエンコーダ(VAE)を用いて,車両のフロントバンパー側の形状,抗力係数,側面および後部の流れ場を予測する手法を提案する.提案手法により,抗力係数は最大誤差0.012,平均誤差0.002,R2値0.88でCFDと良好な一致を示した.また,主成分分析によって得られた潜在変数の散布図を使用し,抗力係数の増加傾向との関連が確認された.この手法により,従来の設計パラメータでは表現できない複雑な三次元形状を提案することが可能となる.これにより,設計と性能のバランスを容易にし,最適解の探索を促進することで,より効率的な自動車開発が実現できると考えられる.
高速鉄道用空力ブレーキを模擬した平板間の流体干渉に関する数値解析
川井 康平, 北村 圭一
https://doi.org/10.1299/transjsme.25-00062
「空力ブレーキ」とはブレーキ板を展開する事で抗力を得るための装置(空力デバイス)である.一般にはこれらのブレーキ板は複数,鉄道の屋根に配置されるが,この場合,最上流の板の後流に他のブレーキ板が配置される事になる.この後流では流れが遅くなっているため,下流のブレーキ板は十分な抗力を得る事ができない.そこでより効率的に抗力を得るためには,これらのブレーキ板の配置を見直し,できるだけ高い流速にさらす事が望ましい.そこで本研究では,ブレーキ板の配置による総抗力への影響を理解する事を目的とし,平板で模擬された空力ブレーキ周り流れの数値流体解析を実施した.平板は千鳥配置とし,それらの(横断流方向の)間隔をパラメタとした.その結果,平板間隔を平板幅の50%から0%へと小さくした時,11%の抗力増加が得られた.これは平板後流の流速回復が促進され,速くなった流れが下流の平板に当たるためである.
<熱工学,内燃機関,動力エネルギーシステム>
透明加熱模型を有する水平加熱円管における低GWP冷媒に関する沸騰熱流動の計測の試み
笠井 晃博, 山田 俊輔, 船見 祐揮, 中村 元
https://doi.org/10.1299/transjsme.25-00099
地球温暖化の解決に向け,地球温高係数が低いHFO系冷媒が注目されている.本論文では,次世代冷媒としてR1336mzz(E)に着目し,内径10 mmの加熱水平円管を流れる冷媒循環装置と,円管を加熱した状態で流動様相の観察や赤外線カメラで内壁温度の計測が可能な透明加熱模型を製作した.冷媒を加熱し,熱平衡クオリティ,質量流束,流入伝熱量を変化させ,熱電対による円管の外壁温度計測から熱伝達率を,並びに差圧計測から摩擦圧力損失勾配を算出し,熱伝達と圧力損失の関係を整理した.また,ドライアウトへの遷移流における内壁温度を高速赤外線カメラで計測し,温度変動のピーク値から濡れ境界角を算出した.
<機械力学,計測,自動制御,ロボティクス,メカトロニクス>
Pure Pursuit法の改良の検討(二点注視点法:Dual Preview Points法で実現される軌道追従系の分析)
王 威, 毛利 宏
https://doi.org/10.1299/transjsme.25-00090
Pure Pursuit法はその実装の容易さと計算負荷の低さから,自動運転車両に広く用いられてきたが,応答性とプレビュー距離の間にはトレードオフが存在する.本研究では,Pure Pursuit法の軌道追従性能を振動系として捉え,動的特性の改善を試みる.具体的には,従来のプレビュー点に加えて,さらに追加のプレビュー点を設けることで,系の固有振動数と減衰比を制御可能とし,安定性と応答性の両立を図る.本手法の理論的背景と実装方法について詳細に述べ,実用性を検証する.
<計算力学>
熱流体場における領域の最大温度を制約とした冷却流路のトポロジー最適化
古口 睦士, 矢地 謙太郎, 近藤 継男, 西脇 眞二
https://doi.org/10.1299/transjsme.25-00089
本論文では,最大温度を制約条件とし,流体のエネルギー損失を最小化する熱流体のトポロジー最適化手法を提案する.熱流体場の解析では,ナビエ・ストークス方程式とエネルギー保存方程式を連成し,強制対流を伴う非圧縮性粘性流れとして扱う.最大温度の評価では,pノルムの逐次補正により連続関数として高精度に近似し,計算の安定性と精度を両立している.密度法に基づき,設計感度の算出には随伴変数法,数値解法には有限体積法,設計変数の更新にはMMAを採用する.数値計算例により,本手法の有効性と工学的応用の可能性を示す.
<生体工学,医工学,スポーツ工学,人間工学>
上向き作業用アシスト装置におけるヘッドレストによる頸椎の負荷軽減効果の解析
石井 千春, 平澤 寛太, 山本 望史
https://doi.org/10.1299/transjsme.25-00075
本論文では,ヘッドレスト付き上向き作業用アシスト装置におけるヘッドレストの有用性を検証するために,上向き作業を行った際に頸椎にかかる負担を静力学的及び動力学的の2つの観点から解析した.静力学的な解析において,頸椎負荷モデルを提案し,ヘッドレストによりC2/C3椎間板まわりのモーメント,C2/C3椎間板にかかる圧縮力及びせん断力が減少するという結果が得られた.動力学的な解析においては,筋骨格モデル解析ソフトAnyBodyを用いて腕下げ動作に対して解析を行った.その結果,胸鎖乳突筋の筋活動量,C2/C3椎間板にかかる圧縮力及びせん断力について,ヘッドレスト付き上向き作業用アシスト装置による負担軽減効果を確認できた.
9軸センサを用いたStoop法による持ち上げ動作における把持物質量判別手法の提案
今井 悠斗, 石堂 雄大, 伊丹 琢
https://doi.org/10.1299/transjsme.25-00119
本研究では被験者に装着された9軸センサから腰部負担が大きいとされるStoop法による持ち上げにより,把持物の質量が10kgもしくは20kgの場合を持ち上げ開始直後に判別する検出法の提案を行った.はじめに,9軸センサを胸部に装着し,おもりが入っていないかご,10kgのおもりが入ったかご,20kgのおもりが入ったかごをランダムに各3回ずつ持ち上げる実験を行った.実験により9軸センサから測定されたクォータニオンから前傾角度を算出し,20kgについて揺らぎが確認されたことから前傾角度の変化を解析するために前傾角度の直近0.2sのデータを基に線形近似を行った.そして,前傾角度の線形近似における極値の差および極大値を特徴量とした非線形SVMを用いたk-分割交差検証により精度を算出し,従来手法より算出された精度との比較を行った.結果としては,本研究手法は従来手法より7%高い82.3%の精度で検出された.今後の展望としては,異なる持ち上げ法,既知質量,さらに小さい質量差による検証を行っていく必要があると考える.
<宇宙工学>
非定常音響環境との極値応答と累積疲労の等価性に基づいた音圧スペクトル調整による定常音響環境条件の導出手法に関する検討
嶋崎 信吾, 安藤 成将, 岩佐 貴史
https://doi.org/10.1299/transjsme.25-00071
宇宙機はロケット打上げ時に晒される非定常音響環境に対する耐環境性を検証するため,定常音響環境条件を用いた地上音響試験に供される.この定常音響環境条件の導出手法として現在用いられているオクターブバンド解析法は,被負荷構造物の極値応答や累積疲労の等価性を担保できないという課題が指摘されており,過度に保守的な音響環境条件が規定される要因となっている.そこで本研究では,極値応答と累積疲労の等価性を担保した新しい音響環境条件の導出手法について提案する.実際のフライトデータを用いて解析を行った結果,提案手法は極値応答や累積疲労の等価性を担保しつつ,従来手法よりも緩和した音響環境条件を導出することができた.
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表紙:経年変化してグラデーションに紙焼けをした古紙を材料にコラージュ作品を生み出す作家「余地|yoti」。
古い科学雑誌を素材にして、特集名に着想を受け、つくりおろしています。
デザイン SKG(株)
表紙絵 佐藤 洋美(余地|yoti)